
介護職は未経験でもできる仕事?
高齢化が進む日本では介護職員が不足しており、将来的には人材不足がますます深刻になる予測が立てられています。そのような背景において、介護職員の求人情報を見てみると「未経験可」などの文言を見かけることもよくあります。
そのような情報に接すると、「介護職は誰にでもできる」「人手不足だからいつでもチャレンジできそう」と考えてしまいがちです。しかし、介護職の仕事は決して簡単なものではありません。
いざ介護の現場で働いてみると、利用者1人ひとりの要望に耳を傾け、快適なサービスを提供しなくてはならない難しさに直面することでしょう。
仕事のスキルとしては、専門的な技術・知識や家事援助サービスなどの実践力が必要とされます。そのうえで、利用者の暮らしの質を高め、自立に向けたサポートをすることが求められます。
未経験からの介護職で取りやすい資格は?
介護職に就いている人が取得している資格としては国家資格である「介護福祉士」以外に以下のようなものがあります。これらの資格は介護の基本を学べるため、未経験者にとって役立つ資格だといえるでしょう。
1. 介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)
介護職員初任者研修は、介護の仕事の第一歩となる研修です。介護現場で働きながら取得する人や自治体の就職支援制度を利用して事前に取得する人もいます。
2. 介護職員実務者研修
介護職員初任者研修の上位にあたる研修です。修了すると「サービス提供責任者」として仕事をすることができるほか、定められた研修を受けて、たんの吸引や経管栄養といった医療ケアを実施することができます。
介護職員初任者研修や介護職員実務者研修を修了していれば、介護現場でスキルを生かしながら働くことが可能です。しかし、給与面を見ると介護福祉士と介護職員初任者研修修了者では、一般的に毎月の収入に約3万円の差がつくといわれます。
介護職で唯一の国家資格 介護福祉士になるには?
介護福祉士は、昭和62年に定められた国家資格です。介護福祉士を設けた目的の1つには、介護サービスの質の向上がありました。
介護福祉士になるにはいくつかのルートがあります。代表的なものは、福祉系の大学や短大、専門学校や福祉系高校などの専門の養成機関を修了することです。しかし、まったくの未経験から始める人でも介護現場で実務3年以上の経験を積み、実務者研修を受けることで受験資格を得ることができます
介護福祉士の国家試験は、厚生労働大臣の指定を受けた「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」が実施しています。受験資格の詳細が 公式ホームページに掲載されているので、そちらも合わせてご確認ください。
介護福祉士の試験は年に1回実施されます。申し込み期間は例年8月初旬〜9月初旬、筆記試験は1月に行われ、筆記試験に合格した人は3月の実技試験に進むことができます。
また、2018年までの過去5年の平均合格率は約65%となっています。試験は全国の34箇所で実施されますが、試験日が大学受験シーズンと重なるため、宿泊が必要な人は前もって予約をしておきましょう。
介護福祉士のキャリアパス
介護福祉士は介護職の中で唯一の国家資格であり、一定の介護の知識や技術を証明する資格です。そのため、最終目標を介護福祉士とする人もいるかもしれませんが、さらなるキャリアアップにつなげることもできます。
1. 認定介護福祉士の資格を取る
認定介護福祉士は、民間資格ですが介護福祉士の上位資格にあたります。介護福祉士の資質を高め、社会からの要請に応えるために、一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構が2015年より認定を開始しました。2017年11月の時点では、全国でも28名とまだ始まったばかり。今後、介護福祉士のさらなるキャリアアップにつながる資格として取得者の増加が見込まれます。
2. ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格を取る
ケアマネジャーは通称「ケアマネ」と呼ばれ、利用者や利用者のご家族の希望を聞き取り、医師や看護師、療法士、介護士などの情報をまとめながら、その方にピッタリのケアプランを作成していきます。
ケアマネジャーの資格を取得するためには、いくつかのルートがあります。介護福祉士の資格を取得していれば、取得年度を含めて前後に5年以上の実務経験があれば受験が可能です。介護福祉士の資格がない場合には、10年の実務経験が必要になります。
3. 介護職員初任者研修や介護職員実務者研修などの講師
介護福祉士の資格取得後に必要な実務経験を積んだあとは、研修の講師として活躍することもできます。非常勤での募集が多くはなりますが、ライフスタイルにあわせた働き方ができるのではないでしょうか。
介護市場は人材不足?地域差も顕著に
介護職員は常に人手不足が取り沙汰されており、求職者にとっては売り手市場となっています。また、介護の資格を保有していても、現在は介護職に就いていない潜在介護福祉士が多いことも人手不足の要因となっています。
平成29年6月に厚生労働省が発表した資料によると、過去15年間において介護職員の数は約3.3倍に増加しているものの、介護職の有効求人倍率は他の産業に比べるといまだに高い傾向にあります。
この調査結果をもとにして、潜在的な介護人材の呼び起こしや、若い年代の人に介護の仕事に興味を持ってもらうなど、介護人材確保に向けた取り組みが行われようとしています。
介護福祉士の資格保有者は実は少ない?
平成20年の調査では、介護職員のうち介護福祉士の割合は全体の約3割にすぎないという結果がでています。また、ホームヘルパー2級資格の保持者に「介護福祉士資格の意思」を調査したところ、「資格取得をする予定はない」と答えた人が半数を超えたという結果もあります。
介護職員は利用者の身の回りの世話をすることだけが仕事ではありません。できるだけ多くの情報を集めて分析をし、個々の利用者にとって最適な介護の目標や計画を立てることが大切です。
また、新たに多くの人が介護の仕事に携わるなかで、指導的な立場の人間も必要となります。さまざまな介護サービスの形態が広がっていく介護業界において、こうした人材の課題がますます重要になることでしょう。
介護福祉士を目指すメリットは?
介護職の人材不足の要因には、離職率の高さも挙げられています。いくら介護の仕事に興味があっても、給与条件や仕事の環境などが合わずに辞めてしまうことがあるためです。
せっかく介護の仕事をするのであれば、誰しもが「環境の良い職場で働きたい」と思うものです。働きやすい職場を選びやすくするためにも、自身のスキルを証明することになる介護福祉士の資格を目指して損はありません。
高い目標をクリアし、可能性を広げてくれる介護福祉士という資格。資格取得という目標を視野に入れることで、日々の仕事も輝きが増してくるかもしれませんよ。