目次
1. 看護師の働き方改革とは?
看護師の持続可能な働き方を目指す
働き方改革の目的は労働環境を見直し、労働人口を増やしながら生産性を上げることです。2019年度より開始した国の働き方改革を受け、医療福祉業界においても働き方改革が進められています。
看護師については日本看護協会がその目標として「看護職が生涯にわたって、安心して働き続けられる環境づくりを構築し推進する」と掲げ、具体的な改善点として次の5要因10項目を提案しています。
5要因 | 10項目 |
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夜勤負担 |
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時間外労働 |
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暴力・ハラスメント |
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仕事のコントロール感 |
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評価と処遇 |
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医師の働き方改革が看護師にも影響
医師の働き方改革にも注目が集まっており、当然、看護師への影響も大きいと考えられます。2019年の厚生労働省の調査によると、勤務医の約4割弱が年960時間(一日あたり約4時間)以上、約1割が年1,860時間(一日あたり約8時間)以上の残業をしている実態がわかりました。2024年4月からは医師の時間外労働の上限が年960時間(一部特例として年1,860時間)に規制されるようになります。
医師の勤務時間を削減するためには、その業務の一部を看護師や医療クラークなどの他職種に移行するタスクシフト・シェアが有用とされています。同時に看護師の負担を増やさないために、看護師から薬剤師や歯科衛生士などの他職種へタスクシフトする必要性もあげられています。
今後は2024年度に向けて、またそれ以降においても看護師の業務内容に変化が求められると考えられます。
タスクシフト・シェアについて詳しくはこちら
>タスクシフト・シェアとは? 医師の働き方改革で変わる医療現場
2. 看護師の働き方改革の実態調査
ここからは、実際の現場で看護師の働き方改革がどれだけ進んでいるのかを知るため、看護師向けコミュニテイ「カンゴトーク」内でおこなったアンケート結果を紹介します。
(調査期間:2023年3月、調査対象:672人)
Q. 働き方改革は進んでいる?

まず、職場で働き方改革が進んでいるかどうか尋ねた質問では、「まったく進んでいない」が54.9%と過半数を占める結果に。コメントでは厳しい現場の実情が寄せられました。
「まったく進んでいない」と回答した人のコメント
- 働き方改革とは??σ(・ω・`)ハテ?何それ状態です。残業あるのに残業代出ない。休日出勤して、勉強会は強制参加。補助金もなし。
- 口開けば医療業界は別とか、やれ、入院稼働率低い!残業申請多すぎ!年度決算赤字!とかそんな事ばかり言ってます
- 前残業も残業も多く、タイムカードはありますが、自分の都合で早く来て残ったという書類を書かされ、余程の事がないと残業代出してもらえません。病棟会の日なんて日勤さんが21時近くまで残っていました。もちろん時間外は無しで。
次いで多かったのは「少しずつ進んでいる」29.2%。徐々にではあるものの、改善が進められている職場もあるようです。なお「かなり進んでいる」は3.9%とごくわずかでした。
「かなり進んでいる」「少しずつ進んでいる」と回答した人のコメント
- 前残業しないという風潮に変わってきてきるので若手でも最近はのんびり来ている印象があります!
- 私が入職した時は既にホワイトなステーションでした。数年前に所長が変わるまではかなりブラックで、先輩達も辞めようかかなり悩んだそうです。
Q. 働き方改革で業務量は変わった?

続いて、業務量に変化があったかを聞いた質問では「変わらない」が59.3%でした。そもそも働き方改革が進んでいないと答えた人が大半なので、この結果は当然とも考えられます。
注目すべきは「業務量が増えた」と回答した人が全体の約3割弱を占めた点。その内訳を見ると、少数ではありますが「医師の代わりで業務量が増えた」人は6.8%にのぼり、医師からのタスクシフト・シェアの影響が考えられます。
反対に「業務量が減った」と回答した人はわずか3.3%に留まりました。
コメント
- 紙カルテから電子カルテになり減った業務もありますが、明らかに増えてると感じています。。
- 正直、業務内に看護師じゃなくてもできることが多すぎる。って思うのは私だけでしょうか。入院時の書類とか、IC以外の家族対応とか。働き方改革で残業を減らそうとか言う割に大したことやってないって思っちゃう。
- 働き方改革で、単科専門性から、大まかな科を一通り経験し、どこの科でも行けるようにという試みが始まりました(スタッフが休みやすくなるようです)。今までは単科で専門的に関わっていたのに、わたしは一年勤務でもう4科まわっており、4科できるからといって、今日は○○科、明日は○○科と、日々バラバラに働いています。正直、外来の専門性がまったく感じられず、しかも専門的に関われず知識も中途半端。
Q. 働き方改革で残業は改善された?

残業の改善については「変わらない」が約半数、「サービス残業あり」が約2割でした。「残業が減った」に関する回答の合計は約15%とわずかで、コメントでは「むしろ残業が増えた」という声も複数寄せられました。
とくに働き方改革によって勤務開始前の残業(前残業)が制限されたことで、患者の情報収集にかける時間が足りなくなったという声もありました。業務内容は変わらないまま残業時間の短縮だけが求められた結果、休憩時間を削ったり時間に追われたりしている人も多そうです。本質的な改革になっているのか疑問が残ります。
コメント
- 残業は増えました。残業代も出るようになりました。でもそれ以上にサービス残業も増えました。
- 働き方改革の1つで、情報収集のために出勤するのを禁止されました。10分前しかだめになりましたが…業務が逆に煩雑になった気がします。
- 働き方改革ではないですが、労基が入りました!改悪され、前残業申請制となり、師長により残業が許可される病棟もあれば認められない病棟もあるというカオス状態に。前残業申請用紙にサインをもらうための列や管理者を探し回る時間でどれだけの記録ができるんだろうと毎日考えています笑
Q. 勤務間インターバルは11時間以上ある?

日本看護協会が働き方改革の1項目として掲げている「勤務間インターバルを11時間以上あける」については、約半数の48.2%が「11時間以上取れている」と回答しています。
一方で、「11時間以上取れていない」は26.7%で、十分な休みが確保されていない人が一定数いることがわかりました。とくに3交替制の場合は勤務時間が短い分、すぐに次のシフトが回ってくることが多く、十分なインターバルを取りづらいといわれています。
勤務間インターバルが短いと疲労感や不眠を招きやすく、健康にも悪影響を及ぼすことが科学的にも認められています。
コメント
- 三交代夜勤は日深がなくなり、オフ深になるとか、、、。しかも深夜の後は必ず休みだったのが、オフ→深夜→日勤になる時もあるとか。いつ休めば良いのだろうか。
- もう辞める職場ですが、準夜が1時15分終わりの9時45分出勤が当たり前でした。
- 残業や早めに出勤して、情報収集、仕事の準備をしていれば、正確には11時間以上にならないこともあります。
Q. 有給休暇の取りやすさは変わった?

働き方改革によって有給休暇の取りやすさが変わったか聞いたところ、「変わらない」が51.0%と約半数、「もともと取りやすい」が21.9%でした。また、「以前より取りづらくなった」と回答している人も7.6%いました。
年次有給休暇は従業員の権利であり、取得理由の申告も不要です。さらに2019年度からは最低5日取得することが義務付けられています(条件あり)。それにも関わらず、取得タイミングの自由が効かない、年5日取得できないといった人がまだ一定数いるようです。
コメント
- 今の病院は有休消化の合間に夜勤だけは入らなくちゃいけなかったり(夜勤が組めないので)と微妙です。
- 以前いた大学病院では、有給たくさん余ってたのに、退職者が多いからと多くて5日程しか消化させてもらえませんでした。買い取りもしてもらえませんでした。
- 施設退職時は消化できない休みは買い取り制度がありました。有給が使えないと怒った同僚が労働監督基準署に電話して使えたというケースもありました。
3. 働き方改革の実践事例
最後に「カンゴトーク」内で寄せられた、業務負担を減らすための事例を一部紹介します。業務内容や体制の見直しなど、現場レベルで工夫できることもあるかもしれません。

4. 「カンゴトーク」で相談受付中!
看護師向けの相談コミュニティ「カンゴトーク」では、今回のようなアンケートを毎日実施中! さらに悩み相談や聞いてほしいこと、雑談なども匿名で気軽に話すことができます。ぜひチェックしてみてください。 |
参考
- 日本看護協会|看護職の働き方改革の推進