目次
1. 扶養手当・家族手当とは
家族を持つ労働者に支給される手当
扶養手当・家族手当は、家族を持つ労働者の経済的な負担を軽減するために支給される手当のことです。法的な定めがない法定外福利厚生の一種で、支給の条件や金額などは企業が独自に決めることができます。
扶養手当と家族手当の違い
扶養手当は配偶者や子ども、親などの養う家族がいる従業員に対して支給されることが一般的です。一方、家族手当の範囲はより広く、家族がいる従業員であれば扶養している・いないにかかわらず支給されるケースもあります。
tips|児童扶養手当、特別児童扶養手当との違い
扶養手当とよく似た名称の手当として「児童扶養手当」「特別児童扶養手当」があります。これらは国が定めた制度で、企業独自の福利厚生である扶養手当(家族手当)とは別物です。
児童扶養手当は、18歳以下の児童を養育するひとり親世帯に支給されます。特別児童扶養手当は、20歳未満で精神障害または身体障害を持つ児童を養育する保護者に対して支給されます。
2. 扶養手当・家族手当の金額の相場
平均支給額は1万7,600円
人事院が発表した「令和4年職種別民間給与実態調査の結果」によると、家族手当制度がある企業の割合は75.3%でした。
また厚生労働省の別の調査によると、扶養手当、家族手当、育児支援手当などの従業員一人あたりの月の平均支給額は1万7,600円でした。従業員数の多い企業ほど支給額が高い傾向にあり、1,000人以上と30〜99人ではおよそ1万円の差が見られました。
従業員数 | 平均支給額(扶養手当、家族手当、育児支援手当など) |
---|---|
平均 | 1万7,600円 |
1,000人以上 | 2万2,200円 |
300〜999人 | 1万6,000円 |
100〜299人 | 1万5,300円 |
30〜99人 | 1万2,800円 |
さらに東京都がおこなった「令和4年版 中小企業の賃金・退職金事情」の調査結果を見ると、家族手当を一律支給している企業は5.8%と少なく、配偶者や子どもなど手当の対象者に応じて金額を変える企業が93.2%と多数派でした。とくに配偶者に対する手当額が高く平均支給額は1万372円、子どもに対する支給額は5,000円余りでした。
扶養手当は課税される?
扶養手当や家族手当は給与所得として扱われるため、原則として所得税・住民税の課税対象です。
3. 扶養手当・家族手当の支給条件
条件は企業が自由に決められる
扶養手当・家族手当の支給条件や金額は、企業が自由に決めることができます。例えば次のような条件があります。
扶養手当・家族手当の支給条件の例
- 扶養家族であること
- 同居していること
- 配偶者、子ども、親などの続柄
- 子ども、親の年齢(18歳未満、60歳以上など)
- 家族の人数
- 配偶者の年収 など
具体的な支給条件は就業規則で確認することができます。
所得制限はある?
人事院の調査によると、配偶者に対して扶養手当・家族手当を支給している企業のうち8割以上が所得制限を設けています。その多くは税制や社会保険料上の扶養控除や配偶者控除の上限額である年収103万円、130万円などで設定されており、これらの金額を超えると扶養手当・家族手当の支給も制限される可能性があります。

育休などの休業中はもらえる?
産前産後や育児、介護などで休業している間の手当についても、企業ごとに判断が異なります。手当は給与の一部として支払われるため、休業中に無給となる場合は扶養手当・家族手当も不支給となることが一般的です。
なお、公的な給付金制度として出産手当金や育児休業給付金(育休手当)、介護休業給付金などがあります。
公務員はもらえる?
公務員にも扶養手当はあり、法律によって支給条件が定められています。主な支給条件は次のようになっています。
国家公務員の扶養手当の支給条件(一部)
- その職員の扶養を受けていること
- 規定の続柄・年齢などに該当すること
- 配偶者(事実婚を含む)
- 子ども・孫(22歳以下)
- 弟妹(22歳以下)
- 親・祖父母(60歳以上)
- 重度心身障害者
- 被扶養者の年間所得が130万円未満
支給金額は職員の役職と扶養の対象者に応じて一人あたり3,500円〜1万5,000円が毎月支給されます。また地方公務員についても国家公務員に準じた扶養手当が設けられています。
4. 扶養手当・家族手当は廃止される?
支給率は年々低下傾向
東京都産業労働局の資料によると、扶養手当・家族手当を支給している企業数は近年減少が続いていることがわかります。2005年に83.1%だった支給率は2021年に74.1%まで低下しました。

これにはいくつかの要因が関与しています。共働き世帯の増加により扶養対象とならないパートナーが増えたことや、扶養手当の支給条件を配偶者(特別)控除の条件と合わせていた企業は法改正により支給条件が複雑化したこと。また、同一労働同一賃金の推進により正職員のみの支給が困難になった点や、業務とは直接関係ない福利厚生よりも仕事の出来に応じた成果主義が好まれるようになった点などが要因に挙げられます。
新たな補助制度への移行
扶養手当・家族手当の支給率は減少傾向にあるものの、別の補助制度への転換を進めている企業もあります。例えば扶養手当などを廃止・縮小する代わりに、そのほかの手当や基本給を手厚くする例などがあります。
手当を見直した例
- 扶養手当を廃止し、基本給に一本化
- 家族手当を廃止し、基礎能力に応じて支給する手当を創設
- 配偶者手当を減額し、子どもや障がいを対象とした養育手当を創設
- 配偶者手当を減額し、配偶者と子どもに対する手当を同額に変更
参照:厚生労働省「配偶者手当の在り方の検討」
5. 扶養手当・家族手当を活用しよう
扶養手当・家族手当は、家族を持つ従業員の経済的な負担軽減を目的とした企業独自の制度です。現在は7割強と多くの企業で導入されていますが、時代の変化にあわせて制度の見直しも進んでいます。
支給の条件や金額は各企業で異なり、配偶者の収入の証明が必要な場合もあるため、就業規則などをよく確認するようにしましょう。
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