1.MSとは
2.MSの働く場所と仕事内容
2-1.仕事内容
2-2.MRとの違い
2-3.医薬品卸の数・従業員規模
3.MSになるには
3-1.資格は必要?
3-2.MSの人数は減少傾向
4.大手医薬品卸売会社の平均年収
5.最後に
1.MSとは
医薬品卸売会社の営業職のことをMS(Marketing Specialist)といいます。日本語では、医薬品卸販売担当者と訳され、医薬品の流通と情報提供を担います。
MSが取り扱う医薬品は、以下のように分類されています。
医薬品の分類と販売方法
医薬品の分類 | 販売方法 | |||
---|---|---|---|---|
薬局医薬品 | 医療用医薬品 | 処方箋医薬品 | 対面販売 | |
処方箋医薬品以外の医療用医薬品 | ||||
薬局製造販売医薬品 | 特定販売※可 (毒薬・劇薬を除く) | |||
OTC医薬品 | 要指導医薬品 | ダイレクトOTC・スイッチ直後品目、毒薬、劇薬 | 対面販売 | |
一般用医薬品 | 第1類医薬品 | 特定販売可 | ||
指定第2類医薬品 | ||||
第2類医薬品 | ||||
第3類医薬品 |
医療用医薬品は、原則として医師の処方箋にもとづき処方される医薬品です。9割以上は製薬企業から医薬品卸売会社を経由して医療機関や薬局に流通し、残りは製薬企業から直接医療機関や薬局に流通します。
OTC医薬品は医師の処方箋がなくても薬局や一部はインターネットでも購入できる医薬品です。副作用の程度により要指導医薬品と一般用医薬品(第1類、指定第2類、第2類、第3類医薬品)に分類できます。一般用医薬品の半分は製薬企業から医薬品卸売会社を経由して薬局・ドラッグストアに流通し、残り半分は製薬企業から直接薬局・薬店に流通します。

2.MSの仕事内容・働く場所
2-1.仕事内容
MSの仕事は、製薬企業から仕入れた医薬品や医療用材料、医療機器などの製品を医療機関や調剤薬局などに販売することです。また、中立的な立場から情報提供をおこない、それぞれのニーズに合わせた製品を提案することも大事な役割です。
そのため、メーカー別の製品の特徴だけではなく、医療制度や疾患に関する幅広い知識が必要となります。また、MSは医療機関や薬局と販売価格を交渉する立場でもあるため、原価や利益に関する知識も求められます。
2-2.MRとの違い
MSと混同しやすい職種としてMR(医薬情報担当者)があります。両者の違いを整理すると、MSはMarketing Specialistの略で医薬品卸売会社の営業職。MRはMedical Representativesの略で、製薬企業の営業職です。
前者はMarketingの観点から医薬品の流通に携わるもの、後者はMedicalの観点から医薬情報の提供に携わるものと、意味合いが異なります。
業務上で明確に異なる点は、医薬品の価格決定権の有無です。
MRは医療機関や調剤薬局に対して、自社が製造する医薬品に関する情報を提供します。あくまで情報の伝達と収集が主な役割となるため、価格の交渉および決定はおこないません。
一方、MSは医療機関や調剤薬局に対して、自社が取り扱う医療品・医薬品を安定的に供給することが主な役割となるため、価格の交渉および決定もおこないます。
また、MRは自社の製品の特徴をMSに伝えたり、MSは営業活動から得た現場の声をMRにフィードバックしたりと、協力関係にあります。そのため、MRとMSで製品に関する打ち合わせをしたり、担当するエリア・施設への同行訪問をおこなうこともあります。
MS(医薬品卸販売担当者) | MR(医薬情報担当者) | |
---|---|---|
働く場所 |
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取扱品目 |
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価格交渉 |
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必要な知識 |
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▼MSとMRの違いについてはこちらの記事もご覧ください
2-3.医薬品卸売会社の数・従業員規模
厚生労働省の「医薬品・医療機器産業実態調査」によると、日本国内に医薬品卸売会社は約100社あります。
規模別のデータを確認すると、売上高50億円未満、従業員数100人以下の企業が約半数を占めている一方、売上高1,000億円以上、従業員数1,001人以上の企業も一定割合あることがわかります。

3.MSになるには
3-1.資格は必要?
MSになるために、特別な資格は必要ありません。しかしながら、業務上、医薬品全般を取り扱うことや医療従事者とコミュニケーションを取る必要があることから、薬学部をはじめとした医療系学部の出身者が重宝される傾向にあるようです。
3-2.MSの人数は減少傾向
日本医薬品卸売業連合会の調査によると、2024年6月1日時点における会員会社のMS数は約1万3,000人となっており、毎年減少傾向にあります。

参考:日本医薬品卸売業連合会| データ集
4.大手医薬品卸売会社の平均年収
売上高 |
従業員数 |
平均年齢 |
平均年収 |
|
---|---|---|---|---|
メディパルHD |
3兆5,587億円 |
単体183人 |
47.9歳 |
801万円 |
アルフレッサHD |
2兆8,585億円 |
単体51人 |
45.2歳 |
766万円 |
スズケン |
2兆3,865億円 |
単体3,176人 |
47.1歳 |
705万円 |
東邦HD |
1兆4,767億円 |
単体192人 |
47.3歳 |
609万円 |
平均年齢や平均年収は、管理部門などMS以外の職種も含むため、あくまで目安と捉えてください。
5.最後に
2018年におこなわれた薬価改定(医療費ベースで1.65%引き下げ)が、医薬品卸売各社の業績に影響を与えました。
また、政府は「平成28年12月20日 薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」により、これまで2年に1回だった薬価改定を、2021年から毎年おこなうこととしました。(2019年10月には消費税率10%への引き上げに伴う薬価改定、2020年4月には通常の薬価改定)。
経営環境の変化に対する、業界の活発な動きも見られます。
大手4社(メディパルHD、アルフレッサHD、スズケン、東邦HD)が調剤薬局事業を営む会社を傘下におさめたり、後発医薬品に関する合弁会社を設立(スズケンと東邦HD)したりするなど、医薬品卸事業の枠組みを超えた垂直・水平統合の動きが進みました。
また、ITの導入で物流システムが改善されたり、AIの活用でMS・MRが取得したデータが解析されたりすることで、従来のルーチンワークは見直され、現場のMS・MRにはより生産性の高い仕事が求められるでしょう。
このような過渡期において、医薬品業界で成長してみたい方はぜひMSや関連職種のMRへの就職・転職にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。