HCU(高度治療室)とは?ICU(集中治療室)との違いや看護の特徴を紹介します!

HCUは(高度治療室)は、ICU(集中治療室)よりもやや重篤度が低い患者さんを受け入れる治療施設です。今回は一般的にイメージしづらいHCUについて、ICUとの違いや看護の特徴、働く人の適性などをお伝えします。

HCU(高度治療室)で働く看護師

HCUの特徴は?ICUとどう違う?

HCUは「High Care Unit」の頭文字をとったものであり、日本語では「高度治療室」や「準集中治療管理室」と訳され、ICUと一般病棟の中間に位置するとされています。


疾患を限定しない点や看護師が一目で監視できる点はICUと同じですが、HCUの特徴としては診療報酬の加算日数が21日までであることと、患者4人に対して看護師1人の配置基準であることが挙げられます。(ICUでは診療報酬の加算日数は14日まで。患者2人に対して看護師1人の配置基準です)


HCUではICUより重症度は低いけれども、一般病棟の看護師配置基準(7対1や10対1など)で看護するには難しい状態の患者を対象としています。


たとえば、脳の血管が剥離しかかっていて脳出血を起こすリスクがある場合や消化器系の急性期や手術後など、明確な生命の危機があるわけではないけれども、重症になるリスクの高い患者などの治療が中心となります。


「重症になるリスクが高い」の選択基準は施設によって異なるため、HCUの特徴がわかりづらくなっている側面もあります。また、急性期の施設でICUもHCUも設置しているところもあれば、HCUだけを設置しているところもあります。


HCUに入室する患者は「①救急外来から直接入室」「②手術目的で入院し術後管理のために入室」「③ICUから転室」の3パターンに分けられます。


たとえば、ICUで14日間治療して、まだ不安定な状態が続く場合はHCUで7日間治療し、一般病棟へ転室するという流れになります。(ICUで14日間+HCUで21日間という治療を受けることはできません)

HCUに関わる職種は?

HCUもICUと同じく、医師、薬剤師、看護師、セラピストなどの職種が関わっています。施設の規模にもよりますが、臨床工学技士を配属しているところは少ないと思います。他職種の配属については、ICUの設置があるかどうかで変わってくるのが実情です。

HCU看護の特徴は?

HCUの特徴は、受け入れている患者の重症度の幅が広いことです。そのため人工呼吸器を装着している患者もいれば、おもに再出血予防の安静が主体の患者もいます。では、疾患や重症度の幅の広い患者の看護に必要なことはなんでしょうか?


私個人的には、HCU看護師の特徴は「臨床推論に特化しているところ」だと思います。


臨床推論とは、直感や経験知を客観的な情報と合わせてアセスメントして、看護にいたる考え方のことです。難しい言葉に聞こえますが、どの看護師も日頃から「なにか変だな?」と感じてリーダーナースに報告するなど、無意識に実践できているのではないでしょうか。


本来は、医師が診断や治療を行う思考のプロセスのことを指しますが、医師不足もあり、患者のトリアージや状態変化の察知のため、看護師も臨床推論を学ぶように推奨されてきています。


たとえば、腹痛を訴えている患者の原因をアセスメントし、看護を行いつつ、医師に連絡すべきかどうかの緊急度を判断しているとします。


腹痛は腸閉塞なのか腹膜炎なのか、術後の疼痛なのか、女性であれば子宮系か心理的な要因によるものか。


このような場合、一般的に看護師は経験知で判断する傾向があり、外科経験が長いと消化管疾患、婦人科系だと婦人科系の疾患をアセスメントしてしまいがちです。


HCU看護師は、常に次のステップを意識してアセスメントしています。


重症度の高い患者がどのような状態になると「緊急」と判断すべきか考え、また「緊急」にならないように予防看護も行っています。そして、退院後の生活においても患者自身が予防看護を続けられるような指導もしています。


HCU看護師として大事なことは、看護の怖さを意識し続けることだと思います。たとえ患者のバイタルが安定していたり、歩けたり、話せたりしていたとしても、医師が「いつ状態が急変するかわからない」と判断した事実を忘れてはいけません。


HCUの患者については、時に緊急度と重症度が食い違う場合もあるので、いまの患者の状態に惑わされず、丁寧にアセスメントしていくように心がけましょう。

HCUの看護師になるためには?

施設によって異なりますが、HCU看護師はICU看護師と違い、BLS(Basic Life Support:一次救命処置)、ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support:二次心肺蘇生法)などの資格を求められることは少ないと思います。


もちろん資格をもっていれば有利ですが、「急性期全般に関わりたい」と希望すれば、資格をもっていない新人看護師や転職者の方でも配属されやすいと思います。


またHCUに配属されなくても、HCU的なアセスメントをすることは可能です。


患者が身体の痛みを訴えた場合、みなさんはどれくらいの原因が思いつきますか?


疼痛(とうつう)には個人差がありますが、疾患によっては、姿勢で推測できる場合や痛みの間隔と程度でアセスメントができます。年代によっても疼痛の起こる疾患の頻度に違いがあります。


できるだけ例外を作らずに疼痛をアセスメントし、可能性を1つずつ否定する訓練は一般病棟でもできますし、患者を全人的にアセスメントして、異常の早期発見につなげていくことは、看護師が得意とするところだと思います。

HCUの看護師にはどんな人が向いている?

HCUの看護師には、常に「なぜだろう?」と考え、原因究明にこだわるような方が向いていると思います。たとえば疼痛は、身体の機能的要因だけではなく、心理的要因から起こる場合もあるためです。


また、HCUでは一般病棟よりも1人の患者に関わる時間が長く、緊急度は低くても、患者の症状をじっくりとアセスメントすることができます。


一般的に急性期の施設は残業が多いと思います。重症度にもよりますが、HCUはICUよりストレスが少なく、「勤務交代がスムーズで家庭と両立しやすい」と言う看護師も多いため、「高度な急性期看護が好きだけど、家庭の事情で残業はできない」という方にも向いています。

読者の方へのメッセージ

生活から患者をみる

急性期看護にもいろいろありますが、自分が看護師として成長したと感じられるところが急性期の魅力だと思います。

内橋 恵 (脳卒中リハビリテーション看護認定看護師・NST専門療法士) 2018/12/27

プロフィール

生活期→急性期→回復期とすべての病期を経験し大学院に進学。在籍中にコンサルタントナースとして起業し、主に訪問看護師のコンサルを行なっている。看護学修士取得後も回復期病院に勤めながら、高齢者の低栄養を研究テーマに大学院研究生として両立中。認定看護師を取得後に執筆活動開始し、栄養看護や退院支援に関する編集や執筆多数。学会委員としての活動と同時に大学や看護協会、看護師向け動画での研修講師も務める。

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