目次
1.薬機法とは?
薬機法は医薬品などの製造・販売に関するルールを定めた法律です。正式には「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、医薬品などの安全性や品質を確保することで、国民の健康や命を守ることを目的としています。
規制の対象には、医薬品だけでなく、医療機器や化粧品、医薬部外品、再生医療等製品も含まれます。医療技術の進歩や社会環境の変化に合わせて改正されています。なお、かつて法律名は「薬事法」でしたが、2014年の改正で現在の名称に変更されました。
2.改正のポイント
2025年5月14日、改正薬機法が参議院本会議で可決・成立しました。今回の改正は市販薬の販売方法や若者への販売制限など、さまざまなテーマが含まれ薬剤師や登録販売者の働き方に影響する内容もあります。改正の主なポイントについて解説します。
コンビニなどで市販薬を販売可能に
薬剤師や登録販売者がいないコンビニなどの店舗でも、一定の条件を満たせば、市販薬を販売できるようになります。現在でも市販薬を販売しているコンビニはありますが、有資格者がその店舗にいることを条件としています。
改正後の具体的な方法としては、オンラインでの情報提供などをとおして購入可能にする仕組みを想定しています。薬局の薬剤師などが、ICTを活用し販売店舗の市販薬を遠隔で管理し購入者へ受け渡します。なお当面は、有資格者が所属する店舗と販売店舗は同一都道府県内にあることが条件です。
調剤業務の一部を外部委託可能に
調剤業務の一部を、都道府県内にある別の薬局に外部委託できるようになります。対象となる業務は医薬品のピッキング・包装、事務作業です。ただし、人手不足の解消や、薬剤師に専門性の高い業務に集中してもらうことを目的としているため、患者対応や服薬指導は委託対象になりません。
20歳未満への販売に制限
若者によるオーバードーズ(過剰服薬や過剰摂取)の問題を受け、医薬品の販売に新たな制限が設けられます。せき止めや風邪薬など「乱用等のおそれのある医薬品」の20歳未満への販売は、原則的に複数・大容量の販売が禁止されます。また、販売時は購入者の状況確認・情報提供を義務とします。
要指導医薬品でオンライン服薬指導が可能に
OTC医薬品などの「要指導医薬品」のオンラインでの服薬指導・販売が解禁されます。ただし、すべての要指導医薬品で可能になるわけではなく、一部は対象外とされ、対面での販売を継続します。
特定医薬品供給体制管理責任者の設置
医薬品の安定供給の強化を目的として、製薬会社に「特定医薬品供給体制管理責任者」の設置を義務付けます。近年、ジェネリック医薬品などの供給不足が課題となっており、製薬会社に需給状況のモニタリングなど供給体制の管理強化、供給不足時の対策策定などを求めます。
創薬スタートアップを支援
国費や寄付から成る「革新的医薬品等実用化支援基金」を設置し、創薬力強化や創薬スタートアップ(新興企業)支援を進めます。今回の薬機法改正には、このような関連する領域の法改正も盛り込まれました。
背景には日本の創薬環境の課題があります。近年、海外で承認済みの医薬品について、日本での承認時期が遅れる「ドラッグ・ラグ」や、一部の領域の医薬品が日本での開発が実施されなくなってしまう「ドラッグ・ロス」などの課題が指摘されています。改正によって、これらの課題の解消を目指し、創薬力を高める方針です。
3.薬剤師・登録販売者と販売店舗の連携が重要に
今回成立した改正薬機法により、約2年後に薬剤師や登録販売者が常駐していないコンビニなどの店舗でも、市販薬を販売できるようになります。オンラインで服薬指導をするなどの対応が必要になり、遠隔の有資格者と店舗の従業員の連携が重要になっていくでしょう。