【図解】臥床(がしょう)・離床とは?体位の種類や長期化によるリスク、介助のポイントも解説

医療・介護の現場でよく目にする「臥床」と「離床」。患者や利用者の状態を指す言葉ですが、正しい意味をご存じでしょうか? この記事では、臥床と離床の意味や体位の種類、臥床状態が長期化する場合のリスクと対策などをわかりやすく解説します。

【図解】臥床(がしょう)・離床とは?体位の種類や長期化によるリスク、介助のポイントも解説

目次

1. 臥床(がしょう)・ 離床とは?

臥床とは

臥床(がしょう)とは、患者や利用者がベッドなどに横たわっている状態を指します。医療・介護の現場では、こうした状態の人を介助することを「臥床介助」と呼びます。床ずれ予防や、オムツの交換時の体位変換も、臥床介助に含まれます。

離床とは

離床とは、患者や利用者がベッドから起き上がっている状態を指します。横になった状態から起き上がった体勢にすることを「離床介助」と呼び、排泄の介助や車椅子への移乗介助も離床介助に含まれます。

tips|臥床・入床・離床・起床の違いとは?
介護の現場で混同しがちな「臥床」「入床」「離床」「起床」の違いを整理しておきましょう。

臥床:ベッドに横たわっている状態
入床:睡眠のためにベッドに入ること
離床:ベッドから起き上がっている状態
起床:目覚めて起きること。介護現場では「起床介助」など、朝のケア全般を含む意味で使われることも

2. 臥床体位の種類

臥床時の姿勢を「臥位(がい)」といいます。臥位には複数の種類があり、利用者の状態や目的に応じて使い分けます。

仰臥位(ぎょうがい)

仰臥位は、仰向けで両足を伸ばした臥位です。安定した姿勢ですが、ベッドが水平な状態で続けると呼吸しづらくなり、長時間続くと肺に痰が溜まる可能性があります。枕で頭の位置を少し高くしたり、ベッドの角度を調整したりするなど、定期的な体位変換が必要です。

背殿位(はいでんい)

背殿位は、仰向けの状態で両膝を立てた臥位です。腹部の緊張がゆるみ、腰への負担が軽減されるため、腰痛がある人に向いている臥位といえます。また、膝の下にクッションを入れてかかとを少し浮かせると、床ずれ防止にもつながります。

ほかの臥位よりも重心が安定しやすく、介助者にとって体位変換しやすい姿勢です。仰臥位から車椅子へ移乗させるときや、シーツ交換の際などにも活用されます。

側臥位(そくがい)

側臥位は、体を横向きにして寝かせる臥位です。下側の腕が圧迫されないよう、必ず前方に引き出します。体勢が崩れやすいため、背中側にはクッションなどを設置します。

体位変換をしやすいことが特徴で、着替えやオムツ交換の際によくとられる姿勢です。施設によっては、右側を向く場合を「右側臥位」、左側を向く場合を「左側臥位」と呼び分けることがあります。

屈曲側臥位(くっきょくそくがい)

屈曲側臥位は、横向きの状態で体を丸めた臥位です。側臥位よりも体を支える面が広く、バランスをとりやすい特徴があります。また、背殿位と同様に腰への負担が軽減されるため、腰痛がある人に向いています。

腹臥位(ふくがい)

腹臥位は、顔を横に向け、うつ伏せの状態で寝かせる臥位です。

背中の圧迫を避けるために採用されるほか、肺の機能改善を促すリハビリテーションの一環としても実施されます。ただし、体の状態によっては、関節への悪影響や窒息などのリスクがあるため、実施の前に医師や理学療法士などと相談し、本人または家族からの同意を得る必要があります。

また、大柄で腹臥位をとるのが難しい人の場合は、側臥位の状態でクッションを抱き、うつ伏せに近い状態に傾けた姿勢をとることで、背中への圧迫を避けることができます。

3. 臥床者への介助のポイント

体位変換

体位変換は、介助者と利用者双方にとって負担の大きい介助です。小さな力で安全におこなえるよう工夫が必要です。

介助者は重心を低くして、できる限り利用者の体に近づくことで、安定した体勢を保ちやすくなります。さらに、利用者とベッドが接する面積を減らすと摩擦が軽減され、よりスムーズに体を動かせます。

また、利用者に可能な範囲で協力を促すことも重要です。本人の力を借りることで両者の負担が軽減されるほか、利用者の残存機能の維持につながります。

清拭介助

清拭介助は、入浴が難しい利用者の体を蒸しタオルなどで拭き、清潔を保つケアです。清拭ケアの際は室温に注意し、利用者のプライバシーに配慮しながら手早く丁寧におこないます。

とくに、膝の裏や肘の内側などの関節部分や、しわができやすい首やお腹などは、汚れがたまりやすいため、念入りにおこなってください。

また、清拭は利用者と一対一でコミュニケーションがとれる貴重な機会です。不安な気持ちに寄り添い、耳を傾けるように努めます。同時に、発疹や褥瘡などを見逃さないよう皮膚の状態を観察することも重要です。

排泄介助

臥床状態の利用者への排泄介助では、お尻の下に差し込む差込便器を使った排泄のサポートや、おむつ交換をおこないます。ベッドの角度を調整することで腹圧がかかりやすくなり、排泄がスムーズになります。

また、利用者が排泄介助を受ける恥ずかしさから、食事や水分の摂取を控えてしまうことがあります。介助する際は、利用者の自尊心やプライバシーに配慮し、手際よくおこなうことが求められます。

4. 長期臥床のリスクと早期離床の重要性

長期臥床によるリスク

長期的な臥床は、身体的・精神的にさまざまなリスクをもたらします。

筋力低下や関節拘縮

筋力の低下や関節拘縮、骨密度低下など、身体のさまざまな機能を低下させる可能性があります。

循環器系の機能低下

血液の循環を悪化させ、深部静脈血栓症や肺塞栓症などの合併症、起立性低血圧のリスクが高まります。

呼吸器系の合併症

臥床状態が続くと、肺の換気が不十分になり、肺炎や無気肺などの呼吸器系の合併症を起こす可能性があります。とくに高齢者の場合は、誤嚥性肺炎に注意が必要です。

消化器系・泌尿器系への影響

便秘や尿路結石、尿路感染症などの消化器系・泌尿器系の問題を引き起こす可能性があります。

褥瘡の発生

長時間同じ姿勢で圧迫を受けることで、床ずれが発生しやすくなります。

精神面への影響

体の活動量が低下することで社会的孤立状態となり、意欲の低下や、知的機能の減衰、抑うつなどの精神的な問題を引き起こす可能性があります。

また、時間感覚や場所の認識などの感覚機能が低下すると、幻覚や妄想が出現しやすいとされています。

早期離床の重要性

適切な離床介助をおこなうことによって、長期臥床によるリスクの軽減・予防につながります。身体的・精神的な健康状態の改善や、日常生活動作(ADL)の向上、社会的な交流の促進など、離床介助は生活の質(QOL)を高めるうえで非常に重要です。

5. 早期離床を進めるポイント

段階的な離床プログラムを組む

寝たきりの状態からいきなりベッドを離れるのは、利用者にとって大きな負担になります。

ベッドの頭を少しずつ上げて状態を起こす練習から、ベッドの縁に座って足をつける練習、介助を受けながら車椅子への移乗など、利用者の体調や体力に合わせて、無理なく進めることが大切です。

多職種との連携を強化する

離床プログラムは、介護職だけでなく、多職種で連携して実施します。それぞれの職種が、共通の目標を設定し、専門知識に基づいた評価をおこなうことで、より効果的な離床支援につながります。

職種

役割

介護職

・実生活での離床支援

・座位や移乗の介助など

リハビリテーション専門職

・離床に必要な身体機能などの評価

・車椅子適合や移乗方法の提案など

医療従事者

・離床実施の可否とリスク管理

・褥瘡など二次障害の予防と対応など

福祉用具関連の事業者

・福祉用具の紹介や提案

環境整備と補助具の活用

離床プログラムの実施には、利用者の状況に合わせた細やかな対応が求められます。

ベッド周りを整理整頓して移動しやすい動線を確保したり、起き上がりを安全にサポートする手すりやバーを設置したりするなど、離床しやすい環境を整えます。

また、福祉用具の活用も重要です。ベッドから車椅子への移乗をスムーズにするスライディングボードや、転倒リスクを軽減する歩行器具など、適切な補助具を活用します。

6. 臥床と離床を正しく理解して介助に活かそう

臥床(がしょう)とは「横たわっている状態」、離床とは「ベッドから起き上がっている状態」のことを指します。

介護をするうえで、臥床と離床の介助は、すべての活動の起点となる重要な要素です。正しい知識を身につけることで、利用者の健康を守るだけでなく、介助者の体を守ることにもつながります。迷ったときは、専門職やチームの仲間と相談しながら、無理のないケアを心がけましょう。

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