【転職者インタビューvol.15】医療事務7年目56歳/転職6回(外資系企業→歯科助手→ピアノ講師→医療事務)

「なるほど!ジョブメドレー」は新しく、医療福祉業界で働く方の生い立ちから現在までを掘り下げるロングインタビュー企画をはじめました。第15回目の取材に協力してくれたのは、都内の精神科クリニックで医療事務として働くYさん(56歳)です。50歳を目前にして、未経験から医療事務として働きはじめた理由とは? 一歩踏み出したいと考える同世代に向けてアドバイスをいただきました。

「なるジョブ」転職者インタビューvol.14


1.今日の転職経験者はこんな人

医療事務の人生年表

ーご年齢はおいくつですか?

56歳です。


ー現在のお仕事は?

都内の精神科クリニックで医療事務をしています。


ー家族構成は?

主人と2人の息子がいます。長男は結婚して家庭を持っていて、次男はこれから就活です。


ーご出身はどちらですか?

生まれたのは広島県です。父が転勤族だったので、広島→大阪→東京→大阪→東京→神奈川というかたちで、関東と関西を行ったり来たりしました。


ー関西と関東はどちらが好きですか?

学生時代の大半を過ごした関西のほうが落ち着きますね。年に1回は帰るんですけど、阪急電車に乗るとホッとします。


ー血液型は?

B型です。


ーご自身の性格は?

妹が1人いて、常に「お姉ちゃんなんだから」と言われて育ったので、几帳面で責任感が強いと思います。典型的な長女ですね。


ーご両親はどんな方ですか?

父は本当に無口で穏やか。怒ったところを見たことがありません。その分、母は口うるさかったです。

2.Yさん(医療事務・56歳)の生い立ち

医療事務の生い立ち

小学校時代のYさん。不便だけど自然に恵まれた土地で育ったそう


2-1. 幼少期〜小学校時代

ー幼児期の記憶はありますか?

かなり遠い記憶なんですけど、外遊びの好きな気の強い子だったと思います。


ー小学生時代はどんな子どもでしたか?

小学校3年生のころ、父が山の上に家を建てたので、毎日片道40分かけて学校まで通ってました。普通にイノシシが出る山道だったので、いま考えると怖いなと思います。


ーなぜ山の中に家を建てたんでしょうね。

なんでかわからないんですよ(笑)。本当に不便な場所だったんですけど、大阪平野を見渡せる夜景が素晴らしかったです。幼い頃にあの景色を毎日見れたことは幸せでした。


ー何か習い事はしてましたか?

小さい頃からピアノをずっと続けてました。東京に引っ越してからは、2年間塾に通ってましたね。


ー将来なりたい職業はありましたか?

「自分はピアノで生きていくんだ」と思っていたので、音大に行ってピアニストになる夢をもっていました。


2-2. 中学校〜高校時代

ー中学・高校時代について聞かせてください。

大阪の女子校に中高6年間通いました。田舎ですごくのんびりしていて、いじめもぜんぜんない学校でしたね。


ー高校での思い出はありますか?

カトリック系の学校ということもあり、ボランティア活動に行くようになったんですけど、いろいろな人に会って、自分の視野が広がるのが面白かったです。

3.臨床心理を学んで、外資系企業に就職

ー卒業後の進路はどうされましたか?

ピアノによる腱鞘炎でドクターストップがかかってしまい、音大進学は断念しました。当時、女性は高校や短大を卒業して働くのが一般的だったんですけど、わたしはそれが嫌で東京の女子大に進学して、臨床心理を専門に学びました。


ーなぜ臨床心理だったんですか?

きっかけはよく覚えてないんですけど、臨床心理の先生の授業が面白かったのと「同じ人間なのに、精神科にかかる人には何が起きたんだろう?」という疑問があったような気がします。


ー就職活動について教えてください。

臨床心理で食べていくためには「臨床心理士」の資格を取らなければいけなかったんですけど、当時学生のわたしには、病棟実習で接する大人の悩みが理解できませんでした。


そのことから「社会人経験がない状態で、患者さんの悩みを聞いてあげるのは無理だな」と思ったので、就活をして外資系の企業に就職しました。


「でもやっぱり臨床をやりたいな」と葛藤しながらの選択でしたね。

4.ブランクを経て、医療事務に転職

医療事務の生い立ち2

リラックス効果のあるハーブティーを淹れてもらった


ー現在までに転職は何回していますか?

転職は6回しています。外資系企業で6年働いて、その間に結婚。28歳のときにすこしだけ歯科助手と受付のアルバイトをして、翌年1人目の男の子を出産しました。


その後はしばらく家事と育児に専念して、35歳でピアノ教室を開きました。ピアノ講師の仕事はいまでも続けています。


ー「医療事務」の仕事に就いたのはいつ頃ですか?

ピアノ講師を続けるなかで、もう一度社会に出たくなってきたので、50歳を目前にして「医療事務」に転職しました。


医療事務としては、皮膚科→精神科→皮膚科と3つのクリニックで働いて、現在の精神科クリニックに転職しました。現職は4年目になります。


ーお仕事はどこで探しましたか?

最初の3つのクリニックはハローワークで探しました。当時はハローワークしか知らなくて、なんとなく安心感があったんです。

5.職場選びの注意点

ー転職活動はスムーズにいきましたか?

意外なほどスムーズにいきました。ただ、資格も経験もない50代の女性がすんなり採用されるところは、何かしら問題のある職場が多いなと気づきました。


ーどんなところに問題が?

教育制度が整っていなかったり、人間関係が悪くてどんどん人が入れ替わっていたり……3つのクリニックは環境があまりにひどくて、いずれも1年くらいで辞めてしまいました。


ーそういった職場を見抜くにはどうすればいいのでしょうか。

わたしの場合、面接の途中や当日に「すぐに来てください」と言われました。クリニックにもよると思いますけど、そういう極端に人手不足の職場は注意する必要があると思います。


ー人間関係は入ってみないと難しいですよね。

たしかにそうだと思います。ただ、やはり病院の代表は院長先生です。なので院長がどんな人なのか、実際に職場にどのくらいいるのか、スタッフさんとの関係性はどうかということを聞くだけでも違ってくると思います。


わたしの例でいうと、院長先生は本院にいて、分院はパートさんだけで回さなければいけなかったり、院長の発言権がなくて、ベテランによるいじめがあったりという職場がありました。


ー現在の職場に転職したきっかけは?

散々苦労したんですけど、「最後にもう1回だけ転職しよう」と思って、初めて医療系の求人サイトに登録しました。


わたしは「ジョブメドレー」を使ったんですけど、キャリアサポートの方がちゃんと条件の合う求人を紹介してくれたし、面接までの過程にも責任を持ってくれました。


ー職場選びで重視したポイントはありますか?

以前の職場では、とにかく人間関係が大変だったので、「オープニングスタッフ」として関われる職場を第一条件にしました。


本当は家の近所がよかったんですけど、条件の合うところがなかったので、都心にあるクリニックのオープニングスタッフに応募して、現在の精神科クリニックに入職したというかたちです。まさか自分が受かるとは思ってませんでした。


ー面接ではどんなことを聞かれましたか?

面接のときに採用条件として言われたのは「ORCA(レセプトソフト)を使ったことがある人」だったんです。


わたしは皮膚科クリニックで1日50〜60人くらいの患者さんのお会計に「ORCA」で対応していたので、その点がよかったんだと思います。


ただし、もともとパソコンが得意ではなくて、それ以外はメールくらいしか使ったことがないという状態でした。「ブラウザ」って言われてもよくわからないというレベルです(笑)。


ーご自身で何かコンピュータの勉強はしましたか?

先生が「ぼくは絶対にイライラしないから、何度でも同じことを聞いてくれていいよ」と言ってくださったので、とにかくメモ魔になって、なんとか覚えました。


あとは主人がSE(システムエンジニア)なので、帰ってからわからない用語を聞いたりしてましたね。主人がいなかったらもっと大変だったかもしれないですけど、基本的に先生が教えてくれたので、とてもありがたかったです。

6.ザックリ給与明細書

医療事務7年目の給与明細書

ー雇用形態・月給を教えてください。

雇用形態はパート、月給は約13万円です。この月は体調不良で入院してしまったので、すこし少なくなっています。


ークリニックではどんな働き方をしてますか?

平日月曜〜木曜の週4日・1日8時間ほど働いています。


ー残業はどれくらいですか?

たまに20〜30分くらい伸びることはありますけど、基本的にほぼありません。


ー夏季休暇などは取れますか?

繁忙期は避けますけど、すこしズラして夏季休暇を3日間いただいたり、院長先生と相談して決めています。

7.医療事務の仕事内容

ー仕事内容を教えてください。

オープニングで本当にエンピツ1本ない状態だったので(笑)、はじめは医療事務の仕事ができる環境にしようと必要なものを購入して準備しました。


現在は、患者さんの受付、お会計、レセプト業務、電話応対、掃除まで。院長と2人のクリニックなので、医療事務の仕事は全部やらなければいけません。


ー現在の職場には満足していますか?

以前の職場では人間関係で苦労していたので、精神的にすごく楽になりました。結果的に、オープニングの求人を探してよかったと思います。


ただ、以前の3つのクリニックでの経験がまったく無駄だったというわけではありません。皮膚科クリニックのような忙しいところでは、ファイリングの仕方など、勉強になる部分はいろいろあります。


「これは真似したいな」と思ったものは真似して、「これはやらないほうがいいな」と思ったものはやらないというかたちで活かせれば、転職経験者の強みにできると思います。

8.求職者へのアドバイス

ー求職者へのアドバイスをお願いします。

まずは勇気を出して、面接を受けに行くことです。わたしも「この年で、都心のクリニックで働けるかな?」と不安でした。


40代・50代になってくると「おばちゃんが行くこと自体が申し訳ない」と思ってしまうんですよね。


なので、同じように不安を感じる方は、求人サイトに登録して、後押ししてもらうのもいいかもしれません。わたしは面接に行く前に、キャリアサポートの方のメールに励まされました。


ー40代・50代の女性ならではの強みはありますか?

その年代ならではの人生経験は仕事にも活かせると思います。精神科クリニックでは、自分より年上の人が受付に座って話を聞くだけで、患者さんが安心してくれます。


ー医療事務関連の資格をとっておけばよかったと思いますか?

資格に関しては、最初のクリニックで相談したんですけど「場所によって使ってるコンピュータも違うからあまり役に立たない」「お金を出して通うくらいだったら、早く現場で覚えたほうがいい」と言われました。


なので、わたしは最低限の知識を身につけたら、あとは現場に慣れてしまったほうがいいかなと思います。


大きな大学病院では「有資格」を条件にしているところもありましたが、クリニックは無資格で応募可能なところがほとんどでした。


ーレセプトの計算はどうやって覚えたんですか?

何も知らない状態から現場で覚えました。いちばん忙しかった皮膚科クリニックでは、1ヶ月に1,000枚以上紙が出てきて、全部みんなでチェックします。嫌でも慣れるので、そんなに心配はいらないと思います。


ー診療科による違いをどう考えますか?

やはり来る患者さんがぜんぜん違います。歯医者さんは基本的に、歯以外は健康な人が来るんですけど、精神科には見えない心の痛みを抱えている人が訪れます。ときにはすごくひどいことを言われたり、すこし怖い思いをしたりすることもあります。


なので「これは病気がそうさせているんだ」という心構えや理解がないと自分も傷つくし、患者さんのことも傷つけてしまいます。


あと皮膚科はとくに混みやすいので、応対スピードが求められたり、診療科によって気を遣うポイントが変わってきます。


ーほかの職場への転職を考えたことはありますか?

ぜんぜんないですね。わたしの希望的に、いま以上の職場はなかなか見つからないと思います。


ー今日はありがとうございました!

読者の方へのメッセージ

まず一歩を踏み出すことの大切さ

40代・50代の女性は面接に行くのにも勇気がいる。医療事務として働くYさん(56歳)はかつての自分をこう振り返りました。いざ医療事務に転職してみて気づいたことは、一歩を踏み出して求職サイトに登録したり、とりあえず面接に行ってみることの大切さ。また、未経験でも人生経験の長い40代・50代の女性の強みについても教えていただきました。

宮原 透 (編集者) 2019/08/01

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