公益財団法人とは?公益社団法人との違い、略称、給料などについて解説

ニュースなどで見聞きはするけれど、どんな組織か実は詳しく知らない……そんな人に向けて、公益財団法人の成り立ちやよく似た組織(公益社団法人、一般財団法人、一般社団法人など)との違い、働く人の給料などについてまとめて解説します。

公益財団法人とは?公益社団法人との違い、略称、給料などについて解説

目次

1.公益財団法人(公財)とは

一定の財産を基に公益活動をおこなう団体

公益財団法人(略称:公財)とは、一定の財産を基に設立され、その財産を用いて公益性の高い活動をおこなう民間の非営利法人のことです。利益を目的とせず、学術や芸術、技術、慈善活動など人々のためになる活動をおこないます。2008年12月に施行された「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」に基づき設立されました。

一般的に「財団法人」という形態は、一定の目的の基に拠出された“財産”を事業や公益活動のために運用していく団体のことを指します。その中でも公益財団法人は、とくに公益性が高いと認められた財団法人であり、内閣府や都道府県の認定を受けています

2020年12月時点で、全国には5,439の公益財団法人が活動しています(出典:内閣府「公益法人の概況及び公益認定等委員会の活動報告」)。

tips|公益法人制度のはじまりは?

公益法人制度の前身は、1898年(明治31年)に施行された旧民法です。制度開始後、民間の公益活動の中心として役目を果たしてきましたが、次第に多様化する社会のニーズに対応できなくなり、見直しが迫られることになりました。その結果、2008年12月に現在の公益法人制度に再編され、新たに公益目的ではない一般法人(一般財団法人・一般社団法人)も設立されました。

設立の条件

公益財団法人は、株式会社のように登記すればすぐに設立できるものではありません。2008年の公益法人制度の再編により、現在の法人形態は公益法人(公益財団法人・公益社団法人)一般法人(一般財団法人・一般社団法人)の2種類に分けられます。

このうち一般法人は登記のみで設立が可能です。一方、公益法人を設立するには、一般法人を設立したうえで、公益認定の基準を満たし、行政庁(内閣府または都道府県)の認定を受ける必要があります。

公益法人と一般法人

また、公益法人は人々の利益の増進を目的としているため、「公益性」に関する基準と、その活動目的を果たすために必要な能力や体制があるかを審査する「ガバナンス」に関する基準を満たす必要があります。

公益財団の認定基準

〈公共性に関する基準〉

  • 公益目的事業をおこなうことを主としていること
  • 特定の者に特別の利益を与える行為をおこなわないこと
  • 収支相償(公益目的事業に関わる収入が適正な費用を超えない)であると見込まれること
  • 一定以上に財産をため込んでいないこと(遊休財産規制)
  • その他(理事等への報酬の規制、他団体への支配の規制)

〈ガバナンスに関する基準〉

  • 経理的基礎・技術的能力があること
  • 相互に密接な関係にある理事・幹事が3分の1を超えないこと
  • 公益目的事業財産の管理について定款に定めていること
  • その他(会計監査人設置、社員の資格の得喪に関する条件等)

公益財団法人の具体例

公益財団法人にはどのような団体があるのでしょうか? 日本国内で有名な公益財団法人には、次のような例が挙げられます。

  • 公益財団法人 日本財団
  • 公益財団法人 トヨタ財団
  • 公益財団法人 三菱財団

また、医療・福祉・美容分野の国家試験の運営を担っている団体の多くも、公益財団法人です。

  • 公益財団法人 社会福祉振興・試験センター(介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士国家試験の運営)
  • 公益財団法人 医療機器センター(臨床工学技士国家試験の運営)
  • 公益財団法人 医療研修推進財団(言語聴覚士国家試験の運営)
  • 公益財団法人 東洋療法研修試験財団(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家試験の運営)
  • 公益財団法人 柔道整復研修試験財団(柔道整復師国家試験の運営)
  • 公益財団法人 理容師美容師試験研修センター(理容師、美容師国家試験の運営) など

2.公益財団法人の事業内容

公益目的事業

公益財団法人が主としておこなう公益目的事業は、学術・芸術・技術・慈善などの不特定多数の人の利益につながる内容に限られています。具体的には次の23事業が該当します。

またこれらの公益目的事業をおこなう場合、法人税は非課税となります。

公益目的事業の23分野

  1. 学術および科学技術の振興を目的とする事業
  2. 文化および芸術の振興を目的とする事業
  3. 障害者もしくは生活困窮者または事故、災害もしくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業
  4. 高齢者の福祉の増進を目的とする事業
  5. 勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業
  6. 公衆衛生の向上を目的とする事業
  7. 児童または青少年の健全な育成を目的とする事業
  8. 勤労者の福祉の向上を目的とする事業
  9. 教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、または豊かな人間性をかん養することを目的とする事業
  10. 犯罪の防止または治安の維持を目的とする事業
  11. 事故または災害の防止を目的とする事業
  12. 人種、性別その他の事由による不当な差別または偏見の防止および根絶を目的とする事業
  13. 思想および良心の自由、信教の自由または表現の自由の尊重または擁護を目的とする事業
  14. 男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
  15. 国際相互理解の促進および開発途上にある海外の地域に対する経済協力を目的とする事業
  16. 地球環境の保全または自然環境の保護および整備を目的とする事業
  17. 国土の利用、整備または保全を目的とする事業
  18. 国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業
  19. 地域社会の健全な発展を目的とする事業
  20. 公正かつ自由な経済活動の機会の確保および促進並びにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業
  21. 国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業
  22. 一般消費者の利益の擁護または増進を目的とする事業
  23. 前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの

収益事業

公益財団法人は団体の活動維持を目的に、そのほかの収益事業を運営することが可能です。ただし、公益目的事業に支障を及ぼさない範囲に限られ、収益事業から生じた利益に対しては法人税が課されます

*収益事業に属する資産から公益目的事業のために支出した金額は、公益目的事業への寄附金とみなし、税制優遇を受けることが可能

運営可能な収益事業には、以下の34分野が該当します。

収益事業の34分野

  1. 物品販売業  
  2. 不動産販売業  
  3. 金銭貸付業  
  4. 物品貸付業  
  5. 不動産貸付業  
  6. 製造業  
  7. 通信業  
  8. 運送業  
  9. 倉庫業  
  10. 請負業  
  11. 印刷業  
  12. 出版業  
  13. 写真業  
  14. 席貸業  
  15. 旅館業  
  16. 料理店業その他の飲食店業 
  17. 周旋業  
  18. 代理業  
  19. 仲立業  
  20. 問屋業  
  21. 鉱業  
  22. 土石採取業  
  23. 浴場業  
  24. 理容業  
  25. 美容業  
  26. 興行業  
  27. 遊技所業  
  28. 遊覧所業  
  29. 医療保健業  
  30. 技芸教授業  
  31. 駐車場業  
  32. 信用保証業  
  33. 無体財産権の提供等をおこなう事業
  34. 労働者派遣業

3.公益財団法人のメリット・デメリット

公益財団法人を運営するメリット・デメリットには、次のようなことが挙げられます。

メリット1:社会的な信用度が上がる

公益財団法人となるには、国や都道府県による認定が必要です。公益財団法人は厳しい審査を通過したことにより、その活動の社会的意義や信頼性の証明につながるため、ほかの非営利法人や一般法人と比べて高い評価を受けやすいといえます。

メリット2:税制優遇がある

通常、法人が事業をおこない得た収益には法人税が課されますが、公益財団法人がおこなう公益目的事業の場合は非課税となります。

また、公益財団法人に個人や法人が寄付した場合には、所得税や法人税において寄付金控除などの税制優遇を受けられるため、組織外からの支援を受けやすくなるメリットもあります。

デメリット1:設立・運営のハードルが高い

公益財団法人を設立するには、まず一般財団法人を設立し、その後、公益性を証明するために内閣府または都道府県から公益認定を受ける必要があります。認定基準は厳しく、とくに財産の保有状況や事業の透明性、収益の分配に関して高い基準を満たすことが求められます。そのため、設立にあたっては多くの準備と審査対応が必要です。

また認定後についても、定期的に事業や財務状況の報告をおこなう必要があり、運営コストがかかります。さらに適切な運営を証明するため、監督機関(内閣府や都道府県)による立ち入り検査の実施や報告が求められます。

デメリット2:事業内容に制限がある

公益財団法人がおこなえる公益目的事業の内容は、学術・芸術・技術・慈善などの特定の分野に限られています。収益事業はより柔軟な運営が認められていますが、公益目的事業の実施に支障をきたさない範囲に限定されます。

なお、設立時に定めた事業内容や運営方針を途中で変更する場合には、行政庁に対して変更申請の手続きが必要であり、容易に変更できるものではありません。

4.公益財団法人とほかの法人との違い 

公益社団法人(公社)との違い

公益社団法人(略称:公社)は公益財団法人と同じ公益法人の一種で、行政庁の認定を受けて成立します。

 公益財団法人と公益社団法人の違い

2つの法人の主な違いは、組織の成り立ち方です。公益財団法人は一定の“財産”を基に設立されますが、公益社団法人は“社員”(個人または法人)が集まり、共同の目的を達成するために設立されます。設立時、公益財団法人には一定額以上の拠出金が必要ですが、公益社団法人には必要ありません。

公益目的事業の23分野や収益事業の34分野については、公益財団法人と同様です。また、公益法人として受けられる税制優遇、寄付を受ける際にも税制上のメリットがある点も同様となります。

一般社団法人(一社)・一般財団法人(一財)との違い

一般社団法人(略称:一社)と一般財団法人(略称:一財)は、営利を目的としない民間の法人です。公益財団法人との主な違いは「公益性の認定」「活動内容の制限」「税制上の優遇措置」にあります。

〈公益性の認定〉

一般社団法人と一般財団法人(合わせて一般法人と呼ぶ)は、行政庁による公益性の認定を受ける必要はありません。法務局へ設立登記を申請することにより、比較的容易に設立が可能です。

〈活動内容の制限〉

一般法人は設立時に定款で定めた事業であれば、自由に活動できます。そのため、必ずしも公益性の高い活動をおこなう必要はありません。例えば同窓会やサークルなど構成員の利益を目的にした活動や、収益事業をおこなうことも可能です。

〈税制上の優遇措置〉

一般法人の「営利型」と「非営利型」どちらを選ぶかによって変わります。営利型の場合、株式会社と同様に事業で得られたすべての利益に法人税が課されます。一方、非営利型は公益法人同様に一定の要件が定められていますが、それを満たせば収益事業以外の法人税が非課税となります。

NPO法人との違い

NPO法人(特定非営利活動法人)は、公益財団法人と同じく公益性を重視した非営利法人の一種ですが、活動内容や設立手続きなどにおいていくつか違いがあります。

NPO法人がおこなう主な事業は、教育や福祉、環境保護、地域振興、国際協力などの法律で定められた20分野に限られています。

設立手続きについては、所轄庁(都道府県や政令指定都市)に対して申請します。財産や資本金の準備は不要で、資金面のハードルが比較的低いのが特徴です。ただし、最低でも10人以上の社員を確保する必要があり、設立申請から認証まで2〜4ヶ月程度かかります。

5.公益財団法人の給料

公益財団法人で働く職員の給料はどの程度なのでしょうか。総務省統計局が発表した2023年の「民間給与実態統計調査」によると、株式会社で働く社員の平均年収は480万円、公益財団法人を含む株式会社以外の法人職員の平均年収は429万円でした。

企業別職員の平均年収

株式会社そのほかの法人
男性581.3万円541.1万円
女性309.0万円343.4万円
480.4万円429.1万円
出典:独立行政法人統計センター|民間給与実態統計調査 / 民間給与実態統計 / 結果表(新たな復元推計手法により計算)

公益財団法人や株式会社を問わず、それぞれの給与は所属する組織の事業内容や規模によって大きく異なるため、上記は参考としてください。

6.公益財団法人で働く

公益財団法人は国や都道府県により公益性が保証されているため、急な倒産やリストラのリスクが少なく、また利益追求のために過酷な労働を強いられる可能性も低いと考えられ、比較的安定して働きやすい環境といえます。

財産を基に設立・運営されていると聞くと難しく感じるかもしれませんが、公益財団法人が運営元となっている医療機関や福祉施設などは数多く存在しています。

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参考

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