登録販売者とは
登録販売者は2009年の改正薬事法(現在の薬機法)の施行により誕生した、一般用医薬品(市販薬)の“販売”を担う専門資格です。一般用医薬品の9割以上を占める第2類医薬品と第3類医薬品を販売することができます。
薬剤師が慢性的に不足していることや、薬剤師がいない店舗でも登録販売者がいれば医薬品を販売できることから、需要が高まっている資格です。
登録販売者として働くには、都道府県ごとに実施される試験に合格し、販売従事登録を受けなければなりません。
登録販売者の試験や仕事内容について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「あと1点」の悔しさをバネに掴んだ合格

──Jさんは3度目の挑戦で登録販売者に合格したんですね。
はい。1度目の受験はドラッグストアで働き始めた頃で「お薬のことをもっと知りたいな、資格を取って長く働きたいな」って思って受けたんですよ。
結果、1点足りず不合格……。2度目の受験でも1点足りなくて!
──それは悔しいですね……!
全体の正答率は70%を超えていたので尚更*。でもその悔しさが3度目の受験を頑張るエネルギーになりました。

──3度目の受験勉強はいつ頃からスタートしたんですか?
2度目に受けた試験(2020年12月)の自己採点をして「ダメかも……!」ってなったときから、次の試験(2021年8月)までずっと勉強を続けてました。
──約8ヶ月間、勉強を継続したんですね。
でも「この章はこの時期までに終わらせよう」とかは決めなかったんですよ。計画を立てても、生活するうちに崩れていくじゃないですか。決めたことがやれなくなると「だめだな〜」って思っちゃうんです。
どうしても勉強が身に入らないときはとりあえずテキストを開くとか「今日はここをやるぞ」って思ってても、気分が乗らないときは違うところをやるとか臨機応変に取り組んでました。
──なるほど。1日の勉強時間はどのくらいでしたか?
1時間くらいかな? 少ない時間でもとにかく毎日続けることを大切にしていました。
1度目・2度目の受験を振り返ると、「やる」って言っておきながらできていない日も多くて、「すごく勉強しました!」って感じではなかったんですよね。今回は絶対に受かりたかったので本当に毎日コツコツ頑張りました。
登販の勉強は暗記と根気! モチベは大好きな文房具
──勉強方法は1度目・2度目・3度目の受験でそれぞれ違いましたか?
そうですね。なにもわからない状態からスタートして、だんだん自分に合った勉強方法がわかってきました。こんな感じで──。

──なるほど。Jさんに合っていた3度目の勉強方法について詳しく教えてください。
過去問を解いたのと、ユーキャンのテキストを読破しました。


このテキストは表記が簡素化されていてわかりやすかったです。コンパクトなのでいつもバッグに入れて持ち歩いていましたね。
あと、厚生労働省から出ている「試験問題作成に関する手引き」も使いました。出題範囲が全部載っているので覚え込む感じです。

こんなふうに手引きを片面印刷してファイリングすると、片面にマーカーをひいて、もう片面に書き込めるんです。
マーカーや書き込みでいっぱいになったら、また印刷して新しいファイルを作って……っていうのを3周くらいやりましたね。

──薬学系は暗記が多いイメージですが、登録販売者の勉強も暗記がメインですか?
まさに暗記と根気です(笑)。
私の場合、大好きな文房具が根気強く続けるモチベーションになりました。「このペンはあの分野で使おう」「昨日はこの色だったから今日はこの色かな!」って気になったものを買っては使い、勉強を楽しんでましたね。
──Jさんお気に入りの文房具は?
このジェルボールペンがすごく書きやすいです。太さも色もバリエーション豊富なので暗記でもよく使ってて──20本くらい消費しました(笑)。

記憶力を維持するEPA・DHA系のサプリも飲んでました。50歳なので覚えるにも限度があって。働いているときも品出ししながら「これ良さそう」って目星をつけて、いろいろ試してました。
──Jさんなりの暗記のコツはありますか?
身近なことや得意なことと紐付けながら覚えました。ノートを何冊も使って“書いて覚える”こともしましたが、覚えきれないこともあって。
──身近なことや得意なことは、例えばどんな?
例えば身近なことだったら……あるとき、ひどい肩こりで処方された薬が葛根湯だったんです。「あれ、葛根湯って風邪薬なんじゃ?」って調べてみると「あ、血流を良くする効果があるんだ」ってわかって。
私自身、体が弱く薬にお世話になることが多いので、その日の体調と紐付けると成分を覚えやすかったです。胃が不調な日だったら「どうして胃が不調になるのか、それを解消する成分は?」みたいに。
YouTubeで苦手克服! ネットの繋がりに支えられる
──登録販売者の試験分野は5章ありますが、苦手な章はありましたか?
1章「医薬品に共通する特性と基本的な知識」
2章「人体の働きと医薬品」
3章「主な医薬品とその作用」
4章「薬事関連法規・制度」
5章「医薬品の適正使用・安全対策」
2章と4章が本当に苦手で!
2章は胃とか肝臓とか、見えない身体の構造を理解するのが難しくて。4章は法律が絡むので難しく感じましたね。
──苦手な章はどんな対策を?
YouTubeを見ました。
登録販売者さんがやっているチャンネルもあれば、薬剤師さんがやっているチャンネルもあって。勉強して試験に受かった先輩たちだからこそ、わからない人のつまずく部分を押さえていてわかりやすかったです。
Jさんが参考にしたチャンネル
動画の長さもちょうど良いですし、過去問・テキスト・厚生労働省の手引きとも組み合わせやすかったですね。
『やっけんちゃんねる』は試験対策だけじゃなくて登録販売者として働く人向けの動画もあって、今でも本当にお世話になっています。

──こういうチャンネルはどうやって見つけるんですか?
Twitterのフォロワーさんに教えてもらいました!
2度目の試験に落ちたときに「さすがにやばい」と思って、Twitterで「登録販売者試験に向けて頑張ってます!」ってツイートしたんです。
そしたら同じように頑張っている人からリプライをもらったり、フォローしてくれたり。仲間がたくさんいて勇気づけられました。ほかの受験者と繋がることで、参考になる情報がたくさん流れてきて。
──「一人じゃない」って感じますね。
本当に。フォロワーさんが一生懸命頑張っている姿が励みになりました。顔も知らないし言葉を交わしたわけでもないんですけどね。良い時代だなって感じます。
──でも1年近く勉強を続けていたら、集中力が切れちゃうこともありませんでしたか?
そうですね。私は図書館とかカフェとか、勉強する場所を変えてスイッチを入れるのが好きなんですけど、当時はコロナの影響でできなくて。
代わりに過去の旅行で貯まっていたポイントを使って、ホテルのデイユースを利用して勉強しました。いつもと違う環境でちょっとワクワクしながら勉強を楽しめましたよ。
──静かに集中できそうですね。勉強の息抜きにやっていたことは?
いろんな種類のコーヒーや紅茶を飲んでました。
飲みながら「勉強を頑張ってる私、えらい! すごい!」って自分に酔うというか、浸ってましたね(笑)。自分で自分を褒めてました。
逃げ出したくなった試験当日
──やっぱり試験当日は緊張しましたか?
もうむちゃくちゃ緊張しましたね。
私、周りを気にしやすいんです。「前の人の香水がきついな」とか「まだ試験始まったばっかりなのに隣の人、やたらと消しゴムで消してる……なんで?」とか「斜め前の人の貧乏ゆすり気になるな〜」とか。
試験も難しくて、本当に途中で棄権して帰りたくなっちゃいました(笑)。

──そんなに! どう乗り越えたんですか?
「今自分が頑張れば、きっと誰かのためになる! これから頑張る人の励みになりたい! そのために楽しんでやろう!」って思い直しました。
今までも「無理かも」って感じたときこそ「楽しもう」って思うようにしてたんです。
登録販売者になって感じる大変さとやりがい
──登録販売者試験に合格して、周りからの反響はありましたか?
それが「やったー! 合格した!」ってツイートしたら、いいねが300を超えて!
普段ぜんぜんツイートしないからびっくりでした。通知がすごくてスマホ壊れたかと(笑)。共感してくれる人が多いんだなって嬉しくなりましたね。それだけ関心のある資格なんだなとも思いました。
──今回の受験を振り返って、合格の要となったのはどんなところでしょう?
一番は自分に合った勉強方法にたどりつけたところです。いろんな勉強方法や教材がありますが、結局どれが自分に合うかってやってみないとわからないんですよね。
今回は自分に合った勉強スタイルを確立して、やっぱり苦手な章はありますが、全体の知識を頭に入れることができたなと思います。
──実際に登録販売者として働いてみて、大変だと感じることはありますか?
自社ブランド商品の販売ですかね?
まだ資格者としては新人なので、自社ブランド商品の販売を推奨したり、CM等で名の知れたお薬から変えたりしてもらうのに、自分の勉強不足を全体的に感じてしまいます。
それに自社ブランド商品や薬は、季節やお客さんの数に売れ行きが左右されてしまう部分があるんです。お客さんの求めているものと、会社が求めているもののせめぎあいみたいな──コントロールが難しいと感じます。

──反対にやりがいを感じるのは?
勉強したことを活かして、接客でお客さんに提案できる選択肢が増えたことですね。
この前も高齢の方が「便秘気味で自力じゃ出せないから」と浣腸を買おうとしてたんです。でも浣腸も癖になりやすいので、お通じに良い食べ物や成分を教えてあげたんですよ。
そのときは薬の販売には直接繋がりませんでしたが、そのお客さんが次に会ったとき「おかげでスッキリしたよ〜! 教えてもらったようにヨーグルトも買ってるよ」って喜んでくれたのが嬉しくて。薬かどうかに関わらず、お客さんにとってベストなものを選んでもらえればいいかなって思います。
──信頼関係の構築ですね。
親身になることで「じゃあ今度はこれを買ってみようか」って薬の購入に繋がることもあると思いますし、なにかあったときに頼ってくれるだろうなって。
「終わりがないから楽しい」登録販売者のすゝめ
──Jさんが思う、登録販売者の資格を取る魅力はなんでしょう。
勉強で得た知識は自分を裏切らないですし、資格を活かして長く働けることです。
あとは日々研鑽……合格のために一生懸命勉強したけど、合格してからも資格を活かすために勉強しなきゃいけないところが面白いなって思います。
資格を取ってからがスタートなんですよね。今回合格して、試験範囲を全部網羅したつもりでいても、テキストや手引きを見直すと今でも「あ、そうなんだ」って思う部分が出てくるんですよ。どうしても忘れてしまうことってあるので、何回でも勉強を楽しめます(笑)。
──終わりがないからこそ楽しいんですね。
私、もっといろんな人に登録販売者という資格を知ってほしいんです。
自分が受験するときに、なかなかほしい情報にたどりつかなくて困ったし、自分に合った勉強方法を見つけるまでに時間がかかったので。私の経験がこれから受ける人の参考になれば嬉しいです。
働くお母さんたち、50歳以上の方たちの夢と希望になれたら幸いです!