1. 医療・福祉・健康・美容に関わる施設はいくつある?
コンビニより、いや、 信号機より多い美容院
以前公開した記事「その数コンビニ以上!歯医者は本当に過剰供給なのか調査してみた」では、歯科診療所や薬局など、その数の多さから「コンビニより多い」とよく形容される施設について調査しました。
その結果、コンビニどころか日本国内に設置されているすべての信号機よりも多いのが美容院であることが判明しました。
特養は中学校、地域包括支援センターは高校と同程度あり
医療介護求人サイト「ジョブメドレー」では、上記以外にもさまざまな施設の求人を取り扱っています。そこで今回は、医療・福祉・健康・美容に関わる代表的な施設の数を調べてみました。
比較対象になりそうな施設として、小学校(約1.9万校)、中学校(1万校)、高校(約5千校)を挙げてみましたが、「小1の壁」問題で注目される放課後児童クラブ(学童保育)は小学校よりたくさんあることがわかります。また、特別養護老人ホーム(特養)は中学校と同じくらい、地域包括支援センターは高校と同じくらいの数が整備されているんですね。
2. 分野別|施設数の時系列データ
さらに、過去約20年分の施設数の推移を分野別にまとめてみました。
医療施設の数の推移
過去20年間、精神科病院がほぼ横ばいなのに対して、一般病院は一貫して減り続け約10%減少しています。
その一方、一般診療所は約10%、歯科診療所は約8%、薬局は約30%増加しています。
歯科診療は“修復”から“予防”にシフトしつつあるほか、歯列矯正やホワイトニングなど自由診療に対するニーズも旺盛です。
薬局は“医薬分業”を掲げ医療機関の門前を中心に数を増やしてきましたが、院外処方率が7割を超えた今、“かかりつけ機能”の強化が課題となっています。
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一般病院 / 精神科病院 / 診療所 / 薬局
高齢者施設の数の推移
*通所介護は「通所介護」と「地域密着型通所介護」の合計
*特別養護老人ホームは「介護老人福祉施設」と「地域密着型介護老人福祉施設」の合計
2000年の介護保険制度開始以来、高齢者向けのサービスを提供する施設が多く整備されてきました。
「住み慣れた自宅で生活を続けたい」という希望を叶えるために、訪問系・通所系サービスを提供する施設が大幅に増えたほか、2001年には高齢者住まい法、2011年には改正高齢者住まい法が施行されたことで、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅といった形態の入居施設も急増しています。
なお、2006年に2011年度末での廃止が決まっていた介護療養型医療施設ですが、入居者の受け皿の確保が難航したことから廃止期限の延長が繰り返されてきました。そこで後継の施設として生まれたのが介護医療院です。介護療養型医療施設の2024年3月末での全面廃止に向けて、介護医療院の整備が進められています。
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訪問介護 / 訪問入浴介護 / 訪問看護ステーション
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特別養護老人ホーム / 介護老人保健施設 / グループホーム
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障害者施設の数の推移
障害者自立支援法(現在の障害者総合支援法)が2006年に施行されたことで、障がいを持つ方が地域社会の中で共生していくために必要なサービスが整備されました。
同法の施行から10年の間に、居宅介護・重度訪問介護サービスは約2倍、障害者グループホームは約3倍に増えました。より支援対象の広い就労支援関係の事業所に至っては10倍以上増加しています。
これらの障害福祉サービスを利用するために必要な利用計画を作成する計画相談支援事業所も大幅に増えています。
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児童施設の数の推移
少子化が進み学校が徐々に減少する一方で、共働き世帯の増加によって保育に対するニーズが増えています。
過去20年間で幼稚園が3割減少しているのに対し、保育所は1割の増加となっています。また、2006年には保育所(保育)と幼稚園(教育)の両方の特長を兼ね備えた認定こども園が誕生し、その数は2021年までの15年間で1万近くに達しました。
また「小1の壁」の打破に向け、放課後に加え土曜日や夏休みなどの学校がお休みの日に子どもを預かる放課後児童クラブ(学童保育)も2.5倍に増えています。
さらに、障がいを持つ子どもたちに対する支援も増えています。2012年の児童福祉法の改正で創設された放課後等デイサービス(放デイ)は、2020年には1万6千を数えるまでに急増しました。発達障害(自閉症スペクトラム、学習障害、注意欠陥多動性障害の総称)により支援を必要とする子どもやその家族が増えていることが背景にあります。
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幼稚園 / 認可保育所 / 認可外保育所 / 認定こども園
放課後児童クラブ / 放課後等デイサービス / 障害児相談支援
治療院の数の推移
医療費抑制の観点から、柔道整復師や鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師がおこなう施術・治療に対して健康保険を適用するハードルが上がっています。
しかしながら、健康意識の高まりからセルフメンテナンスやリフレッシュなどの目的でこれらの代替医療の治療院を定期的に利用する方が増えているほか、女性の間では美容鍼にも注目が集まっています。
過去20年間でマッサージ院こそ1割減となっていますが、整骨院・接骨院や鍼灸院は2倍以上に増えています。
理美容院の数の推移
美容院と理容院では傾向が鮮明に分かれました。2003年から2020年までの間に美容院は2割増加したのに対して理容院は2割減少しています。
「女性は美容院」「男性は理容院」という時代もありましたが、今となっては男性が美容院で髪を切ることも当たり前となっています。経営者や常連客の高齢化も相まって理容院の数は右肩下がりの傾向が続いていますが、オーセンティックなバーバースタイルを見直す動きも生まれています。