目次
- 1. 登録販売者とは?
- 一般用医薬品の販売を担う専門資格
- 登録販売者と薬剤師の違い
- 2. 登録販売者になるには?
- 登録販売者試験に合格し、販売従事登録をおこなう必要がある
- 登録販売者試験の概要
- 登録販売者試験の合格率の推移(全国平均)
- 登録販売者試験の合格率ランキング(都道府県別、2023年度)
- 3. 登録販売者の仕事内容
- 一般用医薬品の販売・情報提供
- 店舗の運営
- 4. 登録販売者の勤務先
- ドラッグストア
- スーパー・ホームセンター・家電量販店・コンビニ等
- 調剤薬局
- 5. 登録販売者の働き方
- 登録販売者の一日
- 登録販売者の休日
- 6. 登録販売者の給料
- 【全国平均】登録販売者の時給・月給・年収の相場
- 7. 登録販売者の将来性
1. 登録販売者とは?
一般用医薬品の販売を担う専門資格
登録販売者とは、2009年の改正薬事法(現在の医薬品医療機器等法。以下、薬機法)の施行により誕生した一般用医薬品(市販薬)の販売に必要な専門資格です。
登録販売者は一般用医薬品のうち第2類医薬品と第3類医薬品を販売することができます。一般用医薬品の中でとくにリスクの高い第1類医薬品については薬剤師にしか販売が認められていませんが、該当する品目は全体の1%程度に留まります。つまり、登録販売者は流通している市販薬のうち、かなり多くの品目を取り扱うことができます。
また、この法改正によって薬剤師のいない店舗でも登録販売者がいれば医薬品を販売できるようになったことから、スーパーやホームセンター、家電量販店などの小売店が新たに医薬品店舗販売業の免許を取得し、医薬品の取り扱うことが増えました。
薬剤師が慢性的に不足していることからも登録販売者に対する需要は多く、制度開始から2022年3月末までに延べ35万人以上の方が登録販売者試験に合格しています(参考:厚生労働省)。
登録販売者と薬剤師の違い
薬剤師が薬の調剤から販売まで幅広く携わる医薬品の専門家なのに対して、登録販売者はあくまで医薬品の“販売”に関する専門資格です。
そのため、資格取得の要件や販売できる医薬品が異なります。
薬剤師になるには薬学部の6年制課程を卒業する必要がありますが、登録販売者になるのに学歴(専門教育を受けた経験)は問われません。
薬剤師がすべての一般用医薬品を販売できるのに対し、登録販売者が販売できるのは一般用医薬品のうち第2類医薬品と第3類医薬品に限られます。
薬剤師について詳しくはこちらの記事でも解説しています。
2. 登録販売者になるには?
登録販売者試験に合格し、販売従事登録をおこなう必要がある
登録販売者として働くには、登録販売者試験に合格し、販売従事登録を受ける必要があります。
登録販売者の販売従事登録について
- 勤務する店舗がある都道府県で登録申請する
- 試験を受けた都道府県以外でも、登録申請することができる
- 複数の都道府県で登録することはできない
- 登録を受けた都道府県以外でも、登録販売者として働くことができる
登録販売者試験を受験するのに学歴(専門教育)や職歴(実務経験)は問われませんが、試験に合格し販売従事登録後すぐに単独で売り場に立つことはできません。
最初は研修中の登録販売者として、必ずほかの登録販売者や薬剤師の管理・指導を受けながら働きます。その間は一人でシフトに入ることができず、名札にも「研修中」と明示しなくてはなりません。
一定期間店舗で医薬品販売の経験を積むことで、初めて正規の登録販売者として独り立ちすることができます。この正規の登録販売者を法的には「店舗管理者の要件を満たす登録販売者」と呼び、各店舗に配置が義務付けられている店舗管理者になることができます。
登録販売者の店舗管理者要件について
次のいずれかに該当すること
- 過去5年間のうち、医薬品の販売スタッフとしての従事期間が通算2年以上ある
- 過去5年間のうち、医薬品の販売スタッフとしての従事期間が通算1年以上あり、所定の研修を修了している
- 医薬品の販売スタッフとしての従事期間が通算1年以上あり、過去に店舗管理者または区域管理者の経験がある
また、登録販売者は毎年外部研修を受け、研鑽を積むことが求められています。
登録販売者の外部研修について
- 事業者は、毎年12時間以上の外部研修を受講させる
- 研修機関は、研修修了後に修了証等を交付する
- 研修機関は、次をカリキュラムに含める
1. 医薬品に共通する特性と基本的な知識
2. 人体の働きと医薬品
3. 主な一般用医薬品とその作用
4. 薬事に関する法規と制度
5. 一般用医薬品の適正使用と安全対策
6. リスク区分等の変更があった医薬品
7. その他登録販売者として求められる理念、倫理、関連法規等
登録販売者試験の概要
都道府県によって異なりますが、登録販売者試験は年に一回、8月下旬から12月上旬にかけて実施されています。
登録販売者試験は次の5つの分野から合計120問出題されます。
- 医薬品に共通する特性と基本的な知識(20問)
- 人体の働きと医薬品(20問)
- 主な医薬品とその作用(40問)
- 薬事関連法規・制度(20問)
- 医薬品の適正使用・安全対策(20問)
登録販売者試験の合格基準は次の2つです(両方を満たす必要があります)。
- 全体の正答率が70%以上
- 各分野の正答率が35%以上、または、40%以上(都道府県によって異なる)
そのほか、登録販売者試験に関する最新情報は各都道府県の公式ページからご確認ください。
登録販売者試験の合格率の推移(全国平均)
過去5年間、登録販売者試験の合格率(全国平均)は40%台で推移しています。
登録販売者試験の合格率ランキング(都道府県別、2023年度)
2023年に実施された登録販売者試験の都道府県別の合格率は次のようになりました。
順位 | 都道府県 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
1位 | 群馬県 | 1,578人 | 871人 | 55.2% |
2位 | 大分県 | 661人 | 363人 | 54.9% |
3位 | 奈良県 | 1,645人 | 891人 | 54.2% |
4位 | 茨城県 | 1,555人 | 835人 | 53.7% |
5位 | 福岡県 | 2,719人 | 1,451人 | 53.4% |
6位 | 静岡県 | 1,748人 | 922人 | 52.7% |
7位 | 北海道 | 1,595人 | 817人 | 51.2% |
8位 | 新潟県 | 789人 | 401人 | 50.8% |
9位 | 長野県 | 781人 | 396人 | 50.7% |
10位 | 熊本県 | 652人 | 318人 | 48.8% |
11位 | 栃木県 | 1,008人 | 484人 | 48.0% |
12位 | 神奈川県 | 2,881人 | 1,369人 | 47.5% |
12位 | 愛知県 | 2,852人 | 1,355人 | 47.5% |
14位 | 長崎県 | 436人 | 205人 | 47.0% |
15位 | 宮崎県 | 385人 | 177人 | 46.0% |
16位 | 佐賀県 | 725人 | 333人 | 45.9% |
17位 | 埼玉県 | 2,258人 | 1,024人 | 45.3% |
18位 | 岐阜県 | 864人 | 390人 | 45.1% |
18位 | 鹿児島県 | 696人 | 314人 | 45.1% |
20位 | 山梨県 | 327人 | 147人 | 45.0% |
21位 | 宮城県 | 1,030人 | 460人 | 44.7% |
22位 | 岩手県 | 582人 | 258人 | 44.3% |
23位 | 東京都 | 3,729人 | 1,639人 | 44.0% |
24位 | 石川県 | 717人 | 312人 | 43.5% |
25位 | 青森県 | 527人 | 228人 | 43.3% |
26位 | 千葉県 | 2,251人 | 973人 | 43.2% |
26位 | 三重県 | 702人 | 303人 | 43.2% |
28位 | 山形県 | 439人 | 184人 | 41.9% |
29位 | 富山県 | 538人 | 224人 | 41.6% |
30位 | 福島県 | 1,177人 | 472人 | 40.1% |
31位 | 秋田県 | 353人 | 140人 | 39.7% |
32位 | 沖縄県 | 486人 | 192人 | 39.5% |
33位 | 関西広域連合* | 8,885人 | 3,057人 | 34.4% |
34位 | 福井県 | 394人 | 133人 | 33.8% |
35位 | 広島県 | 975人 | 299人 | 30.7% |
36位 | 山口県 | 620人 | 184人 | 29.7% |
37位 | 島根県 | 227人 | 64人 | 28.2% |
38位 | 岡山県 | 932人 | 262人 | 28.1% |
39位 | 鳥取県 | 240人 | 63人 | 26.3% |
40位 | 愛媛県 | 526人 | 133人 | 25.3% |
41位 | 香川県 | 425人 | 106人 | 24.9% |
42位 | 高知県 | 304人 | 65人 | 21.4% |
*関西広域連合は滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、徳島県の6府県の合計
合格率が最も高い県(55.2%)と低い県(21.4%)では2倍以上の差があるほか、同じ都道府県でも年によって合格率にバラツキが見られます。
3. 登録販売者の仕事内容
登録販売者の仕事と言えば、一般用医薬品を選ぶお手伝いを想像する方も多いかもしれませんが、これは業務のごく一部にすぎません。登録販売者は店舗のいち販売スタッフとして会計や接客、品出しなど数多くの業務に携わります。
一般用医薬品の販売・情報提供
お客さまの症状にあった医薬品を提案し、有効成分、効能・効果、正しい服用方法、副作用、使用上の注意などについて説明します。養生方法や生活習慣についてアドバイスするほか、症状によっては医療機関の受診を勧めることもあります。
- 症状や目的のヒアリング
- アレルギー歴や病歴の確認
- 治療中の病気や服用中の薬の確認
- 医薬品の提案・説明
- 養生方法や生活習慣のアドバイス
- 受診勧奨 など
店舗の運営
そのほかにも、清掃や接客、レジ、品出しといった業務を日常的におこないます。定期的に棚卸し作業が発生するほか、販売促進のために売り場づくりを工夫したりします。店舗運営には、医薬品のほかにも化粧品、健康食品、サプリメントなど店舗で扱うあらゆる商品に関する知識が必要ですが、さまざまな商品を組み合わせた提案ができることはドラッグストアや小売店で働く魅力の一つと言えます。
- 清掃
- 接客
- レジ
- 品出し
- 棚卸し
- 売場づくり など
4. 登録販売者の勤務先
登録販売者の勤務先の多くはドラッグストアとなりますが、ほかにも店舗販売業を取得しているスーパーやホームセンター、さらに調剤薬局にも求人があります。
ドラッグストア
ドラッグストアの場合、医薬品対応マニュアルや研修制度などのフォロー体制がしっかりしていることが多く、未経験でも働きやすい環境が整っています。正職員の求人が多く、スタッフから店長(店舗管理者)、エリアマネージャーと長期的なキャリア形成をしやすいという特徴もあります。
一方でPB商品*などの販売目標を課せられることがあるほか、大型店舗になると品出しや棚卸しの作業量が膨大になるといった大変さもあります。
また、調剤併設型のドラッグストアの場合、わからないことがあったときに薬剤師に相談しやすいというメリットがあります。
登録販売者を募集しているドラッグストアを探す
ドラッグストア / 調剤併設型ドラッグストア
スーパー・ホームセンター・家電量販店・コンビニ等
スーパー・ホームセンター・家電量販店などの医薬品売場の場合、ドラッグストアと業務内容はほぼ同じです。ただし、日用品や化粧品とは売り場が分かれているため、品出しや棚卸しなどの作業が限られているため接客に集中しやすいという特徴があります。
一方でコンビニの場合、医薬品販売は業務のごく一部に限定されますが、一般のスタッフよりも給料が高い傾向にあります。
調剤薬局
調剤薬局の場合、お客さまとの距離が近く、医療用医薬品について学ぶチャンスに恵まれていることが特徴です。ただし、一般用医薬品の販売以外に、処方箋受付や調剤補助、薬の配達など、調剤事務の仕事と兼務するケースがほとんどです。
5. 登録販売者の働き方
ドラッグストアに勤務する登録販売者は、勤務時間や勤務日が不定期(シフト制)となります。家庭の都合などで働ける時間や日が限られている場合は、入職前に相談しておきましょう。
登録販売者の一日
ドラッグストアは営業時間が長いため勤務時間が2交替や3交替、あるいはそれ以上に分かれていることが一般的です。早番と遅番の2交替勤務のドラッグストアに勤務する登録販売者の一日の仕事の流れはおおむね次のようになります。
登録販売者の休日
ドラッグストアや小売店は年末年始を除き年中無休で営業している店舗が多いため、シフトで週休2日となることが一般的です。
薬局に勤務する場合は、日曜祝日が固定休となり、月曜〜土曜の間にシフトでもう1日休みを取得するというサイクルになります。
6. 登録販売者の給料
ジョブメドレーに掲載されている求人から登録販売者の賃金相場を算出しました。なお、残業手当など月によって支給額が変動する手当は集計対象外のため、実際に支払われる賃金はこれより多くなる可能性があります。
【全国平均】登録販売者の時給・月給・年収の相場
2024年10月時点の全国の登録販売者の時給・月給・年収の相場は次のとおりとなりました。
下限平均 |
上限平均 |
総平均 |
|
---|---|---|---|
パート・アルバイトの時給 |
1,245円 |
1,605円 |
1,351円 |
正職員の月給 |
20万837円 |
31万9,936円 |
22万4,266円 |
正職員の年収* |
281万1,718円 |
447万9,104円 |
313万9,724円 |
登録販売者の詳しい給料については、こちらの記事を参考にしてください。
>登録販売者の給料は高い?職場別、雇用形態別、エリア別の平均年収
7. 登録販売者の将来性
医療費抑制の観点から、“セルフメディケーション”という考え方が注目されています。
WHO(世界保健機関)はセルフメディケーションを「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当すること」と定義しています。つまり、日常的に健康管理に気を遣い、ちょっとしたけがや体調不良であれば医療機関を受診する前に自身でケアをするということです。
日本では医薬品販売の規制緩和やセルフメディケーション税制*といった政策も追い風になり、ドラッグストアが増え、OTC医薬品の市場規模も拡大しています。
OTC医薬品は私たちにとってより身近な存在となりましたが、「OTC医薬品は医療用医薬品よりも効果が薄くリスクも小さい」という誤った認識から健康被害につながるケースが後を絶ちません。また、若い世代を中心にOTC医薬品の過剰摂取が増えていることも問題視されています。
そんななか、登録販売者には人手不足が慢性化している薬剤師に代わりOTC医薬品の適正利用を守る門番となることが期待されています。
ドラッグストアや医薬品売場など、日常生活の圏内で健康に関する悩みを気軽に相談できるのが登録販売者の強みです。この強みを活かして薬との正しい付き合い方を指導したり、日常生活や養生方法についてアドバイスしたり、ときには医療機関への受診を勧めたりと、多くの役割が求められています。
参考
- e-Gov法令検索|医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
- 厚生労働省|政策レポート 一般用医薬品販売制度の改正について
- 厚生労働省|医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について(令和5年3月31日)
- 厚生労働省|医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について(令和3年7月30日)
- 厚生労働省|登録販売者に対する研修の実施について(平成24年3月26日)
- 村松早織『やさしくわかる! 登録販売者1年目の教科書』ナツメ社、2021年
- 荒川博之『図解入門業界研究 医薬品業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本[第6版]』秀和システム、2019年
- 長尾剛司『最新《業界の常識》 よくわかる医薬品業界』日本実業出版社、2018年