目次
1. 住宅手当(家賃手当)とは
住居費を補助する福利厚生の一つ
住宅手当(家賃手当)は、企業や組織が従業員に対して提供する福利厚生の一種です。住宅ローンの返済や賃貸住宅の家賃を補助する形で支給されることが一般的です。
職場によって住宅手当、家賃手当、家賃補助などと呼び名が異なります。「住宅手当」は住宅ローン、「家賃手当」「家賃補助」は賃貸住宅の家賃と分けているところもありますが、内容としてはほぼ同じと考えてよいでしょう。
住宅手当は企業が任意でおこなう法定外福利厚生のため、必ずしも制度があるわけではありません。
住宅手当の相場は1〜2万円台
住宅手当の金額は企業によって異なりますが、住宅価格が高騰している都市部のほうが支給額が高い傾向にあります。
2022年に東京都産業労働局が中小企業を対象におこなった調査によると、住宅手当の平均支給額(一律支給の場合)は「扶養家族あり」1万7,696円、「扶養家族なし」1万5,211円でした。また持ち家よりも賃貸のほうが支給額が高い傾向にあることがわかります。
一律支給 | 住宅形態別の支給 | ||
---|---|---|---|
賃貸 | 持ち家 | ||
扶養家族あり | 1万7,696円 | 2万8,480円 | 2万2,556円 |
扶養家族なし | 1万5,211円 | 1万9,669円 | 1万6,083円 |
また、2019年度に日本経済団体連合会が加盟企業を対象におこなった調査では、住宅関連の福利厚生費の平均支給額は1万1,639円でした。
住宅手当は課税される?
住宅手当は給与の一部として現金で支給される場合が多く、給与と同様に所得税と住民税が課税されます。
社宅との違い
企業が従業員に対して住居を提供する方法として社宅制度があります。主に2つの提供方法があり、企業が所有・管理する住居を従業員に貸し出す方法と、従業員が賃貸物件を借りて従業員に貸し出す方法(社宅借り上げ)があります。住宅手当は現金支給ですが、社宅は現物支給に近いと考えてよいでしょう。
社宅の場合、家賃の50%以上を従業員が負担すれば残りの家賃(企業負担分)として支払われる給与は非課税となるため、節税のメリットがあります。一方デメリットとしては、退職した場合にはその物件から退去しなくてはならないことが挙げられます。
2. 住宅手当がもらえる支給条件
住宅手当の制度があるからといって、必ずしもすべての従業員に支給されるわけではありません。企業ごとに定めた以下のような支給基準があるところがほとんどですので、勤め先の就業規則をよく確認しましょう。
賃貸か持ち家か
住宅形態を問わず一律支給のところもありますが、持ち家か賃貸かによって支給の有無や金額が異なることもあります。とくに持ち家の場合は「住宅ローンの返済義務を負っているか」「実家暮らしか」どうかなどが基準になることも。また、持ち家・賃貸を問わず「従業員本人が世帯主かどうか」を要件にしている企業もあります。
扶養家族の有無
扶養家族がいるかどうかによって、支給の有無や金額が変わることもあります。配偶者や子どもなど養う家族がいる場合は生活費もかさむため、平均支給額は高くなっています。
正職員かどうか
正職員には住宅手当がある一方で、パートや契約職員は対象外とするなど、雇用形態を条件にしている企業もあります。ただし後述の「同一労働同一賃金の影響」で説明するとおり、この待遇格差は徐々に改善が進んでいます。
通勤距離に応じる
「自宅から勤務先までの距離が◯キロ以内」など、一定の条件に当てはまる場合に住宅手当を支給するところもあります。なお、住宅手当を支給する場合は交通費を不支給とするケースもあるようです。
3. 住宅手当の支給は減っている?
2000年以降は支給額が減少傾向に
2019年度の日本経済団体連合会の調査によると、住宅関連の福利厚生費の平均支給額は2000年度に約1.4万円でしたが、それ以降は減少が続き2019年度には約1.1万円まで下がりました。
この背景にはさまざまな原因が考えられます。未婚者の増加や事実婚、ルームシェアなど生活様式の多様化、テレワークなどによる働き方の多様化により支給基準の複雑化や該当者数の減少の可能性があったこと。業務と関係のない福利厚生費よりも仕事の成果に対して報酬を与える成果主義を重視し、固定支出を削減したい企業の考えが働いたこと。そして同一労働同一賃金の推進などが挙げられます。
同一労働同一賃金の影響
同一労働同一賃金とは、同じ労働内容に対しては同等の報酬が与えられるべきという原則のことで、2020年度に法制化されました。これまで正職員のみに住宅手当が適用され、非正規職員には適用されなかったケースなどにおいて公平性が重視されるようになり、支給額や支給条件を見直す動きが起きています。
格差是正のために全従業員の手当を正職員と同水準にすると、それだけ企業の負担は大きくなります。そのため、これまで正職員のみを対象としていた住宅手当を廃止するなど、マイナスの変更によって公平性を保つ企業が増えています。
4. 医療福祉業界の住宅手当の例
医療福祉業界は、人材の確保や定着を図るため、職員への福利厚生として住宅手当を導入している業界のひとつです。ジョブメドレーに掲載している実際の求人例を見てみましょう。
職種 | 手当の内容 |
---|---|
看護師 | 住宅手当:1,000~20,000円 |
薬剤師 | 住宅手当:住居費の半額を会社が負担(上限3万円、世帯主で賃貸住宅の契約者のみ) |
介護職 | 住宅手当:10,000〜20,000円(世帯主に限る) |
生活支援員 | 家賃補助手当:30,000円(事業所より60km以上、就職に引っ越しを伴う場合) |
保育士 | 住宅手当:20,000円~(単身者のみ) 転居手当:50,000円~ |
保育士 | 住宅手当 15,000円 (世帯主に限る) 都市手当 13,000円 (東京23区に勤務する者のみ支給) |
鍼灸師 | 住宅手当:家賃の30%支給 |
5. 求人要項や就業規則を要チェック
住宅手当は企業や組織が従業員に対して提供する福利厚生の一つであり、住居費を補助する目的で支給されます。支給の有無や金額は住居形態や扶養家族の有無、雇用形態、通勤距離など、会社が独自に定めた規定によって決定します。
近年では住宅手当の支給は減少傾向にありますが、月1〜2万円程度の支給があるかどうかは大きいもの。転職や就職にあたっては求人の募集要項や就業規則をよく確認して、自分が支給対象かどうか確認すると良いでしょう。
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