
1. 認知症グループホームとは
1-1. 定義
1-2. 特徴
1-3. 利用条件
1-4. 設置主体・施設数・入居者の要介護度
2. 認知症グループホームで働く
2-1. 人員配置基準・資格要件
2-2. 仕事内容
2-3. 働くメリット・デメリット
2-4. 平均給与
3. さいごに
1.認知症グループホームとは
1-1.定義
「認知症グループホーム」は、認知症の高齢者が、家庭的な環境と地域住民との交流のもと、自立した日常生活を送ることを目的にした施設です。
介護保険の分類では「地域密着型サービス」のひとつに該当し、市町村から認定を受けた事業者がサービスを提供しています。
なお「認知症グループホーム」は通称であり、介護保険法では「認知症対応型共同生活介護」、老人福祉法では「認知症対応型老人共同生活援助事業」の名称で呼ばれています。
要介護者であって認知症であるものについて、共同生活住居において、家庭的な環境と地域住民との交流の下で入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするものでなければならない。(「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」第1節第89条)
1-2.特徴

認知症グループホームは、5〜9人の少人数グループをひとつの生活単位「ユニット」とし、1ユニットごとに専用の居住空間と専任の職員を配置し、生活をともにします。食事の用意や掃除、洗濯などの日常生活における家事などを職員のサポートを受けながら取り組むことで、認知症の症状を和らげる目的があります。
1施設あたりの定員は、3ユニット27人までと決められています。生活環境の変化がストレスとなって認知症状の進行につながることがあるので、顔なじみの人たちと穏やかに暮らすことが重視されています。そのため、アットホームな雰囲気で第2の家族のように生活できるところが特徴です。
入居者は一人ひとり個室(または準個室)を持つことができ、床面積は7.43平方メートル以上(収納設備等を除く)と規定されています。特養などと比べると1人あたりの最小床面積はやや狭いですが、個室なのでプライバシーは確保されます。
個室を出ると、食堂やリビング、キッチンなどの共用スペースがあり、入居者や職員が協力して家事をしたり、趣味の時間を楽しんだりするなど、コミュニケーションが生まれやすい間取りになっています。また、施設の立地や外観についても、一般住宅と大きく異ならないように配慮されています。
1-3.利用条件
認知症グループホームを利用するには、以下のすべての条件に当てはまる必要があります。
◎ 65歳以上の高齢者
◎ 要支援2 または 要介護1〜5までの認定を受けている方
◎ 医師に認知症の診断を受けた方
◎ 集団生活を営むことに支障のない方
◎ 施設と同一の市区町村に住民票がある方
なお、認知症状や要介護度が重度化すると、より適切な医療処置を受けるために、施設を退去しなくてならない場合があります。厚生労働省の資料(※2)によると、認知症グループホームの退去理由として「医療ニーズの増加」がもっとも多くの割合を占めています。
tips生活保護を受けていても、認知症グループホームに入所することは可能です。施設の賃料は、生活保護の家賃扶助の基準額内であれば全額まかなわれます。
ただし、すべての認知症グループホームに入所できるわけではありません。生活保護受給者の入所受け入れに指定されている施設のみ、入所することができます。
1-4.設置主体・施設数・入居者の要介護度
認知症グループホームは、営利法人(企業)による運営が約半数(53.6%)を占め、残りの半数は一般社団法人(24.4%)、医療法人(16.5%)、NPO法人(4.3%)などによって運営されています(※1)。
認知症高齢者の増加に伴い、施設数は毎年増え続けています。2018年時点の全国の施設数は、13,674施設でした(※3)。
■認知症グループホームの施設数
要介護度別の利用状況を見ると、ここ数年で要介護5の入居者の割合が増えている傾向があります。
2018年時点の入居者全体の平均要介護度は 2.8 でした(※3)。
■認知症グループホームの要介護度別受給者割合
2.認知症グループホームで働く
2-1.人員配置基準・資格要件
認知症グループホームで必要な人員基準は、以下のとおりです。
介護従事者 | 日中 | 利用者3人につき1人(常勤換算) |
---|---|---|
夜間 | ユニットごとに1人 ※3ユニットの場合、安全等が確保される状況下であれば例外的に2人も可 |
|
計画作成担当者 | ユニットごとに1人 ※最低1人は介護支援専門員 ※ユニット間の兼務は不可 |
|
管理者 | 常勤専従で1人 ※3年以上認知症の介護従事経験があり、厚生労働大臣が定める研修を修了した者 |
介護職員の資格要件はないため、未経験・無資格でも働くことができます。しかし施設によっては「介護職員初任者研修修了者」「介護福祉士」などの基準を設けているところもあります。
2ユニット以上ある場合の計画作成担当者は、最低1人は介護支援専門員(ケアマネジャー)の有資格者である必要があります。もう1人は、厚生労働省指定の研修を修了し、認知症の介護サービスに関わる計画作成の実務経験があると認められれば、介護支援専門員でなくとも勤務が可能です。また、計画作成担当者は担当ユニット内のほかの業務を(主業務に支障がなければ)おこなうことができますが、担当以外のユニットの業務はおこなえません。
さらに認知症グループホームでは、看護師の配置は義務付けられていません。しかし最近では看護師を配置したり、訪問看護ステーションと連携したりすることで、医療体制を整えている施設が増えています。
2-2.仕事内容
日本医療労働組合連合会が発行している「2019年 介護施設夜勤実態調査結果」によると、調査をおこなった認知症グループホームの半数以上が、4交代制(早番・日勤・遅番・夜勤)をとっている結果でした。
ここからは、認知症グループホームの職員のおもな仕事内容を紹介します。
■生活援助
料理、掃除、洗濯、買い物同行などの日常生活を安全におこなえるよう、必要に応じたサポートをします。
■身体介助
要介護度が重度の方や認知症状が進行して身体介助が必要な方には、食事や入浴、排泄などの介助をおこないます。
■入居者の健康管理
看護師がいない施設では、介護職員が入居者のバイタルチェックや服薬管理をおこないます。
■レクリエーションやイベントの企画・実施
手先を使う、歌うなどの五感を刺激することは、認知症状の改善や進行を防ぐのに効果があると言われています。そのための入居者が楽しめるレクリエーションを職員が担当したり、地域の人たちと一緒に参加できるイベントを企画したりします。
■夜間の見守り
夜勤の職員は、入居者の見守り、排泄介助、急変時の医療機関への連絡などに対応します。
■ケアプランの作成
計画作成担当者は、ケアマネジャーが中心となって入居者のケアプランを作成します。利用するサービスの選定や関係者への連絡調整などをおこないます。
■看取り
看取りをおこなうかどうかは施設の医療体制によって異なりますが、最近では看取り対応可能な施設が増えています。介護職員は看護師らの連携のもと、サポートをおこなうことがあります。
2-3.働くメリット・デメリット
認知症グループホームで働く上でのメリット・デメリットにはどのようなことがあるでしょうか? 入居者との関わり方や、スキルアップしたい専門性などをふまえて、自分に合うかどうか考えてみましょう。
■メリット
◎ 入居者一人ひとりと向き合った介護ができる
最大でも18人の少人数定員なので、長期的にじっくりと、入居者一人ひとりの生活に寄り添った介護ができます。決まった日課をただ繰り返すだけではなく、日々の生活を楽しんでもらえるような工夫がしやすい環境です。
◎ 介護初心者でも挑戦しやすい
前述のとおり、認知症グループホームでは介護職員として働くのに必要な要件は原則ありません。ほかの施設よりも比較的ゆったりとした時間の流れのなかで介護がおこなわれるため、介護初心者でも余裕を持ちながら技術を身につけることができます。
◎ 体力的負担が少ない
ほかの施設よりも身体介助が必要となる入居者が比較的少ないため、体力に自信がない人でも挑戦しやすいです。
■デメリット
△ 認知症の方と接する難しさを感じるときも
当たり前ですが、入居者は全員認知症を患っている方です。入居者と意思疎通がうまくとれなかったり、ときには心ない言葉や乱暴を受けることもあるかもしれません。認知症グループホームで働くのであれば、認知症の症状について理解を深めておくと、自分と入居者双方にとってプラスになるでしょう。
△ 夜勤がある
認知症グループホームでは、限られた職員数で交代して勤務するため、必然的に夜勤を求められることが多いようです。しかし、特養などのほかの施設と比べると、医療依存度の高い入居者は少ないので、夜間の急変などは起きづらいようです。
△家事が苦手でできない
認知症グループホームは入居者にとっての家庭なので、そのサポート内容は家事が中心。料理や洗濯、掃除などがまったくできない場合は、うまくサポートできず負担に感じる人もいるかもしれません。しかし現在ではレトルト食品などを活用したり調理専門のスタッフを雇ったりしている施設もあるので、少しずつできることを増やしていけば問題ないでしょう。
2-4.平均給与
厚生労働省が発表したデータによると、2018年時点の介護保険サービス事業者の介護職員の平均給与額は以下の金額でした。
常勤 | 非常勤 | |
---|---|---|
認知症対応型共同生活介護 (認知症グループホーム) |
276,320 円 | 180,410 円 |
特別養護老人ホーム | 332,260 円 | 239,290 円 |
介護老人保健施設 | 317,350 円 | 260,710 円 |
介護療養型医療施設 | 285,360 円 | – |
訪問介護事業所 | 291,930 円 | 208,210 円 |
通所介護事業所 | 262,900 円 | 201,870 円 |
※平均給与額:基本給(月額)+手当+一時金(4~9月支給金額の1/6)
認知症グループホームの職員の平均給与は、6施設で比べると低めの給与となっています。しかし、夜勤専従で勤務したり、資格を取得したりすることで、各種手当がつき金額があがる可能性があります。気になる求人があれば、基本給以外の条件も細かく確認するようにしましょう。
3.さいごに
厚生労働省によると、2025年には認知症の高齢者は700万人を超え、65歳以上の高齢者のうち5人に1人が認知症になると言われています。認知症グループホームに期待される役割は、今後さらに増していくと考えられます。
認知症の症状は、声掛けや介護の仕方によって、症状の安定や改善があるという研究結果も出ています。さまざまな種類がある介護施設ですが、認知症の方とじっくりと向き合った介護をしてみたいという方には、グループホームはぴったりの職場ではないでしょうか。
ジョブメドレーでは、全国の認知症グループホームの求人を多数扱っています。あなたに合う施設を探してみてください。
■参考文献