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“音楽で人を幸せにする”音楽療法士の仕事とは? 〜人を繋ぐコミュニケーションから、心身のリハビリまで〜

今回取材したのは、フリーの音楽療法士として活動する大野綾音さん。“音楽”を使ったアプローチ法は、通常の治療やリハビリとは異なる方法で相手の心身に働きかけます。音楽療法の具体的な活動内容とその効果、音楽療法士の働き方について話を伺いました。

“音楽で人を幸せにする”音楽療法士の仕事とは? 〜人を繋ぐコミュニケーションから、心身のリハビリまで〜

1.音楽療法士 大野綾音さんプロフィール

音楽療法士 大野綾音さんプロフィール

音楽療法士とは?

音楽療法は、歌や楽器を演奏する、音楽を聴く、音楽に合わせて身体を動かすといった活動を通じて聴覚・視覚・触覚などを刺激することで、気持ちを穏やかにしたり、認知・運動機能の維持・改善に働きかけたり、他人とのコミュニケーションを誘発したりするなどの効果があります。子どもや障がい者の発達支援や学習支援、高齢者の介護予防やリラクゼーション、病気やケガをした人のリハビリテーションなど、さまざまな目的で実施されます。

音楽療法の専門家である音楽療法士は、国家資格などの公的資格ではありません。音楽療法士を名乗るうえで必須の資格はありませんが、日本音楽療法学会が認定する民間資格が有名です。

2.音楽療法士の仕事内容 ──子どもから高齢者、対面からリモートまで

音楽療法士 大野綾音さん取材中の様子
取材はオンラインでおこないました

──早速ですが、「音楽療法」とは具体的にどういった活動をおこなうのでしょうか?

音楽療法って言葉での説明だとなかなか伝わりづらいんですよね。実際の様子を見てもらうのが早いと思うので、この動画を見てみてください。私が実際に訪問している施設で、障がいや発達に特性のある子どもたちが通う、放課後等デイサービスでの様子です。

──なるほど、音楽をベースに楽しみながら、ほかの子たちとコミュニケーションをしていくんですね。

そうですね。施設に来ていても一人で遊んだり宿題をしたりして、友達と関わるきっかけがなかなか作れない子もいます。なので音楽療法の時間はみんなでコミュニケーションを取るところからスタートします。

「タンバリンを友達に差し出して、差し出された相手は名前を呼ばれたら叩く」という活動から相手の名前を覚えたり、「2人1組でベルを鳴らす」ことから人と協調することを学びます。

コミュニケーション以外にも、自分と向き合って“我慢”を覚えるきっかけにもなります。始めは自分の好きな音の大きさ・速さでしか太鼓を叩けない子が、ピアノの伴奏に合わせながら叩けるようになったり、ほかの子の演奏中は静かに座って聴くことを覚えたり。

みんなの前で演奏することも、“人に注目される”という経験になります。

──こういったプログラムの内容は、どう決めていくんですか?

初回の訪問では「アセスメント・セッション」と言って、クライエント(音楽療法の対象者)の状態を見る目的でセッションをやります。日ごろの様子なども施設のスタッフさんから聞いて参考にしながら、音楽療法を通してどうなっていきたいかの目標を立てる。そして目標に沿ってプログラムを考えて、実践して、振り返って、改善して……の繰り返しですね。

なので毎回違う曲やプログラムをやるわけじゃなくて、同じ活動を何回か繰り返しおこなうなかで成果が見えたら、次のプログラムへ移っていくという感じです。長すぎて飽きてしまうのもダメですし、ただの単発のレクリエーションで終わってしまってもダメなので。

──ということは、頻繁に音楽療法の活動があるんですね。

施設によるんですが、週1回月1〜2回の頻度で訪問するところが多いですね。

月1回のところは毎回お久しぶりな感じになってしまって、どうしても音楽療法の効果が高まり切らないので、おすすめしているのは週1回以上です。ただ音楽療法のプログラム料は施設持ち出しのところも多いので、そう頻繁には入れない事情もあります。

──なるほど。プログラムの内容は大野さんご自身で考案されるんですか?

音楽療法のためのプログラム曲集というものが出版されているので、それを参考にしながら活動を考えます。

音楽療法のためのプログラム曲集4冊
音楽療法のためのプログラム曲集

本をなぞってそのままやるのもいいんですけど、相手の特性や目標はそれぞれ違うので、本の内容はあくまでベースとして、そこからどう発展させていくかは相手を見ながら考えていきます

よくやる『順番に鳴らそう』という曲は、本来は音積み木を順番に鳴らすだけなんですけど、私はオリジナルルールとして2人1組でやったり、リーダーの子がもう1人の子を誘って進めたり、太鼓やベルに楽器を代えたりと改変しながらやっています。

──プログラムには同時に何人まで参加するんですか? 1対多人数だと大変そうです。

あまり多すぎると全員に目が行き渡らないので、基本は10人以内がいいなと思ってるんですけど、施設によっては15人くらいでやることもありますね。

音楽療法士の人数も、最低3人はほしいところで。司会進行役、クライエントに混ざって直接指導する人、ピアノ担当の3人。

今は1施設だけ先輩の音楽療法士2人と一緒に行っているところもあるんですが、ほとんどは単独での活動になりやすいです。ほかの多くの音楽療法士さんもそうだと思います。

一人の場合だと、施設のスタッフさんの協力はほぼ必須ですね。スタッフさんにお手本役をお願いしたり、サポートが必要な子がいたら隣についていただいたり。私がお手本を見せなきゃいけないときは、ピアノを弾きながらだと無理なので、あらかじめ録音しておいた音源を流しながらお手本をやるなどの工夫も必要です。

──スタッフさんとの連携も大事なんですね。

そうですね。熱心なスタッフさんだと、プログラムが終わったあとにフィードバックをくれたり、参加者の特徴を教えてくれて席順を一緒に考えてくださったりする方もいて。そういうフォローがあると音楽療法をもっと良いものにしていけるので、すごく有難いですね。

でも、なかには「どうでしたか?」って感想を尋ねると「良かったです」で終わってしまうこともあって。それだけで終わってしまうとレクリエーションの域で留まってしまうんですよね。

そうならないよう、「今日◯◯さんは△△な様子でしたが……」というように、具体的に感想を聞くことを心がけています。するとスタッフさんからも「あの子の反応が良くなってましたよ」「もっとこうしたらいいのでは」のように、次に繋げていけるようなフィードバックをもらいやすくなります。積極的にコミュニケーションをとって、信頼関係を築いていくのが大事ですね。

──ちなみに大野さんの訪問先は、主に児童施設が多いんですか?

そうですね。今は児童施設と障害者施設を中心に活動しています。

以前は高齢者施設でのお仕事もさせてもらってたんですが、新型コロナウイルスが流行り始めてからはお休みしている状態です。

音楽療法で使用する絵譜、歌詞幕
「こういった絵譜や歌詞幕を書くのも一苦労で。今は書道が得意な友達に外注しています(笑)」と大野さん

──そうだったんですね。プログラム内容にもコロナの影響を受けることはありませんか?

影響ありますね……! 今担当している障害者施設では、リモートで音楽療法を実施してます。

楽器や通信機材の準備は施設の方にやっていただいて、オンライン会議ツールのZoomを繋いでやります。オンラインだとどうしてもタイムラグが発生してしまうので、ピアノの演奏中は現場の音を聴かないで弾いて。回線越しの音を聞いてしまうとどんどん演奏がずれていってしまうんですよね。

最近やっているのは、口を動かす口腔リハ体操歌唱楽器活動です。リモートでは利用者さんのフォローをしきれないので、スタッフの方にもサポートしていただきながら。

一応リモートでも活動できてますが、やっぱりやりづらいですね。早くコロナが落ち着いて現場でできるようになってほしいです。

3.音楽療法の効果 ──無理強いしない優しいリハビリ

音楽療法で使用する楽器・小道具類
音楽療法で使う楽器や小道具。フルーツ型のマラカスが子どもに人気。

──音楽療法の内容がだいぶ掴めてきましたが、その効果についても気になるところです。これまでに音楽療法の効果を実感されたエピソードはありますか?

そうですね、たくさんあるんですが……例えば、感覚過敏で手になにかが触れることをすごく嫌がられて、常に両手をぎゅっと握りしめている方を担当したことがあります。日常生活で困らないよう、少しずつ物に触れても大丈夫になるようにリハビリしていきました。

ふわふわの素材を貼り付けた自作の道具を使って。『お花が笑った』の曲に合わせて、最初はほんの一瞬だけ、「お〜はな〜がわ〜らった〜♪」の「わ」のときにそっとふわふわを手に触れさせるんです。最初はびっくりしますけど、徐々に慣れてきたら、今度は手のひらを開いて触れるようにしていく。

音楽療法士 大野綾音さん 取材中の様子
手もとにあったダッフィーでリハビリの様子を再現

ふわふわが大丈夫になったら、次はもう少しザラザラの素材にステップアップして、触れる時間も徐々に長くしていくんです。これを繰り返して感覚の受容を高めていきました

──そんなに目に見える変化があるんですね!

これって「音楽療法じゃなくて普通のリハビリでできるんじゃ?」って思われるかもしれないんですけど、誰だって無理に触られたり手を開かされたりしたらすごくストレスだと思うんです。

そこを優しい音楽のリズムに乗せて、一瞬だけ触れるところから始めるのがポイントで。「お花が笑ったの“わ”だけ、やってみませんか?」って、音楽だからこそ誘い出せるやり方なんだと思います。

4.音楽療法士を目指したきっかけ ──人を幸せにできる仕事

音楽療法士 大野綾音さん 取材中の様子

──学生時代からも音楽療法を始められていたんですね。音楽療法士はいつから志すように?

音楽療法士を明確に目指すようになったのは大学生のときですね。もともと小さいときからピアノとフルートを続けていて、その頃から漠然と「音楽を使って人を幸せにしたい」と思っていました。

ただ、「具体的に自分は何がしたいのか?」「何ができるのか?」がわからなかったので、まずは音楽療法、音楽実技、教員免許取得と幅広く学ぶことができる総合大学の音楽学科に進学しました。そしていろいろな体験を重ねた結果、「私が一番やりたいことは音楽療法だ」と気づいたんです。

──その気づいたときには、何か出来事があったんですか?

3年時の音楽療法の実習として、病院のラウンジでフルートを演奏させてもらったんです。コンクールで吹く曲と比べたら全然簡単な曲なんですけど、聴いてくださった方から「あなたの音に本当に癒やされたわ」って声をかけていただいて。

当時の私はコンクールに向けた練習もしていたので、それぞれの音楽が持つ意味にギャップを感じたというか……。楽器演奏の主軸はあくまで“音楽”なのに対して、音楽療法の主軸は“人”なんです。

私は音楽そのものを突き詰めるよりも、人のために音楽を使いたいって気づいて、そのときに音楽療法士として進む気持ちが決まったんだと思います。

5.音楽療法士の資格を取得 ──授業と個人で試験対策

──音楽療法士の資格は、大学在学中に取得されたんですか?

4年生の冬に試験があって、合否が出たのは卒業後です。

試験内容は、筆記試験、実技試験、面接試験の3種類でした。

日本音楽療法学会認定音楽療法士(認定校コース)の試験内容(当時)

・筆記試験

音楽療法関係、音楽関係、周辺領域関係から100問が出題。

・実技試験

ピアノもしくはギターでの弾き歌い。

複数の課題曲の中から当日くじ引きで選曲。

・面接試験

筆記試験で作成した小論文などを参考に「音楽療法士としての資質」が問われる。

──試験対策はどのくらいされましたか?

大学で試験対策の授業があったので、過去問をみんなで解いたり、先生から解説を受けたりしてました。個人での対策としては、数年分の過去問を繰り返し解いたり、弾き歌いの練習をしてましたね。

大学でまじめに学んで、しっかり試験対策をすればそれほど難しい試験ではないと思います。

6.音楽療法士として働くということ ──難しい現実と叶えたい夢

音楽療法士 大野綾音さん 取材中の様子

──新卒でいきなりフリーランスとして働くのは、大変なことも多いのでは?

大変なことは、たくさんあります。音楽療法ってアメリカなどの海外だと知名度があるんですが、日本ではまだあまり知られていないこともあって、求人が少なくて。音楽療法士のなかには、介護職や保育士を本業にしながら、勤務先での活動の一部として音楽療法を実践しているという人も多いんです。

──本業の一部として音楽療法をする方もいるんですね。大野さんの選択肢に、その働き方はなかった?

まったく考えませんでした。本業を別に持ってしまうと、仕事のほとんどは介護や保育になってしまって、音楽療法はあくまで業務の一部でしかできなくなってしまうので。

音楽療法士一本で食べていくのも簡単ではありませんし、いろいろな仕事で経験を積んでおきたい気持ちもあるので、ほかにもリトミックの講師や楽器の講師、フルート演奏やライブ配信など複数の仕事を掛け持ちしています。

*リトミック…音楽を使った教育法の一種で、子どもの発育を促す効果があると言われている

──仕事はどうやって見つけてくるんですか?

音楽療法士に仕事を斡旋してくれる事務所のような会社があるので、卒業後はまずそこに所属して仕事を受けていました。ただその会社経由の訪問先はすべて高齢者施設で、コロナの影響を受けて依頼がなくなってしまって……。

そのあと受けた今のお仕事はすべて紹介経由です。大学の教授や先輩からの紹介、知り合いの音楽療法士から声をかけていただいたりですね。

──音楽療法での報酬は、どのくらい頂けるんでしょうか?

今受けているお仕事は、1セッション7,000円〜1万円くらいですね。会社から受けていたお仕事は、1セッション6,000円でした。

交通費なしで1セッション3,000円の依頼を頂くようなこともありますが、私は一定の金額を下回ったら受けないと決めています。

音楽療法士としての月の収入は、10万円前後くらいですね。

音楽療法って楽器や機材などの初期費用がかかるし、始めたあとも楽器の種類はたくさんあったほうがいいので、なにかと出費が多いんですよね。そのあたりはちょっと大変です。

──大野さんはこれからどんな音楽療法士を目指していきたいか、目標があれば教えてください。

「被虐待児に対する音楽療法」にいずれは力を入れていきたいと思っています。虐待をしてしまう親──とくにお母さんに多いですね。子育て中のお母さんは社会との接点が少なく、子どもと2人きりの世界になりやすい。本当は虐待なんてしたくないのに、虐待してしまう方が多いと聞きます。

そういった親子を対象に、音楽療法を通じて親子のコミュニケーションを見直したり、周囲の人との接点を持ったりして虐待を未然に防ぐ活動をしていけたらと考えています。

被虐待児に対する音楽療法はまだ日本ではあまり確立されていない分野なんです。今の私だとまだできることも影響力も足りないので、もっと経験を積んで、子どもへの音楽療法の実績を重ねてから、いずれは児童養護施設や行政などにアプローチをかけていきたいですね。

──素晴らしい目標ですね。では最後に、これから音楽療法士を目指そうという方へメッセージをお願いできますか?

音楽療法士って、本当に素晴らしい職業だと思っています。時々、私の活動を知ってくれた学生さんから「音楽療法士になりたいです!」という相談をもらうことがあります。とっても嬉しいですし、素敵な仕事だよってもちろん伝えたいんですけど、実際に仕事としてやっていくのは厳しい面もたくさんあります。

私のように音楽療法をメインにして生きていきたいという人は、それなりの覚悟も必要です。「誰に対して何の目的でどんな音楽療法をしたいの?」という軸をしっかり考えてみるといいと思います。

もちろん先ほどもお話したように、介護や保育などの別の仕事を本業にしながら音楽療法をやっていく道もあると思います。音楽療法士にもいろいろな働き方があるので、自分のやりたい方向を考えてみてください!

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