【給与明細の見方】勤怠・支給・控除の各項目について解説!

今回は意外に知らない? 給与明細の勤怠・支給・控除の各項目の見方を解説します!

給与明細の見方

1. 給与明細の構成

給与明細の構成

給与明細は勤怠支給控除の3つのパーツから構成されています。勤怠には給与計算の基となる勤務状況、支給には勤務先から支払われるお金、控除には天引きされるお金が記載されています。この総支給額から総控除額を差し引いた金額が手取り給与(差引支給額)となります。

2. 「勤怠」に関する項目

給与明細の勤怠項目

「勤怠」には給与計算期間(月給制の場合は1ヶ月間)の出勤・欠勤日数や実働時間、残業時間などが記載されています。給与は勤怠情報を基に計算されますので、実際の勤務状況を正しく反映しているか確認しましょう。

主な勤怠項目
所定就労日 労働義務のある日数。
出勤日数 出勤した日数。
欠勤日数 欠勤した日数。原則、給料の支払い対象とならない
特休日数 勤務先の定める特別休暇(特休)を取得した日数。慶弔休暇、リフレッシュ休暇など。
有休日数 有給休暇を取得した日数。給料の支払い対象となる
有休残日数 給与計算の締め日における有給休暇の残日数。
遅刻早退時間 遅刻や早退により働けなかった時間。
実働時間 働いた時間。
残業時間 労働基準法で定められた労働時間(法定労働時間=1日8時間)を超えて働いた時間。
休日労働時間 労働基準法で定められた休日(毎週1日または4週間を通じて4日以上)に働いた時間。
深夜勤務時間 22時〜翌5時の間に働いた時間。

※表示する項目や名称は勤務先の書式によって異なります。
各種休暇や欠勤、遅刻、早退の取り扱いについては勤務先の就業規則を確認してください。

用語解説|残業と時間外労働の違いとは?

残業とは雇用契約で定められた労働時間(所定労働時間)を超えて働くこと、時間外労働とは労働基準法で定められた労働時間(法定労働時間)を超えて働くことです。フルタイム勤務の場合、所定労働時間は法定労働時間の1日8時間、週40時間であることが多いため、この記事では断りがない限り「残業=時間外労働」の意味で解説します。

3. 「支給」に関する項目

給与明細の支給項目

「支給」には支払われる給与の内訳が記載されていますので、雇用契約や勤怠を正しく反映しているか確認しましょう。主な項目は次のとおりです。

基本給

基本給とは、各種手当(残業手当、通勤手当、役職手当など)やインセンティブ(業績給、歩合給、報奨金など)を除いた給与のベースとなる固定賃金です。金額は仕事内容や能力、経験、勤続年数、年齢などを考慮して決められることが一般的です。

なお基本給のことを給料(月給)、これに各種手当やインセンティブを加えた総支給額を給与(月収)と呼びます。

給料(基本給)より給与を気にする方も多いかもしれませんが、基本給は年収を左右する重要な賃金です。例えば、時間外労働や深夜労働、休日労働に対する割増賃金は基本給を基準に計算されます。さらに賞与額が「基本給◯ヶ月分」と定められているケースも多くあります。基本給は労働条件通知書や雇用契約書で定められた金額と相違ないか必ず確認しましょう。

用語解説|固定残業手当(みなし残業代)とは?

求人票や労働条件通知書に「基本給(固定残業手当あり)」「基本給(固定残業手当◯時間分含む)」と記載されているのを見たことがあるのではないでしょうか? 固定残業代とは残業が一定時間発生すると想定して支払われる固定賃金のことで、みなし残業代とも呼ばれます。

例えば「固定残業手当 20時間分 3万円」という雇用契約の場合、実際にその月の残業時間が20時間に満たなくても固定残業手当3万円が満額支払われます。20時間を超えて働いた場合には残業手当が別途支払われます。

残業手当

残業手当とは、雇用契約で定められた労働時間(所定労働時間)を超えて働いた場合に支払われる手当です。

労働基準法第37条では、法定労働時間である1日8時間、週40時間を超えて働いた場合に、25%の割増賃金を支払うことが義務付けられています。つまり所定労働時間が1日8時間であれば、残業時間のすべてが割増賃金の対象となります。またパートやアルバイトであっても、1日8時間、週40時間を超えて働いた場合には割増賃金が支払われます。

休日手当

休日手当とは、法定休日に働いた場合に支払われる手当で、35%の割増賃金を支払うことが義務付けられています(労働基準法第37条)。

法定休日とは雇用主が従業員に最低限与えなければならない休日のことで、1週間に1日もしくは4週間に4日と定められています(労働基準法第35条)。次のように定めることが一般的ですが、勤務先の法定休日がいつか知りたい場合は就業規則やカレンダーを確認してください。

・原則休日制(週休2日制)の場合

土日が休日の場合は就業規則で土日のどちらかを法定休日に設定します。クリニックなど平日に定休日がある場合は、その曜日を法定休日にすることもできます。

・変形休日制(4週8休制)の場合

4週8休制の場合は就業規則で月の起算日を決め、その日から4週間以内に4日間の法定休日を設定します。

夜勤手当

夜勤手当(深夜手当、深夜勤務手当)とは、22時〜翌5時の間に働いた場合に支払われる手当で、25%の割増賃金を支払うことが義務付けられています(労働基準法第37条)。

医療・介護施設で夜勤が発生する勤務体系の場合は「夜勤1回につき5,000円」などと定額で支給されることが一般的です。日本看護協会の調査によると、夜勤手当の平均額は三交代制の準夜勤で約4,000円、同深夜勤で約5,000円、二交代制の夜勤で約1万1,000円となっています。

看護職員の夜勤手当の平均額
三交代制 準夜勤 4,141円
三交代制 深夜勤 5,033円
二交代制 夜勤 11,026円

*参考:公益社団法人 日本看護協会|2019年 病院看護実態調査

そのほかの支給項目

そのほかにも次のような支給項目があります。名目や支給要件、支給金額は勤務先によって異なりますので、詳細は就業規則を確認してください。

そのほかの主な支給項目
通勤手当 通勤に定期代やガソリン代などの費用がかかる場合に支払われる手当。月15万円までは非課税
資格手当 所定の資格を保有している場合、もしくは取得した場合に支払われる手当。
役職手当 所定の役職に就いている場合に支払われる手当。
住宅手当 所定の居住費がかかる場合に支払われる手当。
家族手当 所定の扶養家族がいる場合に支払われる手当。
皆勤手当 無遅刻・無欠勤の場合に支払われる手当。
精勤手当 遅刻・欠勤数が所定以下の場合に支払われる手当。

*参考:国税庁|通勤手当の非課税限度額の引上げについて

4. 「控除」に関する項目

給与明細の控除項目

「控除」には給与から天引きされる社会保険料や税金の内訳が記載されていますので、納めるべき保険料や税金が未払いになっていないか確認しましょう。主な項目は次のとおりです。

社会保険料

けがや病気、失業などの不測の事態にに備えて社会全体で支え合う仕組みのことを社会保険と呼び、その保険料は給与から天引きされます。

代表的なものに労災保険雇用保険健康保険(介護保険)厚生年金が挙げられ、この4つの社会保険に加入できることを一般的に社保完備と呼びます。なお、現在(2020年11月)ジョブメドレーに掲載中の求人の8割弱が社保完備となっています。

これらの社会保険に加入していれば、給与から次の保険料が天引きされているはずです。

給与から天引きされる社会保険料
雇用保険 失業したときに失業給付などを受け取れる。従業員が負担する保険料は賃金の0.3%(農林水産業、清酒製造業、建設業の場合は0.4%)。
健康保険 業務外のけがや病気の治療にかかった医療費の負担が軽減される。従業員が負担する保険料は標準報酬月額*14〜5%程度。
※保険料率は加入している健康保険によって異なる。
介護保険 介護サービスの利用料の負担が軽減される。40歳になると介護保険の被保険者となり、保険料を納めなくてはならない。従業員が負担する保険料は標準報酬月額*10.8〜0.9%程度。
※保険料率は加入している健康保険によって異なる。
厚生年金 65歳以上になったときや障害認定を受けたときに年金を受け取れる。従業員が負担する保険料は標準報酬月額*19.15%(令和2年9月〜*2)。
※厚生年金保険は日本の年金制度の2階部分に当たるため、厚生年金の保険料には1階部分である国民年金の保険料が含まれている。
※公務員の場合は共済年金となる。

*1標準報酬月額:社会保険料の計算を簡略化するためのテーブル。毎年4〜6月に支払われた給与を基に健康保険の場合は50等級、厚生年金の場合は32等級に区分される。
*2参考:日本年金機構|厚生年金保険料額表

社会保険は強制加入の保険ですので、従業員が加入要件を満たす場合には雇用主が必ず加入させなければなりません。加入要件を満たしているのに保険料が未払いの場合(=加入していない場合)は、勤務先に確認しましょう。

なお、加入要件は次のとおりです。

労災保険は業務上や通勤時のけがや病気、障害、死亡に対して保障する保険です。安心して働いてもらうために、雇用主にはすべての従業員を労災保険に加入させる義務があります。保険料については雇用主が全額負担しますので、従業員の給与から天引きされることはありません。

雇用保険については次の条件を満たす従業員が加入対象となります。正社員や契約社員、パート・アルバイトなどの雇用形態は問いません。

雇用保険に加入させなければならない従業員

・1週間の所定労働時間が20時間以上
・31日以上雇用される見込みがある

*参考:厚生労働省|人を雇うときのルール

健康保険と厚生年金については、次の強制適用事業所で働く従業員が加入対象となります。パートやアルバイトであっても、1週間の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数が正社員の3/4以上であれば加入させなければなりません(日雇いアルバイト、短期アルバイト、季節労働などは除く)。

健康保険と厚生年金に加入しなければならない事業所(強制適用事業所)

・国、地方公共団体、法人の事業所
・従業員が常時5名以上いる個人事業所(ただし、理美容院エステサロンなどのサービス業は対象外)

*参考:厚生労働省|人を雇うときのルール

税金

給与から天引きされる税金は所得税と住民税の2種類です。

給与から天引きされる税金
所得税 所得に応じて税率が変わる(累進課税)。給与所得者の場合、給与から概算で源泉徴収されるが、払い過ぎがあれば年末調整をおこなうことで還付してもらえる(給与額の変動が大きい場合や扶養親族が減った場合は逆のケースもある)。
住民税 定額で課税される均等割(5,000円)と前年の所得に応じて課税される所得割(10%)から成る。前年所得のない社会人1年目は住民税が天引きされない

そのほかの控除項目

そのほかにも次のような控除項目があります。勤務先によって制度の有無、内容が異なりますので、詳細は就業規則を確認してください。

そのほかの主な控除項目
生命保険 雇用主が契約者の保険(団体保険)に加入する場合、その保険料が天引きされる。
財形貯蓄 勤務先の財形貯蓄制度を利用する場合に、その積立金が天引きされる。
従業員持株会 勤務先の持株会に加入する場合に、その積立金が天引きされる。

5. 給与明細のよくある質問

最後に給与明細のよくある質問にお答えします。

Q1. パートで扶養内で働きたいのですが、給与明細のどこを確認すればいいですか?

A1. 所得税の場合は「課税対象累計額」、社会保険の場合は「総支給累計額」を確認してください。

所得税の配偶者控除を受けたい場合は、通勤手当などの非課税となる手当を除いた「課税対象累計額」を確認してください。健康保険や厚生年金保険の扶養内で働きたい場合は、通勤手当などを含む「総支給累計額」を確認してください。

なお、扶養についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ご確認ください!
>扶養控除とは? 配偶者控除や「103万円の壁」などを解説

Q2. 給与明細をもらっていない場合はどうすればいいですか?

A2. 給与明細には交付義務があります。担当部署に確認を!

給与明細(支払明細書)を渡すことは所得税法第231条で義務付けられています。

「居住者に対し国内において給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その給与等、退職手当等又は公的年金等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。」

所得税法第231条

これはパート・アルバイトなどの雇用形態は問いません。もし「給与明細をもらっていない」「もらったことがない」という場合は、まず社内の担当部署(経理部もしくは総務部)に確認しましょう。それでも対応してもらえない場合は、管轄の労働基準監督署(労基)税務署に相談してみてください。

Q3. 給与明細は保管しておいたほうがいいですか?

A3. 給与明細は最低3年保管することをおすすめします。

給与明細は紙・データいずれの形でも構いませんので大切に保管しておきましょう。給料や残業手当の未払いがあった場合に3年前まで遡って請求できますので、最低3年は保管しておきたいものです。

*賃金の請求権の時効は2年間でしたが、2020年4月より期間が延長されました。

そのほかにも次のようなケースで給与明細を利用できます。

・確定申告やローン申請などで所得金額を証明しなければならないとき

源泉徴収票や所得証明書、住民税決定通知書(納税通知書)を利用するのが一般的ですが、これらの書類がない場合は給与明細を利用できます。

・厚生年金保険の加入期間を証明しなければならないとき

万が一年金記録が失われた場合、厚生年金の加入期間を証明するために利用できます。

6. まとめ

給与明細は雇用契約どおり、勤務実態どおりに賃金が支払われているかよく確認したうえで、最低3年間は保存する習慣をつけましょう。

給与明細のチェックポイントまとめ

・給与明細の「勤怠」は勤務実態を正しく反映しているか
・給与明細の「支給」は雇用契約や勤怠を正しく反映しているか
・給与明細の「控除」は納めるべき保険料や税金が未払いになっていないか
・給与明細は最低3年間保管する

この記事では給与明細に記載されている一般的な項目について解説しました。書式や表示項目は会社によって異なるため、給与明細の内容について不明点や懸念点がある場合は、勤務先の担当部署に相談してください。

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