目次
1.介護職員実務者研修とは
介護職員実務者研修とは、幅広い介護サービス利用者に対する基本的な介護提供能力と、医療的ケアに関する知識・技能の習得を目的とした資格です。
介護の入門資格といえる介護職員初任者研修の上位資格にあたり、介護福祉士の受験条件でもあります。旧ヘルパー1級・介護職員基礎研修を一本化した資格で、修了することでサービス提供責任者としても働くことができます。
また、介護職員実務者研修を修了していると、介護職が医療的ケア(喀痰吸引・経管栄養)を提供するために必要な喀痰吸引等研修のうち、基本研修が免除されます。
介護福祉士の受験資格
国家資格である介護福祉士を取得する「実務経験ルート」の受験資格として、かつては実務経験3年に加え介護職員実務者研修または介護職員基礎研修・喀痰吸引等研修の修了が条件でしたが、介護職員基礎研修が廃止されたため、介護職員実務者研修が必須となっています。
介護福祉士について詳しくはこちらの記事で解説しています
>介護福祉士とは?
介護職員初任者研修との違い
介護の入門資格にあたる介護職員初任者研修とは、以下のような違いがあります。なお、介護職員実務者研修は、介護職員初任者研修を修了していなくても受講できます。
介護職員初任者研修と実務者研修の違い | ||
---|---|---|
介護職員初任者研修 | 介護職員実務者研修 | |
研修科目・時間 | 9科目・130時間 | 20科目・450時間 |
修了試験 | あり | なし |
サービス提供責任者の 資格要件 |
✕ | ◯ |
喀痰吸引等研修 | 免除なし | 基本研修が免除される |
介護職員初任者研修について詳しくはこちらの記事で解説しています
2.介護職員実務者研修を受けるには
介護職員実務者研修を修了するには、所定の講習をすべて受講する必要があります。なお、修了試験はありません。
カリキュラムは450時間
介護職員実務者研修の授業は450時間で、通学(スクーリング)または通信で受講します。介護職員初任者研修を修了していると130時間分の受講が免除されます。
また、旧ホームヘルパー(訪問介護員養成研修課程)1級を修了していると介護過程Ⅲと医療的ケア(95時間)、介護職員基礎研修を持っていると医療的ケア(50時間)以外の科目が受講免除となるため、比較的短期間で介護職員実務者研修を修了できます。以前の資格取得から時間が経っている人もキャリアアップが可能です。
介護職員実務者研修のカリキュラム | ||
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科目 | 受講時間 | 介護職員初任者研修修了者が 免除される科目 |
人間の尊厳と自立 | 5 | ◯ |
社会の理解Ⅰ | 5 | ◯ |
社会の理解Ⅱ | 30 | 免除されない |
介護の基本Ⅰ | 10 | ◯ |
介護の基本Ⅱ | 20 | 免除されない |
コミュニケーション技術 | 20 | 免除されない |
生活支援技術Ⅰ | 20 | ◯ |
生活支援技術Ⅱ | 30 | ◯ |
介護過程Ⅰ | 20 | ◯ |
介護過程Ⅱ | 25 | 免除されない |
介護過程Ⅲ(スクーリング) | 45 | 免除されない |
発達と老化の理解Ⅰ | 10 | 免除されない |
発達と老化の理解Ⅱ | 20 | 免除されない |
認知症の理解Ⅰ | 10 | ◯ |
認知症の理解Ⅱ | 20 | 免除されない |
障害の理解Ⅰ | 10 | ◯ |
障害の理解Ⅱ | 20 | 免除されない |
こころとからだのしくみⅠ | 20 | ◯ |
こころとからだのしくみⅡ | 60 | 免除されない |
医療的ケア※ | 50 | 免除されない |
受講時間数合計 | 450 | 320 |
介護職員実務者研修は難しい?
介護職員実務者研修はほとんどの人が合格する(修了できる)研修です。決まった修了試験はありませんが、講義(科目)ごとの課題や出席日数に不足があると修了できないことがあります。
都合が悪く授業を欠席したり、課題に不備があったりした場合の振り替えや補習の方法は受講先によって異なりますので、あらかじめ確認したうえで、研修修了を目指しましょう。
3.介護職員実務者研修の費用
おおむね10〜15万円
介護職員実務者研修の受講料は、おおむね10〜15万円程度となっています。介護職員初任者研修や旧ヘルパー1級・2級などの資格を持っていたり、受講後に介護職に就職したりすると受講料が割引・キャッシュバックされるケースもあります。
公的な資格取得支援
教育訓練給付制度
在職中または離職後1年以内で一定の条件を満たすと、教育訓練給付金を受け取ることができます。支給されるのは受講費用の40%(年間20万円が上限)です。
教育訓練給付を受けられる条件
在職中または離職して1年以内で、1年以上雇用保険に加入していて今までに教育訓練給付を受けたことがない、または前回の受講開始日から数えて雇用保険の加入期間が3年以上あること
職業訓練
介護労働講習
離職していて雇用保険の受給資格がある場合、テキスト代などの実費のみで介護職員実務者研修を受講することができます。講義450時間と、現場実習・実践講習・就職支援などの通学105日間の講習(一部科目はオンライン)となっており、全日程に出席(受講)する必要があります。
受講料は無料で、費用はテキスト代1万2,650円と講習保険料3,150円、そのほか健康診断料や実習に必要なエプロンなどの実費のみの負担となります。
雇用保険(失業保険)の受給条件
- 離職前2年間で、通算1年以上雇用保険に加入していること
- ハローワークで求職の申し込みをおこない、積極的に就職しようとする意思があること
受講者の募集期間は地域によって異なるため、詳しくは居住地の介護労働安定センターに確認しましょう。
求職者支援制度
雇用保険の受給資格がなく、離職中またはパートタイムなど一定額以下の収入の場合、月10万円の職業訓練受講給付金(生活支援金)を受けながら職業訓練を受講することができます。
制度を利用するための主な条件は下記のとおりです。
訓練受講の要件
- 雇用保険の受給資格がないこと
- ハローワークで求職の申し込みをおこない、積極的に就職しようとする意思があること
- ハローワークが職業訓練の必要性を認めていること
職業訓練受講給付金の受給条件
- 本人の収入が月8万円以下、かつ世帯収入が月30万円以下
- 世帯全体の金融資産が300万円以下で、居住地以外に土地・建物を所有していない
- 同じ世帯でほかに給付金を受給して訓練を受けている人がいないこと
- 過去6年以内に職業訓練受講給付金を受給していないこと
など
なお、給付金の受給条件を満たさない場合でも、無料の職業訓練を受講できる場合があります。詳しくは「職業訓練とは?」で解説しています。
働きながら取るには?
働きながら研修を修了するには、無理なく継続できるスケジュールで受講することが大切です。
週何時間のクラスを選択するかにもよりますが、修了には一般的に6ヶ月以上かかります。そのため受講を始めるにあたっては、業務の繁忙期や自身のキャリアステップを考慮して予定を検討しましょう。
介護過程Ⅲと医療的ケアはスクーリング必須ですが、ほかの科目は通信でも受講できます。在職中の人は、自宅での受講と通学を組み合わせて学習を進めるのもおすすめです。
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4.介護職でキャリアアップを目指そう
介護職員実務者研修を修了すると、さまざまな要介護者に介護を提供できる知識・技術を身につけられるとともに、介護福祉士・サービス提供責任者への道も開かれます。介護職としてのスキルアップ・キャリアアップを考えている人は、ぜひ取得しておきたい資格です。