目次
1.試用期間とは
事業主側が職務への適性を判断するための期間
試用期間は事業主側が採用した従業員を評価するための期間です。実際の業務を通してスキルや勤務態度、同僚との調和などが見られます。また、従業員側にとっても職場の雰囲気が合っているか、継続して働けそうかを判断するための期間ともいえます。
試用期間の設置は法律で定められているわけではなく、事業主が期間や条件を設定でき、試用期間の終了をもって本採用の流れが一般的です。
1〜6ヶ月程度がほとんど
試用期間の長さは事業主ごとに異なり、1週間から1ヶ月など短期間のところもありますが、3ヶ月から6ヶ月程度が一般的です。試用期間がある場合は、求人票や就業規則に明記されている必要があります。
期間の短縮・延長もあり得る
また、試用期間は短縮や延長となる可能性もあります。延長の場合、従業員に関して気になる勤務態度やスキル面での不安があるなど客観的かつ合理的に必要性が認められ、やむを得ない理由があれば本人に事前の通知をおこない合意を得たうえで延長となります。
Tips|仮採用、研修期間とは?
仮採用
事業所によっては試用期間と同じ意味合いで使われています。試用期間には、本採用するかどうかを判断するという目的があるため、正式に採用決定する前の“仮の採用”と考えられます。
研修期間
会社や業務内容に関する理解・知識を深めるために設けられる期間のことです。法律に定めがあるわけではなく、職種、経験などによって期間や内容は異なります。研修も入職後すぐにおこなわれることが多いため、試用期間と研修期間を兼ねて一人で仕事ができるまでの育成期間とされているところもあります。
2.試用期間中の給与や休みは?
給与・残業・深夜料金が支払われる
試用期間中の給与は本採用時よりも低く設定されていることもありますが、「条件変更なし」としているところが多いようです。試用期間中であっても最低賃金以下に設定することは禁止されていますので、もし賃金が低く設定されている場合は、地域別の最低賃金を下回っていないか確認してください。
また、試用期間中であっても残業や夜勤、休日出勤自体は問題ありません。これらの勤務が発生したら、勤務形態にかかわらず残業代や深夜手当などが支払われます。
試用期間中も社会保険に加入できる
社会保険はけがや病気、休業、失業、障がい、老齢、死亡などのリスクを社会全体で支え合う仕組みです。試用期間中であっても、事業主は要件を満たす従業員を社会保険に加入させる義務があります。
社会保険には健康保険・厚生年金、介護保険と、労働保険である労災保険、雇用保険があります。それぞれの詳しい内容や加入条件は以下の記事にて解説しています。
有給休暇は条件を満たせば付与される
有給休暇(有休)は雇用された日から6ヶ月間の継続勤務をし、全労働日の8割出勤している従業員に与えられます。正職員に限らずパートやアルバイトでも取得できます。試用期間が6ヶ月以上ある場合、条件を満たせば試用期間中であっても有休が取れます。
また、事業主によっては入職時に有休の一部を付与しているところもあります。
3.試用期間中に解雇・退職はあり?
正当な理由があれば解雇もあり得る
試用期間中は「解約権留保付労働契約」があるとみなされ、本採用後よりも広い範囲における解雇の自由が認められています。
ただし、試用期間終了後と同様に、正当な理由がないのに解雇することは法律で禁じられています。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用:労働契約法第十六条
事業主側が解雇を検討する理由として、勤務態度の悪さ、業務命令違反や規律違反、経歴詐称などが想定されます。しかし、これらの理由があるからといってすぐに解雇することはできません。試用期間中は仕事に慣れてもらうために事業主側にも指導が求められますので、まずは従業員に対して注意し、改善を求めます。それでも改善されない場合は、通常の解雇通告と同様に30日以上前から従業員に予告する必要があります。予告をおこなわない事業主は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。
ただし、入社後14日以内の解雇であれば解雇予告は不要となっています。しかし実際のところ、入社から2週間程度で解雇に相当するか判断することは難しいため、解雇無効となる可能性が高いです。
期間中の退職は可能
退職については試用期間終了後と同様に、就業規則に記載のある期間までに申し出をおこなうか、民法で定められている2週間前までには申し出る必要があります。そのため、たとえ試用期間中であってもすぐに退職できるわけではありません。
就労先がどうしても合わないと感じたら上司に退職の意志と理由を伝え、退職日について相談します。伝える内容については、下記の例文を参考にしてみてください。
体調不良が理由の場合
本日はお時間をいただきありがとうございます。突然のご相談なのですが、退職を考えております。入職してから体調不良が続き、このまま仕事を続けるのが難しいと感じております。試用期間中にこのようなお話をすることになり、申し訳ございません。
人間関係が理由の場合
本日はお時間をいただきありがとうございます。急なご相談で大変申し訳ございませんが、実は退職を考えております。
こちらの○○(病院など施設形態)に貢献したいと考えておりましたが、実際に働いてみるとチームプレーでの業務の進め方が自分には合わないと感じております。努力はしてみたもののどうしてもなじむことができず、私には個人で仕事を進めていくほうが合っていると気づきました。
試用期間中にこのようなお話をすることになり、申し訳ございません。
家庭との両立が理由の場合
本日はお時間をいただきありがとうございます。突然のご相談で恐縮なのですが、退職を考えております。実際に働いてみたところ想像よりも仕事と家庭の両立が難しく、働き続けるのが難しいと感じております。試用期間が始まったばかりで心苦しいのですが、ご理解いただきたく思います。
4.医療・福祉業界の試用期間は?
求人からわかる使用期間の長さと待遇
ジョブメドレーでは医療・福祉の求人を多数掲載しています。事業所ごとに期間や待遇は異なりますので、求人票で確認してみましょう。
看護師/准看護師
施設形態:病院
雇用形態:正職員
試用期間:3ヶ月
待遇:基本給、職務手当など条件変更なし
看護師/准看護師
施設形態:クリニック
雇用形態:正職員
試用期間:3~6ヶ月程度
待遇:試用期間中は契約社員として雇用、試用期間終了後に正社員登用予定、その他条件変更なし
歯科衛生士
施設形態:クリニック
雇用形態:正職員
試用期間:3ヶ月
待遇:使用期間中は月給マイナス2万円
介護職/ヘルパー
施設形態:特別養護老人ホーム
雇用形態:正職員
試用期間:3ヶ月
待遇:基本給、夜勤手当など条件変更なし
保育士
施設形態:保育所
雇用形態:パート・アルバイト
試用期間:3ヶ月
待遇:時給、雇用条件の変更なし
【相談】試用期間中の給与は変わる?/介護職
【回答】
- 入社して3ヶ月試用期間を設けています。給料は変わりありません。
- 私のところも試用期間3ヶ月でした!給与面では、3ヶ月経って少し上がりました。
引用:カイゴトーク
解説:試用期間中の給与は本採用時と変更もできますが、事業所を管轄する地域の最低賃金を下回っていないか確認してください。
【相談】試用期間中に残業代は出ない?/看護師
【回答】
- 給料明細はちゃんと残しておいて、増えてなければ医事課に給料明細書の詳細を聞き、ちゃんと超勤がとれているか確認しましょう。とれてなかったら看護部長に報告ですね
引用:カンゴトーク
解説:試用期間中であっても労働基準法では1日8時間、1週40時間を法定労働時間としており、超えた分は時間外労働となり残業代が支払われます。雇用契約書や就業規則で試用期間中の残業代はなしと明記していても、法律が優先されます。
【相談】試用期間中にボーナスは出る?/介護職
【回答】
- 私の施設では1年目の夏(6月)からもらえました。でも、夏は手取りで10万もなかったです。冬から60万くらいに増えたのでびっくりしました。初年度はどこの施設も満額もらえないと思いますよ!
引用:カイゴトーク
解説:賞与(ボーナス)がどれくらい支給されるかは事業所ごとに異なり、試用期間は不支給・減額としているところもあります。
【相談】試用期間中にはどんなところを見られる?/保育士
【回答】
- 勤務態度をしっかりして、担任になった場合 きちんと書類(月カリ、個人カリ、おたより→市によりますが)や連絡帳を書く、誤字脱字に気をつけるなど…しておけば大丈夫です。継続してもらえますし…社会人としての常識を持って働いていれば大丈夫です。
引用:ホイクトーク
解説:試用期間は採用した従業員の適性や能力を評価するための期間です。面接だけでは勤務態度や協調性はわからないため、研修や実際の業務を通して判断するために設けられています。
【相談】試用期間中に解雇になる人はいる?/介護職
【回答】
- 3ヶ月で解雇された方は今まではいませんでした。退職に関しては仕事のイメージが合わない方や、全く仕事が出来ない方(上司が指摘したことでパニクる)や勤務体制に無理があった方がいました。
引用:カイゴトーク
解説:試用期間中に限らず従業員の解雇は、客観的に見てもふさわしいと判断されない限り禁止されています。相当な理由があり解雇が妥当と判断されても、入社後14日を超えてからは30日前に事業主側が従業員に解雇予告通知をおこなう必要があります。
【相談】試用期間の即日解雇は可能?/介護職
【回答】
- 労働基準法では【試用期間開始後14日間は即時解雇できますが、14日を超えてからは30日前に解雇予告通知書を作成、または解雇予告手当の支払いをおこなう必要があります。】
引用:カイゴトーク
解説:労働基準法第21条には解雇予告義務が適用されない労働者について「試の使用期間中の者」との記載があります。これは試用期間中だからといって即時解雇できるという意味ではありません。14日以内であっても合理的な理由がない解雇は禁じられています。ただし、犯罪行為や重大な経歴詐称などについては、懲戒解雇(即日解雇)となる可能性があります。
【相談】試用期間中に退職すべきか留まるべきか/看護師
【回答】
- 難しいなと思ったら試用期間に退職をしても良いし、試用期間だからもう少し様子を見るのも良いし…どちらを選んでも正解なのだと思います。
引用:カンゴトーク
解説:試用期間中の退職は可能ですが、就業規則を確認し決められた期間中に退職の意志を申し出るようにしましょう。急な体調不良や家族の介護、転勤などにより十分な期間がなくても民法で定められている2週間前までには申し出る必要があります。
【相談】試用期間中に退職して前職に再就職することは可能?/介護職
【回答】
- 周りに出戻りされた方が数人いました。3ヶ月~半年で帰ってくる方もおり2年後に前職が気に入らなくて帰ってきた方もいました。「お帰り~」って感じで私も周りも迎えてましたね。
引用:カイゴトーク
解説:退職した従業員を再雇用する事業所もあります。慣れ親しんだ職場と業務のため即戦力となることが期待されます。一度退職した場合、以前とは雇用形態、待遇が異なることもありますので事前に確認しましょう。
【相談】試用期間中の退職は履歴書に記載すべき?/看護師
【回答】
- 1度正式に採用となっているので、職歴に残した方が無難だと思いますよ!
引用:カンゴトーク
解説:試用期間中に退職した場合、たとえ短期であっても入社の事実があるため履歴書や職務経歴書に記入します。面接で短期間での退職について聞かれることもありますので、前向きな理由に転換して説明できるようにしましょう。
【相談】試用期間が始まる前に内定辞退できる?/保育士
【回答】
- 私立だと試用期間があるからとりあえず、連休明けまで様子を見て判断してはどうですか?
引用:ホイクトーク
解説:入職前に内定を辞退することは可能です。ただし、入職前であっても承諾書や誓約書にサインしている場合は遅くとも入職の2週間前までに伝えるのが望ましいです。有期雇用者の場合、民法628条で「やむを得ない事由があるとき」に制限されており、個別に妥当性が判断されます。
【相談】試用期間はパート? 求人票に記載の雇用形態と異なる/サービス提供責任者
【回答】
- さすがに試用期間中の条件があまりにも違う場合は今後も聞いていない事がたくさん出てきそうなので僕でしたら辞退します。しかも、サ責なのに登録パート?
引用:カイゴトーク
解説:試用期間中に雇用形態を変更する場合、事業主側が求人や面接において明示する必要があります。正職員とうたいつつ実際はほかの雇用形態で採用するのは、虚偽の表示に該当する可能性もあります。求人票に試用期間の労働条件について「変更あり」と記載がある場合、賃金や雇用形態、勤務時間などにどのような変更があるのか確認しましょう。
【相談】試用期間中に妊娠が発覚。仕事は続けられる?/看護師
【回答】
- 病院の規定を確認した方が良いかと思います。入職から1年未満の場合、育休が取れなかったり、時短が取れなかったりすることがあります。
引用:カンゴトーク
解説:試用期間中であっても、妊娠を理由に解雇することは男女雇用機会均等法に違反します。期間の定めのない労働者であれば正職員、パート・アルバイトなど雇用形態に関係なく育児休業が取得できます。契約社員などの有期雇用労働者は子が1歳6ヶ月に達する日までに、労働契約の期間満了が明らかでない場合にのみ取得可能です。
5.入職前に試用期間についての確認を
試用期間は法律で定められてはいませんが、採用した従業員の適性を見るために設けている事業所は多いです。試用期間中だからといって事業主側が自由に解雇できるわけではありません。
ジョブメドレーの求人では、「給与の備考」欄に試用期間について記載されています。求人をチェックする際は試用期間の有無のほか給与などの条件に変更はないか、どれくらいの期間なのかなど確認してみましょう。詳細について知りたいときは、応募後のメッセージのやりとりや面接で事業主側に直接聞いてみるのもおすすめです。