介護福祉士とは? 資格取得方法や勤務先、仕事内容、年収について解説

介護の技術と専門知識を駆使し、利用者を支援する介護福祉士。介護の分野で唯一の国家資格であり、現場を牽引する役割が期待されています。この記事では試験の概要や合格率、給料、そして将来性について解説します。

特集 仕事を知る 介護福祉士
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1. 介護福祉士とは?

介護系で唯一の国家資格

介護福祉士は1987年に制定された「社会福祉士及び介護福祉士法」により誕生した介護系唯一の国家資格です。加齢や心身の障がいなどにより日常生活を送るのが困難な方に対し、入浴や食事など身の回りの介助をおこないます。

利用者がその人らしい人生を送れるよう、さまざまな職種の人と連携しながら一人ひとりに合った介護サービスを提供したり、在宅介護を希望する場合には、利用者の家族に助言することで適切な介護環境を整えたりすることも大切な仕事です。

なお、介護福祉士は名称独占の国家資格であり、介護福祉士として登録を受けていない人は「介護福祉士」という名称を使用してはならないという規定があります。2021年9月末時点で約181万人が介護福祉士として登録されています(参考:厚生労働省)。

2. 介護福祉士になるには?

介護福祉士国家試験に合格して登録する

年に一回実施される国家試験に合格し、登録を受けることで介護福祉士資格を名乗ることができます。介護福祉士を目指すルートは以下の4つに分かれます。

  1. 実務経験ルート
  2. 養成施設ルート
  3. 福祉系高等学校ルート
  4. 経済連携協定(EPA)ルート

1. 実務経験ルート

現任の介護職員など、介護の実務経験がある方のルートです。

介護福祉士になるには 実務経験ルート

実務経験ルートから受験するには、下記いずれかの受験資格を満たす必要があります。

(1)実務経験3年(1,095日)以上、かつ従業日数540日以上 + 介護職員実務者研修の修了(EPA介護福祉候補者以外)

(2)実務経験3年(1,095日)以上、かつ従業日数540日以上 + 介護職員基礎研修と喀痰吸引等研修の修了

(1)の受験資格について、実務経験に加え養成施設等における介護職員実務者研修の修了が必須となります。

■介護職員実務者研修とは
受講者に対し、基本的な介護提供能力の習得を目的とした研修です。カリキュラムは通常20科目あり、受講時間は合計450時間にもおよびます。ただし、ほかの研修を修了している場合はその内容に応じて一部科目の受講が免除されます。

詳しい内容については試験を実施する公益財団法人社会福祉振興・試験センターの公式ページをご確認ください。

(2)の受験資格について、介護職員基礎研修喀痰吸引等研修の両方を修了していれば、実務者研修と同様に受験資格を得られます。ただし、介護職員基礎研修は2012年に廃止されています。これから介護福祉士を目指す場合は(1)のルートで介護職員実務者研修を受けることになります。

2. 養成施設ルート

文部科学大臣・厚生労働大臣が指定する学校、または都道府県知事が指定する養成施設を卒業するルートです。

介護福祉士になるには 養成施設ルート

養成施設ルートから受験するには、下記いずれかの受験資格を満たす必要があります。

(1)高等学校を卒業後、2年制以上の介護福祉士養成施設を卒業(修了)する

(2)高等学校を卒業後、福祉系大学等・社会福祉士養成施設等・保育士養成施設等のいずれかを卒業し、1年制以上の介護福祉士養成施設を卒業(修了)する

2016年度までに養成施設を卒業した場合、卒業をもって介護福祉士を名乗ることができました。しかし法改正により、2017年度からは国家試験の受験が必須となりました。

経過措置として、養成施設を2026年度末までに卒業すれば、卒業後5年の間は、国家試験に合格しなくても(または受験しなくても)介護福祉士になることができます。5年経過後も介護福祉士を名乗るには、この間に国家試験に合格する、または5年間続けて介護の仕事に就かなくてはいけません。

2027年度以降に養成施設を卒業した場合は、介護福祉士国家試験の合格が必須となります。

3. 福祉系高等学校ルート

文部科学大臣・厚生労働大臣が指定する福祉系高等学校または特例学校を卒業し、資格取得を目指すルートです。2009年度以降の入学とそれ以前では受験資格が異なります。

介護福祉士になるには 福祉系高等学校ルート

福祉系高等学校ルートでは、下記いずれかの受験資格を満たす必要があります。

(1)福祉系高等学校に2009年度以降に入学し、新カリキュラムを修めて卒業した方

(2)福祉系高等学校に2008年度以前に入学し、旧カリキュラムを修めて卒業・大学へ「飛び入学」した方(介護技術講習または介護過程・介護過程Ⅲを未受講の場合は国家試験にて実技試験あり)

(3)特例高等学校に2009年以降に入学し、所定のカリキュラムを修めて卒業したあと、9ヶ月以上*の介護等の実務経験を有する方(介護技術講習または介護過程・介護過程Ⅲを未受講の場合は国家試験にて実技試験あり)

*従業期間273日以上、かつ従事日数135日以上

4. 経済連携協定(EPA)ルート

日本と経済連携協定(Economic Partnership Agreement)を結ぶフィリピン・ベトナム・インドネシアの3ヶ国から来日した介護福祉士候補者が、日本の介護施設で働きながら資格取得を目指すルートです。

EPA介護福祉候補者は母国の看護学校卒業者、または介護資格認定者が対象。日本の介護施設で3年以上の実務経験を経て国家試験に臨みます。

国によって受験資格が異なります。詳しくはEPA介護福祉士候補者の解説記事をご確認ください。

介護福祉士試験の概要

介護福祉士国家試験は年に一回、例年1月下旬から3月上旬にかけて実施されます。大まかなスケジュールは以下のとおりです。

  • 8月下旬〜9月上旬:願書等提出
  • 1月下旬:筆記試験
  • 3月上旬:実技試験
  • 3月下旬:合格発表

介護福祉士国家試験の筆記試験は次の13科目から1問1点、全125問出題されます。なお、「1. 人間の尊厳と自立」と「4. 介護の基本」、「2. 人間関係とコミュニケーション」と「5. コミュニケーション技術」は2科目をまとめて1つとして扱うため、全11科目群となります。

筆記試験科目

1. 人間の尊厳と自立
2. 人間関係とコミュニケーション
3. 社会の理解
4. 介護の基本
5. コミュニケーション技術
6. 生活支援技術
7. 介護過程
8. 発達と老化の理解
9. 認知症の理解
10. 障害の理解
11. こころとからだのしくみ
12. 医療的ケア
13. 総合問題

筆記試験合格の条件は2つあります。

1.  総得点の60%程度(問題の難易度で補正)
2. すべての科目群で得点があること(0点の科目群がないこと)

合格基準は総得点125点に対し60%程度が目安となります。問題の難易度によって補正が入るので、過去の5年間の合格基準は67点から78点の間で推移しています。

介護福祉士国家試験の合格基準は67〜78点で推移
厚生労働省|介護福祉士国家試験合格発表(第32回第33回第34回第35回第36回)より作成

その他試験の詳細や最新情報につきましては、公益財団法人社会福祉振興・試験センターのウェブページからご確認ください。

介護福祉士国家試験の合格率の推移

直近2年間の合格率は大きく上昇傾向にあります。第35回試験では過去最高の84.3%、翌年の第36回試験も過去2番目の合格率となりました。

介護福祉士国家試験の合格率は約70〜84%で推移
厚生労働省|介護福祉士国家試験合格発表(第32回第33回第34回第35回第36回)より作成

なお、精神保健福祉士と社会福祉士の合格率も同様に、近年では上昇傾向がみられます。

3. 介護福祉士の仕事内容

介護福祉士の仕事は、利用者に対する身体介助、生活援助、社会活動支援、利用者のご家族を対象とした相談・助言、現場介護スタッフに対するマネジメントと多岐にわたります。

身体介助

日常生活を送るのが困難な利用者に対し、食事や入浴、排せつなど、一人ひとりの自立度に応じて必要な支援をおこないます。

生活援助

利用者の家を訪れ、洗濯や炊事、買い物など、利用者がおこなうことの難しい家事を引き受けます。

社会活動支援

介護が必要になったのをきっかけに孤立してしまわないよう、地域イベントへの参加を促したり、近隣との人間関係を構築するなどの役割も果たします。

家族を対象とした相談・助言

利用者の家族に対し、介護に関する相談や介護用品の選定、在宅介護でのアドバイスなどをおこないます。

現場マネジメント

介護現場のリーダーとして介護スタッフのタスク管理や教育指導、多職種との連携を図ります。

4. 介護福祉士の勤務先

2020年度の介護福祉士就労調査によると、介護福祉士の働く場所は高齢者福祉関係が8割を占めています。

介護福祉士の勤務先は8割が高齢者福祉関係
出典:公益財団法人社会福祉振興・試験センター|令和2年度介護福祉士就労状況調査結果より作成

高齢者福祉関係

高齢者福祉施設の介護職員として介護業務にあたります。

主な勤務先は特別養護老人ホーム(特養)介護老人保健施設(老健)といった介護保険関連施設、要介護者の自宅を訪問する訪問介護事業所(ヘルパーステーション)、利用者を送迎し身体介護をおこなう通所介護(デイサービス)など、さまざまな施設が挙げられます。

業務内容は食事介助や入浴介助、排せつ介助などの身体介護、掃除や洗濯、食事の配膳、買い物などの生活援助が中心ですが、利用者の状態や提供しているサービスの特徴によって仕事内容は異なります。また、入所型施設の場合は24時間体制の介護が必要となるため、夜勤を含むシフト勤務が一般的です。

実務者研修の修了者、および介護福祉士の有資格者であれば、訪問介護事業所での配置が義務付けられているサービス提供責任者として働くことも可能です。

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特別養護老人ホーム介護老人保健施設訪問介護デイサービス居宅介護支援事業所

障害者福祉関係

障害者福祉施設の職員として介護業務にあたる方もいます。

主な施設は日常生活で常時介護が必要な方が生活する身体障害者施設、ケアを必要とする方の自宅を訪問する訪問サービス事業所、身体、精神、知的の障がいのある子どもを対象とした放課後等デイサービス児童発達支援、障害児入所施設が挙げられます。

施設によって役割や仕事内容が異なり、生活支援員として生活面での身体介護などをおこなったり、職業指導員として就労をサポートする方もいます。

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病院・診療所

病院や診療所で介護業務にあたる介護福祉士もいます。

病気やケガをした際に​​集中的に治療や検査をおこなう急性期病院、在宅復帰を目的として身体ケアやリハビリをおこなう回復期リハビリテーション病院、慢性疾患のある患者の長期療養を目的とした療養型病院などが挙げられます。

入院患者の介護業務に加え、自立に向けた生活支援や看護師の補助などをおこないます。医師や看護師、医療スタッフをはじめとした多職種との関わりや連携が重要です。

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5. 介護福祉士の給料

厚生労働省が公開している「介護従事者処遇状況等調査(令和4年度調査結果)」より、施設形態別の介護福祉士(常勤)の平均月収と年収を抜粋しました(介護職員等特定処遇改善加算および介護職員等ベースアップ等支援加算を取得している事業所が対象)。

全体の平均月給は33万6,000円、平均年収は470万4,000円となっています。

【施設別】常勤の平均月収・平均年収の相場

平均月収平均年収
全体33万6,000円470万4,000円
介護老人福祉施設(特養)36万100円504万1,400円
介護老人保健施設(老健)35万1,860円492万6,040円
介護療養型医療施設31万8,450円445万8,300円
介護医療院33万8,250円473万5,500円
訪問介護事業所33万1,670円464万3,380円
通所介護事業所29万6,630円415万2,820円
通所リハビリテーション事業所31万8,390円445万7,460円
特定施設入居者生活介護事業所33万2,580円465万6,120円
小規模多機能型居宅介護事業所30万9,620円433万4,680円
認知症対応型共同生活介護事業所
(グループホーム)
31万400円434万5,600円
*平均月収は、基本給(月額)+手当+一時金(1~12月支給金額の1/12)
*年収は「月給 × 14ヶ月(ボーナスは月給の2ヶ月分)」で試算

6. 介護福祉士の将来性

日本は世界でもまれにみる速さで高齢化が進行しています。内閣府の発表によると、2025年には国民の約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上となると推計され、断続的に増えていく見込みです。

そこで注目されるのが介護ニーズへの対応です。認知症高齢者や単身高齢世帯など、複雑化・多様化する介護ニーズへの対応と介護人材の育成、そして確保が喫緊の課題となっています。

介護福祉士は国家資格です。日本全国どこにいても社会的に広く認められた介護のプロとして働くことができます。資格手当がつくこともあるので、給与面でも大きなメリットとなります。

また、実務経験を5年積めばケアマネジャー(介護支援専門員)試験の受験資格を得られます。令和4年度の職種別合格者をみると、介護福祉士が占める割合は59%という結果が出ています(参考:厚生労働省)。

介護福祉士は介護業界でのキャリアを検討するうえで重要な資格のひとつといえるでしょう。

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読者の方へのメッセージ

介護福祉士は「頼れる介護の専門家」

国家資格である介護福祉士は幅広い介護知識や介護技術を有していると証明された人材として、介護現場を中心に多くの方が活躍されています。また、全従業員のうち介護福祉士が占める割合によって介護報酬に加算が付く場合もあるため、転職にも有利な資格になっています。介護現場で長く勤めるのであれば介護福祉士習得を目指されてはいかがでしょうか。

平栗 潤一 (介護事業所経営者) 2022/08/02

プロフィール

「なるほど!ジョブメドレー」は、医療介護求人サイト「ジョブメドレー」が運営するメディアです。医療・介護・保育・福祉・美容・ヘルスケアの仕事に就いている人や就きたい人のために、キャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。仕事や転職にまつわるご自身の経験について話を聞かせていただける方も随時募集中。詳しくは「取材協力者募集」の記事をご覧ください!
一般社団法人日本介護協会 理事長
有限会社ケアステーション大空 代表取締役
株式会社コンソーシアムジャパン 代表取締役

大手介護専門学校にて12年間約2,000名の人材育成に関わり、その後独立。人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。その後、介護業界の発展を目指し、介護甲子園を主催している一般社団法人日本介護協会の理事長に就任。有限会社ケアステーション大空の代表取締役として、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、デイサービス、訪問介護ステーションなど介護事業を運営。

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