東京都が独自の介護職支援を発表
2024年1月9日、小池都知事の年始挨拶で言及された都独自の介護職支援施策の概要が明らかになりました。都内で働くすべての介護職員、ケアマネジャーを対象に、「居住支援特別手当」として月1万円または2万円を給付するというものです。
都が2023年10月に発表した国への「介護報酬改定等に関する緊急提言」の趣旨を先行して実施するもので、2024年度予算案に285億円(介護サービス関連全体では521億円)を計上し、同年度中の給付を目指します。国による抜本的な改善が実現するまで居住支援特別手当を継続することで、大都市部の高齢者人口増加や介護需要増に見合った待遇改善を進めたい考えです。
狙いは介護職員の定着・人材確保
2024年の介護報酬改定では、すでに月6,000円の賃上げが施策のひとつとして盛り込まれています。さらに都独自の施策を実施する意義について、福祉局高齢者施策推進部介護保険課長の西川さんは次のように説明します。
東京都の生活コストをカバー
「東京都は家賃などの生活コストが高い。そのため介護職の方々にもそれに見合った待遇が必要です。とくに給与がまだ上がっていない勤続5年以内の介護職員への給付を2万円と手厚くし、若手や新人の介護職の定着率を改善したいと考えています」
物価・給与などの地域差 | |||
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項目\地域 | 東京都 | 愛知県 | 青森県 |
介護従事者の月収 | 24万489円 | 22万2,506円 | 18万5,256円 |
消費者物価指数 | 105.5 (区部) |
99.2 (名古屋市) |
98.1 (青森市) |
地価(㎡あたり) | 38万9,100円 | 10万8,300円 | 1万5,900円 |
参考:介護報酬改定等に関する緊急提言より抜粋
ケアマネの待遇が相対的に低くなる“逆転現象”を回避
居住支援特別手当では、介護報酬改定では対象外となったケアマネジャー(介護支援専門員)も対象としている点も特徴です。背景にはケアマネジャーの負担増・人手不足への危機感があります。
「介護報酬改定等に関する緊急提言でも触れていますが、処遇改善加算でケアマネジャーが対象とならなかったことで給与がわずかしか上がらず、専門性に見合わない状況になってしまっています。人材不足から利用者の受け入れをセーブしている事業所もあり、ケアマネジャーの処遇改善は喫緊の課題です」(西川さん)
都内のケアマネジャーと介護職員の平均給与 | ||
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ケアマネジャー | 介護職員 | |
2012年度 | 28万2,242円 | 22万5,125円 |
2022年度 | 29万1,485円 | 26万7,090円 |
参考:介護報酬改定等に関する緊急提言より抜粋
さらに都は介護施設や訪問介護で働く介護職のほか、障害福祉サービスに従事する介護職についても同様の支援策を検討しています。
【詳細】手当の金額、対象となる介護職員・ケアマネジャー
施設形態・雇用形態にかかわらず、都内で週20時間以上勤務する介護職、ケアマネジャーがすべて対象となります。手当は事業所が介護職やケアマネジャーの給与に「居住支援特別手当」を設けた場合、都に申請することでその分の給付金が事業所に支給される形です。
居住支援特別手当の詳細は以下のとおりです。
東京都「介護職員・介護支援専門員居住支援特別手当事業」
対象:都内の介護サービス事業所で働く(週20時間以上)すべての介護職員、介護支援専門員
時期:2024年度中に支給開始(予定)
給付金額:
勤続5年以内の介護職員…月額2万円
介護支援専門員、勤続6年以上の介護職員…月額1万円
申請方法:事業所が「居住支援特別手当」を創設、都に申請(予定)
実施期間:2024年度から 国の介護報酬改定の改善状況による
具体的な申請方法(事業所向け)や、支給可能時期は令和6年度予算編成において詳細が決定します。最新情報は随時更新予定です。
参考
- 東京都|介護報酬改定等に関する緊急提言