
1. 今日の転職経験者はこんな人
2. Yさん(保育補助・54歳)の生い立ち
2-1. 幼少期〜小学校時代
2-2. 中学校〜高校時代
2-3. 短大時代
3. 新卒で保育園に勤務
4. 約30年ぶりの仕事復帰
5. 午前中は公立保育園でWワーク
1.今日の転職経験者はこんな人

ー出身と年齢を教えてください。
出身は愛知県で、年齢は54歳です。結婚を機に引越して、今は都内に住んでいます。
ー今はなんのお仕事をされていますか?
保育補助として午前中と夕方、それぞれ別の園でパートとして働いています。
ー家族構成を教えてください
夫と子どもが3人。一番上の娘はもう結婚していて、息子2人は大学生です。
2. Yさん(保育補助・54歳)の生い立ち

厳格なお父さんのもと、行儀・作法は厳しくしつけられたという
2-1. 幼少期〜小学校時代
ーご両親はどんな方でしたか?
母は専業主婦で、父は大学の教授をやっていました。
母はわりと大らかなのですが、父は厳格な人でした。
ーしつけなどが厳しかったんですか?
そうですね、箸の持ち方や姿勢、言葉遣いなんかはよく注意されていました。
ー大学教授で厳格なお父さん……教育にも熱心だったのでは?
それほどでもなかったですよ。習い事はピアノ・美術教室・水泳をやっていましたが、どれも自分からやりたいと言い出したものでした。
2-2.中学校〜高校時代
ー習い事は中学校へあがってからも続けていましたか?
いえ、中学生になるタイミングで全て辞めました。
ただ中学・高校は美術部に。それほど絵が得意ってわけではなかったんですが、他にやりたいこともなかったので。
ー高校はどんな学校へ?
けっこうお金持ちの子どもが集まるような学校でしたね。共学なんですが、いわゆるお嬢様学校とかお坊ちゃま学校と言うんでしょうか。
当時の親友の親がそこの学園長と仲が良く、その紹介で親友と一緒に入学しました。広い敷地に緑がいっぱいで校舎もすごく綺麗で、初めて学校を案内されたときはキラキラ輝いて見えたのを今でも覚えていますね。
ーYさんもわりと裕福な家庭だったということですか?
いえ、うちは普通の家庭でした。恥ずかしながらコネ入学というやつですね。
2-3. 短大時代
ー高校卒業後の進路はどうしましたか?
父は児童福祉を研究する教授だったんです。いわば保育のエキスパートですよね。小さいころからそういう姿を見ていたので、私も漠然とそういう道に進むんだと考えていました。
なので、とりあえずは保育と幼稚園教諭の資格を取ろうと決めて短大へ。当時は「保育士」ではなく、まだ「保母資格」でしたけどね。
ーお父さんが教鞭をふるっている大学へは行かずに?
子どもの反抗心と言うんでしょうか。やっぱり父親の元で学ぶのは気恥ずかしさもあったので。
ー短大の思い出はありますか?
短大は2年間なんですが、思い返すと「実習が忙しかった」という記憶しかないですね。
ー実習はどれくらいの期間実施されるんですか?
保育園・幼稚園・児童福祉施設の3か所で、それぞれ2週間ずつ実習を行いました。
内容としては、ほかの先生にならって子どもの面倒をみて、一日の終わりに実習日誌を書きます。実際の保育士の仕事にかなり近い内容だったと思います。
ー短大時代にアルバイトはしていましたか?
学校近くのカフェでバイトを。今の夫とはそのバイト先で知り合い、そのころからお付き合いを始めました。
3. 新卒で保育園に勤務
ー就職先は学校に掲載されていた求人などから探したんですか?
実は学校にある求人から受けた保育園には落ちてしまったんです。不採用通知が届いたのは2年生の1月末くらいで、卒業間近だったと思うんですが、なぜかまったく焦ってなかったんですよね。「なんとかなるでしょ!」という、根拠のない自信にあふれていました。
結局は他力本願になってしまったんですが、たまたま当時の学友の親が保育園を経営していたので、そちらを紹介していただきました。
ー当時の初任給を教えてください。
20歳のころなのではっきりとは覚えていないのですが、当時の額面で16万円ほどだったかと思います。賞与は夏と冬に1ヶ月ずつ支給されました。
ーどのような保育園でしたか?
当時はまだ子どもが多かったこともあってか、すごく大きな保育園でした。各クラスが定員40人ほどで年少2クラス、年中2クラス、年長3クラス。
私は1年目から年中クラスの担任を任されました。保育園などでのアルバイト経験もなく、いきなり40人規模のクラスを受け持ったので苦労と失敗の連続でしたね。いまさらながら当時の子どもたちとその親御さん、同僚には申し訳なく思います。
ー新卒からなかなかハードだったんですね
そうですね。園によっては担任のほかに補助の先生がつくこともあると思うんですが、そういったこともありませんでした。
ですが辛かったことは一度もなく、すごく充実していました。一緒に働く先生たちはいい人ばかりだったので、違うクラスからサポートしてくださったり悩みを聞いてくださったり、プライベートでは一緒に遊んだり。楽しみながらのびのびと働けました。
ーその職場ではいつまで働いていたんですか?
3年間働いて、結婚を機に退職しました。
ーそこからは専業主婦に?
そうです。翌年には第一子も授かったので。
ー旦那さんはなんのお仕事を?
普通の会社員です。
4. 約30年ぶりの仕事復帰

趣味はフリマ巡りで、絵本を集めているそう。
ー何歳のときに保育補助として再び働き始めたんでしょうか? また、復帰した理由も教えてください。
保育補助として働き始めたのは3年前からです。1番下の息子が大学生になり、子どもに手がかからなくなったので。
ただ、30年近く仕事をしていなかったので応募するのはすごく躊躇しました。
ー専業主婦時代はパートなどの経験もなく?
そうです。完全にお仕事とは縁のない生活を送っていたので、「こんなおばさん受け入れてもらえるのかな」「ちゃんと働けるのかな」という気持ちが強く、はじめは社会に出るのがすごく怖かったんです。
ーきっとYさんが新卒で働いていたころに比べ、保育園のあり方なども変わってきているでしょうしね。
30年あれば、保育園どころか家庭や親子のあり方も大きく変化していますよね。ですが、「子どもに関わる仕事をもう一度したい!」という強い気持ちはずっとあったんです。
なので、まずはリハビリも兼ねて短時間だけ働いてみようと思い、夕方から勤務可能な保育園に応募しました。
ー仕事を探すうえで苦労した点はありましたか?
慣れないインターネットを使ったので苦労しました。検索すらおぼつかなかったので。
2社利用したのですが、最初の会社は希望とマッチした求人をなかなか紹介してくれなかったので退会しました。希望としては「自転車で通える距離」「短時間勤務」「園の直接雇用」だったんですが、派遣のパートや家から遠い園ばかり紹介されたんです。
ーなぜ直接雇用にこだわったんですか?
私自身が無知なだけなんですが、「派遣」というシステム自体がよくわからず不安だったので。
ーそのほか仕事復帰するにあたって、苦労した点はありましたか?
通っていた短大まで行き、資格の証明証を発行してもらうのが少し手間でした。
また、私が専業主婦をやっている間に「保母資格」が「保育士資格」に切り替わったんです。その資格切り替え手続きも行わなければいけなかったので、そういった事務手続きに時間を取られました。
ー面接ではどのようなことを聞かれましたか?
なぜ再び働きだそうと思ったのか、志望動機、昔働いていたころの業務内容、週何日何時間働けるのか、などです。
ー入職した職場はどのような条件でしたか?
私立保育園なんですが、勤務は週に3日~4日で16時30分から18時30分までの2時間。時給は1800円です。
ーどのような業務内容ですか? 親御さんがお迎えに来る時間なので、その間の遊びの見守りとトイレや着替えの介助です。 ーほかの園と比べて時給が高いと思うんですが、その分大変な業務などがあるんでしょうか? 当初は私もそれを心配していたのですが、まったくないんです。むしろ楽すぎて「こんなに時給高くていいのかな」と私が心配になります。 ただ、この時給は有資格者かつ早番か遅番のスタッフのみです。無資格で昼間働く場合は時給1150円くらいだったかと思います。 ー午前中は別の保育園で働いていると言っていましたね。 そうです。1年ほど保育補助として働いてみて、「ブランクがあってもちゃんと働ける」と自信が持てるようになったのと、そのころあまり希望通りにシフトを入れてもらえなくなってきたので。 ー2つ目の保育園も同じくインターネットで? いえ、家から徒歩10分ほどのところに公立保育園があるんですが、園の門に求人募集の張り紙があったんです。 勤務時間が9時~12時で、ちょうど希望とマッチしていたので家に帰ってすぐに電話を掛けました。 ー最初の私立保育園でフルタイムで働こうとは思わなかったんですか? 見守るだけの保育ではなく、もう少し深く子どもの成長に関わる仕事がしたいと思ったんです。また、そもそもその私立保育園ではフルタイム勤務の募集はかけていませんでした。 公立保育園の方では担任の補助として働きだしました。お外へ散歩に行ったり歌や踊りをしたりと、分刻みでスケジュールが決まっているので大変なんですが、その分とてもやりがいがありました。 ー時給はいくらでしたか? 時給1300円で、週5日働いています。無資格の場合は時給1000円になります。 夕方の仕事と合わせて、月10万円ほどです。扶養内から外れないよう毎月細かく計算しながらシフト提出しています。 ー午前中のお仕事から夕方のお仕事までの間はどのように過ごしていますか? 1度家に帰り、洗濯や夕飯の準備などの家事を一通り終わらせています。夕方の仕事が終わって、家に帰ったらすぐに夕飯が食べられるような状態です。 ー子育てを経験したことによって、昔と今とでは「保育」に対する考え方や園児との向き合い方は変わりましたか? 昔と比べ、子どもの気持ちを深く理解できるようになった気がします。あと、良くも悪くも母親のような目線で子どもたちを見てしまいます。担任ではないのでプレッシャーなどが少ないのも理由かもしれませんが。 ーかつてのYさんと同じように、ブランクを経て働きたくても二の足を踏んでしまう方が多いと思うんです。そんな方に何かアドバイスがあればお願いします。 私自身もそうだったので勇気が出ないのはすごくわかります。ですが20年~30年くらいのブランクがありつつ、無資格未経験から保育補助として働きだした方も周りには何人かいます。それに、今の職場には70代でも現役で頑張っている保育補助の方もいらっしゃいます。 もし子育て経験があるのならそれはきっと武器にもなりますし、実際に働きだしてしまえばスタッフ同士年齢など関係なく信頼関係を築き合えます。たとえば、持病などを抱えていてもしっかりと話を聞いてもらえると思うので、勇気をもって行動に移してみてほしいんです。 私自身、今となってはもっと早く働きだしていればよかったなと少し後悔しています。悩んでいる時間はもったいないとさえ思うので、「働きたい」と思ったらすぐに求人に応募することをお勧めします。働く上での不安は面接時に聞いてもらえばいいんです。 ーインタビューは以上になります。本日はありがとうございました。5. 午前中は公立保育園でWワーク