保育園・保育所にはどんな種類がある?役割と利用状況、働く職員についてわかりやすく解説

保育園・保育所は、就労などの理由により自宅での保育が難しい保護者に代わって子どもを預かり、保育する施設です。この記事では、保育所の主な種類とそれぞれの特徴、働く職員と仕事内容、入園の流れについて解説します。

保育園・保育所にはどんな種類がある?役割と利用状況、働く職員についてわかりやすく解説_KV

目次

1.保育園・保育所とは

未就学児を保育する児童福祉施設

保育所とは、保護者の就労などにより自宅での保育が難しい未就学児を預かる児童福祉施設です。児童福祉法に定められており、一般的に保育園とも呼ばれています。

保育所には、厚生労働省が定めた「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」を満たし、都道府県知事や市区町村長から認可を受けた認可保育所と、認可を受けていない認可外保育所があります。

保育所の役割

保育所の主な役割には、親の就労を支えるほか、子どもたちの健康や安全を守り、成長につながるさまざまな経験を提供すること、地域の育児相談への対応があります。

保育所の運営や細かな保育内容は、「保育所保育指針」に定められています。保育所保育方針は1965年に制定され、年齢区分ごとの保育目標やねらい、保育内容が示されています。これまで、共働き世帯の増加や保育ニーズの多様化など、社会状況の変化に応じて改定され、直近では2018年に保育士の資質向上を含む改定がおこなわれました。

保育所保育指針の詳しい内容はこちらをチェック
保育所保育指針とは? 5領域・10の姿などのポイントや、最新の改定点について解説!

保育所の対象児童

認可保育所の対象となるのは、親の就労や病気、妊娠・出産などにより家庭で保育ができない乳幼児です。一方、認可外保育所は理由を問わず入園可としているところが一般的です。

生後何日目から、何歳まで預けられるかは、自治体や園の種類によって異なります。詳しくは次の「保育所の種類」で解説します。

2.保育所の種類

保育施設の分類

保育所は、認可保育所等と認可外保育施設に分けられます。これらの主な違いは、事業目的、施設・面積基準、申し込み方法、保育料などです。

 

認可保育所

認可外保育施設

目的

保育を必要とする児童を保育

保護者の委託を受けて児童を保育

施設基準

児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(厚生労働省令)

認可外保育施設指導監督基準(厚生労働省通知)

面積基準

乳児室の面積:1.65㎡/人

ほふく室の面積:3.3㎡/人

1.65㎡以上/人

保育従事者

すべて保育士


※0〜2歳児を4名以上受け入れる場合、保健師・看護師・准看護師を1人に限り保育士としてカウントできる

保育従事者の3分の1以上は保育士または看護師

申し込み方法

保育所がある自治体に申し込む

施設に直接申し込む

保育料

保護者の収入や子どもの年齢に応じて自治体ごとに定められ、徴収される

施設に納付する

認可保育所等とは

認可保育所等は、面積や保育士の配置などの国が定めた基準をすべて満たした施設です。認可保育所等には、自治体などが運営している公営と、民間事業者が運営する民営があります。

認可保育所以外にも、認定こども園と地域型保育事業の3種類に大別でき、地域型保育事業は、さらに4つの事業に分類されています。それぞれの特徴を見ていきましょう。

〈認可保育所〉

施設の広さや職員数、給食設備、防災管理、衛生管理などの国が定めた設置基準を満たし、都道府県知事に認可された施設です。保護者の就労や病気などにより、自宅での保育が難しい0歳〜未就学児を対象としています。

〈認定こども園〉

幼稚園と保育所の両方の良さを併せ持ち、教育・保育を一体的におこなう施設です。0歳から就学前までの子どもを対象に、保護者の就労有無に関わらず利用できます。教育機関かつ児童福祉施設として、文部科学省と厚生労働省から認可を受けている点が特徴です。

認定こども園について詳しくはこちら
認定こども園とは? 幼稚園・保育園との違い、4つのタイプ、必要な資格・免許、給料などを紹介

tips|保育所と幼稚園の違い

保育所と幼稚園の主な違いは、管轄省庁と基本となる法律、対象年齢にあります。保育所は厚生労働省が所管する児童福祉施設として、「児童福祉法」に基づき設立されています。対象年齢は、0歳から未就学児までです。一方、幼稚園は文部科学省が所管する学校教育施設として、「学校教育法」に基づき設立され、3歳から未就学児までが対象です。

〈地域型保育事業〉

家庭的保育事業

地域型保育事業の一つで、保育者の自宅などで0〜2歳児を対象に保育をおこないます。保育ママ制度とも呼ばれ、家庭的な雰囲気のなか児童数5人(保育補助がいない場合は3人)までの異年齢合同保育をおこなう点が特徴です。

家庭的保育事業について詳しくはこちら
家庭的保育事業(保育ママ制度)とは?施設基準、働く職員と資格、保育内容について解説

小規模保育事業

0~5歳児を対象に、定員6~19人の少人数で運営される保育所のことです。従来は0〜2歳児までが対象でしたが、保育の選択肢を広げるために、2023年から対象年齢が拡大されました。一定の基準を満たせばマンションの一室などでの運営も認められるため、少人数できめ細かい保育ができる点が特徴です。

小規模保育事業について詳しくはこちら
小規模保育園とは? 従来の保育園との違い、必要な資格、働くうえでのメリット・デメリット、給料など

事業所内保育事業

主に事業所が運営主体となり、従業員の0〜2歳の子どもを対象にした保育所を指します。従業員の子どもだけでなく、地域にいる保育を必要とする子どもも利用できる点が特徴です。

居宅訪問型保育事業

障がいや病気、保護者の夜間就労などにより、自宅での個別保育が必要な0〜2歳児を対象とした保育事業です。必要な研修を受け、市区町村に認められた家庭的保育者が、利用者宅を訪問して保育をおこないます。

認可外保育施設とは

認可外保育施設は、「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」を満たしていない施設を指し、主に以下の施設があります。

〈認証保育所〉

多様化する保育ニーズに応えるために、東京都が独自に設定した基準を満たした施設です。民間企業やNPO、個人が運営主体で、保育料は施設側が自由に決められます。一方、0歳児からの受け入れや13時間以上の保育時間など、大都市ならではの基準を満たす必要があります。

認証保育所について詳しくはこちら
東京都独自の保育制度「認証保育所」は「認可保育所」とどう違う?

〈居宅訪問型保育事業(ベビーシッター)〉

乳幼児の自宅で保育をおこなう事業を指し、主にベビーシッターが該当します。民間企業や個人などさまざまな運営主体があり、マンツーマンで保育をおこなうのが特徴です。

〈その他認可外保育施設〉

さらに、認可外保育施設にはさまざまな種類があり、主に以下の施設が挙げられます。

院内保育所

病院に勤める職員向けに、病院内に設置された保育施設です。24時間対応で夜勤時も預けられるなど職員のニーズに沿ったところもあります。

院内保育所について詳しくはこちら
病院で働く人の心強い味方!「院内保育」とは?利用方法は?

企業主導型保育所

従業員や地域のニーズに合う保育サービスを提供するため、企業が設置した保育施設です。事業所内保育との違いは、対象となる子どもの年齢が5歳児まで(事業所内保育は2歳まで)と幅広い点や、保育士の配置基準などです。

企業主導型保育所について詳しくはこちら
会社がつくる保育園? 企業主導型保育施設のメリット・デメリット

事業所内保育事業

企業が従業員向けに設置・運営をおこなう事業所内保育事業のうち、設備や運営に関する基準を満たしていないものは認可外として扱われます。

ベビーホテル

ベビーホテルとは(1)宿泊を伴う保育(2)20時以降の保育(3)利用児童の半数以上が一時預かり、のいずれかの条件に該当する施設のことです。

幼稚園類似施設や幼児教育を特色とした施設など

児童数や設備面で国が定めた基準を満たしていないものの、幼稚園と同様の教育をおこなっている施設を指します。保育時間やカリキュラムは施設により異なります。

3.保育所の現状

施設数と利用者数の推移

2023年時点における保育所等の施設数は、2015年と比較して約1.4倍に増えています。利用児童数も同期間に1.4倍ほど増えていることから、施設数の増加に比例していることがわかります。

施設の内訳を見ると、保育所数はほぼ一定となっている一方、幼保連携型認定こども園は約3.5倍、幼稚園型認定こども園等は約2.5倍、特定地域型保育事業は約2.7倍増加しているのが特徴です。

利用児童数は、近年わずかに減少しており、要因の一つとして少子化の影響が考えられます。

待機児童数の推移

待機児童数は、2015年から2023年にかけて10分の1程度に減少しています。また、待機児童の減少に反比例して、全体の保育利用率と保育ニーズの高い1〜2歳の乳幼児の利用率は、年々増加している点が特徴です。

4.保育所で働く

配置基準

職種

配置基準

保育士

0歳児3人につき1人

1〜2歳児6人につき1人

3歳児15人につき1人

4〜5歳児25人につき1人

嘱託医

配置が必要

調理員

配置が必要

(調理業務を全部委託する場合は配置不要)

2024年に認可保育所における保育士の配置基準が、75年ぶりに見直されました。それまでは3歳児20人につき保育士1人、4〜5歳児30人につき1人だったのが、保育士1人あたりの児童数が5人減り、3歳児15人につき保育士1人、4〜5歳児25人につき1人に変更されています。

認可外保育所は、認可と同じ人数の保育従事者(保育士や看護師)の配置が必要です。ただし、認可保育所では配置する職員のすべてが保育士および看護師・保健師の有資格者である必要があるのに対し、認可外保育所では、保育従事者の3分の1以上が有資格者であれば、残りは保育補助などの無資格者でもよいとされています。

保育所の仕事内容

保育所では保育士をはじめ、さまざまな職種が連携して働いています。それぞれの主な業務は以下のとおりです。

〈保育士〉

子どもの身の回りの世話に加え、挨拶・食事・排泄・着替え・睡眠などの基本的な生活習慣を身につけられるよう適切な声かけをし、介助します。発達段階に応じた遊びの提供や行事の企画、運営も業務の一つです。

また、園児だけでなく保護者に対する支援も大切な業務といえます。育児相談に応じ、アドバイスをすることもあります。

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〈保健師・看護師/准看護師〉

乳児を4人以上受け入れている保育所では、保健師または看護師(または准看護師)を1人に限り保育士と見なすことができます。主な業務は、園児の体調管理や健康診断の実施、園内の衛生管理・指導、保護者への保健指導に加え、保育業務などです。

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〈嘱託医〉

嘱託医の主な業務は、定期的に健康診断を実施すること、感染症対策などの保育施設における健康管理・指導のほか、虐待の防止・発見、健康相談への対応などです。

〈管理栄養士/栄養士・調理員〉

管理栄養士栄養士は、日々の献立作りと保護者に向けた栄養指導が主な業務です。調理員は、管理栄養士(栄養士)が作成した献立をもとに子どもたちの日々の食事とおやつの調理をおこないます。子どもたちの月齢や年齢に応じて食形態を変えたり、アレルギーに配慮したりするなど、個別対応も必要です。

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紹介した職種のほかにも、作業療法士や心理カウンセラーを配置している保育施設もあります。

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保育所の給料

ここからは、2024年10月にジョブメドレーに掲載中の求人をもとに、保育所で働く主な職種(正職員)の給料を紹介します。

職種

月収

年収

保育士

24万2,753円

339万8,542円

看護師/准看護師

26万898円

365万2,572円

管理栄養士/栄養士

22万2,766円

311万8,724円

調理員

22万4,544円

314万3,616円

*年収は「月収の総平均 × 14ヶ月(ボーナスは月給の2ヶ月分)」で試算
*保育士は認可保育所月収・年収、看護師/准看護師はすべての保育所、管理栄養士/栄養士、調理員は保育所・幼稚園のデータを基に算出

5.保育所を利用する

保育所を利用する流れ

認可保育所利用の流れ

自治体によって申し込み方法や時期は若干異なる可能性があります。また、上記は4月入園のスケジュールですが、入園可能な月齢に達していれば年の途中の4月以降9月頃まで、申し込みは可能です。ただし、年度途中は空きが少なく入りづらいことも多いでしょう。

認可外保育施設の場合は、施設によっても異なりますが、一年を通して入園申し込みができ、空きがあれば毎月入園が可能です。

保育所の利用にかかる費用

 

認可保育所等

認可外保育施設

0〜2歳児クラス

住民税額に応じた費用


※住民税非課税世帯は無償

各施設が定めた費用


※住民税非課税世帯は月額4.2万円までの利用料に対し無償

3〜5歳児クラス

無償

月額3.7万円までの利用料に対し無償

保育所の利用にかかる費用は、施設形態と子どもの年齢、世帯状況、保育時間、預ける子どもの人数によって決まります

認可保育所に通う場合、0〜2歳児クラスは世帯の住民税所得割額*1を基に階級を算定し、保育時間に応じて保育料を算出します。3歳児以降のクラスは、「幼児教育・保育の無償化(幼保無償化)」により、利用料金はかかりません。また、子どもが2人以上の場合、最年長児を第1子として、0〜2歳までの第2子は半額、第3子は無償となります。

認可外保育施設の場合、0〜2歳までは住民税額に関わらず施設ごとに決められた保育料がかかり、3歳児以降は月額3.7万円までの給付が受けられます*2

*1…税額控除前の市区町村民税額所得割額から調整控除のみを引いた額
*2…給付対象となるには、住んでいる自治体から「保育の必要性の認定」を受ける必要がある

6.保育士の人員確保と労働環境の整備を

保育所は、保護者の就労などにより自宅での保育が難しい子どもを預かり、保育する施設です。保育所では主に保育士が中心となり、日々の保育や保護者対応、イベントの企画・運営などをおこなっています。

保育所の拡充により、待機児童数は大幅に減少したものの、保育士不足の施設も少なくありません。保育士の有効求人倍率は3.54倍と、全職種の1.35倍を大きく上回っています(2024年1月時点)。

2024年には75年ぶりに配置基準が見直され、保育士の負担軽減や保育の質向上が期待されています。一方で、2026年からは、保護者の就労や利用目的を問わず、0〜2歳の子どもが保育施設に通える「こども誰でも通園制度」が開始予定のため、保育の現場では職員の負担増が懸念されています。

保護者にとって利用しやすい保育所の整備だけでなく、保育士の人員確保、処遇改善も進められることが望ましいでしょう。

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コラム 公開日:2024/08/02

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