【転職者インタビューvol.27】臨床心理士15年目41歳/フリーランス(スクールカウンセラー、学校講師、ライター等)

医療福祉業界における転職者の人生を深堀していくインタビュー。第27回目は埼玉でフリーランスの臨床心理士として活動するTさん(41歳)。ひとつの職場に縛られず、フリーランスとして活躍するにいたった経緯とは?

「なるジョブ」転職者インタビューvol.24


1.今日の転職経験者はこんな人

登録販売者・人生年表

ー簡単なプロフィールを教えてください。

埼玉在住の41歳で、仕事は臨床心理士をやっています。

ー出身はどちらですか?

愛知県なんですが、産まれてすぐに埼玉に引っ越したので記憶にはないですね。

ー転職は何回経験しましたか?

「ひとつの職場でずっと働く」ということが苦手で、新卒の頃から非正規で様々な仕事を請け負ってきたんです。

なので、転職回数はよくわからないです。

2. Tさん(臨床心理士・41歳)の生い立ち


2-1. 幼少期〜小学校時代

ー子どもの頃はどんな子でしたか?

「変わっている子」と、よく言われてました。自分ではマイペースなだけだと思うんですが。

ー小学生の頃の思い出は?

父がゲーム好きだったので、一緒にゲームばかりしていました。テレビゲームはもちろん、一緒にゲームセンターに通ったり。

父は広告制作の仕事をしていたんですが、夜は2時頃に帰ってきて、朝は9時くらいまで寝る生活。まともに顔を合わすのは週末のみなので、歳の離れた友人のような感覚でしたね。

ーその頃の将来の夢は?

「東大を出て医者になるんだ!」って思ってました。母方の親戚に医者が多いので、その影響ですかね。

2-2. 中学校〜高校時代

ー中学・高校の頃はどうでしたか?

アニメとかゲームにハマってました。とくにガンダムにはドハマリしてました。

ただ、クラスにはうまく馴染めず、高校は知り合いが誰もいない少し遠くの私立校へ進学しました。

その高校は男子校だったんですが、めちゃくちゃ楽しかったです。男同士なので、変な気をつかわなくていいし馬鹿ばかりしてました。

2-3. 大学時代

ー高校卒業後の進路はどう決めましたか?

実は中学生の頃から心理系に興味はあったんですが、親から「つぶしが利く大学に行ったほうがいいよ」と言われて、一浪の末そこそこの大学の政治経済学部に入学しました。

ちなみに心理系に興味を持った理由は「犯罪心理学とかプロファイリングってかっこよくね?」という、いわゆる中二病的なものでした(笑)。

ーでは、どのタイミングで臨床心理士の道へ?

大学4年の就活シーズンに、就職氷河期だったこともあり友人の悩みを聞くことが多かったんです。話の聞き方がよかったのか、色々な友人に「話を聞いてあげるような仕事が向いてるんじゃない?」って言われたのがきっかけです。

もともと興味があった分野でもあったんですが、かなり悩んだ結果、卒業後は就職せずに臨床心理を学ぶため別の大学へ編入しました。2年次編入ですね。

ー周りの友人が就職していくなか、自分だけもう一度大学へ行くのは勇気がいりますよね。

そうですね。でも普通に会社員として働くのは自分には合わないと思ったんです。ひとつの組織に属して、みんなと同じ方向を向いて動くのが苦手なので。

ー2年次編入で勉強などはついていけましたか?

教養科目など取得した状態でスタートしたので、専門的な講義だけ取ればいいのでむしろ楽でしたよ。

それよりも大学院に進むための院試が大変でした。推薦枠がない大学だったので、一般入試だったんですがすごく倍率が高くて。1日10時間くらい勉強してました。

ー大学院ってどういうことをするんですか?

大学のゼミってあるじゃないですか。あれがずっと続くのをイメージしてもらえれば。

1年目は教授の講義受けてレポートを書いて発表って感じで、2年目は修論の勉強と実習ですね。

ー実習の内容は?

僕の場合はクリニックと中学校にそれぞれ週1で1年間。あと、メンタルヘルス系のサービスを提供する企業に週2で1ヶ月くらいですね。

クリニックでは心療内科の患者さんの対応。学校はスクールカウンセラーの補助。企業では電話相談の内容を聞かせてもらったりとか、会社の仕組みを勉強したりとか。実務というよりは研修みたいな内容でした。

ー1年間の実習って結構長いですよね。大変でしたか?

クリニックの職員が女性ばかりだったのが一番大変でした。

ー具体的には?

パワハラってほどじゃないんですが結構きつめに言われたことはありましたね。特に女性社会に男性一人っていう環境がすごい辛かったです。みんながお昼ご飯にサラダを食べてるところ、僕だけカツ丼を食べていたら「男はいいわよねぇ」みたいなことをチクリと言われたり。

メンタルやられて円形脱毛症になりましたもん。

3. スクールカウンセラーと講師の掛け持ち

臨床心理士・イメージカット

いかにも「学校の先生」といった風貌のTさん


一色々な仕事をしてきたと言っていましたが、卒業後はどのような仕事を?

社会人1年目にやっていた仕事は、高校のスクールカウンセラー保育の専門学校講師アニマルセラピーの専門学校講師の3つです。スクールカウンセラーが週2、講師はそれぞれ週1くらいでした。

スクールカウンセラーと保育の専門学校は先輩の紹介、アニマルセラピーの学校講師はインターネットで見つけました。

3つの仕事を合わせて月20万円くらいの収入だったと思います。

ースクールカウンセラーが若い男性ってだけで、生徒から人気が出そうですね。

ギャルな子が多い学校だったんですが、そういう子たちが調理実習で作ったパンとかカレーをくれるんですよ。見た目がものすごいギャルなだけに、そういう純粋な気持ちがすごく嬉しかったですね。

「これ読んでうちらの気持ち勉強しなー」って、ポップティーンや小悪魔agehaなどのギャル雑誌を読まされました(笑)。

ーほっこりするエピソードですね。

あと、男子トイレに丸々1個のスイカがドチャッとぶちまけられていたことがありました。その現場を先生方に見せられて「これをやった生徒はどういう心理状態なんでしょうか」と。

こちらとしても「どういう心理状態なんでしょうかね……」としか返せませんでした。

ー専門学校ではどういったことを教えていたんですか?

保育の専門学校では児童心理を。アニマルセラピーの専門学校では老年期のメンタルヘルスについて講義させてもらいました。

講師はどちらも1年契約でした。2年目はスクールカウンセラーも続けながら、不登校対策キャンプの仕事と、特別支援の相談室の相談員を新たに始めました。

キャンプは家族参加型で毎週行うんですが、私の役割は保護者の相談役といったような感じです。ちなみにこの仕事は今も続けています。

ー 「今も」ということは、キャンプのお仕事はもう10年近く続けているんですね。

たしかに、そんなに経つんですね。もともとインドアだし子どもが苦手だったので1年で辞めようと思っていたんです。でもやっているうちに、子ども達に情がわいてきちゃって、「せめてこの子達が卒業するまでは続けよう」って思ったんです。でも毎年、次々と新しい子が来るのであれよあれよという間に10年たってました。

4. フリーの臨床心理士として活躍する日々

ー現在はキャンプ以外にどんなお仕事を?

若者の就労支援が週4日で、キャンプと通信高校のカウンセラーがそれぞれ週1日。調理師高等専修学校のスクールカウンセラーが月1日。あとは医療IT企業のメンタルヘルスのチャット相談員や、ITメディアの記事執筆など細々とした単発依頼がちょこちょこと。

ー合算すると年収いくらぐらいなんしょうか?

昨年は470万円くらいでした。ただ、やっぱり会社員に比べると税金や保険料がものすごい引かれるのが痛いですね。

ー冒頭でも少しお話しされましたが、そもそもなぜ今のような働き方になったんでしょうか。

自分の性格的に「会社組織」という枠組みが合わないんじゃないかなと。一つの仕事をずっとやり続けるのではなく、新しいことにどんどんチャレンジしていきたいんです。あと、飲み会や社員旅行など、業務以外で縛られるのが嫌だなという気持ちも大きかったかな。今はそういう会社も少ないかもしれませんが。

友人や家族には「会社にいたほうが楽なのに」ってよく言われますけどね。

ーたしかに組織に属しているほうが安定はしますよね。将来について心配することはあるんですか?

ふとした時に「このまま働いていて大丈夫かな」と漠然とした不安に襲われることもあります。守ってくれる組織もありませんし、仕事もいつまであるかわかりませんから。

ですが一応、「大学の教授」という将来の夢もあるんです。こういう仕事をしていて思うのは「カウンセラーを必要としている人は潜在的にまだまだいる」ということです。「助けて欲しい」とSOSをあげられずに、一人で悩んでいる人はすごく多いんですよね。なので、質のいい臨床心理士を今よりもっと増やすためにも後進の育成に携われたらなと。

ーちなみに新しくできた「公認心理師」の資格は取得しましたか?

今年は忙しくて準備ができなかったので受験を見送りました。来年は受験する予定です。

5.(番外編)生活・お金・恋愛の話

ーお休みの日は何をしていますか?

休日は友人に会う事が多いですね。あと趣味でDJをやっています。

ースマホの機種は?

iPhoneXです。最近この機種に変えたんですけど、完全に機能を持て余しています。

ガジェット好きなんで「どうせなら最新機種がいいよな」と思ったんですけどね。

ーホーム画面を見せてもらってもいいですか?

いいですよ、どうぞ。

臨床心理士・スマホホーム画面

よく使うアプリはLINETwitterLifebearっていうカレンダーとメモ帳が合体したようなアプリ。

ゲームは色々やっていますが、一番やるのはパズドラですかね。課金はほとんどしないです。

ーお金は何に一番使っていますか?

外食ですね。月に10万円くらい使ってるかも。

ー今お付き合いしている方は?

2年くらいいないです。そろそろ結婚も考えなきゃですよね。

ー子どもができたら「臨床心理士」はすすめますか?

かなり人を選ぶ仕事だと思うので、一概にはすすめられないですね。

ーどんな人が向いていると思いますか?

仕事とプライベートを完全に切り離せる人と、他人に入れ込みすぎない人ですかね。ある意味ドライな人のほうがいいのかもしれません。

ー患者さんの話を聞いていたカウンセラーさんが逆に病んでしまう、なんてことも聞きますしね。本日は以上になります。ありがとうございました!

読者の方へのメッセージ

フリーランスとして働く選択肢

実は臨床心理士の約半数は非常勤として働いており、複数の領域にまたがり就労しています。今回インタビューをしたTさんもその一人。相談員・就労支援・スクールカウンセラー・記事の執筆など、さまざまな分野で活躍をしています。「組織に縛られるのが嫌」「色々なことにチャレンジしたい」。そういった理由からフリーランスの道を選んだそうです。働き方の多様性がみられる昨今、今後は臨床心理士以外にもこういった働き方が増えていくかもしれませんね。

深沢 元貴 (ジョブメドレー 編集) 2019/08/21

プロフィール

「なるほど!ジョブメドレー」は、医療介護求人サイト「ジョブメドレー」が運営するメディアです。医療・介護・保育・福祉・美容・ヘルスケアの仕事に就いている人や就きたい人のために、キャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。仕事や転職にまつわるご自身の経験について話を聞かせていただける方も随時募集中。詳しくは「取材協力者募集」の記事をご覧ください!

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