医療ヘルスケア業界におけるインセンティブとは? 実例・メリットなどを解説

働くうえでのモチベーションを大きく左右するインセンティブ。今回はそんなインセンティブの意味、実例、メリット・デメリットなどを解説します。

インセンティブ アイキャッチ

1.そもそもインセンティブとはどういう意味?

インセンティブ(incentive)は人々の行動を決定させたり変化させたりする刺激・要因・動機付けを意味します。

ビジネスの場においては、従業員のモチベーションを維持・向上させる目的で導入されており、従業員の成果に応じて金銭や物品などさまざまな報酬をインセンティブとして支給します。

一般的な賞与やボーナスとは別制度として設けている企業が多く、毎月(もしくは半期・四半期ごと)の従業員の成績に応じて基本給に上乗せして支給されるケースが多く見られます。

また企業によっては「インセンティブ」ではなく、「歩合制」や「出来高制」といった名称が使われていることもありますが、多くの場合はインセンティブと同様の制度を意味しています。

なお、「代理店が販売した商品一つ当たりに付き、一定額の報酬・手数料を支払う」というシステムも「代理店インセンティブ(代理店マージン)」などと呼ばれますが、本記事では「従業員に対するインセンティブ」について解説していきます。

完全歩合制は違法?


固定給が一切なく、成果報酬だけの給与体系を完全歩合制と言いますが、「雇用している従業員」に対しては違法となっています。

雇用している従業員に対しては労働時間に応じて一定の賃金を保証しなければならないと、労働基準法で定められているためです。

一方で美容師やエステティシャンなどに多い業務委託やフリーランスなどの働き方の場合はこの法律が適用されず、完全歩合制となる契約もあるため注意が必要です。

・金銭以外のインセンティブ

インセンティブと聞くと「金銭的な報酬」をイメージする人が多いかと思いますが、実はそれだけではなく、企業によってさまざまなインセンティブ制度が導入されています。

ここで金銭以外のインセンティブの例を見てみましょう。

<物品の支給>

金銭以外にも何かしらの物品がインセンティブとして支給される場合があります。インセンティブとなる物品は高価な腕時計や万年筆、ギフト券など企業によってさまざまです。

<ストックオプションの付与>

自社の株をあらかじめ設定された価格で取得できる権利のことをストックオプションと呼びます。自社の株価が上がったタイミングでストックオプションの権利を行使し売却することで、設定された価格と株価上昇分の価格との差を利益として得られる制度です。

<独自の社内ポイントの付与>

企業独自のポイントを導入し、インセンティブとして付与する制度です。従業員は獲得したポイント数に応じて社内サービスを利用可能になったり、人事評価に反映されたりします。

<旅行の招待>

全従業員を対象とする従業員旅行や慰安旅行とは違い、目標を達成したり成績が優秀だったりした一部の従業員のみをインセンティブの報酬として旅行へ招待する制度です。大手旅行代理店などではインセンティブツアー専用のパッケージなども販売されています。

<表彰制度>

金銭や物品などの物質的な報酬以外にも、「モチベーションを向上させるための取り組み」は広義の意味でインセンティブとして考えられます。そのため、従業員の仕事に対する努力や成果を評価し、表彰する制度は「社会的なインセンティブ」と言えます。

<役職の付与>

こちらも表彰制度と同じく「社会的なインセンティブ」と言えます。年功序列ではなく、成果・試験の通過・目標の達成などに応じて、相応の役職が付与されます。

2.医療・福祉・美容系でインセンティブがある職種例

インセンティブがある職種として一般的に営業職のイメージが強いかと思いますが、実はジョブメドレーで掲載している職種の一部にもインセンティブは存在します。

その例をいくつかご紹介します。

・柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師

柔道整復師などが働く接骨院や整体院などでもインセンティブが導入されている場合があります。個人の指名料や自由診療の売上の一部をインセンティブとして還元しているケースが代表的です。

インセンティブがある柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師の給与例

  • 月収 250,000円〜
  • ・基本給 230,000円
  • ・資格手当 20,000円
  • ・インセンティブ 個人売上の25%を支給

・歯科衛生士

歯科医師はインセンティブを導入している場合が多いのですが、歯科衛生士でも職場によっては導入しているケースがあります。担当患者数や案内した自費診療の売上に応じたインセンティブの支給が代表的です。

インセンティブのある歯科衛生士の給与例

  • 月給 250,000円〜
  • ・基本給 150,000円
  • ・資格手当手当 50,000円
  • ・固定残業代 50,000円(30時間分、超過分は別途支給)
  • インセンティブ 診療人数1名につき100円~300円加算

・訪問看護師

訪問看護ステーションの多くでもインセンティブ制度が導入されており、「訪問実績に応じて給与を上乗せする」というケースが一般的です。

インセンティブがある訪問看護師の給与例

  • 月給 275,500円 〜
  • ・基本給 247,500円
  • ・固定残業代(15時間分) 28,000円
  • ・オンコール手当 5,000円/回
  • インセンティブ 月80時間の訪問を超えた場合、1時間につき4,000円の支給
  • ※ 例:1日5時間(月の出勤日数20日間)の訪問実績で80,000円支給

・理容師、美容師、エステティシャン、ネイリスト、アイリスト

美容師やエステティシャンといった美容職種においてはインセンティブを導入している企業が多く、担当客数・指名件数・個人売上などに応じて、インセンティブが支給されるケースが代表的です。

インセンティブがある美容師の給与例

給与は【歩合給】と【最低保証給】のいずれか高額なほうを適用

【歩合給】

次の合計

  • ・指名売上の40%
  • ・フリー売上の30%
  • ・店販売上の15~20%

【最低保証給】

  • ・基本給 170,000円
  • ・固定残業代 10,000円(10時間分、超過分は別途支給)
  • ・店販売上の15~20%

3.インセンティブの体験談

なるほどジョブメドレーの過去のインタビューから、インセンティブを支給されていた方の体験談をご紹介します。

29歳 女性 鍼灸師の場合(漢方内科クリニックから鍼灸院へ転職)

──転職して給料は上がりましたか?

1社目の漢方内科クリニック給料だけはよかったので、給料は転職して下がりました。

手取りで21万円くらい。賞与は年2回10万円ずつくらいでした。ただ、いまは歩合給になったんです。

──歩合給のほうが給料はいいんですか?

はい。給料が月20万円くらいで、3ヶ月に一度インセンティブがドカっと入る感じです。ただ、代わりに賞与がなくなります。

たとえば、1月は20万円、2月は20万円、3月はインセンティブ含めて50万円という感じです。年収は360万円くらいになると思います。

──【転職者インタビュー】鍼灸師5年目27歳/転職1回より引用

26歳 女性 アイリストの場合

──そんなに過酷な仕事だとは思いませんでした。アイリストになって給料は上がりましたか?

かなり上がりました。アイリストの給料って、一般的な美容室と比べてもいい方だと思います。

私の場合は未経験だけど基本給が23万円スタートで、さらに指名料のインセンティブがプラスで入りました。

その職場には6年いたんですが、最後の1年は個人事業主として独立したので、さらに稼げましたね。

──【転職者インタビュー】アイリスト7年目 26歳/転職3回(美容師→アイリスト)より引用

27歳 女性 美容部員の場合

──目標にはどんな種類があるんですか?

「売上」「新客数」の2つの目標があって、達成するとインセンティブが入ります。

3ヶ月連続で店舗売上を達成すると、全員に15,000円ずつ。月ごとに個人の新客目標を達成すると、5,000円がもらえます。

──売ったら売った分だけインセンティブが加算されるわけではないんですね。

そうですね。新客数を達成しても一律で5,000円なので、カウンター内で大きく差はつかないです。

あとは年1回、全社のキックオフイベントがあって、店舗か個人で表彰されると、そこでも商品や賞金がもらえます。

──【転職者インタビュー】美容部員3年目 27歳/転職2回(百貨店→異業種→海外メーカー)より引用

4.インセンティブのメリット・デメリット

・メリット

インセンティブの一番のメリットは「モチベーションの向上」ではないでしょうか。

目に見える報酬は日々のモチベーションに確実に影響しますし、本人の努力や能力次第で大幅な給与アップも目指せます。

またインセンティブによる報酬は、勤続年数・役職・経験などに左右されることが少なく、個人の成果に対して定量的に評価してもらえるため、「正当な評価を受けている」と納得感を持って仕事と向き合えるでしょう。

・デメリット

インセンティブが毎月の給与と直結している場合はデメリットにもなり得ます。

成果によっては大きな報酬が期待できる一方、本人の能力や努力が報われず成績が伸び悩んだ場合には給与が大幅に下がってしまいます

またインセンティブが設定されている仕事は、成果が重視される傾向にあるため、大きなプレッシャーに繋がることもあります。

6.インセンティブにおける税金の取り扱い

職場から金銭的なインセンティブを支給された場合、基本的には給与所得として処理されます。

イメージしづらいかもしれませんが、物品支給の場合も原則として給与所得として処理されるため、給与から控除されるので注意が必要です。なお、換金性に欠けるものなどは非課税となります。

例えば1万円分の商品券がインセンティブとして支給された場合は、通常の給与所得と同じく「1万円分の現金」と同様に課税されます。

インセンティブが飲み会代や食事会代の場合

例えばチーム目標達成後の打ち上げ代や食事会代などがインセンティブとして支給された場合、その内容や金額に正当性があれば経費として計上され非課税となります。

6.最後に

インセンティブ制度は個人の成果に応じて報酬を得ることができますが、一方で成果や結果を重視されることが多いため大きなプレッシャーとなってしまうこともあります。

インセンティブ制度を導入している企業への転職を考える場合は、メリットとデメリットをしっかり考慮したうえで検討しましょう。

なおジョブメドレーではインセンティブを導入している求人を探すこともできます。求人検索画面の「特徴から選択」から「歩合制あり」を選択、もしくはフリーワード検索欄にて「インセンティブ」「歩合給」といったキーワードで検索してみましょう。

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