改正育児・介護休業法で何が変わる? 男性の育児休業など改正ポイントを解説!

2021年に育児・介護休業法が改正され、2022年4月1日より段階的に施行されます。育児休業に焦点を当てた今回の改正で何が変わるのか、5つのポイントをご紹介します。

改正育児・介護休業法で何が変わる? 男性の育児休業など改正ポイントを解説!

育児・介護休業法とは

育児・介護休業法(正式名称:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)とは、少子高齢化をはじめ、共働き世帯が増えたにも関わらず女性の家事・育児の負担が大きいことを背景に、育児や介護と仕事を両立しやすい職場環境を整えるために定められた法律です。

労働者にとって育児や介護をしながらでも働き続けられる環境を、事業者にとって人材の雇用を維持できる環境を目指し、次のような制度を設けています。

これまでの育児・介護休業の制度(改正前 2022年1月現在)

育児の支援制度 介護の支援制度
・産前産後休業
・育児休業
・子の看護休暇など
・介護休業
・介護休暇など
育児・介護共通の支援制度
・所定外・時間外労働の制限
・深夜業務の制限
・時短勤務制度
・男性の育児制度活用など

改正の背景

男女ともに家庭と仕事を両立できる環境を目指す育児・介護休業法。しかし育児休業の取得率では男女で大きな差が見られます。男性の取得率は年々上昇しているものの、依然として多くの方が取得できていないのが現状です

男女別 育児休業取得率の推移
厚生労働省|令和2年度雇用均等基本調査より作成

一方で女性の育児休業の取得率は80%以上で推移しており、一見制度が活用されているように見えます。しかし第一子の出産を機に退職する女性の割合は2014年時点で46.9%となっており、男女ともにまだまだ育児と仕事の両立が難しいと言えます。こうした状況を改善すべく、育児休業に焦点を当てた今回の改正がおこなわれました。

改正のポイント5つ

今回の改正は、産後パパ育休の創設をはじめ、誰もが育児休業を取得しやすい環境が整備される内容となっています。改正のポイントは主に5つで、2022年4月1日から3段階に分けて施行されます。

  改正ポイント 施行日
1 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備を義務化 2022年4月1日
2 育児休業の周知・取得意向の確認を義務化
3 有期雇用労働者の育児・介護休業の取得要件を緩和
4 産後パパ育休を新設、育児休業の分割取得が可能に 2022年10月1日
5 育児休業取得状況の公表を義務化 2023年4月1日

1. 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備を義務化(2022年4月1日施行)

労働者の育児休業に対する理解を深めることや、育児休業をスムーズに取得できる環境づくりが事業者に義務付けられます。具体的には以下のいずれかを実施しなければなりません

  • 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  • 相談窓口の設置など、育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備
  • 事業所内の育児休業・産後パパ育休の取得事例の収集・提供
  • 育児休業・産後パパ育休の制度と取得促進に関する方針の周知
*複数の実施が望ましいとされている
*産後パパ育休は2022年10月1日の施行後より対象

2. 育児休業の周知・取得意向の確認を義務化(2022年4月1日施行)

事業者は妊娠・出産を申し出た労働者に対して、育児休業に関する情報の周知取得意向の確認個別におこなわなければなりません

周知事項

  • 育児休業・産後パパ育休に関する制度
  • 育児休業・産後パパ育休の申し出先
  • 育児休業給付に関すること
  • 労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

周知・取得意向の確認方法

  • 面談(オンライン可)
  • 書面交付
  • FAXや電子メール(労働者が希望した場合のみ) など
*産後パパ育休は2022年10月1日の施行後より対象

なお「こういう制度があるけど、うちでは前例がない。あなたも取得しないよね?」といった、育児休業の取得を控えさせるような周知や取得意向の確認は認められません

また育児休業の申し出や取得を理由に、解雇する・退職を勧める・正職員からパートへ変更するなど労働者を不利益に取り扱うことは禁止されているほか、事業者は育児休業取得にまつわるハラスメントを防止しなければなりません。

tips|育児休業の申し出を拒否されたら?

事業者が労働者からの育児休業の申し出を拒否することは、法律で禁止されている違法行為です。もし育児休業を拒否した場合、次のような罰則が定められています。

  1. 厚生労働大臣から報告の要請・助言・指導・勧告を受ける
  2. 厚生労働大臣の勧告に従わなかった場合、企業名と違反内容が公表される
  3. 厚生労働大臣からの報告の要請に反した場合や虚偽の報告をした場合、20万円以下の過料が課される

3. 有期雇用労働者の育児・介護休業の取得要件を緩和(2022年4月1日施行)

契約職員などの有期雇用労働者に対して、育児・介護休業の取得要件が緩和されます。改正前の取得要件から「引き続き雇用された期間が1年以上」が撤廃され、これまでの雇用期間に関わらず育児・介護休業を取得できるようになります。

育児・介護休業法の取得要件(有期雇用労働者)

  • 【撤廃】引き続き雇用された期間が1年以上
  • 子が1歳6ヶ月になるまでに契約満了が明らかでない

4. 産後パパ育休の創設、育児休業の分割取得が可能に(2022年10月1日施行)

通常の育児休業とは別に、主に男性を対象とした産後パパ育休が創設されます。さらに通常の育児休業に関しても、分割取得が可能になる延長の開始日が柔軟化されるなど、各家庭の状況に合わせて取得しやすくなります。

比較|通常の育児休業(改正前)・通常の育児休業(改正後)・産後パパ育休

  通常の育児休業
(改正前)
通常の育児休業
(改正後)
産後パパ育休
(新設)
対象期間
取得可能日数
原則子が1歳まで
(最長2歳)
原則子が1歳まで
(最長2歳)
子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能
申し出期間 原則1ヶ月前まで 原則1ヶ月前まで 原則2週間前まで
分割取得 原則不可 分割して2回取得可能 分割して2回取得可能
休業中の就業 原則不可 原則不可 労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で可能
1歳以降の延長 開始日は子が1歳、1歳半の時点に限定 開始日を柔軟化
1歳以降の再取得 不可 特別な事情がある場合に限り可能

〈産後パパ育休について〉

子の出生から8週間以内に4週間まで取得できます2回に分けての取得や通常の育児休業と併せての取得もでき、育児休業給付(出生時育児休業給付金)の対象となります。

また、日数に上限はありますが、休業中でも勤務先の仕事ができるため「仕事があるから休みづらい……」という方も育児休業を取得しやすくなります。

*労使協定を締結している場合。また労働者が合意した範囲内に限る
産後パパ育休の取得例

詳しくはこちらをご覧ください
産後パパ育休とは?

〈通常の育児休業について〉

これまで育児休業の分割取得は原則不可でしたが、改正により2回に分けて取得できるようになります。例えば父親が育児休業を2回に分けて取得し、母親の職場復帰に向けた準備期間をサポートするという使い方も可能です。

通常の育児休業の取得例

さらに、育児休業を延長する場合、開始日を柔軟に設定できるようになります。これまで延長分の育児休業開始日は、延長期間の初日である「子が1歳の時点」「子が1歳半の時点」に限られていました。改正後は延長期間の途中からでも育児休業を開始することができ、延長期間中に父親と母親が交代しながら育児休業を取得できるようになります。

育児休業延長分の取得例

5. 育児休業取得状況の公表を義務化(2023年4月1日施行)

これまでプラチナくるみんの認定を受けた企業のみ、育児休業の取得状況の公表を求められていましたが、改正後は従業員が1,000人を超える事業所に年1回の公表が求められます。公表内容、公表する取得率の算定期間、公表方法は次の通りです。

公表内容

  • 「男性の育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」

算定期間

  • 公表日の直前の事業年度

公表方法

  • インターネットなど、一般の人が閲覧できる方法

誰もが育児と仕事を両立できる環境を目指して

今回の改正では産後パパ育休の創設が注目されていますが、改正の目的は男女ともに育児と仕事を両立しやすい環境の整備です。改正をきっかけに、育児休業を取得する当事者だけでなく周囲の理解も深まることが期待されます。

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