目次
1.自己PRの目的
自己PRは、就職活動や転職活動において自分自身をアピールするための紹介文です。自身の強みやスキル、経験、就業意欲、貢献できることなどを伝え、志望先に自分を採用する価値を感じてもらうことを目的としています。自己PRは、履歴書や職務経歴書などの応募書類で記載するほか、面接の受け答えのなかでも尋ねられます。
自己PRを通じて、応募者がその仕事や職場に適性があるのか、入職後に活躍できる人材かどうかが判断されます。採用担当者が見るポイントは次のような点です。
自己PRで採用担当者が評価する主なポイント
- 過去の業務経験、実績
- 仕事に活かせるスキル、資格
- 応募者の人柄、ポテンシャル(将来性)
- 応募先の理念や環境との相性
面接で聞かれることも多い「長所」も、自分の優れた点をアピールする目的は同じですが、やや性質が異なります。長所は性格や気質を指すことが一般的ですが、自己PRは仕事で活用できる強みやスキルをより直接的にアピールします。
2.歯科衛生士の自己PRの書き方
ここからは、歯科衛生士の自己PRの書き方について、順を追ってわかりやすく解説していきます。
*先に例文を見たい方は「4.歯科衛生士の自己PR例文」をチェックしてください。
Step1|強みの棚卸し
これまでの仕事で身につけた強み(スキル)を、思いつくだけ書き出してみましょう。仕事に関する強みが良いですが、新卒や未経験者の場合は、学校生活など仕事以外での活動から探してもOKです。

強みを書き出したら、「応募先の求める条件・人物像と一致するもの」「応募先の職場でとくに活かせるもの」の観点から強みを一つピックアップします。例えば、予防歯科や歯周病専門医院などを志望するなら「観察力」「手先の器用さ・繊細さ」が活かせそうですし、大規模病院の歯科衛生士を志望するなら「コミュニケーションスキル」「危機管理スキル」が強みとして考えられます。
Point|強みは一つに絞ろう!
自己PRは、一つの強みに焦点を当てることが重要です。複数の強みをアピールしたくなる気持ちもありますが、一度に複数を伝えると要点がぼやけてしまい、どの強みも印象に残りづらくなってしまいます。一つの自己PR欄では一つの強みに絞るようにしましょう。
Step2|根拠となるエピソードを盛り込む
アピールする強みを決めたら、その根拠となるエピソードを考えます。あなたが実際に体験したエピソードを加えることで、他人と被らない自分らしい自己PRに仕上げることができます。
エピソードは、具体的なシチュエーションや数字を含めると読み手に伝わりやすくなります。ただし、詳しく書こうとすると冗長になりやすいため注意しましょう。一から文章で書くのが難しい場合は、まずはエピソードの要点を箇条書きにし、そのうえで必要な内容を取捨選択すると整理しやすくなります。

Step3|応募先で貢献できることを盛り込む
続いて、強みを応募先の職場でどのように発揮し貢献できるかを考えます。この点を盛り込むと「なぜその職場がいいのか」という志望動機のアピールにもつながります。

Step4|簡潔な文章にまとめる
最後に、文章をまとめて仕上げましょう。まず強みを端的に表した結論から始め、根拠となるエピソード、応募先で貢献できること(志望動機)と続けると論理的でわかりやすい自己PRになります。

3.履歴書・職務経歴書・面接別の注意点
自己PRは、履歴書や職務経歴書、面接などのシーンによって、注意すべきポイントがやや異なります。
履歴書の場合は、少なくとも記入欄の8割以上を埋めるようにしましょう。短すぎる自己PRはマイナスな印象を与えてしまいます。反対に、記入欄が小さく伝えたい内容を書ききれない場合は、詳細なエピソードや応募先で貢献できることは省略し、面接や職務経歴書で補足しても構いません。
職務経歴書の場合は、履歴書のような記入欄や文字数の制約はありません。しかし長すぎてもまとまりのない文章となってしまうため、自己PR一つにつき150〜300字程度を目安にまとめます。ページ数に余裕があれば(一般的にはA4用紙1〜3枚)、自己PRを2〜3つ記載しても良いでしょう。
面接の場合は、「自己PRをしてください」という直接的な質問のほか、「あなたの強みを教えてください」「あなたの長所は何ですか」などの聞かれ方をする場合もあります。いずれの場合も結論から述べ、続いてエピソード、貢献できること(志望動機)で締めくくります。回答時間はあまり長くなりすぎないよう、1分以内を目安にまとめましょう。
Point|履歴書・職務経歴書・面接で一貫性を持たせることが大切
自己PRを履歴書や職務経歴書、面接など複数の場面で使用する場合は、それらの内容に一貫性があるかどうかチェックしましょう。例えば履歴書には「思い切りがいい性格」と記載したにも関わらず、面接で「慎重に物事を進めます」と話すと、矛盾が生じてしまいます。
ただし、一言一句同じ内容にしてはせっかくのアピールチャンスが無駄になります。「履歴書に書ききれなかった詳しいエピソードを面接で話す」「履歴書に書いた長所と関連のある強みを職務経歴書に書く」などであれば、一貫性を保ちながら幅広く自己PRができます。
4.歯科衛生士の自己PR例文
経験年数別の例文
新卒者(未経験者)の例文
専門学校では、生活習慣が口腔内の健康に与える影響についての調査研究をおこないました。さまざまな研究を通じてエビデンスベースの歯科保健指導に関心を持ったため、就職後は学んだ知識を実際の現場で活かしながら、実践的なスキルを習得したいと考えております。貴院にご縁をいただけた際には、現場での仕事はもちろん、自己学習も継続的に続けたいです。
経験者の例文
歯科衛生士として◯年経験を積むなかで、患者さまのニーズを理解し、一人ひとりに合ったケアの提供を心がけてきました。前職では患者さまとの会話の中から「口元の見た目が気になっている」という悩みを聞き出し、歯科医師と相談のうえ治療を進めました。その結果、長年の悩みを解消できたと非常に喜んでいただけました。これまでの経験を活かし、貴院でも患者さま一人ひとりの心の声に寄り添い、信頼関係を築きながら最適なケアを提供したいと考えています。
ブランクありの例文
出産・育児により◯年間現場を離れていましたが、ブランク期間中も自己学習を続けてきました。オンラインでの研修会に参加し、最新の診療技術や報酬制度について学んでいたため、ブランク期間中に起きた業界の変化にも問題なく対応できる自信があります。貴院は地域に根ざした歯科クリニックとして、古くから通われている患者さまが多いと伺っています。そのような患者さまに信頼してもらえるよう、丁寧な診療を心がけて貴院に長く貢献したいと思っております。
経験分野別の例文
予防歯科経験者の例文
私は衛生士業務の中でも、とくに予防歯科に注力しています。多くの患者さまを担当するなかで、定期的な健診とクリーニングが口腔内の健康維持・疾病予防にもっとも効果があることを実感しました。予防歯科の重要性を患者さまに理解してもらうことは簡単ではありませんが、来院のたびに丁寧な説明を繰り返すことで徐々に理解していただける方が増え、健診の受診率アップに成功しました。貴院に就職した際も、これまでの経験を活かし、予防歯科の普及に努めたいと考えております。
歯周病科経験者の例文
歯周病専門のクリニックで◯年間勤めた経験から、歯周病治療において歯科衛生士が果たす役割は大きいと考えています。歯周病の初期症状が見られる患者さまが来院した際には、歯周病のリスクと口腔ケアの重要性を丁寧に指導するよう心がけています。定期的な予防処置と保健指導をおこなうことで、歯周病は確実に改善します。貴院に来院される患者さまに対しても、口腔衛生の大切さを丁寧に伝えて、口腔内の健康維持に貢献したいです。
小児歯科経験者の例文
前職は小児患者が多かったため、子どもの対応には自信があります。子どもたちの多くは歯科医院を怖がるため、いかに楽しく通ってもらえるかを考えました。親子参加型のイベントを実施して歯科医院を楽しい場所だと感じてもらえるようにしたり、治療時には子どもに人気のキャラクターのお面をつけて興味をそらしたりするなど、工夫をこらしました。その結果、親御さんからは以前よりも素直に通院できるようになったと聞く機会が増えました。貴院でも前職の経験を活かし、子どもたちのお口の健康サポートに努めたいです。
審美歯科経験者の例文
審美歯科ではホワイトニングの施術に多く取り組んできました。「患者さまの期待を超えること」を目標に掲げ、カウンセリングから施術、アフターケアまで患者さまに満足いただけるよう心がけてきました。その結果、昨年の患者さまからのスタッフ評価アンケートでは一位を獲得することができました。貴院でも審美歯科の施術スキルをさらに伸ばしながら、患者さまにとってより良い体験を提供したいと考えております。
強み/長所別の例文
傾聴力に関する例文
私は患者さまと接するうえで傾聴することを大切にしています。不安を感じる方も少なくない歯科医院で、できる限り安心して治療を受けてほしいという思いから、患者さま一人ひとりの話を丁寧に聞くことを心がけてきました。初めは治療に後ろ向きだった患者さまも、疑問や不安を一つひとつ解消していくことで、最後には納得して治療を受けていただけるようになりました。転職により環境が変わっても、患者さまに寄り添う姿勢を持ち、日々の業務に精進いたします。
リーダーシップに関する例文
前職ではチーフ歯科衛生士として、院内の環境整備と新人教育に尽力してきました。なにか新しい制度を導入する際は、必ず事前にメンバーに意見を求め、全員が同じ方向を向いて取り組めるようにしました。時には壁にぶつかることもありましたが、スタッフから感謝や労いの言葉をかけてもらうことも多く、非常にやりがいを感じております。貴院でも皆で成長し合える環境をつくりながら、患者さまにより良い歯科治療を提供したいと考えております。
協調性に関する例文
私は院内での人間関係を良好に保つため、誰とでも気持ちよくコミュニケーションを取ることを大切にしています。現職の入職当時、スタッフ間で意見の対立が多く、人間関係に課題がありました。そこで、同時入職した歯科助手と協力し、皆の仲を取り持つよう働きかけました。半年ほど時間がかかりましたが、今ではスタッフ同士で協力し合える、雰囲気の良い職場になりました。貴院でもスタッフと良好な関係を築き、より良い職場づくりに貢献していきたいと考えております。
主体性・行動力に関する例文
私の長所は何事にも率先して取り組むところです。以前の職場で口腔衛生教育のためのイベントを実施することになり、その推進役として講演先の学校や近隣の関係者との調整を担当するほか、必要な資料の準備などもおこないました。イベントは非常に好評をいただき、第2回も開催することが決定しました。今後もこの行動力を活かして、貴院での仕事はもちろん、地域活動にも貢献していきたいです。
忍耐力に関する例文
訪問歯科の仕事を通じて、患者さまとじっくりと向き合う忍耐力が身につきました。以前担当した患者さまは治療に前向きではありませんでしたが、まずは世間話から始め、少しずつ距離を縮めていきました。訪問を始めて2ヶ月経ったころには、治療の重要性を理解してくれるようになり、治療を受けてくれるようになりました。この方との出会いを通して、訪問歯科に大切なことは待つことだと学びました。今後もこの姿勢を大切に、患者さまに向き合える歯科衛生士でありたいと思っております。
臨機応変に対応する力に関する例文
私は臨機応変な対応力には自信があります。以前、予約外の患者さまが多数来院された際、待ち時間が長くなりクレームが発生しそうな状況がありました。そのとき私は待合室にいる患者さまに対して、歯磨きや口腔衛生に関する指導をおこない、質問に答える時間を設けました。これにより待ち時間を有効活用でき、患者さまにも満足いただくことができました。職場が変わっても、この臨機応変力を活かしていきたいと思います。
手先の器用さ・繊細さに関する例文
私は手先の器用さと繊細さに自信があります。処置中は細かなケアを丁寧におこない、患者さまが痛みや不快感を感じないように気を配っています。患者さまからは「治療中の痛みや嫌な感じが少なかった」とお褒めの言葉をいただくことがしばしばあります。貴院でもこのスキルを活かして、患者さまに満足いただける丁寧なケアに努めたいと考えております。
向上心に関する例文
私は新しい技術や治療法を学ぶため、積極的にセミナーに参加しています。学んだことは自分の仕事に活かすことはもちろん、職場にも還元することで、医院全体の技術やモチベーションの向上に貢献できると考えています。先日はエアフローに関するセミナーで学んだ内容を同僚に共有し、施術時間の短縮につながりました。転職後も積極的に学び職場に還元することで、貴院の発展に貢献したいと考えています。