
1.健康運動指導士とは?
「健康運動指導士」は、運動指導を担う専門家として、平成19年に「財団法人健康・体力づくり事業財団」によって新たに設立された民間資格です。
同財団が平成18年6月に発表した資料「新しい健康運動指導士について」によると、昭和63年から厚生労働大臣の認定事業として誕生し、当時から同財団によって指導者の養成事業がおこなわれていたものの、平成17年に認定制度が廃止。18年以降は財団独自の事業として継続されています。
同財団は平成17年7月に検討会を立ち上げ、有職者や体育系の大学、フィットネス産業の関係者など多方面からの意見収集をおこないました。
その結果、平成19年度に生まれ変わった健康運動指導士は活動の場を広げ、「ハイリスク者を対象とした安全で効率的な運動指導がおこなえる専門家を目指すうえで取得すべき標準的な資格」となりました。
これにより、運動施設やフィットネスクラブにおけるアドバイザー的な役割をこなすだけではなく、介護施設や病院等でも活躍が期待される職種となりました。
2.健康運動指導士の仕事内容・役割とは?
健康運動指導士は、厚生労働省が提示する健康施策「健康日本21」「健康フロンティア戦略」「医療制度改革」の中心課題となっている生活習慣病予防や介護予防の一端を担うスペシャリストとして活躍が期待される資格です。
保健医療関係者と連携し、個々の心や体の状態に合わせた安全かつ効果的な運動を実践するためのさまざまな取り組みをおこないます。主な仕事内容として以下のようなものがあります。
- ・個々の運動プログラムを作成する
- ・実践する指導計画の調整をおこなう
- ・運動指導に直接携わる
生活習慣病や少子高齢化が進む現代の日本人にとって、健康運動指導士の活躍が大きな影響を及ぼすことになるのではと期待されているのです。
3.健康運動実践指導者との違いは?
健康・体力づくり事業財団が同じく認定している資格に「健康運動実践指導者」があります。この資格は健康運動指導士と似ていますが、その役割には違いがあります。
健康運動指導士は、運動プログラムの作成から実際に指導するところまでを全般的におこないますが、健康運動実践指導者は自ら見本を示せる実技能力と、集団に対する運動指導の技術にとくに長けています。健康運動実践指導者はその名のとおり「実践指導」に特化した資格であるといえます。
4.健康運動指導士の活躍場所
「健康・体力づくり事業財団」が発表しているデータ(2020年3月1日時点)によると、財団に登録している健康運動指導士は全国で18,332人(男性6,644人、女性11,688人)です。おもな職場の内訳は以下のとおりです。
健康運動指導士の活躍の場
- ・アスレチッククラブ、フィットネスクラブ:4,124人
- ・診療所、病院等:2,930人
- ・フリーで活動等:2,343人
- ・保健所等:1,418人
- ・介護老人保健、福祉施設等:1,223人
- ・学校:1,113人
- ・健康組合、会社(健康管理部門):329人
- ・その他(学生を含む):4,945人
(出典:健康・体力づくり事業財団|健康運動指導士とは)
資格が発足した当初は見られなかった医療機関や保健所、介護施設、学校などにまで活躍の場が広がっていることがわかります。
5.健康運動指導士になる方法
健康運動指導士の資格は、認定試験に合格すれば取得することができます。ただし、認定試験は誰でも受けられるものではありません。認定試験を受けるためには、以下いずれかのルートを通る必要があります。
健康運動指導士認定試験の受験ルート
- (1)4年制体育系大学の卒業(見込)者、医療系の資格保有者の場合:健康運動指導士養成講習会を修了する
- (2)上記の資格や学歴がない場合:健康運動指導士養成校へ入校し養成講座を修了する
なお、健康運動指導士の資格取得後は、5年ごとの登録更新が必要となります。
(1)健康運動指導士養成講習会を受講する
前述の「健康運動指導士養成講習会」は、保有している資格や学歴によって、講座の取得単位に違いがあります。
保有資格/学歴 | 必要単位数 |
---|---|
歯科医師、看護師、准看護師、助産師、薬剤師、栄養士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、理学療法士、作業療法士、臨床検査技師 かつ4年制大学以上の卒業者 | 104単位 |
医師、保健師、管理栄養士 | 70単位 |
4年制体育系大学(教育学部体育学系を含む)の卒業者(見込みを含む) | 51単位 |
健康運動実践指導者、スポーツプログラマー、アスレティックトレーナー、フィットネストレーナー、GFIエグザミナー、GFIディレクター | 40単位 |
詳しい受講要項については、健康・体力づくり事業財団の「健康運動指導士養成講習会開催要領」をご確認ください。
(2)健康運動指導士養成校へ入校する
受験資格となる保有資格や学歴がなくても、健康運動指導士の養成校に入校しカリキュラムを修了することで受験資格を得ることができます。
取得可能な養成校は全国各地にあり、現在71校が認定されています。なかには栄養士や管理栄養士の養成学校で健康運動指導士の受験資格を得ることができる指定校もあるため、いろいろな可能性を考えて学ぶ場所を選択する際の参考にしてみてください。詳細は健康・体力づくり事業財団の健康運動指導士養成校のご紹介で確認できます。
・認定試験の概要
健康運動指導士認定試験は、毎年3月頃・9月頃に年2回おこなわれます。
2020年に実施された「第145回健康運動指導士認定試験」の全体の合格率は、57.2%でした。
6.社会を支える「健康運動指導士」を目指して
高齢化が進んでいる現代人において、これからはシルバー世代も「運動による健康維持」を考える人が増えるでしょう。それにともない、健康運動指導士の活躍の場も増えてくることが予測されます。
また、介護職や看護職の方が資格を取得することで、利用者に対してさまざまな角度からケアをおこなうことができるようになります。自身も体を動かすことが得意で、人とのコミュニケーションを取ることが好きな人には、きっと役立つ資格になることでしょう。