参加者プロフィール
Cさん(看護師歴17年)
国立病院の循環器科に7年、総合病院の心臓血管外科に10年勤務し2021年に退職。現在はパートで小児科クリニックと派遣で新型コロナウイルスのコールセンターに勤務している。常勤を辞めて趣味のアウトドアを楽しんでいる。
Sさん(看護師歴10年)
出産後に看護学校へ通い看護師免許を取得。総合病院の小児科病棟に3年間勤務。その後外来に異動。約7年勤務したのちに退職し、現在は新型コロナウイルスのコールセンターに勤務。高校生の子どもを持ち、学費を貯金をしている。
Oさん(看護師歴10年)
総合病院の整形外科と内科の看護病棟に約8年勤務し退職。出産後、総合病院に復職するも仕事と子育ての両立が難しく退職。パートで内科クリニックに勤務したのち、新型コロナウイルスのコールセンターに勤務。現在第2子妊娠中。
私が派遣・パートで働く理由

──本日は派遣・パートで働く看護師さんに実情を伺うため集まっていただきました。偶然にも、みなさん派遣で新型コロナウイルスのコールセンターを経験しているようです。

Cさん:そんな偶然あるんですか……!
──働き方として流行っているのでしょうか。まずはみなさんが派遣やパートで働くことになったきっかけを教えてください。

Cさん:私は昨年の夏に10年間勤めた総合病院を辞めたんです。理由は子どもですね。ほかの家庭はお出かけしたり外食したりしていたけど、「ママは看護師さんだからできないんだよ」って言って聞かせていて。多感な時期の子どもを私の仕事の都合で制限するのはどうなんだろう……って考えたんです。
それに医療従事者も感染したり濃厚接触者になったりして、スタッフが少なくて帰れないこともあって。そういうことに疲れちゃって辞めて、パートと派遣の仕事を探しました。

Sさん:私は昨年の夏まで発熱外来にいたんですけど、とにかく忙しくて辞めました。来年子どもが大学受験で、学校説明会や塾の面談に行かなきゃいけないのに、コロナ対応で帰れないし休めなかったんです。
うちは母子家庭だからそういう行事に参加できるのが私しかいないんですよ。それで時間の融通を優先したんです。

Oさん:私は子どもを産んでから総合病院に常勤・時短・日勤で復職したんです。そのとき子どもは一歳だったんですけど、小さい子ってすぐに熱出すじゃないですか? だから休むことが多くなっちゃって。あとは体力面ですね。整形外科だったからシャワー介助とかがあって体力的にキツくて、結局3ヶ月で辞めました。
非常勤のほうがいいなと思って仕事を探したら、時給2,000円のクリニックを見つけたんです。クリニックの仕事内容ってよく知らなかったけど、そこは夫婦で経営していて育児に理解があったんで働くことにしたんです。でもいろいろあって辞めて、コールセンターにたどり着きました。
派遣・パートのここがいい!

──派遣やパートで働いてみて、どんなところにメリットを感じますか?

Cさん:とにかく時間の融通がきくことですね。病院ではチームを構成するためのシフトを作ってもらっていたけど、コールセンターは自分の都合で働けますから。
だから週末にキャンプしたり、出かけられるようになりました。今までだったら有休を子どもの発熱のために備えていたけど、そういうことを気にしなくていい。
あと働く時間を短くしたので、子どものお迎えに行く前にご飯を作る時間ができました。

Sさん:Cさんと同じく休みの融通とか、働き方の自由度があっていいです。常勤の外来は忙しすぎてトイレに行く時間もなかったんですけど、コールセンターは自分のペースで仕事できるので体力面でかなり楽。私は貧血がひどいのでデスクワークは助かっています。
あとはお金の面。受験でお金がかかるので、これまではカツカツだったけど、以前よりも時間とお金に余裕ができました。

Oさん:お二人と同じです。体力と時間とお金。クリニックのパートのときは干渉されていたけど、派遣のコールセンターは他人に干渉されないので気持ち的にラクです。
──干渉とは?

Oさん:クリニックの夫婦に「子育て大変そうだね」って気を使ってもらうこととかですね。体力的にはもっと働けるんだけど、家族の都合でどうしてもシフト調整してもらわなきゃいけなくて、ちょっと申し訳なくて。
──週や月の勤務日数は決まっていますか?

Cさん:クリニックは週に2〜3日、コールセンターは週1〜3日程度です。

Sさん:私は週4日くらいです。
派遣・パートのここがいまいち
──逆にデメリットを感じることはありますか?

Oさん:福利厚生ですね。社保に入れるくらい働けば話は変わるかもですけど。

Cさん:有休もボーナスもないですしね。月の収入は常勤のときとあまり変わらないけど、年収でみると減りました。
──年収ベースでいくらくらい減りましたか?

Cさん:300万円くらい減る予定です。

Sさん:えぇー!!

Oさん:そんなにボーナスもらってたんですか? あ、病院と違って夜勤とか残業がないからか。
──常勤看護師時代と比較して、総労働時間は変わりましたか?

Cさん:クリニックとコールセンター合わせても4分の3以下くらい?

Sさん:その分子育てとかあるしね。私は自分のやりたい仕事を諦めていることがデメリットですね。

Oさん:わかります!

Cさん:スキルも落ちるし、現場で働いている人に置いていかれる感じはしますよね。

Sさん:あとはコールセンターの仕事がいつまで続くのかちょっと不安です。

Oさん: Cさん:わかるー。
深堀りしたいお金事情

──それぞれの家庭環境や事情に合わせ働くことができるんですね。では、お金の面はいかがでしょう。給料事情について教えてください。

Cさん:私はコールセンターと小児クリニック合わせて400万円くらいになりそうです。コールセンターが月に25、6万円、クリニックが10万円くらいです。

Oさん:私もコールセンターの給料には満足しています。クリニックは時給2,000円で土曜出勤もあるし、立ちっぱなしだから大変です。Sさんは?

Sさん:年収900万円くらいになりそうです。
──えっ…………!?

Sさん:9時から23時くらいまで長く働く日が多いんです。手取りで月7、80万円くらいです。

Cさん:かなり稼いでますね。でもコールセンターでそれくらい稼ぐ人いますよね。

Oさん:前職の年収より増えました?

Sさん:前はボーナス込みで400万円くらいだったんで、倍ですね。
──手取りは正職員時代の倍になったけど、臨床の仕事はしたいんですよね。戻ったら収入は減りますが。

Sさん:この仕事はお金と時間の融通をきかせるためだけって割り切ってるから、子育てが終わったら自分の好きな仕事をしたいなと思っています。今は高校生で寮に入っているので、今のうちに大学費用を貯めています。

Cさん:偉いね。コールセンターに限ったことじゃないと思いますけど、働き方や仕事内容によっては常勤以上に稼げる可能性はありますね。
新型コロナウイルスのコールセンター業務とは
──ちなみに新型コロナウイルスのコールセンター業務ってどんなことをするんですか?

Sさん:東京都の自宅療養者の健康観察と、療養者の健康相談です。療養されている方に「体調はいかがですか?」って聞いて、悪い人がいたら受診調整や入院調整につなげています。

Oさん:スタッフのマニュアルを作ったり、研修したりする仕事もあります。
──1日に何件くらい電話するんですか?

Sさん:日によりますけど、全体で架電数2,000、受電数1,000程度です。
──みなさんコールセンター未経験ですよね。すんなりできるものですか?

Cさん: Sさん: Oさん: できました。

Cさん:臨床の現場は覚えることが多いですが、この仕事はコロナに関する知識と決まっていますから。

Sさん:対策の提言? というか要望を出すこともあります。仕事柄、都の感染対策をいち早く知るんですが、感染状況が落ち着いているときに医療体制を整えておけばいいのにと思いますね。例えば子どもや妊婦って受け入れ先が決まりにくいんです。そこを手厚くしてほしいのに、第7波がきても間に合っていない。

Oさん:たしかに、第6波のあとに考える時間はありましたよね。
──新型コロナウイルスのコールセンターって編集者の私でも働けますか?

Oさん:看護師資格が必要ですよ。

Sさん:臨床経験3年以上とか条件もありますよね。

Oさん:准看護師でも看護師資格と同じ給料で働けたような?
「働ける場所は病院だけじゃないんだ」

──やりたい仕事ではないものの、パートや派遣という働き方にそこそこ満足しているように感じました。

Cさん:初めは偏見というか固定概念があったんですけど、こういう視野の広げ方もあるんだなって思いました。

Oさん:そうですよね。看護師が働ける場所は病院だけじゃないんだって思いました。

Cさん:そうそう、そうなの! 病院しか働く場所がないって思い込んで看護師を10年以上やってきたけど、保育園とか一般企業とか働ける場所がいっぱいあるんですよね。
看護師っていろいろな事情で辞めたくなる時期があるんですよ。そんなときは看護師を突然辞めるんじゃなくて、派遣とかパートで働いて“足踏み”するのがいいんじゃないかな。そう思いません?

Sさん:そうですよね。せっかくの資格だしもったいないです。知り合いにも潜在看護師がいますけど、看護師の資格を活かしなよって話しています。
──復帰の足掛かりにもなりそうですね。

Cさん:臨床や外来はハードルが高いって思ったら、単発の仕事をしてみたり。

Oさん:単発のデイサービスとかありますよね。

Sさん:お試しで働くのはありです。

Cさん:子どものサマーキャンプの引率とか、離島看護師の募集も見ましたよ。楽しそうですよね!