1.今回インタビューしたのはこんな人

──まずは今までの職歴を簡単に教えてください。
2003年に知的障害者通所施設へ嘱託職員として入職し、利用者さんの生活介護をしていました。
2005年には正職員の生活支援員として、知的障害者入所施設へ転職。行事担当長や広報なども経験しました。
2016年からは仕事のかたわら放課後等デイサービスでのボランティアを始め、2017年にボランティア先へ正職員の児童発達支援管理責任者として転職。
2019年に雇用形態や職種は変わらず別の放課後等デイサービスへ転職し、2020年に現在の放課後等デイサービスへ正職員の児童指導員として転職しました。

──4回目の転職が2020年ということは、コロナ禍での転職活動だったんですね。
はい。2020年4月から転職活動を始め、内定をもらった5月に前職へ退職の意向を伝えました。現職では7月から働いています。
──転職のきっかけは何だったんですか?
新型コロナウイルスの流行をきっかけに、自分の今後を考えてですね。
前職の放課後等デイサービスがコロナの影響で利用者が減ってしまい、1ヶ月間休所したんですよ。そのとき職場から「休所するからダブルワークをして構わない」と言われたのが、ほかの職場を探すきっかけになりました。
そして家庭の事情になりますが、同時期に嫁が長期入院したんです。これを機に家庭の時間を作れるよう自分の働き方を見直しまして。結果的にワークライフバランスが整った職場へ転職することを決めました。
──前職の休所が働き方を見つめ直すきっかけになったんですね。職場選びにもコロナは影響しましたか?
影響したのは「密を避けるお預かり」を意識したことでしょうか。
前職の放課後等デイサービスは集団でのお預かりだったんですが、お預かりするお子さんが密にならないためにも、転職時はマンツーマンで療育できる個別療育の施設を選んでいました。
集団でお預かりしていた前職が休所したこともあって、社会の情勢・ニーズに合った職場を選ぶことも大切なんだなと、コロナ禍の転職で実感しましたね。

──世の中の動きも加味して転職先を探す必要があったんですね。転職先を探すうえで重視したポイントは?
やはりワークライフバランスが一番ですね。
正直、前職のほうが収入は良かったんです。ただ、私には小さい子どもが2人いて、さっき言ったように嫁の体調が芳しくないので家庭の時間が必要になったんですね。
なので通勤時間が短いこと、残業が少なく帰宅してからの時間を多く取れること、しっかりお休みが取れることを重視していました。
──前職では通勤時間や残業時間が長かったんですか?
今までは片道1時間半かかって通勤していたんですよ。それが転職して片道30分に短縮しました。さらに前職は退勤時間が19時だったんですが、現職は18時なのでより早い時間に帰れるようになりましたね。
残業については、前職では児発管(児童発達支援管理責任者)と管理者を兼任していたのと、送迎にも時間が取られていて月に30〜50時間ほど残業をしていたんです。今の職場では送迎がなく、事務作業の時間がしっかり取れるのでほぼ定時で帰れていますよ。
──それは嬉しいですね! お休みの取り方も変わりましたか?
今までは休みの曜日が月によって変動したり、土曜も営業したりと固定ではなかったんですが、転職して完全に土日休みになりました。
土日休みだと家族サービスをしやすいですし、40代の自分の体力も考えると、働き方を見直せて良かったなって思います。
──なるほど。ちなみに、今回の転職では複数の事業所へ応募しましたか?
3ヶ所に応募して選考を受け、結果的に1ヶ所から内定をもらいました。
職場探しにはジョブメドレーとLITALICOの2つの求人サイトを使いましたよ。
2.児童指導員の履歴書・職務経歴書(実例)
履歴書

※証明写真部分は取材中の写真に変更しています
職務経歴書


※職歴が記入欄に収まらなかったため2枚になっています
──履歴書・職務経歴書は手書きで作成したんですね!
はい。文房具屋さんで用紙を購入して、応募先の数に応じて3部書きました。書く内容を決めて、鉛筆で下書きをしてから清書しましたね。
──工夫した点や、慎重に書いた部分はありますか?
学歴・職歴部分はとくに慎重に書くようにしました。入学・卒業、入職・退職の年月などを間違えないように確認しながら。
──学歴・職歴部分は間違えてしまうと経歴詐称になりかねないですもんね。ほかにも工夫した点はありますか?
職務経歴書の自己PR部分になりますが、自分がこれまでやってきたことを簡潔に書くようにしました。そのうえで応募先が力を入れている部分と自分の保有資格や経験、これからやりたいことを結び付けるよう心がけました。
“活動を通して、音楽遊び・作業・居室環境の整備を行ってきました。
事務ではパソコンスキルを活かし、マクロをとりいれた勤務表の作成を行い、日々の利用者・職員配置を効率良くとりくんできました。
利用家族とのコミュニケーション力を向上し、生きにくい今の時代をチームでとりくめるよう、自己研鑽します。”
──応募先の目指すところとご自身のスキルのマッチングを意識したんですね。反対に書くのに苦戦した部分はありましたか?
やっぱり履歴書ってどうしても書くスペースが限られているんですよね。例えば志望動機欄だと、今までやってきたことを細かくは書ききれなくて。いかに簡潔にまとめるか苦戦しました。
なので面接の際に口頭で伝えられそうな部分は削減して、書く情報を絞っていきました。
“障害者支援施設で培った生活支援と、放課後等デイサービスで他職員と協力して活動を進めた実績を貴社で活かしていきます。
利用者はもとより、職員ともコミュニケーションを密にとり、現場支援に反映してきました。”
──確かに経験が豊富なほど、限られたスペースに収めるのは大変そうです。書類について「今ならこう書くな」と思う部分はありますか?
パソコンで作成したほうが楽だったなと思っています(笑)。
コロナの影響もあって、今後もっとWEB面接が増えてくると思うので。パソコンで書類を作成してPDFで送るのが効率的だったのかなと。
──転職時に手書きで書類を作成した理由はあったんでしょうか?
これまでが手書きが主流だったということもありますが、自宅にパソコンがなかったので……!
スマホやパソコンで簡単に履歴書・職務経歴書を作成する方法を解説!
──履歴書に貼った写真はどこで撮ったものですか?
証明写真の写真機で撮りました。上半身は事前に購入したワイシャツを着ましたね。
──女性では撮影時のメイクに気をつける方が多いですが、男性の場合はどうでしょう。
私の場合は髭が濃いので、髭をしっかり剃ってから写真を撮るようにしました。
──なるほど。履歴書や職務経歴書は応募先へ郵送しましたか?それとも手渡しでしたか?
面接当日に手渡しでした。封筒に入れて持って行きましたね。
ジョブメドレーからのアドバイス
今回の履歴書・職務経歴書について、ジョブメドレーのキャリアサポートに「良い点」「改善できそうな点」を聞いてみました。主なポイントは以下の通りです。
履歴書
1.学歴、職歴、自己PRがしっかり記載されている
とくに丁寧に記載された自己PR部分から意欲を感じられました。手書きの文字から仕事に対する思いがより伝わりそうです。
2.文末の句点「。」は統一しましょう
文末に句点「。」がついている部分とそうでない部分があるため、履歴書全体で統一しましょう。
3.文字の間隔を意識して見やすく
入職/退職の前のスペースを揃えるなど、文字の間隔を意識すると、より読み手に優しい履歴書になります。パソコンやスマホで作成すると、文字列や文字サイズの調整も簡単です。
職務経歴書
1.自己PRは履歴書の内容より具体的に書きましょう
自己PR欄は、Aさんのように履歴書・職務経歴書の両方に記載されていることが望ましいです。アピールしたい事項を統一するためにも、大まかな記載内容は履歴書・職務経歴書で揃えることをおすすめします。
履歴書には要点、職務経歴書には具体例を含めた詳細を記載するなど、うまく書き分けることでアピールポイントがより伝わりやすくなるでしょう。
2.事業所にマッチしたアピールポイントを選びましょう
経験談やアピールポイントが複数ある場合は、事前に応募先のホームページなどを確認し、応募先に一番合いそうなエピソードを選んで記載しましょう。書ききれなかった部分を面接時に口頭で伝えられると、意欲を感じられて良いですね。
3.児童指導員の面接対策

──書類が手渡しだったということは、面接は対面だったんですね。内定をもらった職場の面接は全部で何回ありましたか?
3回ありました。
社長が人事担当をしていて、3回とも社長との面接でしたね。面接時間は1時間くらいだったと記憶しています。
──面接当日までにおこなった対策を教えてください。
まずは応募先の場所を確認しました。マップを見て、自宅から公共交通機関もしくは車で行ったらどのくらいの時間がかかるのか、どんなルートなのか。
あとは質問されそうなことに対してシミュレーションをしました。
──どんな質問を想定したんですか?
保有資格について、どんな経緯で資格を取得したのかはこれまでの転職でもよく聞かれたので準備しましたね。例えば「福祉や支援について今までと違う視点から勉強しようと思って、介護福祉士や知的障害者援助専門員の資格を取った」など。
あと私は言語聴覚士の学校を卒業しているんですが……実は勉強不足で言語聴覚士の資格を取れていないんですね。そういったネガティブなところをフォローできるような言葉を準備しました。
──ちなみにどういったフォローの言葉を?
資格が取れなかったことに関して「勉強不足だった」と正直に伝えつつ、4年制の学校に通って基礎知識は十分に身につけたと。
──なるほど。実際の面接ではどんなことを聞かれましたか?
やはり転職する理由は必ず聞かれますね。
──転職理由は先ほど言っていた「家庭の時間を作るためにワークライフバランスを整える」でしょうか。
そうですね。今の職場は、面接の段階で「嘘をついてほしくない。言いにくいことも初めから包み隠さず話してほしい」と言われていたので、私自身の家庭の事情を説明しながら伝えました。
あとはどんな業務をやってきて、どういうふうに課題を解決してきたかも聞かれました。
──それに対してはどう答えたんですか?
入所施設での経験になりますが、利用者さんの居室環境を整えるといった安全面だけでなく、余暇支援で利用者さんの好きなことができるように工夫したことを話しました。
例えばプロ野球が好きな利用者さんだったら、試合を録画したブルーレイを用意して。でもそれを利用者さんだけで観るとなると、機械を壊しちゃう可能性があるので、職員同士で協力して機械の周りにバリケードを設置しながら楽しんでもらったんです。
利用者さんが過ごすうえで必要な最低限のことだけじゃなくて、利用者さんが楽しめることは何か、どうすればそれを実現できるか、について考えたプロセスを話しました。
──具体的な例を伝えたんですね。
こういった体験談に関連して、今までの経験の中から応募先の業務に活かせそうなことも伝えましたね。
私はギターが弾けるので、療育の室内活動でリトミックをやっていた経験があるんです。音楽に関する療育ができることは、応募先の放課後等デイサービスでも活きると伝えました。

──Aさんが活躍できる場面をイメージしやすいですね。面接官からの質問で返答に困るものはありましたか?
「エクセルやワード、パワーポイントなど、パソコンのスキルがどれくらいあるのか」ですかね。
──確かにパソコンスキルは言語化して伝えるのが難しそうです。
私の場合は実際に使える機能を具体的に伝えていきました。
切り取り、貼り付け、画像の挿入、保存したファイルの拡張子の変更、マクロの自動計算がどこまでできるか……といった具合で。
──なるほど。反対にAさんから質問したことはありますか?
ワークライフバランスに深く関係する“時間”について質問しました。
残業が発生する場合があるのか、求人では土日休みになっているがずっと変わらないのか、など。
──退職理由をしっかり解消できるか確認したんですね。続いて面接時の持ち物や身だしなみについても教えてください。当日の服装は覚えていますか?
スーツで行きました。選考を受けたほかの人もみんなスーツでしたね。
──服装や身だしなみで気をつけたことは?
証明写真のときと同様、髭をしっかり剃ったのと、紺や黒のスーツはゴミやフケが目立ちやすいので、肩元を中心に汚れがないかチェックしました。
──清潔感を重視したんですね。面接当日は何を持って行きましたか?
提出物の履歴書、職務経歴書、資格証のコピー。あとは筆記用具とメモ帳を持って行って、聞いたことをメモしていました。携帯電話もマナーモードにしてバッグに入れてましたね。
それとブラシや靴磨きなどの身だしなみグッズ、対面の面接を考慮して口臭予防のタブレットを持っていきました。
──コロナ禍ということで面接時もマスク着用でしたか?
ずっと着用していました。不織布マスクを着用して、予備も2枚ほど用意して。
──ずっとマスクを着けていると面接官の表情がわかりにくそうですね……!
相手がどう思っているか不安でしたね。自分からはできる限り相手と目を合わせるように心がけましたよ。
──口元が隠れている分、目線を意識したんですね。最終面接から内定の連絡まで期間はどのくらいでしたか?
最終面接がゴールデンウィーク前にあって、連休が明けてから連絡をもらいました。
最終面接の場で内定をもらうパターンも多い業界だと思うんですが、私を含め4人同時に選考が進んでいたらしく、連休明けの連絡になったようです。
──では4人の中からAさんが採用されたんですね!
そうなんです! 実は現職の事業所は、もともとジョブメドレーからスカウトメールをもらっていまして。
スカウトメールの一文には「言語聴覚士の学校を卒業した人で、療育経験がある人を募集したい」と書いてありました。ジョブメドレーでプロフィールや職歴を入力していて良かったです。
スカウトを受けるコツはプロフィールにあり?プロフィールを充実させて転職活動を有利に進めよう!
──Aさんの経験や職歴と、事業所が求める人物像がマッチしていたんですね。
後日、4人の中からなぜ私を採用したのか社長が教えてくれたんですが──「会社が大切にしている“個別療育”に一番向いていると思ったから採用した」とも言っていましたね。
私自身が“個別療育”を選んで転職活動をしていたので合っていたんだと思います。
──採用された理由を直接聞けるのは嬉しいですね。今回の面接を振り返って「もう少しこうしたかった」と思うことはありますか?
給与の希望額をもう少し高めに言っても良かったかなと思います(笑)。
採用が決まったあとで、より好条件の求人を目にしてしまったり、元同僚から良い条件で誘いの声がかかったりして。こればかりはタラレバの話になってしまうんですけどね!
──コロナ禍で4回目の転職を経験したAさんから、転職を考えている方へメッセージをお願いします。
転職をするときって少なからず「ここにいたくないな」って思いを抱いていると思うんですが、その思いを覚えておくのが大事かなと。
実際の面接では「ここにいたくないな」と思った状況を、自分自身でどう乗り越えたか、あるいは転職を通してどう乗り越えようとしているかをしっかり伝えられると、いい結果が残せるのかなって思います。
長く働くと苦労することもあると思いますが、苦しいなかで自分が起こしたアクション──実際に目に見える結果に現れてなくてもいいので、行動したことをしっかり言えることが大事ですね。
ジョブメドレーからのアドバイス
今回の面接対策について、ジョブメドレーのキャリアサポートに「良い点」「改善できそうな点」を聞いてみました。主なポイントは以下の通りです。
1.周到な準備がGOOD!
事前に交通ルートを確認する、質問のシミュレーションをするなど、しっかり準備をしたうえで本番に望んでいる姿勢が良いですね。
2.コロナ禍を踏まえた対策が好印象
マスク着用での面接を考慮して目線を意識する、といった細かい気配りができています。面接をしてもらう相手のことも考えた対応から、お人柄の良さが伺えます。
3.WEB面接の場合は“明るく大きめ”の声を意識しましょう
Aさんは対面での面接でしたが、コロナの影響を受けてWEB面接を取り入れる事業所が増えています。画面越しでも意欲が伝わるよう、WEB面接ではいつもより“明るく大きめ”の声を意識できると良いですね。
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