この記事をまとめると
・賞与は支払日に在籍しているか否かで受け取れるかが決まる
・社会保険料は退職日の翌日に資格喪失し、月末退職だとその月の保険料が発生する
・同月中の退職で社会保険料が二重取りされた場合は還付される(要申請)
賞与は支払い日に在籍しているかどうかで決まる
月給制の場合、月中退職か月末退職の違いにかかわらず、退職日が賞与の支払日より後であれば賞与を受け取ることができます。言い換えれば、支払日前に退職すると賞与が受け取れない可能性が高くなってしまうのです。
これが、年棒制になるとやや事情が異なります。年棒制はその1年の賃金額を予め定めた給与形態。年棒額を12等分した額を毎月支給するのが一般的ですが、中には年棒額をより細かく等分し、そのうちの一部を賞与として支給すると定めている事業所もあります。後者であれば賞与の額がはっきりわかっているため、賞与の支払日よりも前に退職したとしても在籍期間に応じた賞与の支払いを受けられる可能性はあり得るでしょう。ただし月給制と年棒制いずれの場合でも、雇用契約書や就業規則などに賞与支払いに関する規定があれば、その内容を優先する必要があります。
社会保険料では、月中退職と月末退職で違いが
続いて社会保険について考えてみます。就業時間など一定の条件を満たした労働者は、厚生年金保険に加入する義務があります。厚生年金保険の被保険者となる資格が得られるのは、入職したその日。そして、資格を喪失するのは退職した日の翌日です。社会保険料の支払い義務が発生するのは、資格取得日を含む月から資格喪失日を含む月の一つ前の月まで。たとえば8月30日に月中退職した場合、資格喪失日は8月31日となり、社会保険料の支払いが発生するのは前月に当たる7月までです。一方、8月31日に退職すると資格喪失日は9月1日となりますから、社会保険料の支払いは8月まで発生することになります。月末退職をした場合、給与の締め日によっては最後の給与から7月と8月の合計2か月分の社会保険料が天引きされるケースも起こりえます。
ただし、これは「保険料を2か月分支払ったから損」というわけではありません。社会保険料とは20歳以上の成人であれば毎月欠かさず支払わなければならないもの。月末退職したことで、国民年金保険よりも将来もらえる年金額が多いとされる厚生年金の加入期間を少しでも長くできた、と捉えるとよいでしょう。
入職したその月のうちに仕事を辞めた場合はどうなる
では、転職したものの、やむ負えない事情などで同月中に退職したケースではどうなるでしょう。この場合は厚生年金保険の資格取得日と資格喪失日が同じ月にあるため、退職先での社会保険料の支払い義務は発生しません。しかし、締め日によっては保険料の天引きされてしまうことも起こりえます。この場合は、退職後に国民健康保険への加入手続きを行ったり同月中に新たな事業所の厚生年金保険に加入したりすれば、社会保険料の二重取りにならないように還付される仕組みになっています。
月中退職と月末退職によって起こる違いは把握できたでしょうか。賃金は労働への対価ですからもちろん丁寧に考えておきたいこと。しかし、賞与や社会保険料の都合だけを考えた退職日の設定は避けたいものです。円満退職となるよう、退職先や転職先も納得できる退職日を設定するようにしましょう。