目次
1.労働組合とは何をするの?
労働条件の団体交渉をおこなう
労働組合とは、労働者が団結して賃金や労働時間など労働条件の改善を図るための団体です。日本では一般的に会社(事業所)ごとにつくられ、複数の労働組合が集まって構成される産業別労働組合では一企業の枠を超えた業界の問題改善に取り組むこともあります。
毎年2月頃に労働組合が経営者に賃上げなどを要求し、3月頃に企業が回答する交渉は「春闘」と呼ばれます。これは労働組合の全国的中央組織である日本労働組合総連合会(連合)が中心となり、大企業が回答を示すことで全国的な労働環境の改善を目指しています。
団体交渉は労働者の権利の一つ
憲法第28条では、労働者の3つの権利(労働三権)を保障しています。
- 団結権:労働者が労働組合を結成する権利
- 団体交渉権:労働者が使用者(会社)と団体交渉する権利
- 団体行動権(争議権):労働者が要求実現のために団体で行動する権利
労働組合は団結権に基づき、団体交渉をおこなう主体となります。団体行動は要求実現のためにおこなうストライキなどが該当し、公務員に関しては労働三権のうち団体行動権が制限されて(争議行為が禁止されて)います。
労働組合に入るメリット・デメリット
労働組合に入るメリットは、一人では難しい労働環境や待遇の改善交渉をおこなえることです。
労働組合法では、会社が正当な理由なく団体交渉を拒否することを禁止しています。そのため従業員個人では交渉を進めることが難しくても、労働組合を通して交渉することで応じてもらいやすくなります。
デメリットとしては、一人あたり平均月数千円の組合費がかかるほか、交渉などをおこなう場合は業務のほかに活動に参加する時間が発生します。
2.労働組合がない会社はどうする?
働き方や待遇などに関して相談・交渉したいことがあっても、会社によっては労働組合がないことがあります。その場合、以下の2つの行動が考えられます。
合同労働組合(ユニオン)に加入する
合同労働組合(ユニオン)とは、正社員、契約社員など雇用形態にかかわらず1人でも加入できる社外の労働組合です。業種、職種を問わず加入でき、全国各地に拠点があります。
労働組合をつくる(結成する)
労働者は既存の労働組合に加入するだけでなく、自ら労働組合をつくることもできます。結成するには労働者が2人以上集まれば自由に結成することが可能です。ただし労働組合は以下の条件を満たしている必要があります。
労働組合の条件
- 労働者が主体となって自主的に組織すること
- 労働条件の維持・改善、その他経済的地位の向上を図ることを主目的としていること
- 使用者、管理職にあたる人が参加していないこと
- 運営のために使用者側から資金援助を受けていないこと
労働組合結成の流れ
労働組合を結成する一般的な流れは下記のとおりです。結成にあたっての届出などは必要ありません。

なお、労働組合は自由に設立できますが、労働組合法の適用を受け法的に保護されるためには、国や都道府県の労働委員会がおこなう資格審査を受けなければなりません。自主的な組合であること、適切な規約があることなどの立証資料を提出し資格審査を申請、認められれば資格証明書が交付されます。
3.労働組合に関する疑問
Q.労働組合に入るとクビになる?
A.労働組合の活動や交渉に関連して不利な扱いをすることは「不当労働行為」として禁止されています。
具体的には以下のようなケースが不当労働行為にあたります。
- 労働組合に加入していることや、加入しようとしていることを理由に使用者が解雇、異動、賃金などの差別、嫌がらせをすること
- 使用者が正当な理由なく労働組合との団体交渉を拒否すること
- 労働組合の活動をやめるよう説得・妨害するなど、使用者が組合の運営に介入・支配すること
- 労働者が不当労働行為に抗議したことを理由に、解雇など不利益な扱いをすること
不当労働行為があった場合は、都道府県の労働委員会に申し立てをすることができます。
Q.労働組合に入る意味はあるの?
A.労働組合に入ると、一人で交渉に臨むより労働環境改善を実現しやすくなります。使用者に対して立場が弱くなりがちな労働者個人の交渉と異なり、労働組合を通じた交渉はその機会や権利が労働組合法により守られています。
労働組合法に掲げられているとおり、会社は正当な理由なく労働組合との交渉を拒否することはできません。また、交渉や争議行為など労働組合の正当な行為については、威力業務妨害や住居侵入罪などにならない、損害賠償をしなくてもよいなど、刑事・民事上の免責が適用されます。
Q.労働組合の有無はどうやって調べる?
A.勤めている、または就職したい会社に労働組合があるかどうかは、ハローワークの求人票を見るか、地域のユニオンに加入しているか調べて確認しましょう。
ハローワークの求人票には労働組合有無の記載欄があるため、応募時に確認しておくと安心です。大手企業であれば春闘の交渉・回答で調べなくてもわかる場合がありますが、中小企業であれば会社単位での労働組合がない可能性もあるため、地域のユニオンが有力になります。
どうしてもわからなければ、ほかの従業員や会社に確認してもよいでしょう。ただし、会社が労働組合について確認することを歓迎しない風土であれば、労働環境や法令遵守の状況に注意が必要かもしれません。
参考