看護師とは
療養上の世話や診療の補助を通して、患者さんの生命と生活を支える仕事です。看護師になるには国家試験に合格し、免許を取得する必要があります。詳しくは「看護師になるには?」をご確認ください。
なお、なるほどジョブドレーでは、看護師の働き方や待遇などを紹介しています。こちらの記事もあわせてご覧ください。
>看護師の仕事とは? なり方や給料、勤務先について解説!
話を伺ったのは新人看護師として働くKさん

──看護師を目指そうと思ったきっかけは何だったんですか?

最初は人と関わる仕事、人の役に立つ仕事っていいなって思ってたんですよ。
でもどんな仕事でも、絶対誰かのためになるなって気付いて。それなら「より人のためになれる看護師になろう」って思いました。
あと、小学生の頃から「保健係」とか「保健委員」になることが多くて、保健室の先生と接する機会が多かったんです。
それで養護教諭もいいなって思ってたので、先に看護師資格を取得して、臨床経験を積んでから養護教諭になりたいな、と考えてました。
──それで現在は総合病院の整形外科で働かれているんですね。
はい。2021年の4月から今の病院で働いています。
野球が好きなので、病院ではスポーツ整形をやりたかったんです。
今の病院はスポーツに特化した整形外科があるので選びました。配属も希望通りの整形外科になって、スポーツ関係の患者さんと関わっています。
──なるほど。国試の前には実習もあったかと思いますが、新型コロナウイルスの影響はありましたか?
コロナの影響で実習をやってない学校が多かったんですけど、私の学校は病院に付属していたこともあって、5月~11月までフルで実習がありました。
でも領域別実習*が、緊急事態宣言が終わった直後(GW明け)からのスタートだったんです。
母性看護学の実習なんかは、緊急事態宣言が明けたとは言え、立ち会い分娩ができない時期もあって。なので実習に行けた人と行けなかった人がいましたね。
国試対策のカギは「解剖」にあった! ─プロセスを重視した勉強方法─

──本格的に国試の勉強を始めたのはいつ頃ですか?
実習が終わった11月末頃から始めました。

実習期間は、国試の勉強というよりは「実習を乗り越えるための勉強」「受け持った患者さんのための勉強」がメインになってたので……!
──実習だけで大変ですもんね。
でも私の学校では、国家試験対策の外部授業のようなものがあったんです。
外部授業と言っても、1年生のときからお世話になっている外部講師の先生がやってくださる授業です。それを同級生と一緒に実習の合間で受けたり、土日で受けたりしてました。
──外部授業はどんな内容だったんですか?
先生が作ったプリントを解いて、隣の人と答えを確認し合うことで、コミュニケーション能力を養うと同時に、国試対策をするような形式です。
国家試験の対策ではあるんですけど、国試でも臨床でも活かせる内容を網羅できるような授業でしたよ。
──国試対策をしながら現場でも活かせる内容を学べるのはいいですね。
外部の先生が救急外来で働いていた看護師さんだったので、例えば「こういう急変のときにどういう薬剤を使うのか」「緊急性が高いときにすぐに判断できるようになるには」といったことも教えてくださいました。
あとは、心電図が難しくて苦手な看護学生の方が多いと思うんですけど、授業では詳しくやってくれたので理解しやすかったですね。
──心電図の授業はどういった部分がわかりやすかったんですか?
「心電図の波形がそれぞれ何を表しているものなのか」の説明を受けたあとに、正常心電図と不整脈について教えてもらったので、どこに異常があるのかを考えやすかったです。

心電図の異常に関連する疾患・治療なども解説してもらったので、国試対策のときも心電図の問題は解きやすかったですね。
──なるほど。学校でも国家試験対策の授業はやりますよね?
学校での国試対策の授業は、グループワークがメインでした。第100回からの過去問を解いて、3~4人くらいのグループで解説し合うみたいな。
でも3年生の最初の頃は、ケーススタディと呼ばれる看護研究の授業が始まって、その授業が多かったですね。
──看護研究の授業というのは……?
「文献の読み方」とか「この文献からどういう研究がおこなわれているか」「自分たちがその研究内容をどう看護に活かせるのか」っていうのを最初に習うんです。
そのあとは、実習で自分が受け持った患者さんを基に実際に看護研究をして、秋頃に発表するという内容です。
──秋頃に発表ということは、実習の時期と被ってますね!
実習と看護研究の両立は大変でしたよ……!
研究自体がみんな初めてだし、いざ自分たちがやるとなると文献を探すところから始まるので、周りでも大変に感じている人が多かったと思います。
でも学校の先生が親身で、実習の合間に何度も看護研究をチェックしてもらいました。
──実習と看護研究の両立を乗り越えての国試だったんですね。話を戻しまして、Kさんの国試対策は具体的にどんな勉強方法だったんですか?
問題集はQB(クエスチョン・バンク)が有名ですが、私が使っていたのはクマと呼ばれるクマの絵が表紙の問題集でした。著者がさっき言った外部講師の先生なんです。

──QBとクマの違いってあるんでしょうか?
QBは過去問なんですけど、クマは過去問と予想で作られた問題があって、その隣に解説があるんです。なので、解いて解説と照らし合わせて勉強できる形式です。

学校の先生に「クマは夏休みまでに1周しろ」と言われてたんですが、私は全然終わらなくて(笑)。結局本番までに1周できなかったです。
──ということはクマ以外の物でも勉強を? 看護学生と言えば『レビューブック』という参考書も有名ですよね。
レビューブックも使って勉強しました。わからない部分や覚えたい部分をこんな感じで書き込んだり。


あとは先生が出した問題形式のプリントと学校のテキストを使って、解剖をこまかくやってましたね。わからない部分があったら、テキストに戻って紐解いていくというか。
プリントを解いてみて、答えがわからなかったらテキストで復習して、また演習してを繰り返しました。

──「解剖」をこまかく、ですか。
解剖(解剖生理学)は基礎的な分野なので、私自身や周りの友達は「解剖がわかってないと、その先に進めない」という認識が根本的にあったんです。
──基礎ができてないと応用ができないですもんね。
そうですね。例えば基礎である解剖が理解できていないと、その先の病態を理解できないんです。点と点がつながらない状態になっちゃうんですよ。
国試対策の問題でわからないことがあったとき、結局振り返るのは基礎の解剖なんです。
なので解剖を中心に勉強して、「ここの構造でこういったことが起きているから、結果的にこうなる」という「答えにたどり着くまでのプロセス」を理解する作業を繰り返してました。
──なるほど。解剖が肝なんですね。勉強した内容はノートにまとめたりも?
はい。青ペンが暗記できると聞いて、答えを書くときに使いました。
大事な部分は黄色と赤を使ってまとめてましたね。


──今は国試対策に使えるアプリなんかもたくさんありますよね。
私もアプリを使いましたよ。「看護roo!」のアプリで毎朝出題される一問一答の問題を解いたり、アプリ上の模試をやったり。
あと、アプリではないですが『プチナース』の問題集も買って解きました。
──プチナースって月刊の看護学習誌ですよね。プチナースを選んだポイントってあるんですか?
先輩からの口コミで「プチナースの問題集は本番の試験に似ているらしい」と聞いてたので。周りでも買って解いてる子が多かったですね。
過去問を10年分くらいやるとわかるんですが、出題傾向が年々変わってるんです。最近の国試は「5肢択一」など、選択肢が5個のものが多くて。クマを書いた先生が5肢の問題集も作っていたので、解いて対策してました。

──10年前と今とでは出題傾向が違うんですね。
昔の過去問では数値が細かく出てないんですけど、今は血液検査データとかがすごい細かく出てたり。
あとは文章の読解能力を高めるために、わざと文章を長くして必要な情報がどこなのかを収集させるようになってたり、ですね。
「実際に看護師になったときに、ちゃんと情報収集をできるように」って狙いもあると思います。こういった長文の練習問題も学校でやりましたね。
──本番の出題スタイルに合わせた対策をしていたんですね。国試は出題科目が多いですが、Kさんは何から手をつけましたか?
一番最初に着手したのは血液の勉強です。
でもそのときはまだ、自分の勉強方法が掴めてなくて。さっき言った「解剖に戻る」ができてなかったんです。
たまたま腎臓の解剖を復習したときに、「わからないときは解剖に戻ったほうがプロセスを理解できる」って気付いて、そこからは腎臓の解剖を勉強して、臓器ごとに対策していきました。

例えば腎臓の次は、腎臓と関係性が深い心臓、みたいな感じで。腎臓を起点に派生させていきました。

あとは自分が実習で受け持ってた患者さんの領域を勉強したり。逆に「あんまり関わったことない患者さんってどんな人だろう?」って考えて「呼吸器やってないな」とか、自分で理解してなさそうだなって思う分野の解剖に戻って勉強したりしてました。
──ご自身の気付きや経験をもとに、勉強範囲を広げていったんですね。
はい。本番に近い時期には、暗記ものをやってました。
国試には毎年「今の出生率は」「この病気の人は今何万人いるか」など統計の暗記問題が出てくるので。

──ちなみに、勉強する場所は決まってたんですか?
最初は家が多かったですね。でも途中から、地元のファーストフード店でも勉強するようになりました。違う看護学校に通っていた地元の友達と一緒に。
──コロナの影響で、お店の利用時間が制限されたりしませんでしたか?
制限はありませんでした。もちろん感染予防に配慮しながら利用していましたよ。
手洗い、うがい、アルコールの持ち歩き、不織布マスクの着用、手洗いやアルコール消毒をしていない場合は粘膜を擦らないなど、当たり前のことですが徹底してました。
──ファーストフード店での勉強は学校での勉強と違う内容だったんですか?
学校での国家試験対策はグループワークがメインだったので、個人でやれる勉強をファーストフード店でやってましたね。友達が一緒だったから頑張れたかなと思います。
──周りの目があると頑張れたりしますもんね。
やっぱり友達が勉強している姿を見ると自分も刺激されますしね。
なので学校での「自由登校期間」も、学校に行くことが多かったです。自由登校期間は学校で勉強するか、家で勉強するかを自由に選べたんですよ。
学校が遠かったので家でいいかなとも思ったんですけど、家だと誘惑が多いので。「とにかく学校に行って机に向かう!」ってしてました(笑)。
──場所を変えることや、周りの目がある環境に行くことで勉強のスイッチを入れていたんですね。集中力が切れちゃったときはどうしてましたか?

切れたら切れたでしょうがないので、一回集中をオフにして、またスイッチを入れる、を繰り返すようにしてました。
学校とファーストフード店での勉強をあわせると、1日10時間くらい勉強してたと思いますが、そのうち半分くらいは集中してたかな。
ファーストフード店では、私と友達でそれぞれ別の勉強をして、わからないときにお互いに質問し合ってました。友達と2人で話しているときは一旦集中が切れてるんですけど、そのあとまたそれぞれの作業に戻るから集中するって感じです。
──オンとオフの切り替えをこまめにしてたんですね。
とくに12月頃は「やっと実習が終わったのに、国試が迫ってくる……」って感じがあって。でも国試がゴールってわけじゃないから、見えないゴールと戦う感じから不安になって、集中できなくなるんですよね。
学校の友達とも、「なんでこんなに勉強してるんだろうって気持ちになっちゃうから、嫌なときはやめて、やるときにやったほうが良い」って話してて。だからできるときにすごく集中するようにしてました。
──なるほど。勉強の合間に息抜きでやっていたことはありますか?
そうですね~。本当は好きな野球を見たかったんですけど、コロナの影響であまり試合をやってなくて。たまに野球関連の情報を仕入れていました。
今思うと、実習中とか国試対策の時期は大変ではあったんですが、割とストレスなく過ごせてたと思います。
一緒に勉強を頑張っている友達と話すことで、ストレス発散できてました。
でも一番ストレス解消になったのは、休日に学校の友達とごはんを食べに行って、勉強のことを考えないでいられる時間だったかなと思います。
試験前夜~当日を振り返って ─勉強した証が安心材料に─
──試験前日はどのように過ごしていましたか?
私は学校の友達と会場の近くに前泊したんですけど、試験前夜はクマに付属している小さいドリルをみんなでやりました。ドリルは最終の暗記チェックブックみたいな物です。

このドリルの内容は本番の試験でも結構出たので、直前の対策におすすめです。
──試験前夜は最終チェックをしていたんですね。試験当日、必須な物以外に持って行った物はありますか?
勉強したノートと、レビューブック、お守り、クマを持って行きました。



試験当日に知識を詰め込んでも意味がないとわかっていたので、学校の友達と「当日は自分が安心して試験を受けられるような、安心材料となるものを持って行こう」って話してたんです。
学校の先生たちからも「プレッシャーがあると不安に陥りやすいから、当日は受かるって気持ちを持って安心して受けられるようにしな」って言われてましたね。
なので勉強した証になるようなものを持っていきました。
──心が安定していないと本領を発揮しにくいですもんね。
あとはお菓子など気分転換になる物と、寒い時期なのであったまるものを持って行きました。足に貼るカイロとか。
でもカイロは、眠くなりやすい昼食後の時間は取りました。防寒関係は調節できる物を持って行くといいですね。
受験を振り返って ─本番に活きた「プロセスをたどる」考え方─
──受験を振り返って、ご自身で「よくできたな」と思うポイントはどこですか?
時間がないなかでも、丁寧に細かく勉強していったことです。
今年の国試で「スティーブンス・ジョンソン症候群」の問題が出たんです。細かい部分なんですが、ファーストフード店で勉強しているときにその問題を解いてて、本番でも解けたんですね。
細かくやっていたところが国試本番で活きたので、雑に覚えず丁寧に覚えたほうがいいと思いました。
雑に覚えてわからない言葉をわからないままにしちゃうと、いざ選択肢に出てきたときに困っちゃうんですよ。
例えば友達と一緒に「ブラジキニン*」について細かく勉強してたんですが、本番の選択肢にも出てきて。ちゃんと理解していたので「あ、これは違うじゃん」って選択肢から消せたんです。

──丁寧に覚えていたのが本番に活きたんですね。
あと、解剖メインの勉強で実践していた「わからないときにプロセスをたどること」も本番で活きました。
問題をぱっと見て「わからない!」って思ったときでも、解くのを諦めるんじゃなくて、解剖の勉強みたいにプロセスをたどっていくことで解けたんです。
「そもそもこれが起きる原因って何だっけ」「これが起きたからここに影響が出たのか」「あ、じゃあ答えこれじゃん!」って冷静に答えを導けました。
勉強の仕方と、当日の国試の解き方が似てると感じましたね。
──対策を通して身についた考え方が、本番にも役立ったと。反対に「もっとこうすればよかった」と思う部分はありますか?
やっぱり早めにコツコツ勉強できたら良かったかな~とは思います。言うのは簡単ですけどね(笑)。
でも私は性格上、コツコツやるのが苦手だと思うんですよ。だから今の「できるときに集中してやる方法」で良かったのかな~って思ったりもします。
──勉強スタイルにも相性がありますもんね。
どの勉強でもそうだと思うんですけど、自分のやり方を見つけちゃうのが一番だと思います。
資格取得で広がる選択肢 ─看護は答えがないからこそ、突き詰めていくのが面白い─
──これから看護師国家試験を控えている人たちに、Kさんからのアドバイスはありますか?
自分のためになるので、もちろん勉強したほうがいいんですが、ストレスなく過ごせるようにして欲しいです。
実習も勉強も楽しくできるのが一番いいですよね。
たまたま自分の環境が良かったのかもしれないですが、実習のときも理不尽な人があまりいなくて「看護師っていいな」ってちゃんと思える環境でした。もちろん実習自体は大変なんですけどね。
環境次第では看護学生のうちから「看護師になるの嫌だな」って考えちゃう人もいると思いますが、「看護師っていいな」って思える環境に出会えたら変わるのかなって。
受験を控えている看護学生さんには「看護って楽しいし、看護師ってすごいんだよ!」ってことを伝えたいです。
──実習の環境もすごく大事なんですね。
実習は自分のためでもあるんですけど、「一番は患者さんのため」。そういう根本がありながら、「患者さんがこうなるのが嬉しい・楽しい」と思えたらいいなって。
看護って医療の知識ももちろん大事なんですけど、患者さんのニーズを満たすことも大事で。私は学校生活や実習を通して、看護は答えがないからこそ、突き詰めていくのが面白いって思えました。その面白さがわかれば、看護や実習が楽しくなるんじゃないかなって思います!
──Kさんご自身の今後の目標を教えてください。

それが悩んでるんですよ。最初にお話したように「養護教諭」が気になっていて。
でも、今の病院ではスポーツ整形に携わっているので、運動器看護学会の認定看護師を取ろうかなとも思っています。
あとは学生時代に学校の先生方に本当にお世話になったので、看護学校の先生もいいなって。
今は看護学校の先生になりたい気持ちが強いですね。
──資格を取得して目標の幅が広がったんですね。国試対策のお話では、Kさんとお友達の支え合いが印象的でした。
学校の友達、地元の友達は本当に支えになってくれました。
あと、少し恥ずかしいですがやっぱり好きな人がいると元気とか頑張る源になりますね。
──詳しく伺ってもいいですか?
国試の期間中にほとんど毎日利用していたこともあって、ファーストフード店でアルバイトをしている大学生の男の子たちと少しお話しするようになったんですね。
勉強中に話しかけてくれる人もいたんですけど、唯一勉強中に話しかけたりせずに、清掃のときだけ気を遣ってくれる男の子がいて。「距離感が良くて優しい、気を遣える子だなあ」って思ったんです。
その子は私が不安定な時期に支えになってくれたり、ちょっとした言葉かけをしてくれたり、すごく励みになりました。
好きな人だからこそかもしれませんが「自分も相手にお返ししたい!」という気持ちになれるし、「相手も頑張ってるから頑張らなきゃ」という気持ちが勉強に繋がりました。
──「この人のために頑張ろう」という気持ちも原動力になっていたんですね! ありがとうございました!