2026年から本格始動「こども誰でも通園制度」とは?対象者や一時預かりとの違いについて解説

保護者の就労の有無や利用目的を問わず、0〜2歳のこどもが保育施設に通える「こども誰でも通園制度」が2026年から始まります。制度の目的と対象者、一時預かりとの違いや課題について解説します。

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目次

1.こども誰でも通園制度とは?

就労の有無や理由を問わず未就園児を預けられる制度

こども誰でも通園制度とは、保護者の就労有無や理由を問わず、0〜2歳の未就園児が保育施設を時間単位で利用できる制度です。2023年6月に「こども未来戦略方針」のなかで打ち出され、2026年の本格始動を前に各地でモデル事業の実施や体制づくりが進められています。

これまで保育施設を利用するためには、保護者が働いているなど一定の条件を満たす必要がありました。しかし、こども誰でも通園制度は保護者が専業主婦(夫)であっても、理由を問わず利用できます

制度創設の目的

0〜2歳児の約6割は、保育園や幼稚園などに通わない未就園児です。

未就園児を育てる家庭を対象にした調査では、核家族化や地域におけるつながりの希薄化などにより、育児の孤立傾向が指摘されています。こうした子育て家庭における孤立感や不安感を軽減し、すべてのこどもの育ちを応援することを目的として、こども誰でも通園制度が創設されました。

新制度を利用することで、こどもにとっては家庭と異なる環境や人との関わりを経験することができ、成長を促すきっかけとなります。保護者にとっては、一時的に育児から離れることで、育児の孤立・不安感が軽減されるほか、保育者を通じてこどもの成長を実感したり、育児相談をしたりする機会が得られます。また、施設側にとっては、空いている施設の有効活用や、地域にいる要支援家庭の早期把握に貢献できます。

2.一時預かり保育との違い

こども誰でも通園制度と似た制度に「一時預かり事業」があります。どちらも一時的にこどもを預かるという点では共通していますが、主な違いは実施する自治体数と事業目的です。

一時預かり事業は、1,296の自治体で実施されており、保護者のケガや病気などにより家庭での保育が難しい場合に、一時的に乳幼児を保護することを目的としています。一方、こども誰でも通園制度は、すべての自治体で目的を問わず利用できる予定です。

こども誰でも通園制度 一時預かり事業
実施自治体数 1,718ヶ所(すべての自治体) 1,269ヶ所(全自治体の約74%)
実施場所 保育園、認定こども園、地域型保育事業所、幼稚園、地域子育て拠点 など
対象 0歳6ヶ月〜2歳の未就園児 家庭での保育が一時的に困難な乳幼児
事業目的
  • 良質な成育環境の整備
  • 保護者の多様な働き方やライフスタイルに合う支援の強化
  • 保護者の子育てにかかる負担軽減
  • 乳幼児の一時的な預かりと、必要な保護の実施
利用方法 市町村や事業者により、定期利用・自由利用などさまざま
利用時間 1ヶ月あたり10時間程度の上限を想定

※1時間単位等で利用
利用時間の定めなし

※市町村によっては上限時間や日数を設定
利用料 事業者が直接徴収
※1時間あたり300〜400円程度
契約・予約方法 事業者との直接契約
実施方法 一般型・余裕活用型 一般型・余裕活用型

※障がいのある子については居宅訪問型の利用が可能

※2023年時点の情報

3.こども誰でも通園制度の種類

こども誰でも通園制度には、3つの種類があります。

(1)一般型(在園児と合同)

保育施設にすでに通っている児童と一緒に保育をおこなう方法です。こどもにとっては在園児と触れ合う機会が多い点が特徴です。保育施設の従来の定員に関わらず、こども誰でも通園制度の人員基準を満たせば、受け入れ定員を自由に設定できます。

(2)一般型(専用室独立実施)

在園児とは別の専用スペースを設けて保育をおこなう方法です。専任の職員が対応するため、従来の利用定員に影響しません。職員と保育スペースが確保できれば、受け入れ定員を自由に設定できます。

(3)余裕活用型

利用定員に達しない保育施設が、定員の範囲内で受け入れる方法です。こどもにとっては在園児との関わりが多い点が特徴です。また、職員確保が比較的容易といえます。

4.こども誰でも通園制度の人員配置

こども誰でも通園制度は、一時預かり事業と同じ人員配置基準とする必要があります。

実施の種類 人員配置
一般型 0歳児3人につき保育従事者1人以上
1〜2歳児6人につき保育従事者1人以上

※保育士の数は半数以上
※保育従事者の数は2人以上。ただし、在園児合同で実施する場合は、保育士1人で対応可能な範囲において保育従事者を保育士1人と数えることも可
余裕活用型 0歳児3人につき保育従事者1人以上
1〜2歳児6人につき保育従事者1人以上

※クラス定員に対する人員配置で対応可


こども誰でも通園制度では、保育士以外の保育従事者も「子育て支援員研修事業実施要項」に定める基本研修(480時間)と、専門研修の一部(720〜780時間 + 4日以上の見学実習)、または「家庭的保育事業ガイドライン」に定める基礎研修と同等の研修(1,260〜1,320時間 + 2日以上の見学実習)を修了することで配置可能です。

*2025年3月31日までの間に修了している必要がある

5.こども誰でも通園制度の利用方法

こども誰でも通園制度 利用の流れ

こども誰でも通園制度を利用するには、施設に直接問い合わせて申請するか、自治体の保育課に申請します。

こども誰でも通園制度を試験的に実施している自治体の多くは、利用料金をこども1人につき1時間300円程度に設定しており、本格的に実施が始まった際も同程度の費用となることが予想されます。

また、利用可能時間は1ヶ月あたり10時間程度を上限としているケースがほとんどです。全国的な実施にあたっては、「定期利用」と「自由利用」の両方、または自治体によってどちらかを選択して実施できることが望ましいとされています。

定期利用 自由利用
方法 利用する園、月、曜日、時間を固定し、定期的に利用する方法 利用する園、月、曜日、時間を固定せず、柔軟に利用する方法
メリット
  • 事業者にとっては利用の見通しが立つため、職員のシフトが組みやすい
  • こどもにとっては、職員や在園児と継続的な関わりが持てる
  • こどもの状況や保護者のニーズに応じて利用できる
  • さまざまな事業所を利用できるため、複数の保育士、在園児と触れ合える
デメリット
  • 空き状況に応じた柔軟な受け入れが困難
  • 利用するこどもが固定化され、年度途中での申し込みが困難
  • 事業者にとっては利用の見通しが立たず、受け入れ体制を整えづらい
  • 保護者にとっては、都度、利用予約の手間が発生する
  • こどもにとっては、毎回預け先が変わると、環境に慣れるのに時間がかかる

6.懸念される課題と展望

こども誰でも通園制度は、保護者の就労にかかわらず0歳から2歳までの未就園児が保育施設に通える事業です。こどもが家庭以外の場で家族以外の人と接する機会を得ることで、心身の発達を促すほか、保護者の育児負担の軽減などが期待されています。しかし、本格的な導入に向けては課題もあります。

モデル事業を実施した地域の保育者による中間評価では、こども誰でも通園制度の負担として以下の内容が挙げられました。

誰でも通園制度により時間・労力・業務量が増加
こども家庭庁|令和5年度モデル事業の状況調査より作成

保育するこどもが増えることにより、対応時間・労力・業務量も増加し、それらが負担となっています。全国的に保育士が不足するなか、負担の増加は最大の懸念事項といえます。

通所児童であれば、十分な時間をかけてそれぞれのこどもの特性や家庭状況を把握できます。しかし、1ヶ月10時間という上限があるなか、短時間でそれらを把握し、安全な保育を提供しなければならない緊張感も伴います。

保護者にとっても、短時間・限られた回数のなかで希望どおりの日程で利用できるのか、育児の負担が軽くなるのか疑問が残ります。また、こどもが慣れるまでに時間がかかってしまい、家庭外で過ごす経験が充実したものにできるのかなどの不安もあるでしょう。

また、国は障がいの有無にかかわらず、こども誰でも通園制度を利用するための体制づくりを掲げていますが、現時点では明確な方針は示されていません。外出が難しい障がい児の利用が想定される居宅訪問型の事業形態は、新制度の対象に含まれておらず、検討段階です。

在園児の保育に支障を来さず、新制度を利用するこどもの安全を守るために、保育士の人員確保や保育環境の整備など検討すべき課題は数多くあります。さまざまな課題が解消され、保育者が専門性を発揮し、子育て家庭が孤立することのない事業運営が期待されます。

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