こども家庭センターとは?2024年に設置された背景と期待される役割、働く職員について解説

2022年に改正された児童福祉法に基づき、2024年から新しい福祉拠点「こども家庭センター」が設置されました。従来の妊産婦や子育て世帯をサポートする施設との違いは何か、働く職員の業務内容や要件について解説します。

こども家庭センターとは?2024年に設置された背景と期待される役割、働く職員について解説

目次

1.こども家庭センターとは

子ども・子育て世帯・妊産婦に包括的支援をおこなう公的施設

こども家庭センターは、子どもや子育て世帯、妊産婦を対象に医療・福祉・保育・教育などの多方面から継続して一体的な支援をおこなう施設です。従来の市区町村には、母子健康を担う「子育て世代包括支援センター」と児童福祉を担う「子ども家庭総合支援拠点」がありましたが、2024年4月施行の改正児童福祉法により、二つの機能を統合した「こども家庭センター」が新設されました。

こども家庭センターは母子保健機能と児童福祉機能を連携しながら、子育て世帯などに対する一体的な支援を切れ目なく・漏れなく対応することを目的としています。また、周辺の関係機関とも協力しながら地域の中核的機関としての役割も期待されています。

地域資源と連携・協働しながら妊産婦・子育て世帯を一体的に支援(こども家庭センターのイメージ図)

こども家庭センターの施設数

こども家庭センターは、従来の子育て世代包括支援センターと子ども家庭総合支援拠点が統合し、名称を改め、順次全国で新設されています。2021年4月時点の統合前の施設数は以下のとおりです。

  • 子育て世代包括支援センター:2,451ヶ所
  • 子ども家庭総合支援拠点:716ヶ所

2.こども家庭センターの業務内容

こども家庭センターでは、妊娠・出産・子育て全般に関する相談のほか、子どもの発達状態、児童虐待や貧困、ヤングケアラーなどに関するあらゆる問題に応じています。

こども家庭センターの業務内容一覧

地域のすべての妊産婦・子育て家庭に対する支援

状況・実情の把握
  • 家庭環境や経済状況、親の心身の状態、子どもの特性などの養育環境全般について必要な情報を収集します。
  • 保健師やソーシャルワーカーなどによる面談や家庭訪問、関係機関からの情報収集などを通じて、継続的に実態を把握します。
母子健康・児童福祉に関わる相談・指導・情報提供
  • 利用者の疑問や不安に丁寧に対応し、必要な情報提供や助言、支援、保健指導をおこないます。
  • 児童手当などの各種手当の給付案内や、母子健康手帳の交付、各種健診、予防接種の案内などをおこないます。
保健医療・福祉の関係機関との連絡調整
  • 利用者の目線に立ち、適切な支援を継続しておこなえるよう、関係機関と密な連携を図ります。
  • 複数機関への支援要請が必要な場合は関係者会議などを開き、情報共有と役割分担、連絡方法などを取り決め、支援体制を整えます。

支援が必要な妊産婦や子育て家庭への支援

相談・通告の受付
  • 利用者との面談や訪問指導、健診などを通じて支援の必要性を感じた場合や、保育所などの関係機関から通告・情報提供を受けた場合に、センター職員が対応方針を検討します。
合同ケース会議の開催
  • 母子保健機能と児童福祉機能どちらの観点からも支援が必要だと判断した場合に、合同ケース会議を開催し、要支援者への対策を検討します。
サポートプランの策定・評価・更新
  • サポートプランとは、母子保健や育児支援サービスを自ら利用できない人を対象に、センター職員が代わってサービスの利用計画やモニタリング内容などをまとめたものです。
  • 利用者本人との対話を通じ、状況や経過を踏まえたうえで作成・交付します。
支援対象者との関係構築
  • 支援対象者の孤立を防ぐため、利用者との対話を通じて支援のニーズを把握し、関係性を深めます。

地域における体制づくり

行政と地域の民間団体の橋渡しをし、支援体制を強化するのもこども家庭センターの役割です。地域全体のニーズや既存の地域資源(民間企業、非営利団体、ボランティアなど)を把握し、不足している資源を補うために新たな支援者を発掘・養成します。また、これらの情報を集約し利用者に提供することで、地域資源の見える化を図ります。

3.こども家庭センターで働く

人員配置基準

こども家庭センターには、センター全体で包括的な支援と管理を担うセンター長と統括支援員のほか、従来の母子保健機能と児童福祉機能で業務を担ってきた各専門職が配置されています。

職種名配置人数
全体センター長1名
統括支援員1名(自治体の実情に応じセンター長との兼務可)
母子保健機能保健師等(助産師、看護師、ソーシャルワーカーも可)1名以上
社会福祉士、精神保健福祉士等の専門職1名以上
利用者支援専門員1名以上(業務上支障がなければ保健師等との兼任可)
児童福祉機能子ども家庭支援員2〜5名
心理担当支援員0〜2名
虐待対応専門員0〜4名
*市町村の児童人口に応じて異なる

センター長の役割

こども家庭センターの管理者として、母子保健機能と児童福祉機能を一元的に管理するための指揮命令を執ります。

統括支援員の役割・資格要件

センター長の下で実務面においてリーダーシップを執り、マネジメントを担います。母子保健機能と児童福祉機能の両業務について十分な知識が必要です。利用者支援の方向性の決定や助言・指導、合同ケース会議の開催、関係機関や地域資源との連携などをおこないます。

統括支援員になるには、以下のいずれかに該当し、一体的支援に関する基礎研修を受講する必要があります。

  • 保健師社会福祉士こども家庭ソーシャルワーカー等の母子保健、児童福祉に関わる資格を持ち、一定の母子保健または児童福祉分野の実務経験を有する者
  • 母子保健機能または児童福祉機能の業務において相談支援業務の経験があり、双方の役割に理解のある者
  • その他、市町村において上記と同等と認められた者

保健師等の役割・資格要件

妊娠・出産・子育ての各段階で妊産婦とそのパートナー、乳幼児を包括的に支援します。具体的には、母子健康相談・指導、母子保健サービスの提供、心理的サポート、地域資源との連携、情報提供・啓発活動などをおこないます。

保健師以外にこの業務を勤められるのは、助産師看護師、またはソーシャルワーカー(社会福祉士等)の有資格者です。なお、ソーシャルワーカーのみを配置する場合には、近隣の保健センターなどの保健師、助産師または看護師との連携体制を確保する必要があります。

利用者支援専門員の役割・資格要件

子どもの発達不安や育児不安を抱える保護者の相談に応じ、地域の子育て支援サービスや専門機関につなぐコーディネーターとしての役割を担います。

利用者支援専門員になるには、所定の研修を修了し、以下の実務経験が求められます。

  • 保育士、社会福祉士、その他対人援助に関する有資格者であり、相談・コーディネートに関する実務経験が1年以上あること
  • 上記の資格を持たない場合、相談・コーディネートに関する実務経験が3年以上あること

子ども家庭支援員の役割・資格要件

子ども家庭支援員は、子どもや家庭に関する悩みや問題を抱える相談者に対応し、実情の把握や調査、問題解決に向けた助言や指導をおこないます。福祉や教育、医療機関などの関係機関とも連携しながら支援を進めます。

子ども家庭支援員になるには、こども家庭ソーシャルワーカー、社会福祉士、精神保健福祉士公認心理師医師、保健師、助産師、看護師、保育士などの資格を有している必要があります。

心理担当支援員の役割・資格要件

精神面での支援を必要とする子どもや保護者を対象に、面接や心理検査などの心理アセスメントをおこない、心理的側面からケアをおこないます。

心理担当支援員になるには、公認心理師の資格保有者、または心理学を専修する大学や大学院を卒業している必要があります。

虐待対応専門員の役割・資格要件

児童虐待に関する相談に応じ、通報の対応や虐待が認められる家庭を支援します。児童相談所や保健所、保健センターなどの関係機関と連携し、虐待を未然に防ぐための取り組みもおこないます。

虐待対応専門員になるには、こども家庭ソーシャルワーカー、社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師、医師、保健師、助産師、看護師などの資格が必要です。

4.支援を必要とするすべての人に行き届くことを目指して

こども家庭センターが新設された背景には、昨今の児童虐待相談件数やヤングケアラーの増加といった社会問題も挙げられます。従来の「子育て世代包括支援センター」と「子ども家庭総合支援拠点」を統合することで、児童虐待の防止や早期発見、ヤングケアラーの支援強化を目指します。その結果、これまで支援が行き届かなかった人たちも含め、すべての人が安心して子どもを生み育てられる、暮らしやすい社会の実現が期待されます。

こども家庭センターで働く職員には、高い専門性と倫理観が求められます。要支援者や地域のニーズを正確に把握し、他機関や地域住民との協力を円滑に進めるコミュニケーション能力も必要です。継続的な自己研鑽が求められますが、地域福祉の向上に貢献するやりがいの大きい仕事だといえるでしょう。

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参考

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