社会福祉士とは?
高齢者や障がいを持つ方々が快適な日常生活を送れるようサポートします。名称独占資格であり、社会福祉士を名乗るためには国家試験の合格が必要です。合格率は例年約3割と低く、福祉系の国家試験の中では難関と言われています。
社会福祉士の受験ルートは複数あり、受験要件は最終学歴によって異なります。詳しくは「社会福祉士になるには」をご確認ください。
なお、なるほどジョブメドレーでは、社会福祉士の働き方や待遇などを紹介しています。こちらの記事もあわせてご覧ください。
>社会福祉士の仕事内容、なり方、年収、国家試験の合格率などを調査!
話を伺ったのは社会福祉士の国家試験に合格したWさん

──今はNPO法人で働かれているんですね。
もともとは実家がある神奈川県の老人ホームで働いていたんですが、知り合いから東京のシェアハウスへ誘われて引っ越したんです。
そのシェアハウスに住んでいる人の仕事がNPO法人の訪問介護でした。「一緒にやらないか」と声をかけてもらって、非正規として働き始めました。
働くうちに隣町のNPO法人とも繋がりができて、正社員としてお誘いをいただいたので転職して、今に至ります。
──今のNPO法人ではどんなお仕事をされているんですか?
前のNPO法人と同じで、地域で暮らす障がい者の方の家に伺う、訪問介護の仕事です。身体介護がメインで、対象年齢は19歳~60歳くらいですね。
なのでずっと介護の仕事に携わっています。今の仕事に関しては、映画『こんな夜更けにバナナかよ』の原作である『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』を読んでいただくとイメージしやすいと思います。
社会福祉士を目指したきっかけ ─自身の経験から感じた必要性─

──社会福祉士の資格を取ろうと思ったきっかけは何ですか?
いくつかあるんですけど、一つは自分向けにも外向けにも「何かを勉強したあかし」が欲しかったからです。資格を持っていると一定の信用にも繋がりますしね。
もう一つは自分の経験ですね。私自身も精神障害者保健福祉手帳の3級を取得していますし、周りにも発達障害などで就職が難しかったり、障害者手帳を持っていたり、生活が苦しい20代が多かったんです。生活保護の申請に付き添いで行ったこともありました。
そのときに、日常生活に困っている人へ専門的な援助をおこなう社会福祉士の必要性を感じたんです。
生活保護ではいわゆる「水際作戦」のような申請抑制が問題になっていますが、社会福祉士の資格を持っていると、役所の人も「生活保護に関する知識を持っている人」として対応してくれます。「自分が申請する場合・他人の申請に付き添う場合」どちらでもいろいろ言えるので必要だなと思いました。
──ご自身の経験が影響しているんですね。
ほかにも、自分は労働組合に属しているんですが、そういった社会運動をするうえでも資格は無いよりあったほうがいいかなと思いました。
あとは今後転職する際に応募できる範囲を広げておきたいと思ったのも受験理由の一つです。
──なるほど。社会福祉士は受験ルートがたくさんありますよね。
私は4年制大学を卒業しているので、NPO法人で働きながら専門学校(養成施設)を卒業して受験しました。入学から卒業までは1年半くらいでしたね。
──専門学校は通われたんですか?
通信制の学校を選んだのでレポート提出がメインでしたが、学校の決まりで10回ほどは通わないといけませんでした。あと補習になった場合も通学が必要でしたね。
──通信でも何回かは通学が必要なんですね。
そうなんです。なので家から通いやすい学校を選びました。
社会福祉士の勉強法 ─対策期間はわずか1ヶ月─
──2021年2月の国家試験を受験されたんですよね。どのくらいから勉強を始めましたか?
本格的に勉強を始めたのは2021年の1月からなんです(笑)。
学校でも勉強したんですが、とりあえずレポートを提出するって感じで、あまり国試を意識していませんでした。
それで2020年の10月に国試の願書を出したときに「勉強しなきゃ」と思ったんですが、気づいたら12月になっていて……!
年明けから1ヶ月集中して勉強しました。

──それで合格したのがすごいですね……!
受かったのは自分でもびっくりですよ(笑)。
──どんな勉強方法だったんですか?
過去問がメインです。中央法規出版さんの『社会福祉士国家試験過去問解説集』を買いました。
3年分の過去問・解答・解説と、プラスしてもう2年分の過去問・解答が載っています。

この過去問をかたっぱしからやって、わからないところはメディックメディアさんの『レビューブック』を見て勉強しましたね。
レビューブックは見やすいのと全科目が1冊にまとまっているので選びました。勉強期間が限られていたので「これだけやればOK」という気持ちになれました。
──過去問をメインにした理由はありますか?
過去問をしっかりやれば国試で6割くらい取れるらしくて、合格に向けてのベースになると思ったからです。
過去問は3年分くらいを繰り返しやって、プラスで2年分に目を通すことをおすすめしますね。
──過去問を解いていて飽きてしまうことはありませんでしたか?
飽きたときはパソコンで社会福祉士が書いたブログやWikipediaを見ていました。
──Wikipediaですか!
もともとWikipediaでいろんな情報を見るのが好きなんですよ。
生活保護の制度とか、試験でもよく出る福祉に関する年表も載っているんです。年表・表・グラフなど全体のイメージをつかみたいときによく眺めていましたね。

基本は過去問などの紙ベースですが、気晴らしというか暇つぶしの延長でWikipediaを見ていました。載っている情報が正しいとは限らないですけどね。
──Wikipediaは全体像を掴むのに良いんですね。YouTubeも活用しましたか?
YouTubeも見ました。
社会福祉士の解説動画があるんですが、結構マニアックで高度な内容だったんですよ。
国試に出るのかな? って内容もあったので、たまに見たくらいですね。
──なるほど。基本は紙ベースとのことですが、ノートをまとめることも?
それがノートをまとめるのがすごく苦手なんですよ。
なのでノートは、過去問で間違えたところをササっと書いて覚えるために使った感じです。
──年表問題がよく出ると仰っていましたが、暗記系はどうやって覚えたんですか?
書いて覚えるか、流れで覚えるかですね。
例えば「生活保護」だったら戦後のことだから1945年以降だな、とか。
もともと社会科が得意なので、歴史の流れで大枠をつかんで、細かい部分を書いて覚えていました。
年表以外にも歴史上の人物名に関する問題が多いんですが、カタカナ名の人物がたくさんいて大変でしたね。日本人でも「石井さん」が2人出てきたり……!
──社会福祉士の試験は科目数が18科目群と多いですが、どの分野から勉強しましたか?
とっつきにくい分野は後回しにして、とっつきやすいところから始めました。
得意な歴史に関する問題や事例問題などですね。あとは現在の社会問題に関する分野は、ジェンダーの問題や差別や貧困の問題など、自分の周りはもちろん、自分自身も当事者であり、関係が深いことだったので取り組みやすかったです。
──とっつきにくい分野は何だったんですか?
病院や施設の経営の話だったり、診療報酬の話がめんどくさかったですね。診療報酬は「どこに請求するか」などが単純な暗記でつまらなかったです。
でも社会福祉士の試験は全部の科目で1点は取らなきゃいけなくて*、苦手な科目を捨てることができないんですよね。
とにかくわからないところを重点的に過去問解いて、覚えたい内容を書いてを繰り返して対策しました。
──一日の勉強時間はどのくらいでしたか?
勉強した1ヶ月間は、机に向かっていたのは8時間ほどですが、集中して取り組めたのは正味3~4時間ほどですかね。
でも勉強ばかりではなくアニメを見たりもしていましたよ。
──勉強する場所は決まっていましたか?
基本は家で勉強していましたが、気分を変えたいときは電車に乗っていました。
──電車に?
電車内だと集中できるんですよ! 電車に乗って『レビューブック』や『スピード攻略』というコンパクトな本を読んでいました。往復で1時間の通勤中も勉強していましたよ。

カフェでも勉強してみましたが集中できませんでしたね。
試験当日のこと ─不安と希望が程よい緊張感に─

──試験当日は勉強道具も持っていきましたか?
勉強で使ったテキスト類を持っていきました。
そういえば、試験当日は時計を持っていくのを忘れちゃったんですよ。
──時計が無いと不安になりますね。試験会場にも壁掛け時計がありそうですが……。
私もそう思ってたんです。でも会場が東京ビックサイトで。
自分の席から壁まですごく距離があったので時計があったのかもわからなかったですし、あっても見えない距離でしたね。
ただ終了の10分前に試験官がアナウンスをしてくれたので、それを目安に解けました。
──良かったです。試験当日はやはり緊張しましたか?
緊張しましたが、勉強期間が短かったこともあって「落ちるだろうな」と思っていたんですよね。ただ「万が一受かるかも」とも思いましたし「過去問やったし頑張ろう!」とも思えました。
結果的に程よい緊張感になっていたと思います。
受験を振り返って ─合格で得た自信が今後の目標へ─

──短期集中の国試対策のなかで「よくできた」と思うポイントは?
勉強したこと自体、ですね。
学生時代は本当に勉強してこなかったので。試験前も前日にやるか当日にやるか、勉強しないで臨むこともあったくらいです。
──1ヶ月の勉強で合格できたポイントは何でしょう。
もともと社会と国語が得意で、素養があったのが良かったかなと思います。
あとは過去問をしっかりやったのが大きかったですね。過去問で出たようなワードが本番の試験でも出てくるので。
──なるほど。反対に「もっとこうしたかった」と思うところはありますか?
もっと早めに勉強に着手できればよかったな~と思います。3ヶ月前くらいからやれたらベストですね。
YouTubeやTwitterなんかでは、最低でも半年前から勉強したほうがいいとも言われています。
──社会福祉士に合格して、周りから反応はありましたか?
TwitterやFacebookに合格したことを書いたら結構反響がありましたね!
国試を受ける前にSNS上で「社会福祉士を受験します」と宣言していたんです。それが自分にとって良い追い込みにもなったかなと思いますね。受験宣言をするのはおすすめです。
──今後の目標はありますか?
精神保健福祉士は絶対に取得したいですね。社会福祉士と共通の科目が免除になるので有利ですし。来年くらいに専門学校に行きたいなと思っています。
介護福祉士も取得して「3福祉士」を揃えたいですね。
長期的な目標としては、今回の社会福祉士合格で自信がついたのでもう1回大学や大学院に行って勉強したいです。福祉の東大と呼ばれる「日本社会事業大学」の大学院に40歳くらいまでに行けたらいいなと考えています。
──資格を取得したことでさまざまな目標ができたんですね。最後に、これから社会福祉士を受験する人へのアドバイスをお願いします。
勉強は過去問をメインに、本格的に勉強を始めるのは遅くても試験の3ヶ月前からをおすすめします。
あと、模試は受けたほうがいいですね。私が勉強していた時期はコロナの影響で模試が中止だったり郵送だったりして、結局受けなかったんですが……。今の自分の状態を知るためにも受けたほうがいいです。
年表に関する問題が多いので、空いた時間に年表を眺めるといいですよ!