「なんとかなるっしょ」の勢いで漫画家に!元看護師・人間まおのびっくり転身物語

元看護師であり、現在は漫画家として才能を発揮する人間まおさん。看護師を辞めて漫画家になった経緯に驚きました。

「なんとかなるっしょ」の勢いで漫画家に!元看護師・人間まおのびっくり転身物語

目次

SNS総フォロワー数40万人以上、ブログでは月間2,000万PVを超える人気漫画家・人間まおさん。手術室看護師(通称オペ看)時代の体験を描いたコミックエッセイ『手術室の中で働いています。オペ室看護師が見た生死の現場』(竹書房)が、2023年12月の発売当初から話題を集め、この4月に重版が決まりました。

『手術室の中で働いています。オペ室看護師が見た生死の現場』(竹書房)
『手術室の中で働いています。オペ室看護師が見た生死の現場』(竹書房)

2024年4月からはテレビ東京系列「おはスタ」にてアニメ『あげおとティム』が放送されるなど、クリエイターとしてのキャリアを着実に積み上げています。

そんなまおさんに看護師になったきっかけと、看護師から漫画家へ転身した背景を聞くと意外な答えが返ってきました。(全2回の2回目/1回目はこちら

話を聞いた人

 

人間まおさん
漫画家 人間まお

元看護師のエッセイ漫画家。手術室看護師の奮闘を描いた漫画『オペ看』(講談社)で雑誌連載デビュー。現在はライブドアブログSNSを中心に作品をアップし続けている。2024年4月からテレビ東京系列「おはスタ」にてアニメ『あげおとティム』放送開始。

お母さんの勧めで看護学校へ

インタビューにこたえる人間まおさん

──人間まおさんがオペ看時代の経験をコミカルに描いたエッセイ漫画『手術室の中で働いています。オペ室看護師が見た生死の現場』がヒットしています。そもそもなぜ看護師を目指したのでしょうか?

人間まおさん:きっかけは母の勧めです。小学校の低学年くらいまでは漫画を描いていましたが、学年が上がるにつれて自分より上手な人が出てきたんです。それで、人前で描くことから少しずつ離れ、いつの間にか描かなくなりました。

ただ、漫画を読むことと絵は変わらず好きだったので「将来は漫画に関わる仕事ができたらいいな」とフワッと考えていて。高校2年で進路希望を提出するときに初めて将来について考え「美術学校で絵の勉強をしよっかな〜」と思ったんです。

でも、お母さんに止められました。日常的に絵を描いていたわけでもないし、親に絵の話をしたこともなかったので、“なんとなく”な考えを見抜いたんでしょうね。それで看護師になったらどうかと勧められました。

──なぜお母さんは看護師を勧めたのでしょう?

母はリハビリ助手をしていて、病院に勤めていたんです。おそらく同僚の看護師さんに「娘が漫画家になりたいなんて言っているんです」と相談したら勧められたんじゃないかな。看護師は働き口が多いので、手に職があればお金に困らないという母なりの気遣いもあったと思います。

看護師に悪いイメージはなかったので「じゃあやってみよう」と思い、軽い気持ちで看護学校に進学しました。入学すると友人は「子どものころに入院した経験があって」「親が看護師でその姿に憧れて」という人ばかりで、「なんて薄っぺらい理由でこの世界に入ってしまったんだ……」と、恥ずかしくなりました。

でも、いざオペ室で働いてみると「看護師はお金に困らないから」「手に職だから」という先輩が多くいて、これがリアルだよなと思いましたね。

熟睡を避け床で寝る日々

──お母さんの勧めとはいえ、看護師になるのは大変なことですよね。

大変です。都立の専門学校に3年間通っていたのですが、そのときが一番大変でした。テストや実習などギチギチのスケジュールで、体力的にも精神的にもキツかったです。

3年生の授業は週1日のみで、あとは病院の実習に行っていました。家に帰ると実習記録をつけて予習・復習をしてという毎日でしたが、どんなに夜遅くまで起きていても絶対に遅刻できません。布団で寝ると熟睡してしまうので床で寝る生活を送っていました。看護師1年目もそんな生活でした。

「看護師を辞めて漫画家になります」

インタビューにこたえる人間まおさん

──看護師になり、オペ室や病棟勤務を経験したと聞きました。そこから漫画家に転身しようと思ったきっかけは?

美術系に進んだ友人の仕事を見聞きして「羨ましいな」と思っていたのと、病棟に勤務しているとき絵を描いている患者さんがいて、「私も描きたいな」と思うようになったんです。

そんなことを考えていたら、海外で働く兄から突然電話が来て「60歳まで看護師を続けられるの? 漫画家になりたかったんじゃないの?」みたいな話をされて。普段あまり話をしない兄にそんなことを言われたものだから、心に刺さりました。

少し考えて「60歳まで看護師を続けられないな。漫画家になろう!」と決めて、看護師長に「漫画家になるので辞めます」と伝えました。

師長も同僚も「漫画描いてたの!?」と、突然の退職に驚いていましたね。でもみなさん応援してくださいました。

──退職する前はどのような漫画を描いていたんですか?

描いていないですよ(笑)。仕事が忙しすぎて描く時間を確保できないので、仕事を辞めてから漫画家を目指そうと思ったんです。

──思い切りが良すぎますね……!

後先考えず行動するタイプなので、「なんとかなるっしょ!」のノリです。

まずは看護師寮から家賃2万円のアパートに引っ越して、漫画を描いてはコンテストに応募する生活を送りました。でもぜんぜん結果が出なくて……。

漫画を描きながら単発のアルバイトをしていたものの、貯金が徐々に減っていって、ついに2万円を切ってしまいました。お金がないと明日をどう生きるかで頭がいっぱいになって、漫画どころじゃなくなるんです。なので、クリニックに就職して看護師としてフルタイムで働きながら、夜に漫画を描いていました。そんな生活が6年くらい続きましたね。

──まさに「手に職」ですね。ヤングマガジンで『オペ看』を連載していたのはその時期ですか?

そうです。講談社にDAYS NEOというクリエイターと編集者のマッチングサービスがあり、作品を投稿すると講談社の編集者がコメントをくれたりオファーが届いたりするんです。そこに投稿したところヤングマガジンの編集者さんが「一緒に作品を作りましょう」と声をかけてくださって、毎週20から40ページぐらいネーム(下描き)を描くようになりました。

初めに描いたのは看護師の異世界転生ものだったのですが、「手術室での勤務経験を漫画にしたほうがいい」とアドバイスをいただき、『オペ看』を描きました。その作品が編集会議を通り、ヤングマガジンでの連載が決まったんです。

インタビューにこたえる人間まおさん

週刊連載が始まるとフルタイムでの勤務が難しくなり、クリニックに退職したいと伝えました。でも、パートでもいいから続けてほしいと引き止められ、週2日勤務にしてもらったんです。

週刊誌の連載はうれしかったものの、作品を作り続けることが大変でしたし、何より手術室の現場ではありえない展開を盛り込まなければならないことにストレスを感じ始めました。

それでブログに描きたい作品を投稿して、やりたい放題やったんです。

──ブログに好きなことを投稿したら読者が定着したんですね。ライブドアブログでは月間2,000万PVを超えたとか。これはすごいことですよね。

初めはぜんぜん読まれなかったですよ。一日7PVくらい。そのうちの5PVは自分みたいな(笑)。それでも毎日作品をアップしているうちに読者が増えていきました。

週刊誌での連載、テレビアニメ化。次の夢は?

──尊敬する漫画家はいますか?

さくらももこさんが大好きです。私も『ちびまる子ちゃん』のような、何気ない日常を描いた作品を作り続けたいと思っています。

もちろん『コジコジ』もすごく好きです。子どものころから読んでいますが、大人になってから読むとまた違った視点で見えたり、哲学を感じられたりして楽しみ方が増えるんです。そんな作品を描きたくて『あげおとティム』を作りました。

大きな夢や目標を持たない生き物たちが、社会の波にもまれ、変わりたいと悩んだり、「このままでいっか」と肩の力を抜いたりしながら、自分なりの答えを見つけて生きていく物語

自分の作品をアニメ化する夢はかなったので、次はドラマ化したいと思い、今は脚本を書いています。これが思っていたよりずっと大変で。エッセイ漫画を文字に起こせばいいやと思っていたらまったくの別物、表現方法が違うんです。

絵は一枚で状況を伝えられるじゃないですか。脚本は短い言葉で状況を伝える表現力が必要ですし、セリフのない“間”の表現が難しくて、2本書くのに1ヶ月かかりました。

──元看護師(助産師)の脚本家といえば、ドラマ『silent』の生方美久さんが有名ですよね。

生方さんのインタビューは何度も読みました! 働きながら休日に脚本を書いて、退職してから映画学校に通われていたんですよね。生方さんが受賞したフジテレビヤングシナリオ大賞の作品も読みました。文章がきれいにまとまっていて情景が目に浮かびますし、独特なセリフ回しが心に響きました。

脚本づくりは漫画と違う奥深さがあっておもしろいです。私も人の心を動かす脚本を書いてドラマ化できるよう頑張ります。

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「先生が切断した足を…」元オペ看の漫画家がつづる手術室でのリアルなお仕事

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