この記事をまとめると
- 職業訓練とは、無料で受講できる公的な就職支援制度
- ハローワークで求職申し込みをした労働者が対象
- 生活支援として、失業手当または職業訓練受講給付金を受け取れる(条件あり)
目次
1. 職業訓練とは
再就職のための公的な就職支援
職業訓練とは、再就職のために必要な知識やスキルを身につけるための公的な就職支援制度のことです。正式名称は「公的職業訓練」ですが、単に「職業訓練」と呼ばれることが多く、「ハロートレーニング(ハロトレ)」という愛称もあります。
職業訓練には失業保険(失業手当)を受給している人向けの「公共職業訓練(離職者訓練)」と、失業保険の受給資格がない人向けの「求職者支援」の2種類があります。
原則無料で受講できる
職業訓練は基本的に無料で受講することができます(長期コースについては受講料が発生することがあります)。ただし、受講費以外のテキスト代や試験の受験料などは自己負担となります。
いずれにしても、民間のスクールなどに自費で通う場合に比べて、かなり費用を抑えてスキルアップを目指すことができます。
職業訓練の受講資格
職業訓練は働く意思のあるすべての人を対象とした制度ですが、具体的には下記の要件を満たす必要があります。
- ハローワークに求職の申し込みをしていること
- 労働の意思と能力があること
- 職業訓練などの支援をおこなう必要があるとハローワークが認めたこと
実際に受講する際の流れについては、4.職業訓練の流れで説明しています。
受講者数と就職率の推移
職業訓練の受講者数は、若干の変動がありますが10万人程度で推移しています。就職率(訓練修了3ヶ月後)は民間でおこなう委託訓練のほうが国実施の施設内訓練よりも低めではあるものの、いずれも7割以上となっており、スキルアップが就職に結びついていることがわかります。
2. 職業訓練で受けられる支援
職業訓練で受けられる給付金
職業訓練期間中の生活支援として、失業手当または職業訓練受講給付金を受け取ることができます。
公共職業訓練 (離職者訓練) | 求職者支援 | |
---|---|---|
対象者 | ・雇用保険(失業保険)の受給資格がある人 | ・雇用保険が適用されない離職者 ・フリーランスや自営業を廃業した人 ・雇用保険の受給が終了した人 ・一定以下の収入のパートタイムから正社員への転職を目指す人 ・雇用保険適用外で、働きながらスキルアップを目指す人 |
支給されるお金 | ・失業保険(おおむね離職前の給与の5〜8割程度) ・受講手当:日額500円(上限あり) ・通所手当(交通費)上限あり | ・職業訓練受講給付金(10万円/月) ・通所手当(交通費)上限あり |
支給条件 | ・就職の意思があり、かつ失業状態にあること ・離職前2年間で、通算1年以上雇用保険に加入していること | ・本人の収入が月8万円以下 ・世帯収入が月30万円以下 ・世帯の金融資産が300万円以下 ・住んでいる場所以外に土地や建物を所有していない ・同一世帯内に給付金を受給して職業訓練を受けている人がいない ・過去3年以内に、不正行為によって特定の給付金を受けたことがない ・過去6年以内に、職業訓練受講給付金の支給を受けていない |
訓練期間 | 3ヶ月〜2年 | 2ヶ月〜6ヶ月 |
訓練の出席割合については病気などやむを得ない理由かつ証明できる場合に実施日の2割までの欠席が認められていましたが、2023年4月から条件が緩和され、育児・介護をする人や求職者支援訓練基礎コース受講者は欠席理由を証明できない場合も認められるようになりました。
また、親や配偶者と同居していて一定の世帯収入がある場合や、フリーランスなどで働き雇用保険には加入していないものの一定の収入があるときは、職業訓練受講給付金を受けずに無料の職業訓練のみ受けることができます。
職業紹介・面接対策などの支援
キャリアに関する相談をはじめ、職業紹介や面接対策、応募書類の作成サポートなど、さまざまな就職支援を受けることができます。これらのサービスは職業訓練の前後を含めいつでも利用することができます。
託児サービス
職業訓練の中には就学前の子どもを無料で預かってくれる託児サービス付きのコースもあるので、小さなお子さんがいる場合に安心です。なお、託児サービス付きのコースがない場合でも、職業訓練の受講は保育が必要な事由に該当するため、認可保育園に預けることも可能になります。
3. 職業訓練のコース
職業訓練のコースの探し方
職業訓練のコースはハローワークインターネットサービスのWebページで検索することができます。
「どのコースを受講すればいいのかわからない」という場合は、ハローワークの窓口で職員に直接相談してみましょう。
ハローワークで受けられる医療・福祉・美容関連の訓練一覧
医療や介護、保育、美容関連の仕事に就きたいときには、次のような資格の取得を目指すコースもあります。
分野 | 取得できる資格の例 |
---|---|
医療 リハビリ | |
医療事務 | |
介護 | |
保育 | |
理容 美容 | |
そのほか | |
※受講期間の目安:・…1年未満、●…1年、★…2年
4. 職業訓練の流れ
STEP1|ハローワークで求職の申し込みをおこなう
まずはハローワークの窓口で求職の申し込みをし、職業相談をおこないます。
このときに職業訓練を受けたい旨を伝え、どのコースを受講するか相談します。これまでの経験やこれからやりたいことをきちんと伝えると、職業訓練を必要とする理由や就業への前向きな姿勢が伝わって良いでしょう。
ハローワークの窓口では、応募受付中の講座について入校案内などの資料をもらうことができます。お住まいの自治体で希望のコースが開講されていない場合は、ほかの自治体で開催されているコースに申し込むことも可能です。
なお、締め切り直前は窓口が混雑するため、初回の相談は余裕を持って行きましょう。
STEP2|受講申込書をハローワークに提出する
受講申込書に必要事項を記入し、ハローワークの窓口に提出します。職業訓練は申し込んだすべての人が必ず受講できるというものではありません。受講申込書をもとにまず書類選考がおこなわれますので、申込書には志望動機までしっかり記入しましょう。
STEP3|面接、筆記試験などの選考を受ける
書類選考に加え、面接や筆記試験がおこなわれる場合もあります。面接では受講の動機や就業への意欲をしっかりアピールできるよう準備しておきましょう。
STEP4|合格者説明会に出席し、受講のあっせんを受ける
選考に合格した人には、合格通知書と提出が必要な書類一式(誓約書、受講届、通所届など)が届きます。
その中に合格者向け説明会(オリエンテーション)の案内も入っています。この説明会を欠席すると「受講する意思がないもの」とみなされてしまいますので、必ず出席してください。
説明会では合格通知に同封されていた必要書類を提出し、受講上の注意について説明を受けます。提出書類に不備があると訂正印が必要になりますので、印鑑も忘れずに持参しましょう。
この説明会で受講指示書または受講推薦書を受け取り、これをもって「ハローワークから受講のあっせんを受けた」ことになります。
受講開始後も月に1回はハローワークに足を運び、給付金の申請をおこなう必要があります。
5. 就職・転職に職業訓練を活用しよう!
職業訓練は生活費の支援を受けながら、希望の仕事に就くために必要な知識やスキルを身につけることができます。スキル面での不安や、退職後の生活費の心配で転職活動をためらっている人は、ぜひ活用を検討してみましょう。
実際に公共職訓練を受けた方のインタビューも併せてご覧ください。
>【職業訓練体験談|前編】職業訓練を受けるまで、授業やお金のこと
>【職業訓練体験談|後編】誤算だらけの転職活動から「100点満点」の職場に出会うまで
参考
- 厚生労働省|あなたのしごと探しに、役立つスキルを。ハロトレ特設サイト
- 厚生労働省|ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)
- 厚生労働省|求職者支援制度のご案内