義肢装具士って何するの?仕事内容、なり方、年収などを徹底調査!

「義肢装具士」は、医師の処方のもと患者さんの採型・採寸をおこない、義肢装具を製作する医療専門職です。仕事内容や勤務先、資格要件、国家試験の合格率、給与(年収)などについて説明します。

義肢装具士

なるほど!義肢装具士データ

1.義肢装具士(PO)とは

義肢装具士とは、手脚の役割を果たす「義肢」や身体をサポートする「装具」を作り、使う人の身体能力やライフスタイルに合わせて「適合」をおこなう医療専門職です。英語表記は「Prosthetist and Orthotist」で“PO”と略されます。

日本で義肢装具士の資格制度が誕生したのは1987年と、医療専門職のなかでも比較的新しい国家資格です。近年はパラリンピックやパラスポーツに対する認知度の高まりから、パラアスリートの義手や義足を製作する職種として一般に知られるようになりました。

義肢装具士は、事故や病気で体の一部やその機能を失った方の社会復帰QOLの向上を支援するという重要な役割を担っています。義肢装具士が活躍するのは医療のなかでもリハビリテーションに関わる部分ですので、医師、看護師以外にも理学療法士(PT)や作業療法士(OT)との連携が重要となります。

1-1.「義肢」「装具」とは

義肢装具士が製作する「義肢」と「装具」には、次のような役割があります。

義肢 手や脚を失った患者さんの身体機能を代替するもの。腕につける義肢を「義手」、脚につける義肢を「義足」と呼ぶ。利用目的により、見た目を整える装飾用と実際に手先を動かすための能動用に分かれる。
装具 患者さんが一時的に失った身体機能を補い、回復を図るために装着する。腕につけるものを上肢装具、胴体につけるものを体幹装具、脚につけるものを下肢装具と呼ぶ。

<装具に含まれるもの>
コルセット、サポーター、インソール、義眼(眼球摘出後眼窩保護のため装着した場合)

<装具に含まれないもの>
視覚障害者安全つえ(白杖)、眼鏡、補聴器、座位保持装置、車いす、電動車いす、座位保持いす、起立保持具、歩行器、頭部保持具、排便補助具、歩行補助つえ

2.義肢装具士の仕事内容

義肢装具士の仕事は、患者さんが医師の処方を受けるところからスタートします。義肢装具士は医師の指示のもと、「採寸・採型」→「製作」→「適合」の流れで仕事を進めます。

義肢装具士が患者さんと直接対話しながらおこなう採寸・採型と適合の工程を特に「営業」や「臨床」と呼びます。勤務先によって、営業(臨床)と製作を分業するところと、一貫して担当するところがあります。

2-1.採寸・採型

医師の指示のもと、患者さんの身体の状態に合った義肢装具を作るために、該当部位のサイズを測る「採寸」と、型を作る「採型」をおこないます。

2-2.製作

病院で患者さんから得た情報や、採寸・採型時に作った型をもとに義肢装具を製作します。義肢はオーダーメイドが基本。装具は既製品を使用したり、加工したりすることがあります。

2-3.適合

製作した義肢装具を患者さんの身体に合わせます。患者さんが痛みなどの違和感を訴えた場合は、細かな調整をおこなって再納品します。

3.義肢装具士になるには

3-1.国家試験に合格する必要がある

義肢装具士になるには、国家試験に合格して厚生労働大臣の免許を受ける必要があります。国家試験の受験資格を得るためのルートは、大きく分けて3つあります。

義肢装具士になるには

A【指定の養成校ルート(大学・専門学校)】

高校を卒業後、全国に10校ある(2021年1月時点)養成校(大学・専門学校)で3年以上の課程を修了するルート。

B【大学・短大・高等専門学校卒業後の養成校(2年間)ルート】

義肢装具士関連過程のない4年制大学や短期大学、高等専門学校などを卒業し、義肢装具士養成校で2年間の過程を修了するルート。実際には2年制の養成校はないため、4年制(大学)か3年制(専門学校)の養成校に通う必要があります。

C【外国の義肢装具士養成学校を卒業するルート】

外国の義肢装具士養成所で訓練を積んだり、外国の義肢装具士免許を取得したりしたうえで、厚生労働大臣の認定を受けるルート。

3-2.国家試験の概要と合格率

義肢装具士の国家試験は一般問題を1問1点、実地問題を1問2点とした合計130点満点で、78点以上で合格となります。

2025年2月に実施された「第38回義肢装具士国家試験」の受験者数や合格率は次のとおりです。

第38回義肢装具士国家試験 結果

  • 合格発表:2025年3月26日(水)
  • 受験者数:186人
  • 合格者数:133人
  • 合格率:71.5%

参考:厚生労働省|第38回義肢装具士国家試験の合格発表について

義肢装具士国家試験合格者数・合格率の推移
参考:厚生労働省|義肢装具士国家試験の合格発表(第34回第35回第36回第37回第38回)より作成

義肢装具士国家試験の過去5年の合格率は、68.5%〜81.0%で推移しています。2025年の合格率は71.5%でした。

3-3.養成校の種類と特徴

紹介した3つのルートでもっとも一般的なのは、Aの「指定の養成校ルート」となります。養成校には4年制の大学と3年制の専門学校の2種類があるため、それぞれの特徴を理解して目的にあった進路を選択しましょう。

4年制の大学

義肢装具士としてのカリキュラムのほか、学士課程に在籍する学生として一般教養も学べます。他学科で医療職を目指す学生と交流することもできます。

3年制の専門学校

義肢装具士としての職業訓練に特化したカリキュラムを学べます。4年制の大学と比較して卒業までの期間が1年短い分、学費も安いのが特徴です。

養成校の名称と所在地

2021年1月時点で全国に10校(大学4校・専門学校6校)の養成校があります。

<大学>
<専門学校>

4.義肢装具士の勤務先

日本義肢装具士協会が2016年におこなった「第2回実態調査」によると、義肢装具士の約9割が義肢装具を含む補装具の製作事業所に勤めており、医療機関が4.1%、教育機関が3.0%と続きます(複数回答)。

義肢装具士の勤務先

─参考:一般社団法人 義肢装具士協会/協力、増田美樹/著『義肢装具士になるには』

日本義肢協会に所属する事業所は全国に約300存在します(参考:日本義肢協会)。義肢装具士の国家試験に合格し免許を取得したあとは、このような事業所に所属することが一般的なようです。

先ほど利用者の採寸・採型と適合の工程を「営業」と呼ぶとご紹介しましたが、「営業」とはこのように事業所に所属する義肢装具士が取引先である病院に赴いて作業することを指しているのです。

5.義肢装具士の年収

同じく義肢装具士協会の第2回実態調査(2016年)によると、義肢装具士の年収で最も多かったのは301〜400万円で、次いで401〜500万円、201〜300万円という回答が続きました。

どの業界や職種にも言えることですが、年収は勤続年数に比例します。勤続年数別に最も回答の多かった年収は、勤続4年目までで201〜300万円、8年目までで301〜400万円、12年目までで401〜500万円、16年目までで501〜600万円、17年以上で601万円以上となりました。義肢装具士の年収は勤続20年前後まで上がり、その後は横ばいとなるようです。

勤務先によっても年収は異なり、義肢装具の製作事業所よりも医療機関のほうが待遇が良い傾向にあります。

なお、義肢装具士の男女比は8:2と男性の多い職種ですが、男性の年収は401〜500万円、女性の年収は301〜400万円が最も多いという結果になりました。女性の約30%が20代と勤続年数の短い方が多い一方で、男性の約20%が事業所の経営者を務めており、このような年齢(勤続年数)や雇用形態の違いが男女の年収にも影響を及ぼしていると考えられます。

義肢装具士の男女比

─参考:一般社団法人 義肢装具士協会/協力、増田美樹/著『義肢装具士になるには』

6.最後に

厚生労働大臣の指定を受けて義肢装具士国家試験を実施しているテクノエイド協会の集計によると、試験合格者は2020年4月時点で累計5,772人となっています(参考:テクノエイド協会)。そのほかの医療専門職と比較すると歴史が浅いこともあり、まだまだマイナーな職種かもしれません。

しかし、義肢装具士に対する社会的ニーズは拡大すると考えられます。

義肢装具を必要とするのは先天的に手脚のない方や事故による外傷が原因で手脚を失った方ばかりではありません。高齢化が進むなか糖尿病や動脈硬化によって下肢を切断せざるを得なくなった方が増えています。さらに、外反母趾に悩む方や身体機能の衰えた高齢の方に歩行をサポートするインソールを製作したり、パラスポーツに取り組む方に競技用の義肢を製作したりと、医療や福祉をはじめとする幅広い領域で人々のQOLを高めるための活躍が期待されています。

義肢装具士の求人を見る

プロフィール

「なるほど!ジョブメドレー」は、医療介護求人サイト「ジョブメドレー」が運営するメディアです。医療・介護・保育・福祉・美容・ヘルスケアの仕事に就いている人や就きたい人のために、キャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。仕事や転職にまつわるご自身の経験について話を聞かせていただける方も随時募集中。詳しくは「取材協力者募集」の記事をご覧ください!

あなたへのおすすめ記事

福祉用具専門相談員ってどんな仕事? 業務内容、働ける場所などを徹底調査!

福祉用具専門相談員ってどんな仕事? 業務内容、働ける場所などを徹...

2000年に始まった介護保険制度は「介護が必要な人が、その人らしい生活を続けられるように支援する」ための制度ですが、その支援の1つとして福祉用具の活用が挙げられます。そんな福祉用具のプロフェッシ...

職種・資格を知る 公開日:2021/01/28 更新日:2024/12/26

理学療法士(PT)とは?なるには、仕事内容、年収、将来性を解説

理学療法士(PT)とは?なるには、仕事内容、年収、将来性を解説

理学療法士(PT)とは、リハビリテーションによって身体の機能回復を助ける専門家です。なり方や国家試験の概要、仕事内容、勤務先、気になる給料や将来性、作業療法士との違いについて解説します。

職種・資格を知る 公開日:2022/02/24 更新日:2025/03/21

作業療法士(OT)とは?仕事内容、給料、国家試験の合格率、理学療法士との違いについて

作業療法士(OT)とは?仕事内容、給料、国家試験の合格率、理学療...

今回は作業療法士(OT)の仕事内容や給料、資格の取り方、国家試験の合格率、理学療法士との違いついて。リハビリ専門職である作業療法士についてご紹介します。

職種・資格を知る 公開日:2021/03/23 更新日:2025/03/21

ジョブメドレー公式SNS

会員登録がまだの方

  1. 1 事業所からスカウトが届く

  2. 2 希望に合った求人が届く

  3. 3 会員限定機能が利用できる

無料で会員登録をする

LINEでもお問い合わせOK!

ジョブメドレーの専任キャリアサポートにLINEで相談できます! QRコード

@jobmedley

ジョブメドレーへの会員登録がお済みの方はLINEで通知を受け取ったり、ジョブメドレーの使い方について問い合わせたりすることができます。

LINEで問い合わせる

ジョブメドレーへの会員登録がお済みの方はLINEで通知を受け取ったり、ジョブメドレーの使い方について問い合わせたりすることができます。

福祉用具専門相談員の新着求人

職種とキーワードで求人を検索

Btn pagetop