フィジカルアセスメントとは? 看護用語の意味や基本手順を解説

看護用語の1つである「フィジカルアセスメント」とは、どのような意味を持つのでしょうか。用語の意味だけではなく、臨床現場でおこなわれているフィジカルアセスメントの基本手順や種類、注意すべきポイントをご紹介します。

フィジカルアセスメントとは

フィジカルアセスメントとは?

フィジカルアセスメントの意味

フィジカルアセスメントとは、問診とフィジカルイグザミネーション(視診、触診、聴診、打診)を用いて、身体的健康上の問題を明らかにするために、全身の状態を系統的に査定することです。

フィジカルアセスメントの意味

「フィジカル=身体的な」「アセスメント=情報」を、意図的に収集して、判断して、共有する思考過程を意味します。

看護師がおこなうフィジカルアセスメントの目的

医師は診断を確定するために身体診察をおこないますが、看護師は「必要な看護ケアを明確にし、根拠に基づく看護ケアをおこなう」「実施した看護ケアを評価する」ためにフィジカルアセスメントをおこないます。

フィジカルアセスメントの基本手順

フィジカルアセスメントは、患者の心身の侵襲を少なくするために、以下5つの手順でおこないます。


① 問診:患者の訴えを聞きます


② 視診:患者の全体を観察し、身体の機能も異常がないか確認します


③ 触診:患者に触れて皮膚の状態や痛みの部分を正確に知ります


④ 打診:患者の身体の表面を叩いた振動から、ガスが溜まっているかなど内部の状態を知ります

       

⑤ 聴診:聴診器を使って呼吸音や心音、血管音、腸音などに異常がないかを聴きます

フィジカルアセスメントのポイント

フィジカルアセスメントをおこなう際には、以下7つのポイントを確認しましょう。異常の可能性を考えたり、正常な状態と比較しながらおこなうことが大事です。


① 発症の様子:急性のものか。自覚症状の有無

② 進行具合:一過性か、持続性か、繰り返すか

③ 性状:具体的な内容

④ 程度:痛みの程度

⑤ 部位:異常がある部位はどこか

⑥ 増悪・改善因子:どうすると悪く(良く)なるのか

⑦ 随伴症状:副次的な症状はないか

頭痛・腹痛・呼吸困難・動悸のフィジカルアセスメント

臨床でよくおこる頭痛・腹痛・呼吸困難・動悸のフィジカルアセスメントの基礎についてみていきましょう。


<頭痛のフィジカルアセスメント>

頭痛は比較的多くの人が体験する症状です。命に関わる頭痛(くも膜下出血など)の場合、特徴的な症状が多いため、出現状況や頭痛の程度、頻度などを問診します


問診:頭痛の経緯、部位、程度、頻度、持続時間、嘔吐、けいれんなどの有無、家族歴


視診:意識状態、表情、瞳孔、呼吸等


触診・聴診:脈の回数やリズム等、血圧


<腹痛のフィジカルアセスメント>

一般的に、腹痛の場合は発生部位からフィジカルアセスメントを開始します。触診や打診で痛みが増強する場合もあるため、視診→聴診→打診→触診の手順でおこないます


問診・視診:同時に手早く、体位や嘔吐などの症状を観察しつつ、腹痛の程度・時間や間欠性か等、食事の状況や摂取内容、排便の有無、既往歴等


聴診:腸蠕動音の有無、異常音の有無や部位


打診・触診:痛い部位を打診して圧痛が増強しないか、腫瘤の有無などを確認。腹痛は間欠的な場合が多いので、力が抜けた時に楽な姿勢をうながしながらおこないます。


<呼吸困難のフィジカルアセスメント>

呼吸困難は、呼吸が十分にできずに努力して息を吸っている状態です。問診は状態に合わせて止めましょう。


問診・視診:同時に手早く、呼吸や胸郭の動き、口唇や爪先のチアノーゼの有無などを観察しつつ実施。患者に座位となるよう勧め、パルスオキシメーターを装着しSpO₂を測定、既往歴等


聴診:気管、前胸部、背部の上から下に向かって左右対称に聴取、副雑音の有無


※触診・打診は、呼吸困難の程度でおこなう場合もあります


<動悸のフィジカルアセスメント>

動悸を感じる疾患は、循環器だけではありません。動悸を自覚する時は、心臓の動きが速くなったり遅くなったり、心臓の動き(鼓動)を強く感じたり、リズムが乱れることで、心臓が不規則に動いていると感じる時です。


問診・視診:動悸の有無、持続時間、息切れ、手足のしびれ、チアノーゼ、活動内容、家族歴等


触診:バイタルサインの測定(特に脈拍の左右差、数、リズム、強弱)、浮腫の有無、四肢の冷感


聴診:呼吸音(左右差、副雑音の有無)、心音の心拍数やリズム

必要な知識・スキル

患者の訴えは、臨床ではよく耳にすることばかりです。その中から命に関わるのか、緊急性はどうなのか、最悪な場合どう動くのかをイメージするスキルを高めていく必要性があります。

読者の方へのメッセージ

看護の“看”

看護の“看”とは、目でみて・耳できいて・手でふれることです。この3点を大事にフィジカルアセスメントしていきましょうね!

内橋 恵 (脳卒中リハビリテーション看護認定看護師・NST専門療法士) 2019/06/06

プロフィール

生活期→急性期→回復期とすべての病期を経験し大学院に進学。在籍中にコンサルタントナースとして起業し、主に訪問看護師のコンサルを行なっている。看護学修士取得後も回復期病院に勤めながら、高齢者の低栄養を研究テーマに大学院研究生として両立中。認定看護師を取得後に執筆活動開始し、栄養看護や退院支援に関する編集や執筆多数。学会委員としての活動と同時に大学や看護協会、看護師向け動画での研修講師も務める。

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