1.厚生年金保険とは?
会社や事業所に雇われている多くの人にとって、「厚生年金保険」は当たり前のようにに加入しているものなので、その制度について詳しくわかっていない人もいるのではないでしょうか?
そもそも公的年金制度には2種類あります。それが「厚生年金保険」と「国民年金」です。
20歳以上もしくは会社員の人は、このどちらかに必ず加入していなければなりません。
そのなかでも厚生年金保険は、主に会社員や公務員などの第2号被保険者が加入するものです。
原則として厚生年金保険が適用される会社に勤務する場合に加入することとなり、国民年金に上乗せするかたちで給付されます。
※画像引用:厚生年金保険・国民年金事業の概況
point.→20歳以上60歳未満の自営業者、農業・漁業者、学生および無職の方とその配偶者の方(厚生年金保険や共済組合等に加入しておらず、第3号被保険者でない方)
2号保険者
→厚生年金保険や共済組合等に加入している会社員や公務員の方
3号保険者
→第2号被保険者に扶養されている配偶者の方で、原則として年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の方
■そもそも国民年金(基礎年金)とは?
では、厚生年金とセットでよく耳にする国民年金とは一体なんなのでしょうか。
国民年金に加入している人を「第1号被保険者」といいます。
前述した厚生年金の対象外となる人(第2号被保険者の扶養されている場合を覗く)が、国民年金に加入します。
例として、自営業者・農業者・漁業者・学生・無職者などがこれにあたります。
2.厚生年金基金とは?
厚生年金と厚生年金基金。字面も似ているのでまぎらわしいのですが、両者は全くの別物です。
厚生年金基金とは、国に代わって企業が厚生年金の給付の一部を代行し、さらに企業独自の上乗せ給付を行うことができる年金制度。つまり、国の監督のもとで実施される企業年金制度のひとつということになります。
この制度が誕生したのは1966年。当時は、企業の退職金や企業年金の充実と普及が進んでいました。
これら私的制度と公的制度である厚生年金保険との間に、費用負担や調整機能が必要であるという強い意見があり、この制度が施行されました。
厚生年金基金は形態によって次の3つに分けられます。
単独設立型・ひとつの企業が単独で設立
・加入員の規模が1,000人以上
連合設立型・グループ内の複数の企業が共同で設立
・加入員の規模が1,000人以上
総合設立型・設立しようとする企業に対し強力な指導統制力を有する組織母体、または当該企業で構成されている健康保険法に基づく健康保険組合があり、それらの運営状況が健全かつ良好であること
・加入員の規模が5,000人以上
3.厚生年金基金の実質的な解散と廃止
ここまで説明してきた厚生年金基金ですが、実はすでに実質的に解散・廃止されています。
1966年に開始された厚生年金基金は、バブルとともに加入者は大幅に増え、厚生年金加入者のおよそ3分の1を占めるほどでした。
しかし、バブルの崩壊や資産の運用悪化などを理由に、とともに代行部分にの積立に不足が生じ、厚生年金基金の代行割れ(代行した年金を給付するために必要な額の不足)が社会問題となってしまいました。
その結果、2014年には厚生年金基金の実質廃止され、改正厚生年金保険法が施行されました。その内容は以下の通りです。
・施行日以後は厚生年金基金の新設は認めない
・施行日から5年間の時限措置として他の企業年金制度への移行を促進する
・施行日から5年後以降は、健全基金以外の基金に解散命令を発動する
ここでいう5年後とはつまり、2019年4月をさします。
4.厚生年金保険と厚生年金基金の違い
厚生年金保険は公的年金制度なので、一定の基準を満たせば必ず加入することになります。ちなみに、厚生年金保険に加入すると自動的に国民年金も加入になります。
一方、厚生年金基金は私的年金制度なので、すべての企業が実施しているわけではありません。企業がニーズに合わせて行うものです。厚生年金基金制度では、企業が国の代わりに保険料の1部を集め、独自に管理・運用したうえで、独自の給付を上積みすることができます。
5.転職先の年金制度を確認しよう!
このように、年金制度ひとつとっても企業によって大きく異なります。年金制度についてはあまり気にしていないという方も多いかと思いますが、長い人生を考えると知っているのと知っていないのとでは大違い。
転職の際には、厚生年金保険や企業年金などの制度についても、しっかりと調べておくことが重要です。退職後も豊かな生活を送るために、企業年金制度の有無を選択基準のひとつに加えてみてもいいかもしれません。