
認知症の患者さんを中心に据えたケア
みなさんは「パーソン・センタード・ケア」という言葉をご存じですか? 「パーソン・センタード・ケア」は認知症患者さんを人として尊重し、その人を中心に据えたケアの手法です。英国ブラッドフォード大学のトム・キッドウッド教授が提唱し、2000年前後から世界中で採用されています。
認知症の方は、ともすれば「理解できない奇妙な行動をする人」という表面的な理解がなされてきました。しかしながら、その行動をつぶさに観察することで適切なケアを見出すことにつながります。パーソン・センタード・ケアとは、そのような考えをもとに、より実戦的なケアを行えるようにしたものです。
パーソン・センタード・ケアの実践方法
パーソン・センタード・ケアの実践のために、患者さんの観察評価方法として、「DCM(認知症ケアマッピング)」が考案されました。ここでは、DCMについて詳しくご紹介します。
DCMは事前説明を行ったうえで、介護者5人程度で患者さんを観察すること(マッピング)から始めます。1回につき6時間以上観察して、5分ごとに記録するというのが原則です。患者さんの行動については、食事や会話、歩いている様子など、あらゆることを記録します。
また、患者さんの状態がよい状態か悪い状態か、感情の動きや集中力、周囲との関わり方などを6段階で評価していきます。
個別ケアの向上やスタッフの意識改革にも効果
マッピングが終わったら、ケアの質を上げるため、記録をもとにグループミーティングを行います。そして、チームで今後のケアの計画を立てていきます。患者さんは一人ひとり異なるため、その患者さんにとってもっとも適切なケアが行えるような配慮が肝心です。
DCMは1回きりではなく継続して行う必要があります。繰り返すことで、一人ひとりの患者さんごとの適切なケアにより近づいていくのです。
パーソン・センタード・ケアやDCMは、個別のケアに役立つだけではなく、スタッフの育成や介護施設の改革などに効果があるものとして活用が広がっています。
介護者の助けにもなるパーソン・センタード・ケア
パーソン・センタード・ケアは、患者さんと介護者の互いの理解を深めるための手法です。ケアされる側もケアする側も、繰り返しDCMを行うことで、よりよい関係を築けるようになるでしょう。
また、パーソン・センタード・ケアを採用することで、症状を和らげることができたという報告もされています。
日本でも定期的にパーソン・センタード・ケアの研修会が開催されています。基礎コースやより実戦的な上級コースなどがありますが、DVDなどで概要を知ることも可能です。