
デイサービスの種類と管理者の役割
介護業界で最も多いサービスであるデイサービス。街を歩いていても、看板を見かけることがありますよね。でもデイサービスと言っても、実はたくさんの種類があるのをご存知ですか?
通所介護事業所、通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーション……とたくさんの種類があるんです。
そんなデイサービスは、全国で104,857事業所(平成29年10月1日現在)と数だけ見るとコンビニの約2倍! 非常に多くの事業所があることがわかります。このデイサービスを運営するために欠かせない人材! それがデイサービスの『管理者』です。
今日はこの管理者がどのような仕事をしているのか、どんな人がなっているのかをご紹介させていただきます。
デイサービスの管理者って?
管理者はデイサービスの責任者として、デイサービスの業務全般に関わります。直接介護をすることもありますが、一般職員ではなく管理者としての役割も多く存在します。
◆デイサービスの一般的な業務
・入浴
・食事
・レクリエーション
・記録報告など
◆デイサービスの管理者の業務
・職員のシフト管理
・デイサービスの稼働率管理
・ケアマネジャーへの営業
・サービス担当者会議開催
・サービスのレセプト請求業務
・デイサービスの備品選定、建物管理など
こう見ると管理者の仕事はいっぱいありますね。みんなはどのようなスケジュールで仕事をしているのでしょうか。
◆デイサービスの管理者の1日のスケジュール
9:00 送迎(お出迎え)
9:30 利用者様全員と会話しながら変化がないか観察
10:00 経営者との運営会議
11:00 職員の業務の進捗確認しながらコミュニケーション
11:30 食事準備
13:00 ケアマネジャー等への営業活動
15:00 職員の業務の進捗確認しながらコミュニケーション
16:00 送迎準備
16:30 送迎(お見送り)
17:30 終礼
18:00 記録・帰宅
直接介護を行うこともありますが、他のスタッフと協力して管理者としての業務を行うために職員との信頼関係を築いておくことが大切です。
では次に、管理者がどのようにスタッフと関わっているかを見てみましょう。スタッフには、本当にいろいろな方がいます。なので、その性格や得意分野を生かせる役割分担をしていくことが大切です。
たとえば、明るく元気な方にレクリエーションをお願いしたり、車の運転が得意な方に送迎をお願いしたり。スタッフとの関わりの中で大切なのは、その人が持っている能力を引き出し、自分らしく仕事ができる環境をつくることです。
◆スタッフの能力を見つける主な方法
・仕事の様子を観察して得意分野を見つける
・いろいろな仕事を任せてみる
・他のスタッフからの評判を聞く
・利用者や利用者のご家族からの評判を聞く
このように、デイサービスセンターを円滑に運営するしていくことが管理者の役割となります。では、どんな人が管理者になっているのでしょうか。
デイサービス管理者にはどうやってなるの?
◆デイサービス管理者の資格要件管理者には、特別な資格は必要ではありません。今までは介護現場にて経験を積み、一般スタッフから昇進して管理者になる場合が多かったのですが、最近では介護未経験でも管理能力を認められ、異業種から管理者になる場合もあります。ただし、管理者はデイサービス内の他業務も兼務できるため、小規模デイサービスでは他業務も兼務できる有資格者が管理者になることが多いです。
◆管理者に必要な資質
デイサービスの管理者は、次のような資質がある方が活躍しています。
・視野が広く柔軟に対応できる(応用力)
・人を育てることができる(人材育成力)
・業務が円滑に進むよう管理ができる(管理力)
・地域との関係づくりができる(営業力)
・現状を数値化し対応を検討できる(分析力)など
この資質を見ていると「人に好かれて仕事ができる超優秀な人しか管理者になれないのかな……」と思えますよね。でも、デイサービスは1人で運営しているわけではありません。多くのスタッフと一緒に運営をしていきますので、管理者自身が苦手な分野は得意なスタッフに任せることで、デイサービス全体としての能力を引き上げることができます。管理者の資質として、自己分析はもちろん大切ですが、スタッフ分析を行い、誰に何を任せるかという仕事を振る力も大切です。
管理者の本音
管理者として介護現場での仕事をしながら、経営数字の管理も行い、スタッフの悩み相談も受けていく……。管理者はいろいろなところに気配り・気遣いをしながら仕事をしていくことが求められます。だからこそいろいろな苦労や苦悩があるのです。
◆管理者の苦労、苦悩
・営業のために外出しているとスタッフから「さぼっている」と勘違いされる
・現場の話を経営者にしても数字しか興味を持ってもらえない
・次世代の管理者を育てたいのに「管理者は大変だからやりたくない」と言われる
・事業所の中で悩みを打ち明けられる人がいない
数字は大切。介護内容も大切。スタッフからの意見も経営者からの意見も大切。管理者として、いろいろな人の板挟みにあうことも多くあります。デイサービスは、「ロマン」と「そろばん」のバランスをとりながら運営することが大切です。そのバランスをとることがなかなか難しく悩みを抱えている管理者が多いです。でも、このバランスがとれるようになれば、いろいろな仕事をすることができます。
また、管理者として能力を高め、会社を立ち上げて自分でデイサービスを経営する方も業界には多くいます。苦労、苦悩が増えることは裏を返せば多くの成長チャンスを得ることができているのです。では管理者はどのようなやりがいを感じて仕事をしているのでしょうか。また、管理者として活躍することでいろいろなやりがいを感じることができます。
◆管理者のやりがい
・経営者、スタッフから感謝される
・地域の方々から頼られる存在になる
・利用者様や利用者様のご家族から感謝される
・デイサービスセンターの運営全体を知ることができ大きく成長できる
管理者はデイサービスの運営方法を決定することができるため、やりがいを感じる方が多いです。自分で決めた内容が成功し、スタッフも地域の方から感謝していただけるとやりがいを感じますよね。
また、営業活動を通して「こんなデイサービスがほしい」というニーズを聞くことがあります。このニーズに沿ったコンセプトをつくり、デイサービスを運営することができるのも管理者としてやりがいを感じる瞬間です。以下に私が知る、少し変わったコンセプトのデイサービスをご紹介します。
◆変わったコンセプトのデイサービス
「もっと働きたい」「社会に貢献したい」という利用者様のために、編み物をしたり日曜大工をしたり、「働く」ことをコンセプトにしたデイサービス
・入浴特化型デイサービス
「他の人と一緒にレクリエーションをするのは嫌だ」「基本は家で過ごしたい」という利用者様のために、入浴のみ「短時間」のデイサービス
・歩くデイサービス
「自分の足で歩きたい」という利用者様のために、とにかく歩くために必要な筋力トレーニングやマッサージ、歩くトレーニングを行うデイサービス
・農園デイサービス
「畑が大好き」という利用者様のために、野菜や草花を育てる畑の付いたデイサービス
・娯楽型デイサービス
「ギャンブル大好き」という利用者様のために、パチンコ台や麻雀、カジノがあるデイサービス
・美容デイサービス
「きれいに過ごしたい」という利用者さまのために、エステや理美容を提供し、定期的にファッションショーをしているデイサービス
ご覧のとおり、全国にはいろいろなデイサービスがあります。このコンセプトを決定し、介護とコンセプトをいかに組み合わせて利用者様に喜んで頂くかを考えるのも管理者としての大きな役割です。
最後に
2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、高齢者が急増する分岐点になると言われています。団塊の世代の方々は感性も豊かで、趣味嗜好も強いため、さまざまなニーズに応えるデイサービスが求められていきます。
デイサービス管理者には今後、利用者のニーズに耳を傾け、地域に求められる介護サービスを提供していくことが求められていきます。
まずは「自分だったらこんなデイサービスがあったらいいな」を考え、コンセプトを練っていくことができれば、自分にしかできないデイサービスをつくることができるため、やりがいあふれる仕事をすることができます。これからもおもしろいコンセプトのデイサービスができてくることを私も期待しています。