保育士とは?
保育士は名称独占資格であり、保育士として働くには保育士試験(筆記・実技)の合格が必要です。保育士試験の受験要件は最終学歴によって異なります。詳しくは「保育士になるには」をご確認ください。
なお、なるほどジョブメドレーでは、保育士の働き方や待遇などを紹介しています。こちらの記事もあわせてご覧ください。
>保育士になるには? 資格試験の内容、給料、仕事内容について知ろう!
話を伺ったのは、保育園に勤務する28歳のSさん

──新卒では保育ではないお仕事をされていたんですね。
そうなんです。私自身、もともと子どもや「子どもが好きなもの」が好きなんですけどね。
新卒のタイミングでは「好き」を仕事にするか迷ったこともあって、保育関係以外の仕事を選びました。
でもやっぱり子どもと関わる仕事がしたいなと思って、2020年の4月に今勤めている保育園の事務へ転職しました。
──なるほど。保育士資格を取ろうと思ったのはいつ頃ですか?
2019年の秋頃です。
今の保育園へ転職する際に、求人サイトなどで保育関係の仕事をたくさん見たんですが、やっぱり保育士資格が必須だったり重視していたりするところが多かったんです。
それから保育士資格を取得する方法を調べて「保育士試験に合格すれば取得できるんだ*。それなら受けよう!」と決意しました。
なので当初は2020年4月の試験を受験予定だったんですよ。
──2020年4月の試験は新型コロナウイルスの影響で中止になってしまいましたもんね……。
そうなんです。なので私が受けたのは筆記試験が2020年10月、実技試験が12月でした。今勤務している保育園で働きながらの受験勉強でしたね。
──ちなみに今の保育園では事務のお仕事をされているとのことですが、どんな仕事内容なんですか?
労務や採用をメインに、保育以外の仕事全般を幅広くやっています。
今は保育士資格を取得したので、保育士さんの手が足りないときにフォローに入るなど、少しずつ子どもたちと接する機会が増えていますよ!
試験対策【筆記編】──アプリ・テキスト・YouTubeでの勉強──
──まずは2020年10月に受けた筆記試験の対策について教えてください。いつ頃から対策を始めましたか?

受験を決意した2019年の秋から対策を始めました。
私の場合、まずは「保育士試験がどういうものか」という本当に基礎的な概要を知るところから始めました(笑)。YouTubeで検索して、試験の概要を説明している動画を見ましたね。
──働きながらの受験でしたが、一日の勉強時間はどのくらいでしたか?
片道30分の通勤時間を使っていたので毎日1時間程度です。休日も1時間勉強すればいいほうでした。
でも直前の時期は最大で5時間くらい勉強していましたね。
──通勤時間での勉強がメインだったんですね。どういった勉強方法だったんですか?
私は主にアプリ、テキスト、YouTubeを使って勉強していました。
アプリは過去問を解いたり暗記ものが対策できる「保育士過去問試験徹底対策」というものを使って、勉強の記録には「スタディプラス」を使っていました。

スタディプラスは勉強を記録するとほかのユーザーから「いいね」が貰えるので、モチベーション維持のためにも使っていましたね。
あとはYouTubeの解説動画を見ることと、テキストを読んで問題集を解くことを定期的にやっていました。保育士の試験は受ける人が多いこともあって、YouTubeの対策動画もたくさんあって助かりました。
スタディプラス:2020年9月~10月の記録

スタディプラス:2020年11月の記録

──勉強内容をノートにまとめる、といった作業はしていなかったんですね。
そうですね、机に向かって勉強することが好きじゃなくて……!
問題を解くために解答をノートに書き込むことはしましたが、勉強用にノートにまとめる作業はしませんでした。 テキストでピックアップされているポイントはマーカーでラインをひいてましたね。

──「暗記ものはひたすら書いて覚える」人もいますがSさんの場合はどうしてましたか?
暗記系は耳で聴いて覚える派です。
保育士の筆記試験では「保育所保育指針*」からいろんな問題が出るんです。なのでYouTubeの聴き流し動画を再生したり、自分のスマホのボイスレコーダーに録音した保育所保育指針の音声を聴き流したりして覚えていました。
筆記試験では保育所保育指針から単語の穴埋め問題も出ます。覚えたい単語を書いて暗記するのも一つの方法なんですが、試験の回答群には似たような漢字を使った単語も出てくるんですよ。
耳で覚えて保育所保育指針の全体像がわかっていれば、そういったひっかけ回答にも惑わされずに済むこともあって、私は「聴く派」でした。
──試験対策ではテキストも使用していたとのことですが、選んだポイントは何でしょう。
とくにこだわりはなくて、YouTubeで紹介されていたテキストが書店に行ったら一番目立っていたので、同系列の問題集と一緒に購入しました。
中には科目ごとで一冊ずつ分かれているテキストや問題集もあったので、それを買っていたらすごい量になっていたかもしれません……!

──アプリとテキストの使い分けはどうしていましたか?
通勤中はアプリメイン、家で勉強するときはテキストメインですね。
アプリは気軽に始められるし場所も選ばないので通勤中でも手をつけやすいです。
テキストと問題集はYouTubeの解説動画を見ることと一緒に何度もやりました。一度解くだけだと内容が整理できないので「テキストを読んで問題集を解いて解説動画を見て」の繰り返しですね。
あとは保育士試験の公式サイトに掲載されている過去問も定期的に解きましたよ。
──筆記試験では科目数が多い*ですが、苦手な科目はありましたか?
社会福祉、子ども家庭福祉などは法律が絡む科目なので複雑で苦労しました。
苦手科目はアプリやテキストにプラスして、保育士試験のブログをやっている「トウコさん」という方がいらっしゃるんですが、その方が「保育士試験合格応援ブログ」に載せている演習問題を解きました。
難易度の高い福祉系の問題が多かったので、難しい問題に慣れておくことで苦手科目の対策にもなりましたし、試験当日の心の余裕にも繋がりました。
──試験勉強をするにあたって、自分で決めた「マイルール」はありましたか?
一日の中で、なるべく試験内容に触れるタイミングを多くとるようにしていました。
勉強する時間を長くとるよりかは、勉強する頻度を増やすイメージです。こまめにアプリをやるとか、対策動画を見るとか。
──頻度を重視していたんですね。でも勉強を続けていると、日によって気持ちが向かないときや集中できないときもありますよね。
そういうときは勉強する代わりに関連する漫画を読んだりしましたよ。
「社会福祉」科目の筆記試験では生活保護に関する問題が出るんですが、ドラマにもなった『健康で文化的な最低限度の生活』を読んで関連知識を得ました。
でも本当に気持ちが乗らないときは潔く諦めてました(笑)。無理して勉強してもストレスになって良くないので。
試験対策【実技編】──コロナの影響で得意の音楽が中止に──

──次に12月の実技試験の対策について教えてください。どのくらいの時期から対策を始めましたか?
試験の3~4ヶ月前なので2020年の8月~9月頃ですね。
筆記試験に合格すると実技試験に進めるんですが、筆記試験の合格発表が11月なんです。
そこまで待っていると実技試験の直前になってしまうので、筆記試験後は解答速報で自己採点をして、合格点をクリアしていることを確認して対策を進めました。
──Sさんは音楽、造形、言語からどの分野を選択しましたか?
言語を選択しました。本来ならば音楽、造形*、言語から2分野を選択するので音楽と言語での受験を想定していたんですが、コロナの影響で音楽が未実施*と決まってしまって……。
音楽が得意だったのでとても残念でした……!
*2020年(後期)の実技試験は造形、言語から1分野の選択で実施されました
──音楽に自信があったんですね。
はい。昔からピアノを習っていたのでピアノでの実技には自信がありました。
得意なピアノは少し練習すれば大丈夫なので「せっかくだからギターでの受験に挑戦しよう!」と思ってギターを買っていたんですよね……。
結局音楽が未実施になっちゃったので、買ったギターは家に置いてあります(笑)。
──それは悲しいですね……! 実際に受験した「言語」はどんな試験内容なんですか?
3歳児の子ども15人の前を想定して「3分間のお話」をします。お話のテーマは『ももたろう』『3びきのこぶた』『おおきなかぶ』『3びきのやぎのがらがらどん』の4種類から選べるんですが、私は『おおきなかぶ』にしました。
──具体的にはどんな対策をしましたか?
『おおきなかぶ』の台本を作って練習しましたね。本番では3分を超えてしまうとダメなので、3分以内に収まる台本の完成形を先に作って、繰り返し練習しました。
大事にしたのはお話を「暗記する」のではなく、自然と「自分の言葉として出てくる」イメージです。言語で高得点を取った人の動画を参考にしました。
──練習頻度はどのくらいでしたか?
対策を始めた時期は筆記試験前だったので明確な頻度はわかりませんが、試験の1ヶ月前からは毎日やっていましたよ。
直前の2週間は夫に向かって練習してました(笑)。
──言語の実技で苦労した点はありますか?
「大きくはっきり喋ること」ですね。
私自身喋ることがあまり得意じゃなくて。声が通りづらいのか、よく「ん?」って聞き返されるんですよ。
なので練習した声を録音して聞き返して、大きな声ではっきり喋れるように改善していきました。
──なるほど。人前で披露する実技試験は、筆記試験に増して緊張しそうですね。
緊張しましたよ! 緊張しているのに実技の試験中もマスクをしなきゃいけなかったので苦しかったです。
本番は2人の試験官と、子どもたちに見立てたパネルの前でお話をするんですが、試験官が全然表情を変えないので不安になりました。
──それはドキドキが増しそうです。緊張をほぐすためにやっていたことはありますか?
「緊張を受け入れる」ようにしていました。
実は大学でクラリネットを専攻していたので、本番前の緊張は何回も経験していて。「本番前が緊張のピークで、始まってしまえば緊張はほぐれていく」とわかっていたんです。
──緊張を乗り越えるコツは「緊張を受け入れること」なんですね。
受験を振り返って──大切なのはストレスを溜めないこと──

──受験を振り返って「よくできたな」と思うポイントを教えてください。
モチベーションの維持といいますか、受験までの気持ちの持って行き方がうまくできたかなと思います。
受験しようと思っていた2020年4月の試験が中止になったとき、モチベーションが下がりかけたんですよね。
でも家族とのコミュニケーションとか、同じ境遇の人とのSNSでの励まし合いを通して「私も頑張ろう!」って立て直すことができました。
──反対に「もっと改善できたな」と思うポイントはありますか?
計画を立てることですかね……。
結果的に合格できたものの、見切り発車で対策を始めたので「いつまでにこの科目を終わらせて、この時期にはこの対策をやる」と具体的に計画を立てられたらもっと効率が良かったかなと思います。
あと実際に子どもたちの前で実技のお話をさせてもらえるよう、勤務先にお願いすればよかったな~とも思いますね。
──なるほど。話は変わりますが、勉強期間の息抜きは何をしてましたか?
コンビニスイーツを食べて息抜きしてました!
息抜きを理由にスイーツを買っていたほうが正しいかもです(笑)。コンビニはセブン派ですね。コンビニスイーツ以外でもハーゲンダッツを買ったり。
──甘いものでリフレッシュしていたんですね。受験後のご褒美とかは決めてましたか?
オーケストラの演奏を観に行くのを楽しみにしていました。
試験日の2週間後のチケットをとって、それをモチベーションに頑張りましたね。
──Sさんご自身も楽器が得意ですもんね!
実は私自身もアマチュア・オーケストラに入っているんですよ。毎年2回の演奏会があって、毎週日曜の夜が練習です。
──なおさら試験対策との兼ね合いが大変だったのでは?
大変と思わない範囲で、無理をしないようにしていました。
これは受験期全体で大事にしていたことなんですが、とにかくストレスを溜めないことを心がけていました。
──ストレスを溜めないためにも、周りからのサポートはありましたか?
夫のサポートにすごく助けられましたね。
夫はもともと勉強することが好きなんですよ。だから私が試験の受験を決めたときは「一緒に保育士の試験を受ける!」って言ってくれて。
ただ勉強を始めると自分の興味の方向性とだいぶ違ったようで(笑)。違う分野の勉強へシフトしていましたが、私と目線を合わせて一緒に何かを頑張ってくれる姿勢がとても励みになりました。
試験前の時期は家事もいつもより多めにやってくれましたね。
──とても素敵ですね! 最後に、これから保育士の試験を受ける人へメッセージをお願いします。
保育士資格を持っていると仕事の幅が広がりますし、勉強した内容をすぐに現場で活かすことができます。
保育園の方針への理解が深まったり、子どものケガや病気への対処がスムーズになったり。
受験をするうえでのアドバイスとしては、無理をしないこと・ストレスを溜めないことが一番です。
家族や友だち、SNSでの繋がりなど、どこかしらで人との接点を持ちながら、モチベーションを保って頑張ってください!