目次
1.厚生年金基金とは?
厚生年金基金は企業が厚生年金を代行し、さらにプラスして支給する企業年金制度です。社員が安心して老後を暮らせることを目的として、1966年にスタートし、単一の企業や、複数の企業が合同で基金を設立し、運用していました。しかし、2014年以降は新規設立が認められておらず、ほとんどの厚生年金基金がほかの企業年金制度に移行しています。
なお、厚生年金基金は1996年度では約1,900基金まで増加していましたが、その後減少の一途をたどり、2025年5月時点では4基金のみとなっています。
厚生年金基金の位置付け
日本の年金制度は、全国民が加入する国民年金(1階部分)と、会社員や公務員が加入する厚生年金(2階部分)の2階建て構造が基本です。厚生年金基金は、さらに年金を上乗せするための「3階部分」に位置づけられる制度でした。

厚生年金と厚生年金基金は名前は似ていますが、公的年金か私的年金かが異なります。厚生年金は国の公的年金制度ですが、厚生年金基金は私的年金で、企業が制度の有無を決める企業年金制度です。
厚生年金基金の構造
厚生年金基金は、大きく「基金代行部分」と「プラスアルファ部分」に分けられます。基金代行部分は、年金額が公的な老齢厚生年金と同程度になるように支給するものです。一方、プラスアルファ部分は、年金額が増えるよう企業独自に上乗せするものです。なお、プラスアルファ部分については、さらに企業独自の加算部分があるケースもあります。

廃止の経緯
2014年4月、改正厚生年金保険法が施行され、厚生年金基金制度は実質的に廃止されました。背景には以下のような要因があります。
- バブル崩壊後の厚生年金基金の資産運用状況の悪化
- 給付に必要な財源が不足する「代行割れ」の発生
- 2012年には掛金21億円以上が使途不明となる不祥事が発生
また、厚生年金基金が解散する際は、代行部分を国に返上し、プラスアルファ部分をほかの企業年金制度に移行するのが一般的です。多くの場合、返上後の代行部分は日本年金機構から支給されるようになります。
2.厚生年金基金が解散している場合の受給方法
厚生年金基金の受給要件は基金ごとに異なります。一般的には、10年や15年などの在籍期間を満たすと受給が可能になります。また、3年以上在籍し、老齢年金の受給要件を満たす前に退職した場合は一時金が支給される基金もあります。
ただし、基金が解散している場合、原資をどのように移換したかや、現在採用している制度などによって、受給要件や問い合わせ先が異なるため注意が必要です。
定年退職の場合
基金が解散してる企業で、定年退職する場合、以下のように受給できます。
- 原資を年金資産の運用を担当する企業年金連合会へ移換した場合、連合会より年金を受給できる
- 分配金として一括して受給する
- 企業年金制度へ移行した場合、それぞれの制度から年金を受給できる
中途退職の場合
厚生年金基金が廃止されている
厚生年金基金が解散・廃止された企業から中途退職する場合、将来的に代行部分は企業年金連合会か日本年金機構から受給することになります。受給には、公的年金の受給開始時期に手続きが必要で、解散時期によって手続き先が異なるので注意してください。なお、一般的にプラスアルファ部分については、基金廃止時に分配金として従業員に配分されます。
解散時期 |
手続き先 |
---|---|
2014年3月31日以前 |
企業年金連合会 |
2014年4月1日以降 |
年金事務所 |
厚生年金基金がほかの年金制度に移行している
厚生年金基金が解散し、確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC)など新制度へ移行した企業の場合も、中途退職者の手続き先は解散時期に応じて異なります。
解散時期 |
手続き先 |
---|---|
2014年3月31日以前 |
企業年金連合会・移行後の新制度 |
2014年4月1日以降 |
移行後の新制度のみ |
3.厚生年金基金に代わる企業年金制度
確定給付企業年金(DB)
確定給付企業年金(DB)は、将来受け取る年金額があらかじめ約束されている企業年金制度です。厚生年金基金が事実上廃止されたことで、多くの基金がこの制度に移行しました。2022年度末時点で加入者数はおよそ914万人に上り、最も加入者数の多い企業年金制度となっています。
確定拠出年金(DC)
確定拠出年金(DC)は企業が掛金を拠出し、従業員が資産運用方法を決める企業年金制度です。退職金か退職年金のどちらかで受け取れますが、運用結果によって金額が変動します。
tips|確定拠出年金(DC)と個人型確定拠出年金(iDeCo)は何が違う?
確定拠出年金と個人型確定拠出年金は、掛金を誰が負担するかが異なります。確定拠出年金は企業が掛金を負担しますが、個人型確定拠出年金は従業員が負担します。
なお、個人型確定拠出年金で従業員が拠出する掛金に、企業が上乗せする中小事業主掛金納付制度(イデコプラス・iDeCo+)の制度もあります。
4.厚生年金基金の種類
設立形態による分類
厚生年金基金は、設立主体によって以下の3つに分類されます。
タイプ |
特徴 |
---|---|
単独型 |
大企業など1つの企業が単独で基金を設立して運営していた |
連合型 |
主力企業を中心に関連会社やグループ会社が集まり、共同で基金を設立し運営していた |
総合型 |
同業種や同一地域の企業が集まり、共同で基金を設立して運営する。中小企業でも加入できる利点があった |
給付形態による分類
厚生年金基金の給付形態には、主に以下の3つがあります。
タイプ |
特徴 |
---|---|
代行型 |
厚生年金の報酬比例部分を代行する形態で、国の制度より支給率を高く設定することで年金額を増やしていた |
加算型 |
最も多く採用されていた形態。企業の実情に合わせた制度設計ができた |
共済型 |
旧共済組合の年金制度に類似した給付設計による形態 |
5.福利厚生が充実した職場を探してみよう
厚生年金基金は、長年日本の企業年金の中心的役割を担ってきましたが、運用環境の悪化などにより事実上廃止され、現在はほかの企業年金制度への移行が進んでいます。
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参考
日本年金機構|厚生年金基金加入期間がある方の年金