残業代(残業手当)の計算方法、時間外手当との違い、未払いの場合の請求方法を解説

「先月の残業代が少ない」「新しく入った会社で残業手当が支給されない」そんなときのために、労働に関する法律と残業代の正しい計算方法を確認しておきましょう! 未払いが発覚した際の請求方法についても解説します。

残業代(残業手当)の計算方法、時間外手当との違い、未払いの場合の請求方法を解説

目次

1.残業代(残業手当)とは

所定の労働時間を超えると支払われる賃金のこと

労働者が企業などに雇われて働く場合、労働基準法と企業の就業規則・労働条件によってあらかじめ定められた労働時間内で働く必要があります。この所定の労働時間を超過して働いたときに支払われる賃金が残業代(残業手当)です。

残業代は正社員やパート・アルバイトなどの雇用形態を問わず、超過した時間を1分単位で割増計算して支払われます。

残業は「法定内残業」「法定外残業」の2種類

そもそも残業には「法定内残業」と「法定外残業」の2種類があります。

法定内残業・法定外残業のイメージ

〈法定内残業とは?〉

労働基準法で定められた法定労働時間(1日8時間・週40時間)には収まっているものの、会社の所定労働時間を超えた部分の残業のことです。上の図の場合、所定労働時間7時間を超えたあとの1時間が法定内残業にあたります。

所定労働時間は就業規則や労働契約によって定められています。また法定内残業の場合、残業代を支給するかどうかは企業ごとに基準が異なります。

〈法定外残業とは?〉

法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた部分の残業のことです。上の図では所定労働時間7時間+法定内残業1時間を超えたあとの2時間が法定外残業に該当します。

法定外残業をおこなう場合、通常の25〜50%以上の割増賃金を「時間外手当」として支払うことが義務付けられています(労働基準法を上回る割増賃金率を企業が設定している場合はその基準で算出)。

条件割増賃金率
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき25%以上
時間外労働が限度時間(月45時間・年360時間等)を超えたとき25%以上
時間外労働が月60時間を超えたとき50%以上

tips|残業代(残業手当)と時間外手当の違い

上の解説からもわかるとおり、残業代(残業手当)と時間外手当は厳密には異なります。時間外手当は法定労働時間を超えた場合に支払われる残業代のこと。一方、残業代(残業手当)は会社が定めた所定労働時間を超えた際に、法定内・外を問わず支払われる賃金を指します。つまり、時間外手当は残業代の一部ということです。

法定外残業をするには「36協定」の締結が必要

法定労働時間を超えて働く場合、事業者は労働者代表との間に「時間外労働・休日労働に関する協定(通称:36(さぶろく)協定)」を締結する必要があります。36協定を結ばずに従業員に法定外残業をさせた場合、事業者は労働基準法違反として指導や勧告の対象となります。

ただし、36協定を締結していても以下の時間を超えて働くことはできません

〈原則〉

月45時間・年360時間(月45時間の超過を年6ヶ月まで)

〈特例〉※臨時的に特別な事情があり労使間の合意がある場合

以下のいずれか

  • 年720時間以内
  • 月100時間未満
  • 2〜6ヶ月の平均80時間以内

一日に換算すると、原則の「月45時間」は2時間程度、特例の「月80〜100時間」は4〜5時間の残業が目安となります。

36協定は職場の見やすい場所への提示や書面での交付などによって従業員への周知が義務付けられています。法定外残業が気になる場合は、36協定を締結しているか確認してみると良いでしょう。

固定残業代(みなし残業代)との関係

固定残業代(みなし残業代)とは、あらかじめ残業が発生することを想定し支払われる賃金のことです。例えば毎月10時間の残業が見込まれる場合、その残業時間から算出した賃金2万円を固定残業代として月給に上乗せして支払います。

固定残業代は毎月変動しませんが、法定労働時間を超える分は割増賃金が適用される必要があります。さらに固定残業代で定めた残業時間を超えて働いた場合には、超過分の残業代が別途支給されなくてはいけません。なお、みなし残業時間に達していないからといって固定残業代が減給されることはありません。

固定残業代について詳しくはこちらで解説
固定残業代(みなし残業代)とは? 注意点や計算方法を押さえよう! 

2.残業代の計算方法

法定時間外残業の計算例

1時間あたりの残業代(割増賃金率25%の場合)は「1時間あたりの賃金 × 1.25」で求めることができます。例えば時給が1,000円なら「1,000円 × 1.25」で1,250円。同様に、月の残業時間が60時間を超えた場合は割増率が50%となるので「1,000円 × 1.5」で1,500円となります。

月給制の場合は、先に1時間あたりの賃金を計算することで残業代を求めることができます。

1時間あたりの賃金の計算方法
厚生労働省「しっかりマスター労働基準法 割増賃金編」より作成

ほかの手当と併用できる?

時間外手当のほか、労働基準法で支給が義務付けられている手当に「休日手当」「深夜手当」があります。

条件割増賃金率
休日手当法定休日に勤務35%以上
深夜手当22時から5時までの間に勤務25%以上

休日手当と深夜手当は時間外手当と同様に割増賃金率が適用され、さらに併用も可能です。例えば深夜に残業した場合、時間外手当と深夜手当の両方が支給されます。

例 時給1,500円で3時間の深夜残業をおこなった場合の残業代

tips|法定休日とは?

法定休日とは、労働基準法によって労働者への付与が義務付けられた休日(週1日)のこと。週休2日の場合は1日が法定休日、もう1日が法定外休日となります。何曜日を法定(外)休日とするかは事業者が指定できます。

3.残業代が出ない場合の対処法

3年以内なら請求可能

労働基準法により、賃金請求権の消滅時効は3年と定められています。もし過去3年以内に支給されていない残業代がある場合は、下記に紹介するような方法で請求が可能です。

*2020年4月の労働基準法改正により、賃金請求権の消滅時効期間が従来の2年から3年に延長された(いずれ5年にまで延長予定)

証拠を集める

まずは残業代未払いの証拠を集めます。証拠となる資料には次のようなものがあります。

証拠となる資料

  • 雇用契約書や労働契約書
  • 就業規則
  • 残業指示書や残業承諾書
  • タイムカードや日報などの勤怠記録
  • 業務用メールの送受信履歴
  • 残業の指示を受けた際のメールやメモ など

いくつかの方法で請求する

残業代を請求する方法はいくつかあり、自分で勤務先と直接交渉する方法から、外部機関や弁護士を介して請求する方法があります。時間や費用がかかりますので、請求したい残業代と見合うかどうか見極めることも大切です。

特徴注意点
勤務先と直接交渉
  • 費用がかからない
  • 勤務先が支払いに応じてくれる場合、早期解決が可能
  • 勤務先に支払いの意志がない場合は難しい
労働基準監督署へ申告
  • 申告が認められれば、勤務先に対して指導や是正勧告がおこなわれる
  • 労基署が必ず対応してくれるわけではない
  • 労基署の指導や勧告に法的効力はない
  • 証拠が重要
労働審判で請求
  • 早期解決が可能(3ヶ月以内が目安)
  • 非公開で実施される
  • 法的効力を持つ
  • 長期に及ぶ問題は不向き
  • 必要に応じて弁護士へ依頼することが望ましい
裁判で請求
  • 長期に及ぶ問題に向いている
  • 法的効力を持つ
  • (依頼する場合は)弁護士への依頼費用がかかる
  • 時間がかかる

労働基準監督署への申告方法について詳しくはこちら
労働基準監督署には何を相談できる? 会社にバレない方法や事例も紹介

4.残業代がしっかり払われているか確認を

給与の支払いは勤怠管理や給与計算など、人の手でおこなわれる部分も多いため、支給内容に間違いが生じることも少なくありません。「先月は残業代が少ない」などと感じた際は、自分で計算して確認してみるのも一つの手です。

もし実際に残業代の未払いが発覚し請求を考える場合は、証拠となる資料が重要です。労働時間を証明できる記録や給与明細書などは普段から保管しておくことをおすすめします。

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参考

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