
看護師のスペシャリストとは
みなさんが「看護師のスペシャリスト」としてイメージする仕事にはどんなものがあるでしょうか? 身近なものでいえば「認定看護師」や「専門看護師」などの資格があるかもしれません。
日本看護協会がスペシャリストとして定めている専門看護師は、がん看護・精神看護・小児看護・老人看護・母性看護などと特定の専門分野がわかれています。特定の専門分野の知識やスキルを深めた看護師として認知度の高い資格です。
一方、認定看護師は専門看護師と一緒にまとめられることが多いですが、実は役割に違いがあります。
専門看護師の役割は「実践、教育、相談、調整、倫理調整、研究」の6つであるのに対し、認定看護師の役割は「実践、指導、相談」の3つです。
これは、認定看護師は現場で働くスタッフの一員として、質の高い看護ケアを提供するために貢献することが求められているものと考えられます。そのため、専門看護師に比べると、認定看護師はジェネラリストに近いのではないかという意見もみられます。
看護師のジェネラリストとは
次に、看護師のジェネラリストです。こちらはイメージがつきにくい人も多いのではないでしょうか。中堅以上の看護師や専門分野に限らず、幅広くオールラウンダーとして活躍する人をイメージするかもしれません。
日本看護協会は、ジェネラリストを「経験と継続教育によって習得した暗黙知に基づき、その場に応じた知識・技術・能力が発揮できる者」と定義しています。
また、「特定の分野・領域、働く場や形態にとらわれず、あらゆる対象者に対して、従事した領域で、直接、質の高い看護サ−ビスを提供することを志向する看護職を対象とする」とも記されています。
こうしてみると、看護師のジェネラリストは、看護師として臨機応変に活躍できるイメージで、多くの看護師はこのジェネラリストにあたるのではないでしょうか。また、質の高い看護も必要となるという意味おいては、スペシャリストの側面もあると考えられます。実際には病院や施設などに応じて、ジェネラリストの定義にも違いがあるようです。
それぞれの適性は?
スペシャリストとジェネラリストの適性と呼べるものは、はっきりいってありません。ある程度看護師としての基礎を学んだ段階で、「もっと学びたいと思える専門分野があるか」あるいは「さまざまな領域で学びたいと思うか」。このようにシンプルに考えることがいいのではないかと思います。
スペシャリストになりたい場合、専門看護師の資格取得など、目標がわかりやすいのですが、ジェネラリストの場合にはそれがありません。
しかし、ジェネラリストは病院だけではなく、今後、在宅看護を視野に入れた役割が期待される部分もあります。患者さんへの最適な医療・看護の提供をチームで効率的かつ効果的に行えるリーダーシップを発揮できる能力が必要になってくるでしょう。
それぞれのキャリアプランは?
スペシャリストのキャリアプランとしては、認定看護師と専門看護師の資格制度があります。ほかにも、それぞれの学会公認資格などでもその一歩を進むことは可能です。
認定看護師と専門看護師の場合には、「看護師免許取得後、実務研修が通算5年以上あること(うち3年以上は認定看護分野の実務研修)」や「看護系大学院修士課程修了者であること」などが条件であるため、最低でもこれらの条件をクリアしなければなりません。
一方、ジェネラリストとしてのキャリアプランはさまざまです。病院で幅広い診療科領域の経験と知識やスキルを身に着けることだけではなく、病院以外の看護師の働き方を知ることも必要です。患者さんを中心に病院から在宅への流れを把握しておくことで、患者さんの生活を全体像で捉えることができます。
実際に、病院で働いてから在宅や地域で働く看護師も多くいます。こうしたジェネラリストの働き方は、今後ますます注目されていくことでしょう。
看護師としてのキャリアを考える上で、スペシャリストかジェネラリストか、どちらに進むのかと焦る気持ちもわかりますが、どちらかのキャリアで進まなくてはいけないわけではありません。
スペシャリストとジェネラリスト、どちらにとっても広い視野や専門的な質の高い看護の提供は必要です。なかには、看護管理者や研究教育者という道もあります。看護師としてのキャリアはさまざまなので、自分の目標に沿って考えられるといいですね。