目次
1.育児・介護休業法とは
育児・介護休業法とは、育児や介護と仕事を両立できるよう、休業や休暇、その他支援について定められた法律です。正式名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といい、1991年に制定されました。
この法律は、ライフステージの変化に直面しても、誰もが活躍できる社会の実現を目的としています。事業主は、労働者が働きやすい環境を整えるため、必要な支援の実施や制度を整備しなければなりません。これに違反し、虚偽の報告などをした場合は、20万円以下の罰則が科される可能性があります。
育児・介護休業法は、これまでに複数回改正されており、直近では2024年に改正、2025年4月から段階的に施行されています。
2.育児・介護休業法で定められている主な内容
ここからは、育児・介護休業法で定められている主な制度について、育児と介護それぞれに分けて解説します。
育児関連

育児休業
雇用形態に関わらず、1歳に満たない子どもを養育する労働者が取得できる休みです。産後休業終了の翌日(出産から57日以降)から、子どもが1歳の誕生日を迎える2週間前まで取得できます。
育児休業の詳細と育休手当の計算方法はこちら
>育児休業(育休)とは?取得条件と期間、給付金・手当の計算方法を解説!
産後パパ育休(出生時育児休業)
男性の育児休業の取得率の低さを改善するために新設された制度です。子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得できる休みで、2回に分けて取ることもできます。
産後パパ育休と給付金について詳しくはこちら
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子の看護等休暇
子どもの病気やケガをした際の看護や、通院・健康診断の付き添い、入園式などの式典参加のために、年次休暇とは別に取得できる休暇です。小学3年生修了までの子どもを養育する従業員を対象に、子ども1人につき年5日間付与されます。
子の看護等休暇について詳しくはこちら
>【2025年改正】子の看護休暇とは?対象となる理由や取得方法をわかりやすく解説
短時間勤務制度
未就学児を育てる労働者を対象に、一日の所定労働時間を原則5時間45分〜6時間に短縮できる制度です。日雇いでないこと、一日の所定労働時間が6時間以下でないことなどの要件を満たせば、正職員以外の契約職員、パート、アルバイトの人も制度を利用できます。
短時間勤務制度について詳しくはこちら
>時短勤務(短時間勤務)はいつまで?何時間になる? 給与や残業代、転職時の注意点を解説
労働時間の制限
未就学児を養育する労働者が請求した場合、所定労働時間を超える労働と深夜業が免除されます。ただし、雇用された期間が1年未満の人と日雇い労働者、週の所定労働日数が2日以下の人は対象外となります。また、深夜業の制限に関して、子どもを保育できる家族がいる場合や深夜業のみの職場に勤務する場合は申請できません。
介護関連

介護休業
雇用形態に関わらず、要介護状態にある家族を介護する労働者が取得できる休みのことです。対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して取得できます。
介護休暇
家族の介護や通院の付き添い、介護サービスの手続き代行などのために、年次休暇とは別に取得できる休暇です。要介護状態にある家族を介護する労働者を対象に、年5日まで取得できます。
介護休業・休暇について詳しくはこちら
>介護休暇・介護休業で給与は出る? 違いや取得方法、条件を解説!
短時間勤務制度
要介護状態の家族を介護する労働者を対象に、一日の所定労働時間または週や月の所定労働時間、所定労働日数を短縮できる制度です。日雇いでないこと、雇用期間が1年未満でないことなどの要件を満たせば、契約職員やパート、アルバイトの人も制度を利用できます。
短時間勤務制度について詳しくはこちら
>時短勤務(短時間勤務)はいつまで?何時間になる? 給与や残業代、転職時の注意点を解説
労働時間の制限
家族の介護が必要な労働者が請求した場合、所定労働時間を超える労働と深夜業が免除されます。ただし、どちらも雇用された期間が1年未満の場合と日雇い労働の場合、週の所定労働日数が2日以下の場合は対象外となります。
3.【2025年以降】育児・介護休業法の改正ポイント
ここからは、2025年4月から順次施行されている改正育児・介護休業法のポイントを、育児と介護それぞれに分けて紹介します。
育児・介護共通
休暇対象者の拡大とテレワークの導入(2025年4月以降)
育児・介護休業ともに日雇い労働者を除くあらゆる労働者を対象としていますが、適用対象から除外する規定もあります。今回、この規定から継続雇用期間が撤廃され、より広範囲にわたる労働者が休暇を取得できるようになりました。また、対象となる労働者に向けて、新たにテレワークを選択できる措置を事業主が設けることが努力義務化されました。
改正前 |
改正後 |
|
---|---|---|
子の看護休暇・介護休暇の対象者 |
労使協定により除外できる対象者 1.週の所定労働時間が2日以下 2.継続雇用期間が6ヶ月未満 |
労使協定により除外できる対象者 1.週の所定労働時間が2日以下 ※2を撤廃 |
テレワークの導入 |
定めなし |
以下の労働者を対象に、努力義務へ 育児:3歳未満の子を持つ労働者
介護:要介護状態にある家族を介護する労働者 |
育児関連の改正
子の看護休暇の見直し(2025年4月以降)
未就学児の子どもを看護・通院させる際に取得できる「子の看護休暇」では、対象となる子どもの年齢・取得理由が拡大されたことに伴い、制度名も「子の看護等休暇」に変更されました。
改正前 |
改正後 |
|
---|---|---|
対象となる子どもの範囲 |
未就学児 |
小学校3年生修了まで |
取得理由 |
|
|
名称変更 |
子の看護休暇 |
子の看護等休暇 |
育休取得の公表、残業・時短に関する変更(2025年4月以降)
男性の育休取得率の公表が義務付けられる企業の範囲が拡大されました。該当する事業所は、年に1回インターネットなどで、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」を公表する必要があります。
また、労働者が請求した場合に所定外労働(残業)を免除される制度の対象が、小学校入学までの子どもを持つ労働者へと拡大されたほか、3歳未満の子どもを養育する労働者が利用できる時短の代替措置として、新たにテレワークが追加されました。
改正前 |
改正後 |
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---|---|---|
育休取得状況の 公表義務 |
労働者数1,000人超の事業主 |
労働者数300人超の事業主 |
残業免除の 対象 |
3歳未満の子を養育する労働者 |
未就学児までの子を養育する労働者 |
時短に代わる措置 |
代替措置
|
代替措置
|
柔軟な働き方を実現するための措置(2025年10月以降)
3歳から小学校入学前の子どもを養育する労働者のために、事業主は次の1~5のなかから2つ以上の措置を設ける必要があります。労働者は、そのなかから1つを選べます。
選択できる措置内容
- 始業時刻などの変更
- テレワークなど(10日以上/月)
- 保育施設の設置運営など
- 就業しつつ子を養育することが可能になるための休暇の付与(養育両立支援休暇・10日以上/月)
- 短時間勤務制度
また、事業主には、これらの措置内容の周知や、個別の意向聴取、必要に応じた配慮をおこなうことが求められています。
介護関連の改正
介護離職防止のための環境整備・意向確認(2025年4月以降)
労働者が、介護休業・休暇などの両立支援制度を利用しやすいよう、事業主は以下の措置を講じる必要があります。
両立支援制度を利用しやすくするための雇用環境整備
- 両立支援制度などに関する研修の実施
- 両立支援制度などに関する相談体制の整備
- 自社における介護休業・介護両立支援制度の利用事例の収集と提供
- 労働者へ介護休業・介護両立支援制度などを周知し、利用を促進する
また、介護を始める前後において、労働者に情報提供や個別での意向確認を実施します。
4.育児や介護と仕事を両立するために
少子高齢化が進み人口減少が続くなか、労働力の減少は社会経済に大きな影響を与えます。とくに、医療・福祉業界は慢性的な人手不足が深刻です。労働者が育児・介護などのライフステージの変化に直面しても、離職することなく両立できる支援や体制づくりが大切です。また労働者にとって、今後のキャリアやライフプランを考え、働きやすい職場を探してみるのも選択肢の一つになるでしょう。
参考
- 厚生労働省|育児・介護休業法のあらまし
- e-Gov法令検索|育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)
- 厚生労働省|育児・介護休業法について