目次
1.介護休暇・介護休業とは
家族の介護が必要なときに取得できる休み
労働者が家族の介護や世話のために取得できる休みのことです。育児・介護休業法によって定められ、年次有給休暇とは別に取れます。法律では、介護休暇や介護休業の申し出や取得を理由に、解雇や雇い止め、降格など不利益な扱いをすることを禁止しています。
法律で定められている「要介護状態」とは、負傷や疾病、身体または精神上の障がいにより2週間以上の期間にわたって常時介護を必要とする状態を指します。介護保険を利用するための要介護認定を受けていなくても対象となります。
休暇の場合5日、休業は93日まで
介護休暇と介護休業の違いについて詳細は後ほど説明しますが、主な違いは取得できる日数にあります。介護休暇の場合、通院の付き添いや介護サービスに必要な手続きをするために最大年5日取得できます。一方、介護休業の場合は対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して取得できます。
休業では介護休業給付金が申請できる
休業の場合一定条件を満たせば、休業開始時における月額賃金の67%の介護休業給付金が支給されます。給付金は事業主を経由してハローワークに申請し、審査が終わり次第介護休業給付支給決定通知書が被保険者の自宅に届けられます。支給決定日から1週間程度で指定の口座に入金されます。

▼給付金の計算方法
休業開始時の賃金日額 × 支給日数 × 0.67 = 給付額
例:月収20万円で1ヶ月の介護休業を取得した場合
6,666円(賃金日額)× 30日(支給日数) × 0.67 = 13万4,000円(給付額)
*休業開始時の賃金日額は、介護休業開始前6ヶ月間の総支給額(保険料等が控除される前の金額)を180で割った額
*1回の支給日数は30日となり、介護終了日を迎える月はその日までの期間
2.介護休暇と介護休業の違い
介護休暇と介護休業の違いは、取得できる日数以外にも給付金の有無などいくつかあります。
介護休暇 | 介護休業 | |
---|---|---|
対象者 | 要介護状態にある家族を介護・世話をする労働者(日雇いを除く) 労使協定を結んでいる場合、入社6ヶ月未満の人、1週間の所定労働日数が2日以下の人は対象外となる |
要介護状態にある家族を介護・世話をする労働者(日雇いを除く) パートやアルバイトなど有期雇用の場合、取得予定日から起算して、93日を経過する日から6か月を経過する日まで労働契約が満了されることが明らかでない |
介護の対象者 | 事実婚を含む配偶者、父母、配偶者の父母、祖父母、子ども、兄弟姉妹、孫 | |
期間 | 1年度において5日(対象となる家族が2人以上の場合は10日) 時間単位で取得可能 |
通算93日まで3回に分けて取得可能 |
申請方法 | 口頭や当日の電話でも可 書面が必要な場合は後日提出でも可 | 休業開始予定日の2週間前までに、書面または就労先が認める場合、FAXまたは電子メールで申請 |
給付金の有無 | なし | あり |
給与の有無 | 就労先による | なし |
取得理由 | 対象家族の介護や通院の付き添い、介護サービスの手続き代行、ケアマネジャーとの打ち合わせなど |
3.成立背景と増加する介護の担い手
労働人口の減少に加え、介護離職により貴重な働き手を失わないために1994年に誕生したのが、「育児・介護休業法」です。仕事と介護の両立ができるよう、事業主側に制度の実施や取得の促進を強化するよう求めています。
2022年時点で、日本における65歳以上の割合は全人口の29.1%(3,627万人)となっており、1994年の倍以上になっています。少子高齢化に伴い、介護を担う家族が離職を余儀なくされる事態が生じています。以下のグラフからは、とくに女性の介護離職のほうが多いことがわかります。

4.医療・福祉業界でも深刻な“介護離職”
不足する介護職員
法律の整備と合わせて国は介護の受け皿の拡大を掲げ、介護職員の数は年々増加しています。しかし、2021年に発表された「介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」では、20〜32万人が不足との推計が出されており、介護業界はいまだ深刻な人手不足の状況にあります。
医療・福祉業界従事者における介護の現状
2021年におこなわれた「看護職員実態調査」によると、看護師で家族や身近な人の介護を現在している人または経験した人は約30%にのぼります。また、2020年度の「ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人に関する分析」では「親族の健康・介護」が、50代以降の退職理由1位となっています。
定年まで仕事を続けたくても、早期にキャリアを断念せざるを得ない人も一定数いることが推察されます。
福祉業界でも介護を退職理由に挙げている人がいます。2021年度「介護労働実態調査」によると、介護職が前職を辞めた理由に「家族の介護・看護のため」を挙げた人は4.3%という結果でした。2020年の同調査では、過去3年間に「介護を理由に退職した従業員がいた」と回答した事業所は全体の17.2%となっています。
介護職の離職率は低下傾向にあるものの、今後も増え続ける要介護者の受け皿を十分満たすためには仕事と介護の両立を支援する体制や環境作りが大切です。
医療・福祉業界で制度を利用した人の声
ここからは、実際に介護休暇・介護休業を取得した人の声を紹介します。


5.仕事と介護の両立のために制度の活用を
家族に介護が必要となったときに休みが取得できる「介護休暇・介護休業」制度。取得する期間や給付金の有無が主な違いですが、ともに仕事と介護を両立させるために誕生した制度です。
1999年以降、育児・介護休業法では事業主側に介護休暇・介護休業の導入を義務付けていますが、介護を理由に仕事を辞める人は年間10万人近くいます(2021年時点)。今後高齢化が進むなか人材不足や経済力の低下が懸念されるため、介護休暇・介護休業に関する情報を従業員に広め取得を促すことが求められています。
参考
- 厚生労働省|育児・介護休業法のあらまし
- 大和総研|介護離職の現状と課題
- e-Gov|育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律