目次
1.手当とは?
手当とは、企業から基本給のほかに支払われる賃金です。業務上の負担を補償することや、従業員のモチベーションを高めて定着率を上げるなどの目的で支払われます。手当には時間外手当や休日出勤手当といった法律で定められているものと、企業が任意で支給するものがあります。
また、役職手当などあらかじめ毎月支払われることが決まっているものを固定手当、残業代など勤務状況に応じて支給されるものを変動手当と呼びます。
用語解説|基本給とは
各種手当やインセンティブを含まないベースとなる固定賃金です。一般的には仕事内容や能力、経験、勤続年数、年齢などを考慮して決められます。
2.法律で定められている手当一覧
まずは労働基準法で定められている手当を紹介します。主に「時間外手当」「休日手当」「深夜手当」「宿日直手当」などが挙げられます。これらは企業が賃金規程等に定めていなくても支払わなければなりません。
時間外手当 | 1日8時間・週40時間以上、または時間外労働の限度時間(月45時間・1年360時間など)を超えた場合、通常の賃金に対して割増率25%以上が支払われる。 時間外労働が1ヶ月に60時間を超えた場合、割増率50%以上が支払われるか、これに代わる有給休暇が付与される。 |
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休日手当 | 法定休日に出勤した場合、通常の賃金に対して割増率35%以上が支払われる。 |
深夜手当 | 深夜22時〜翌朝5時まで労働した場合、通常の賃金に対して割増率25%以上が支払われる。 |
宿日直手当 | 使用者によって宿直または日直を命じられた場合に支払われる。金額は同じ事業場で宿日直業務をおこなう人を基準とし、1人1日の平均額の3分の1以上とされる。 |
3.企業が任意で支給する手当の例
企業が就業規則で定めて独自に支給する手当です。一般的なものを種類別に紹介します。
役職・スキル・成果に対する手当
仕事の成果によって支払われるものや、仕事の性質や保有資格によって支給されるものなど多岐にわたります。
〈職務手当〉
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〈職能手当〉 |
〈役職手当〉 |
〈資格手当〉 |
〈皆勤手当/精勤手当〉 |
〈残業手当〉 |
tips|残業手当と時間外手当の支払い例
10時から18時までの勤務で、休憩時間が1時間の職場を例に挙げます。この場合、企業が定める所定労働時間は1日7時間です。
残業をして21時まで働いたとすると、18時から19時までの1時間は法定労働時間8時間の範囲内なので、支払われるのは残業手当となります。19時から21時の2時間は法定労働時間を超えるので、時間外手当が支給されます。
生活や健康を支える手当
一般企業の従業員やその家族の生活負担を軽減するなどの目的で支給される手当を紹介します。
〈通勤手当〉 |
〈扶養手当/家族手当〉 |
〈住宅手当/家賃手当〉 |
〈地域手当〉 |
〈食事手当〉 就業時の飲食費用を企業が負担する手当。社員食堂での食事提供や現金支給など、提供の仕方はさまざま。 |
〈テレワーク手当/在宅勤務手当〉 |
専門業務に対する手当
主に医療従事者への手当の例を紹介します。
〈交替勤務手当/交替手当〉 |
〈危険手当〉 |
〈特殊業務手当〉 |
〈手術室勤務手当〉 |
〈オンコール手当〉 |
〈往診手当〉 |
4.非課税となる手当
手当は原則として給与とみなされるため課税対象ですが、例外として次のような手当は非課税となります。
通勤手当 | 公共交通機関(電車・バスなど)や有料道路を使った車通勤で、月々の通勤手当や定期券代が15万円以下であれば、非課税となる。ただし、経済的で合理的なルートや手段に限る。 |
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宿日直手当 | 宿直手当・日直手当を支給する場合、一回の宿直・日直に対して支給される手当は、4,000円(食事が支給される場合は、4,000円から食事代を控除した残額)を上限として非課税となる。 |
出張手当 | 出張のために必要であると認められる範囲(交通費や宿泊費)は課税対象とならない。ただし、あまりにも高額すぎると給与として所得税が課税される可能性がある。 |
5.手当の待遇差の禁止(同一労働同一賃金)
厚生労働省は2018年7月6日、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」を公布し、同一労働同一賃金の原則を定めました。同一労働同一賃金とは、正社員とパート・アルバイトなどの雇用形態の違いによる不合理な待遇差をなくすという考え方です。
同一労働同一賃金の法的整備は、2020年4月1日に改正されたパートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法によっておこなわれました(中小企業は2021年4月1日より施行)。同一労働同一賃金ガイドラインでは以下の手当格差を禁止しています。
- 役職手当
- 特殊作業手当
- 特殊勤務手当
- 精皆勤手当
- 時間外労働手当の割増率
- 深夜・休日労働手当の割増率
- 通勤手当
- 出張旅費食事手当
- 単身赴任手当
- 地域手当
手当が充実している職場は生活面でのサポートが整っていることを示しており、安心して働くことができます。就職や転職を検討する際、各企業の手当や福利厚生がどのように提供されているかを調べ、自分にとって最適な職場を見つけることが大切です。