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児童発達支援管理責任者とは
児童発達支援管理責任者(以下、児発管)とは、障がいを持つ子どもや家族との面談を通して個別支援計画を作成し、モニタリングや最終評価などをおこなう専門職です。
児発管は障害児支援施設に1名以上配置することが義務付けられています。児童指導員との兼任はできませんが、施設の管理者との兼任は可能です。
>児童発達支援管理責任者に関する詳しい業務内容は、こちらの記事をチェック!
制度改正による変更点とは
児発管として働くには、実務経験などの条件を満たしたうえで研修とOJT*を受ける必要があります。2019年にサービス管理責任者・児童発達支援管理責任者に係る研修制度の改正がおこなわれました。旧体制との違いは次のとおりです。

新たに加わったOJTの内容は? 実際の研修現場に同行してみた
OJTでは、現場における2年以上の実務をおこないます。基礎研修を修了したあと、すでに常勤かつ専従の児発管が配置されている事業所に限り2人目の児発管として配置され、個別支援計画の原案が作成できます。
実際にOJTを実施している児童発達支援施設を取材しました。OJT受講者はどのようなことを学び、トレーナーは何を伝えているのか聞いてみました。
▼児童発達支援管理責任者の詳しい一日の様子はこちらの記事と動画でチェック!
話を聞いた人
OJTトレーナー・児童発達支援管理責任者 藤原園長
長男の発達特性に悩んだ経験から、児童発達支援管理責任者の資格を取得。2019年8月に埼玉県川口市に児童発達支援施設「ひまわりのたね つなぐ園」を開設。
OJT中・児童発達支援管理責任者研修受講済み 山下さん
保育士、幼稚園教諭の資格を持ち、保育所や幼稚園にて就労経験を積む。自身の子どもに障がいがあったことがきっかけとなり、児童発達支援管理責任者の取得を目指す。現在OJT1年目。


子どもたちとの時間
ひまわりのたねでは以下のOJTをおこないます。

思いっきり外遊びをさせることがひまわりのたね最大の特徴。多動や一斉注意を聞くのが難しい児童もいますが、毎日散歩に出かける習慣を身につけることも個別支援目標達成のために重要なことだといいます。


「一緒に遊んでいるだけに見えるかもしれませんが、どこに誰がいて何をしているのか常に目を配っています。遊んでいる様子からも子どもたち同士の関わり合いを見て、支援計画の振り返りに役立てています」(山下さん)

この日登園していた児童は14名ほどで、先生は8名。スタッフの内訳は園長先生のほか常勤の担任4名(OJT期間中含む)、非常勤のスタッフ2名、研修中のスタッフ2名です。
療育には個別と集団の2パターンがあります。集団であってもほとんどの施設では数名程度のため、10人以上で実施している施設は珍しく、他園からの見学や研修の申し入れがあるそうです。
「幼稚園や保育所に入りたい場合、集団生活を経験しないと適応が難しく退園を余儀なくされてしまうこともあるんです。お友達と同じ空間にいるだけでも難しいですし、一緒に遊ぶのはもっと難しかったりします。外遊びを経験して、ルールや接し方を学んでいくうちに次第に集団で活動できるようになっていくんです。
支援計画を作っていると、よく親御さんの希望に『お友達と仲良く遊ぶ』とありますが、実はこれって大人が街中で知らない人に話しかけるくらいハードルが高いことなんです。毎日接したり、イベントなどの経験を積んだりすることで、徐々に関わり合えてくるものなんですよ。最初お友達に興味すらなかった子が一緒に遊べるようになったり、おもちゃの貸し借りができたりという変化をよく観察してもらうよう、OJTの先生に伝えています」(藤原園長)


個別支援計画の振り返りと原案作成に2時間以上
児童の降園後は、個別支援計画の振り返りと次期支援計画の原案作成会議。ひまわりのたねでは児発管だけでなく、担任、補助スタッフも一緒に原案を作っています。

この日は3歳児のY君について、一期の目標が達成できたか振り返ります。

振り返りのあとは、次期支援計画の原案作成へ。参加している職員全員が付箋に支援内容を書いて、一人ずつ発表します。

Y君は幼稚園に入るという目標があるため、移行支援も計画に含まれるようになるとのこと。


「保育や教育の視点は180度変えて」との教え
約2時間かけて支援計画の原案となるアイデア出しは終了。このあと園長先生が意見を集約し支援計画の作成に入ります。長年保育所などで経験を積んできた山下先生も、ひまわりのたねでOJTを受け始めた当初は戸惑いの連続だったと言います。

「幼稚園や保育所では、指導計画はあっても集団向けです。なにかしてほしいときも一斉指示なので、ここに来た当初は本当に戸惑いました。みんなに向けて指示しても誰も聞いてないし、読み聞かせを始めても1人も座ってないなんてことも……(苦笑)。そんなとき、園長先生からは『保育や教育の視点は180度変えてみて』とアドバイスをいただきました。ここでは一人ひとりの個性に合わせた遊びの提案や声かけ、距離感が必要なんだと学びましたね」(山下先生)


「保護者対応も幼稚園や保育所よりずっと慎重になる点は大きな違いに感じました。園がお休みで親子だけで過ごす週末を前に、保護者から相談メールをいただきます。そんなときは土日でじっくり返信内容を考えてから園長と相談して対応しています」(山下先生)
周りのスタッフの大切さと責任感を伝えたい
ひまわりのたねでは、わからないことがあれば一つずつ教えていくスタイルをとっていますが、施設によっては内容が異なると言います。
「児発管が1から10まで教えればなんとか形になっていくとは思いますが、そこまでOJT内容が充実している施設は多くない印象です。児発管の仕事ってやることが膨大にあって、関わる機関もたくさんあります。業務内容を把握したら仕事ができるかというとそうではなく、結局チームワークが大切なんです。だから、児発管は一緒に働いている先生たちに支えられてこそ成り立つ仕事であること、児童に対して責任を持つことをOJTで伝えたいです。」(藤原園長)
▼児童発達支援管理責任者の詳しい一日の様子はこちらの動画でチェック!
参考