目次
1.認定看護師とは特定分野で高い技術と知識を持つ看護師
認定看護師とは特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識があるとして、日本看護協会の認定を受けた看護師です。看護師として5年以上の実務経験があり、所定の専門教育の修了と認定審査に合格することで取得できます。
認定看護師には、「実践・指導・相談」の3つの役割があると定義されています。
- 実践…個人・家族・集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術および知識を用いて水準の高い看護を実践する
- 指導…看護実践を通して看護職に対し指導をおこなう
- 相談…看護職等に対しコンサルテーションをおこなう
認定看護師と専門看護師の違い
認定看護師と混同されやすい看護師の上位資格として、専門看護師があります。5年以上の実務経験が必要な点は認定看護師と共通していますが、専門看護師は大学院修士課程の修了が必要です。専門看護師は認定看護師と比べ、より専門性が高く、取得に要する時間も長くかかります。
認定看護師 | 専門看護師 | |
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定義 | 特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を有すると認められた看護師 | 特定の看護分野について、卓越した看護を実践できると認められた看護師 |
求められる役割 | 実践、指導、相談 | 実践、相談、調整、倫理調整、教育、研究 |
専門分野 | A課程:21分野 B課程:19分野 | 14分野 |
受験資格 | ・5年以上の実務経験 ・約600〜800時間の課程修了 | ・5年以上の実務経験 ・大学院修士課程修了 |
課程の履修期間 | 半年〜1年 | 2年 |
費用 | 約100〜150万円 | 約350万円 |
求められる役割に認定看護師にはない「教育、研究」があるように、専門看護師は看護者への教育や看護に関する研究活動までおこないます。そのため、看護学校や大学などの教育・研究機関に勤める人の割合が多いのが特徴です。
専門看護師について詳しくはこちらの記事で解説しています
>専門看護師とは
2.認定看護師の種類
認定看護分野の一覧
認定看護師は、専門性に応じた認定看護分野が設けられており、専門教育や認定審査は分野別に実施されます。認定看護分野は近年見直しがおこなわれ、従来の「A課程」の一部を統合および名称変更した「B課程」が2021年度より認定を開始しました。B課程では新たに特定行為研修が組み込まれた点が大きな特徴です。
認定看護分野一覧
A課程(21分野) ※2029年度に認定終了 | B課程(19分野) ※2021年度より認定開始 |
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救急看護 | クリティカルケア |
集中ケア | |
緩和ケア | 緩和ケア |
がん性疼痛看護 | |
がん化学療法看護 | がん薬物療法看護 |
訪問看護 | 在宅ケア |
不妊症看護 | 生殖看護 |
透析看護 | 腎不全看護 |
摂食・嚥下障害看護 | 摂食嚥下障害看護 |
小児救急看護 | 小児プライマリケア |
脳卒中リハビリテーション看護 | 脳卒中看護 |
慢性呼吸器疾患看護 | 呼吸器疾患看護 |
慢性心不全看護 | 心不全看護 |
皮膚・排泄ケア | 皮膚・排泄ケア |
感染管理 | 感染管理 |
糖尿病看護 | 糖尿病看護 |
新生児集中ケア | 新生児集中ケア |
手術看護 | 手術看護 |
乳がん看護 | 乳がん看護 |
認知症看護 | 認知症看護 |
がん放射線療法看護 | がん放射線療法看護 |
青字…名称変更した分野
A課程の認定終了とB課程への移行
A課程は2029年度末で認定審査が終了しますが、資格の更新審査および再認定審査は永続的に実施されるため、2029年以降もA課程の資格は存続されます。ただし、2021年度以降に初めて資格を取得したA課程認定看護師には適用されません。
また、A課程の認定看護師は、特定行為研修を修了し所定の手続きをおこなうことで、取得している認定看護分野と同一の(または統合、名称変更した)B課程に移行することができます。受講する特定行為区分には指定がなく、いずれか1区分以上の修了が条件です。
詳しくは日本看護協会のサイトを参照してください。
>日本看護協会|特定認定看護師(B課程認定看護師)への移行とは
3.認定看護師になるには5年以上の実務経験と半年〜1年の課程修了が必要

認定看護師になるには、日本の看護師として5年以上の実務経験が必要です。また、そのうち3年以上は、認定看護分野で実務を経験することが求められます。経験を積んだうえで、認定看護師教育機関に入学し、600〜800時間程度(約半年〜1年)の課程を修了し、認定審査に合格すれば、認定看護師になることができます。なお、B課程認定看護師は特定行為看護師を名乗ることも可能です。
認定審査の内容
認定審査は毎年1回おこなわれます。受験資格や申請の流れは以下のとおりです。
受験資格 | 以下のすべての項目を満たしていること
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申請の流れ |
|
審査料 | 5万1,700円(税込) |
審査方法は筆記試験で、マークシート方式の四肢択一問題が全40問出題されます。試験時間は100分です。
出題形式 | 出題数 | 配点 |
---|---|---|
問題1 客観式一般問題 | 20問 | 50点 |
問題2 客観式状況設定問題 | 20問 | 100点 |
計 | 40問 | 150点 |
認定看護師の教育機関
認定看護師教育機関は、全国にA課程が22ヶ所、B課程が33ヶ所あります(2023年12月時点)。教育機関ごとに実施している認定看護分野は異なり、全国で1ヶ所しか開講していない分野もあるため、希望する分野の教育機関が通学可能圏内かどうか確認するとよいでしょう。なお、A課程の開講機関は2026年度の教育終了に向けて徐々に減少傾向にあります。
全国にある認定看護師教育機関は、日本看護協会のページから検索が可能です。
>日本看護協会|教育機関検索
入学試験の内容は各機関によって異なりますが、書類審査、筆記試験、小論文、面接などをおこなうところが多いようです。また受講期間は特定行為研修を含まないA課程のほうが短く7〜11ヶ月程度、特定行為研修を含むB課程が10〜12ヶ月程度となっています。
資格取得にかかる費用と支援制度
認定看護師の資格取得にかかる費用は、100〜150万円程度です。この内訳は教育機関の入学費や授業料、認定審査の審査料、合格後の認定料など必ずかかる金額です。人によっては通学のための引越し代や家賃、交通費、ノートパソコンの費用なども必要になる場合があります。
費目 | 費用の目安 |
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教育機関の入試検定料 | 5万円程度 |
教育機関の入学金 | 5〜10万円程度 |
教育機関の授業料 | 70〜130万円程度 |
教育機関の実習費 | 5〜10万円程度 |
認定審査の審査料 | 5万1,700円 |
認定審査が合格後の認定料 | 5万1,700円 |
受講者の負担を軽減するため、病院によっては休職中でも給与の一部支給や受講料の補助などの制度を設けているところもあります。また日本看護協会や都道府県などが実施する奨学金制度もあるため、利用できる制度がないか調べてみることをおすすめします。
認定看護師教育課程奨学金について
- 日本看護協会が主催
- 年額120万円以内を一括貸与(無利子)
- 学費や生活費等に幅広く活用可能
- ほかの奨学金、給付金等と併用可
- 地域・年齢・所得制限なし
- 貸与期間は1年間
詳しくはこちら>認定看護師教育課程奨学金
取得後は5年おきに更新が必要
認定看護師は専門性の保持のために、資格取得後5年おきに更新審査を受ける必要があります。A課程・B課程ともに申請方法は同じで、それまでの5年間における看護実践や自己研鑽の実績について書類審査を実施し、合否が判定されます。
更新審査の申請は毎年1回、指定された10日前後の期日だけ申し込めます。期間が短いため更新年には忘れないよう注意しましょう。万が一更新を忘れた場合は、資格が失効し再認定審査が必要となります。
更新審査の申請資格 | 以下のすべての項目を満たしていること
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申請の流れ |
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審査料 | 3万800円(税込) |
また、更新審査の合格後は、登録手続きとして認定料2万900円がかかります。
4.認定看護師になるメリット
できる業務が増え専門性を示すことができる
認定看護師を取得すると、客観的に高い専門性を持っていることの証明となります。意見を求められる場面が増えたり横断的に部署を担当したりするほか、研修会などの講師を任される機会も増えるようです。認定看護師になることでこれまではできなかったような仕事ができるようになり、看護師としてのスキルアップにつながるでしょう。
▼認定看護師を取得した人の声
資格手当や昇給がある職場も
2022年実施の「専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書によると、認定看護師の資格手当がある職場は41.2%で、毎月支給される場合の平均額は8,530円でした。また、資格手当のある職場よりも少数ではありますが、基本給の昇給や賞与、資格取得時の一時金として支払われるケースもあるようです。
▼認定看護師を取得した人の声
5.認定看護師にまつわるデータ
ここからは、日本看護協会が発表している認定看護師に関するさまざまなデータを紹介します(参考:日本看護協会「データで見る専門看護師」)。
2022年12月末時点で、全国の認定看護師の登録者数はA課程・B課程を含めて2万3,260人、看護師全体の約1〜2%に相当します。平均年齢は46.9歳で、年代別に見ると40代が最も多くなっています。
分野別 認定看護師の人数

認定看護分野別の登録者数を見ると、分野によって人数差が大きいことがわかります。「感染管理」「皮膚・排泄ケア」はA課程・B課程ともに上位3分野に入っています。
就業先別 認定看護師の割合

施設形態別に認定看護師の就業先を見ると、病院に勤めている人が過半数を占めていることがわかりました。病床規模別に見ると、20床の小規模病院から900床超えの大規模病院まで幅広く勤務していますが、とくに多いのは病床数150〜400床の中規模病院(全体の約半数)でした。
6.今後も需要が高まる認定看護師
2021年度に新たに誕生したB課程認定看護師は、特定行為を実践できる看護師です。近年の医療業界におけるタスクシフト・シェアなどを背景に、高い専門性を持ち医師に代わって処置ができる看護師が求められています。B課程認定看護師の需要は今後もますます高まっていくことでしょう。
認定看護師の取得には時間も費用もかかりますが、取得支援制度の整った病院や関連機関もあります。現在の職場で取得が難しい場合は、環境を変えてから挑戦してみるのもひとつの手です。選択肢を広げてキャリアプランを検討してみてください。